オレンジ一色で構成されたお椀を被せたような半透明な壁を持つ世界、其処で踊るのは二つの機影。
グレネードの爆音が響くと同時に自らの横を通り過ぎる処刑人。クイックターンをした目前に迫る銃剣一体じみたライフル―ああクソ、ダメだ。それを最後に見て僕の視界は暗くなった。
僕は項垂れる。
シミュレーター、現実の世界を模擬的に実感する道具である。
「いや弾切れまで追い込んだのは悪くない」
そんな風に声を掛けるのはベルリオーズ――後のNO.1である。
「立場を無視してみると?」
「あまりにも差がありすぎる」
だろうな、弾切れまで追い込めたのは彼が実弾兵器を使うことを見越したGA系列のタンク機体であったからだった。
「すまないな、こんな奴と模擬戦をしてくれて」
「いや、こちらはこちらで収穫はあった、気にしないでくれ」
ああ、この人間性が救われる……アンジェは一戦後「弱すぎる」と言ってから音沙汰なし、オービエは機体が壊れてからも執拗に死体撃ちをするし、ザンニにいたっては姿がないし。僕はランク1でもリンクスでも人格者って大切だと思うの、マトモ大事。
ゲームのアーマードコアをやっていたんだから他のリンクスなんかマッハで蜂の巣にしてやんよ!
そう思ってた時期が僕にもありました。
吐く、絶対吐く、というか何で吐かないの僕。時速1000キロ嘗めてましたすいません。
さらにAMS適性の弱さが拍車をかける。
オリジナルは26人、その23番目になるリンクスなのだ。
国家解体戦争時は戦闘の腕は余り重要ではなく戦闘時間の長さ=AMS適性の高さが如実に反映された。
つまり自分のAMS適性は下の上あたりがいいところ。ス……いや何でもない。
さらに致命的なのはGA社なら「まあ、仕方ないか」と見えるのに対し自分がいるのは全員がNO.12以上になるレイレナード社であるということ。
はっきり言おう、もしかすると味方から用済みだと消されるかもしれない。国家解体戦争はもうすぐだと言うのに。
「ザンニ、試作品の調子はどうだ?」
「悪くない、近いうちにお前も使うことになるかもしれんよ」
ベルリオーズという男は完璧であるといわれている。だが彼自身の見方では自分はできることをこなしているだけに過ぎない。人には向き不向きがあるものだ。
このザンニのような三次元戦闘、アンジェのような間合いとブレードによる攻撃、オービエでも敵地に放りこめば撹乱要員としては最適だ。
「またあのサンプルに頼まれたようだな、結果は」
「全勝だ」
「やはりな、はっきり言う、何故そこまであいつの肩を持つ?お前が情に深い人間だった記憶はないのだが」
しかしあのサンプルはリンクスとして不向きであると言わざるを得ない、ただリンクスになれただけとでも言うべきか。
「解らないからだ」
「何をだ?」
「あいつが機体を変えることがだ」
自分達はいずれも完全に自分の力を引き出せる装備を整える、企業の思惑はあるが二人はそれを重要としている。
それが戦士の命を左右する。
だからベルリオーズはサンプルを不気味に思うのだ。
『全ての武器、機体をそれなりに扱えることを』
正しい運用方法を知り、常に形を変える不定形。イレギュラー。最近になってからだ。サンプルの異変は。いやむしろサンプルだからだろうか?
ベルリオーズはサンプルに対してこう評価している。
『リンクスとしては三流、戦士としては何をしてくるかわからない化け物』と。
自然にやっていること自体がヤバいのはレイブンによくあること