Science,Magic,......SCP 作:独田博士
概要:その一部を神奈川や埼玉県に及ばせながら東京都の中央3分の1を円形に占める学園都市は、その人口の8割が学生である巨大な教育機関、研究機関の集合体です。学園都市に派遣した諜報エージェントの証言では、『記憶術』『暗記述』と称した脳開発を学生に施しています。
施術は薬物投与、電気ショック、催眠術など現代の倫理に反する手段が普遍化しており、しかし学生はこの事実に対して何ら疑問視する様子を見せません。学生達は脳を弄くられた対価として、『超能力』なる超自然現象を引き起こす力を入手します。その能力の種類、強度は一人で軍隊と相手取れる超能力者(レベル5)から、全く能力が顕れない無能力者(レベル0)まで、個人差があるようです。
また、不確定な情報ではありますが、身元不明の少年、少女を非人道的な研究の被検体として使用する目的で保護しているとの報告もありました。
学園都市の設立過程、及びその目的は不明です。彼らの持つ高度な科学技術、超能力には不明瞭な部分が多く、財団はその技術には懐疑的な姿勢を取っています。その技術を軍事兵器に利用し、『自衛』の名目で保有しておりますが、彼らは外側の社会に対し閉鎖的であり、自ら交流を断ち切ることで情報の漏洩を防ぎ、また外界からの進行を留まれせる抑止力となっております。逆に言えば、彼らがその科学力を公に(外側の社会に)行使することは、世界が学園都市に屈服することを意味します。
GOI認定される以前から財団はその広大な面積、研究機関の過密化を逆手に取りフロント企業を潜在させることに成功しています。漸次日本支部職員を秘密裏に派遣、もしくは学園都市に籍を置く人物を雇用し『学園都市支部』を新たに設立することを予定しています。学園都市内の豊富な科学知識や設備を利用してJPオブジェクトを都市内に移動させ、研究する試みは現在O5によって検討されています。
追記:20■■年■月■日より、O5理事会、日本支部理事会との協議の上、学園都市支部が設立されました。転属の希望者は担当職員の2度に渡る面接の後、その適正を判断し配属が許可されます。希望する職員は■■博士のアドレスに氏名、現在の配属先、志望理由を明記のうえ、■月■日までに送付して下さい。
サイト-8100、本来であればこの施設を利用している組織の理事達や保安調査局といった面々しか入れない場所に、一人の男は足を踏み入れている。
彼のいる部屋は会議室のようなところだ。部屋は珍しく円の形をしており、その壁には7台の液晶モニターが設置されている。映し出されているのは…どうにも言葉では説明し辛い紋章だ。二重の円、その内側に向けられた3本の矢印で構成されているそれは、彼が所属する組織を表す、いわば象徴のようなものである。
「久しぶりだな。倫理委員会での仕事はどうだ?」
部屋に立て掛けてある液晶モニターの1つから---実際には外付けのスピーカーからであるが---声が放たれる。無駄口を挟まないシンプルな言葉遣い、そして聞く人誰もが加工していると判るであろう合成音では、男か女か、何歳なのか、
「それはもう……最高でしたよ。知らなくて良いことを嫌というほど味わいました。SAN値が減っていないことに自分でも驚きです。向こうでは研修扱いとされてはいましたが、そのお陰で実験にも参加できましたし、十分に得られるものがあったと言えるでしょう。」
男は答える。彼はその容姿の為、年齢を推測することが難しいことで有名である。大方、向こう側の職員には幾分か幼く見られたのだろう。ちなみに、彼の実年齢は■■歳である。『人を見かけで決めてはいけない』という言葉は、正に彼らが所属する組織に相応しい。尤も、見た目中学生にしか見えないエージェント、トカゲ野郎、バスケットボールの皮を被った生命体、本になった博士、ect…新人の職員はこんな連中と肩を並べて働いく中で、何年かすると自然とこの現実を受け入れてしまっている。……我々の場合、『見かけで人じゃないと決めつけてはいけない』が正しいだろうか。
そのような意味では年齢不詳程度、然して問題ではない。彼はとても『人間らしい』人物だと言えるだろう。
