Science,Magic,......SCP 作:独田博士
太陽が『俺は、此処にいるぜ!!』と激しく自己主張を強くしている中、早船は学園都市内をのんびり…いや、ふらふらと歩いていた。
「あちぃ…」
思い返すのはつい先程、今が夕方なので大体5時間前だろうか。ついに学園都市支部に到着した早船であったが、支部の職員との挨拶を済ませた後に掛けられた言葉は労いや歓迎を表すそれではなく、『さっさと働け』という意のものであった。
『おまえさん此処に来たばっかやから、ここら辺の地理詳しくないやろ?何処に何があるか、ぱぱっと歩いて把握しときぃな。あぁ、今日は直帰でええで。』
日本支部から異動してきたトカゲ野郎が発した言葉である。確かに彼は日本支部に所属していた時大変お世話になった先輩だ。そして地形把握はフィールドエージェントの基本であることも重々承知している。しかし転属初日で、こんな炎天下の中で外出を強いられるとは、今のご時世からしたらどう見られるだろうか?いや、そもそも俺の方が……などと、愚痴を心の内に漏らす早船であったが、彼の胃が空腹を告げたことで我に返る。
「......飯まだだったな。」
真夏日の学園都市散策は想像以上に体力を消耗する。腕時計で現在時刻を確認するが、まだ午後6時である。
少し早いが、あそこの店で夕食にするか……
あたかもオアシスを求める旅人のごとき動きで、早船はとあるファミリーレストランに入るのであった。
適度に空調の効いた店内は早船に癒しをもたらす。店員に案内され席に着いた彼は早速、メモ帳を取りだし今日の活動記録を書き込み始めた。
(俺たちの拠点が第10学区の北側。土地が安く、研究機関が雑多に存在するが故に、財団の施設もその内の1つとして認識させられる。まさに『木を隠すには森の中』だな。治安も悪いらしいから踏み込もうとする奴らも少ないだろう。そして此処が隣の第7学区。学生が多く居住する地域で……)
学園都市の地形はは円形である。財団の意向としては、まず南の第10学区にエリアを築き、先行して運営している財団フロント企業、サイトを順次北側へと展開して行くとのことだ。ちなみにエリアとサイトの違いだが、エリアが『知られてはいけない秘密の場所』であるのに対し、サイトは『表の顔はクレープ屋、しかし裏では……』と言った感じに捉えて貰って構わない。サイトの数が多ければ多いほど、表の仕事での利益を財団に廻すことができる。今は日本支部から送られる支援金で活動しているが、今後は学園都市内でやりくりをしていく必要がある。
数分ほど集中して情報を纏め終えた早船の耳に随分と賑やかな声が届く。声の発生元を見ると、学生にしては派手な服を着た集団が酒盛りをしているようだった。見たところ未成年者の様だが、誰も咎める人が存在しないところを見るに、此処のファミレスにおける暗黙の了解と化しているのだろう。
店員も......特にアルバイトの女の子たちは特に、彼らとはお近づきになりたくは無いようだ。早船は『なんか治安悪そうな連中がいるなぁ』程度の感想を抱きつつ料理のメニューを捲る。あちら側と比べて割高のような気もするが、恐らく経費で落ちるだろう。さて、選ぶのは王道のハンバーグか、それとも無難にパスタ系か…?