彼らの会話の中で『研修』という言葉が出たが、余り大したことはしていない。向こう側で彼がやらされていた事とは、取り敢えずオブジェクトの資料を片っ端から読まされ、そのプロトコルが適正化を判断すること、Dクラスを用いた実験を見せられ、人道的に許容範囲かを審議すること、……そしてたまにジェラルド博士のドライブに付き合わされかけた位だ。肉体的にはそこまで問題なかったと後に彼は述べたが、精神的には……その当時を状況を目の当たりにした者のみぞ知るところであろう。
『定期報告書を逐次確認していましたが、正直、私たちが思っていた以上の良い内容ですね。これなら、例の仕事を任せられます。』
先程とは異なる、丁寧な言葉遣いの音声が流れる。同じく理事の1人”升”。もちろん役職としての名前だ。他の理事にも”獅子””鵺”などの名称があるのだが、その紹介については今回は割愛しよう。
「例の仕事、ですか。ということは、あの……」
「その通り。今回はその話をする為に、君にサイト8100まで来てもらったのだ。……学園都市についての、ね。」
また別の理事の声が発せられる。日本支部の理事は全員で7人在籍しているのだが、どれも同じような音声が360°から聞こえてくるのだ。聞いている側には堪えるものがある。しかしここを頻繁に訪れる、とある経験豊富な博士はこう言っていたという。「話を聞かなきゃ余裕だぜ!」後にこの博士は終了処分された。
『君はあの組織について、どれ程の知識を持っているかな?学生達の脳を弄くり回し超能力者に仕立てるという、珍妙な団体だ。奴等の力は今や無視できないほどに大きくなった。そしてその力が我々にとって益となるのか、害をもたらすことになるのか、確かめねばならない。』
「たしか最近GOI認定されたとか。世界を脅かすその科学技術を、オブジェクトの解明に利用できないかと検討中だったはずでしたね。」
『O5もさすがに危機感を露にしていたよ。何故今の今までまで放っておいたのかと小言も言われたがね……
さて、君の異動は確定事項であり、近々辞令を届けるつもりだ。しかし学園都市に行く前に、幾つかの準備をして貰いたい。第一に、学園都市についての予習だ。資料はこの会議後に、紙媒体での配布になる。一週間以内に資料を読了、従来の手段により破棄するように。第二に、現在学園都市に潜入中、あるいは今後潜入する予定の職員で構成される”学園都市支部”、その職員リストの確認だ。殆ど日本支部からの異動なので、面識のある人が多いだろうが、初対面の方もいるはず。業務を円滑に進める為には仲間を知らなければならないからね。』
その言葉に彼は以前お世話になった面々を思い出す。...濃い連中である。以前お世話になった先輩方を懐かしみながら、彼は一つ質問する。
「…セキュリティクリアランスはどうなりますか?職種を兼ねるのであれば、認識する情報は多くなります。」
『君には学園都市支部に限り、4のレベルを与える。クラスは残念ながらEだ。尤も、クラスに関しては学園都市支部職員の半数がEなのだが。……ああ、勘違いしないでくれ給え。何しろ情報の少ない土地なのだ。何が起こるか予測がつかないからこそのEクラスだ。』
Eクラスという言葉に若干の緊張を覚えるも、その理由には納得できる。
「...承知いたしました。それでは、早速準備に入ります、……失礼します。」
彼は自身の目の前にあるデスクに置いてある資料を受け取り、退室する。……この瞬間から、彼らの組織は積極的に学園都市に介入することとなるだろう。
そして彼らはまだ知る由も無い。科学サイドと交わると同時にその対極、魔術世界の領域にも足を踏み入れてしまうことに。
さて、科学と魔術が交差し、そして彼らも参入する。一体この第三団は何者なのか、未だ理解が追い付いていない人に対してそろそろ説明せねばならない。
未だ映り続けるモニターに映し出されているロゴマークと、そしてその下に記された3つの言葉。
≪確保・収容・保護≫
その言葉は彼らが、世界の平和の為、裏側で不条理と戦う機関の理念。
異常な物品、存在、現象を封じ抑え込むことを目的とした、世界規模の存在。
SCP Foundation
外宇宙において、そのように呼ばれる組織に課せられた、『財団』の使命である。
財団職員"早船"殿
O5理事会
財団職員"早船"殿
学園都市支部において、以下の任務を命ずる
・学園都市内部の実地調査
・既存SCPオブジェクトの再研究
・SCP-SienceWorshipの確保、収容、及び保護
尚、研修時の業務内容は一時凍結とし、学園都市支部内では上記の事項に加え、"従来の役職"による職務も兼ねるものとする。
貴殿の健闘を祈る。