「ん!?」
と、メニューの中に非常に、気になる料理名を見つける。
それは只の客であるならば然して気にならない一品。しかし我々、特にSCiPに携わる職員から見ると恐怖の逸品。
“
後のエージェントによるインタビューで語った他の客曰く、彼の動きは素早かったと言う。店内に響き渡る程の音を立てながらメニューを閉じ(風圧により彼の前のテーブルに座っていた他の客の耳が[修正済み]となった)、すぐさま携帯電話を取り出し、一切の打ち間違えなくアドレス帳から支部へ電話をかける。相手に繋がるまでの間、何事かと駆け寄ってきたウエイトレスさんに一言
「取り敢えず、ドリンクバー1つ、お願いします。」
勿論、笑顔は忘れない。財団とは、サービス業である。
「……どうもお疲れ様です、早船です。……SCP-254-JPの収容違反と思わしき事案が発生しましたのて報告します。……ええ、学園都市内です。……何故って、そんなの知りませんよ。とにかく至急、……だから、メニュー表記の『オヤジ』は片仮名ですって!……機動部隊の派遣をお願いします。場所は……」
世界の危機は救われた。
しばしの賢者モードを堪能しつつ、飲み物をすする早船は、あと20分もすれば機動部隊がここに乗り込み、あることないことをでっち上げで客や従業員を追い出すことだろう。おそらくは『カバーストーリー:抜き打ち食品管理検査』で済ませるのだろうと早船は予想する。
勝手に騒いだ迷惑料としてハンバーグとパスタを両方頼み、機動部隊が到着する前に胃袋に詰め込んでいた早船であるが、先程まで騒いでいた不良そうな連中が制服を着た女の子に絡んでいることに気づく。……一応は世界平和に命を捧げる組織の一員、奴等に声を掛けるか悩んでいたときだった。
「ごめん、待たせちゃったか?......それじゃ、行こうか!」
突如現れたウニ人間……でなはく、ウニの様なツンツンした髪の毛が特徴的な男子が、彼女を庇うかのように不良たちの間に割り込み、救出を図る。知り合いを装い、穏便に事態を解決させる魂胆だったのだろう。しかし不良たちもそんな芝居に騙される程残念な頭をしているわけではない。
……少女救出作戦は失敗し、少年は逃走。不良たちは彼の後を追い、早船は食後のコーヒーを一杯堪能した。めでたく事件は終わりを迎えたのだ。
「そういえばあいつ、……お勘定済ませたか?」
時刻は夜8時、辺りも暗くなり、学生たちは既に下校している。学園都市では下校時間が定められており、一定の時刻以降の外出を禁止されている。早船は研究者として学園都市に登録されている為、完全下校時刻を過ぎてもお咎めなしなのだが、学生の中にもルールに縛られる事を是とせず、ゴーイングマイウェイを貫く若人(不良)が多く存在するらしい。
……結局食事をしたファミリーレストランは食品の品質調査(という名目のSCiP収容)の為臨時休業となり、SCP254-JPの犠牲者を未然に防ぐことが出来た。機動部隊の乱入直前に完食した早船は突如現れた不審者連中に慌てる店員さんの中から一人を呼び出し、お勘定を済ませる。尚、今朝に他の職員と顔合わせは済ませている為、彼らとはアイコンタクトのみで余計な介入はしない。
帰宅(トカゲ野郎から学生寮の地図を渡され、『お前さんの部屋ここな』と言われた。黒焼も辞さない)途中コンビニに入り、適当に飲み物を購入しながら夜の学園都市を歩く。
(いや、しかし残念だ。もし仮にあの少年がウニ人間であれば、餅月さんに紹介したのに。新たな友好関係を築けたかもしれない。)
そんな冗談を考えていた帰り道の途中だった。
この出会いは偶然か、それとも運命か、鉄橋にて例の2人……ウニ人間と不良に絡まれたいた少女の姿を見かけた。
言い争いをしている様だが…...知り合いだったのだろうか。先程の彼女は『またお前かよ』といった顔をしていたような気がする。
「……ん?」
良く見ると女の子の周りに光が生じている。継続的にではなく、断続的に、しかし確かな輝きをもってその身に纏わせているものは一体何だろうか。早船がその正体を『電気』であると理解したのは、その数秒後である。
改めて早船は思い知ったのだ。ここは学園都市、科学と超能力を司る研究機関であることを。この内部の学生には特別な力を持ち合わせていることを。
その日、早船は初めて『超能力』を目撃した。
SCP-254-JP
頑固オヤジのバリカタラーメン
namikaze73氏
tale:最高のラーメンを求めて
aka_sabi氏