▶つづきからはじめる   作:水代

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 ピチューが何を考えてそんなことをしたのか、未だに分からないが。

 それからピチューとは十年以上の付き合いとなった。

 アニマルセラピーというのが前世でもあったが、生物との触れ合いは死への恐怖に縛られていた自分の心を少しずつではあるが解きほぐしていった。

 助けられなかった彼の親の代わりに彼と共にあること、それこそがあのピカチュウに対する供養にもなるだろうか、そんな考えも無かったわけでは無いが。

 

 そうして生きる余裕というものを取り戻してくると、トレーナーになりたい、そう願ったのはこのポケモンという世界において酷く自然な成り行きだった。

 前世におけるゲーム知識というのはこの世界でも同じ法則で成り立っているらしく有用であった。

 とは言え、システム的に数値表記されたゲームと違い、数字表記の無いこの世界においてステータスを確認するということができないのが難点ではあったが。

 

 だがゲーム時代のアドバンテージは確かに有利となってピチューを強化していった。

 野生のポケモンと戦ったこともあるが、格上相手だろうと問答無用で倒していくピチューの強さは確かな物であった。

 

 そうなると欲というものが出てくる。

 

 トレーナーというものに憧れる子供同士でポケモンバトルをすることもあったが、ピチューに勝てるポケモンは居ない。

 やがてピチューはピカチュウとなり、親に強請って入手してもらった『かみなりのいし』でライチュウとなった。

 そうなれば大人相手でも勝てるようになる。

 特に種族値の知識は明確なほどに有利不利を分けてくれる。

 そもそもトレーナーとして本格的に取り組んでいなければタイプ相性すら曖昧な場合も多いのが大半、不利な相手だろうと積み上げたレベルと磨き抜いた技の前には敵は居なかった。

 

 チャンピオン相手だろうと勝てる自信があった。

 

 カントーのチャンピオンワタルは最強のドラゴン使いと言われているが実際のところ弱点だらけでありやっていることはただの力押し、積み上げた戦術と育成された強力なポケモンがいれば勝てる自信はあった。

 とは言え正式にトレーナーとなるにはポケモン保有資格を得られる十歳になるまで待たなければならない。

 

 その日が待ち遠しいと思いながらもそれまでにもっと強くなることを目標とした。

 

 

 * * *

 

 

 数年経って、十歳になる。

 ポケモン保有資格は十歳の子供でも取れるような簡単な講習やペーパーテストであり、半日で終わらせてその日の内に家を飛び出した。

 この世界では十歳はすでに成人扱いであり、成人した子供が家を出てトレーナーとなるのはよくあることらしいので両親からの反対も特になかった。

 

 チャンピオンになる、最初は曖昧だった目的はそんな目標となり、やがて夢となった。

 

 地方最強のトレーナー、そんな地位に立った自分を夢見て旅立つ。

 トキワシティのジムへと最初に向かう。

 最初のジムだけあって相応に難易度は低く、ライチュウが無双して終わる。

 ジムリーダーであるサカキは強かったが、けれどバッジ未所持の相手に本気を出すわけにもいかず初心者用のポケモンを蹂躙されて終わった。

 何か言いたげな表情ではあったが、やがて嘆息してジムバッジを渡すサカキの姿に首を傾げる。

 

 ―――そのままではダメだ、いずれ勝てなくなるぞ。

 

 去り際に言われた言葉が少しだけ気になった。

 

 

 トキワの森を抜けてニビシティへ向かう。道中でトレーナーを蹂躙し、所持金を巻き上げながらニビジムへと直行する。

 ポケモンのレベルが表記されないのであくまで体感だがレベル40を超えるライチュウが二つ目のジムごときに苦戦するはずなく、また弱点タイプへの対策も怠っていなかったので楽々と二つ目のジムも突破する。

 そうしてオツキミヤマへと向かうが特に道中何も起きないままハナダシティへ。

 よく考えればサカキがトキワジムにいるのだからまだロケット団が本格的に動いているわけ無いのだが、初代のイメージを引きずっていただけにオツキミヤマで何かあるのではないかと無駄に身構えてしまっていた。

 まあ何事も無くハナダジムも蹂躙し、余計な寄り道をせずそのままクチバへ。

 

 クチバジムへと行く前にディグダのあなへ行き、ダグトリオを捕獲する。

 カントー地方では捕まえることのできるポケモンの中でもダグトリオは非常に優秀だ。

 育成もかねてクチバジムでは積極的に使用していく。

 そうして最終的にはライチュウ無双でクチバジムも終え、さらに次の街へ。

 

 道中のトレーナーをボコりつつ、ヤマブキシティへと向かう。

 ロケット団に封鎖されていないため普通に向かい、ヤマブキシティの付近でデルビルを捕獲する。

 初代だといなかったのだが、第二世代ではこの辺りで捕獲したのを思い出したのだが、案外いた。

 『あく』タイプの概念はすでにあるらしくただし『フェアリー』タイプという概念はまだないらしい、道理でワタルがまだチャンピオンでいられるはずである。

 デルビルを育成しながらヤマブキジムを攻略する。

 多少苦戦はしたが、デルビルがヘルガーに進化したことで速攻アタッカーが増えてバッジを獲得する。

 シルフカンパニーはどうやら元気に営業中らしく、普通に人で賑わっていた。

 街中にロケット団でもいるかと思ったが、今はまだいないようだった。

 今が原作からしてどのくらい前なのか分からないが、ジムリーダーの面子を見る限りは近い未来の話なのだろうとは予想している。

 

 まあ最終的に原作主人公がどうにかしてくれるだろうが、ロケット団に絡まれた時に撃退できるだけの力は欲しいのでさらに旅を急ぐ。

 そうしてやってきたのがタマムシシティだ。

 とは言えヘルガーがいるのに『くさ』タイプのジムで苦戦するはずも無く、さくっと攻略する。

 

「そのままでは近い将来勝て無くなりますよ」

 

 ジムリーダーのエリカにそんなことを言われたが、その時はレベリングに励むだけである。

 そのままタマムシデパートでわざマシンなど必要なものを買い込んでいく。

 旅の途中で寄った街で大会など開かれていたら参加して賞金をかっさらっているので金ならあった。

 街で自転車を買っておく。現実に100万などするはずも無いので普通に買える。

 サイクリングロードのトレーナーを片っ端から倒しながらガンガンレベルを上げて行く。

 そうしてセキチクシティへとたどり着くと真っ先に向かうのはサファリゾーンである。

 一時間制限でポケモン捕まえ放題だが、地上は完全に無視して真っ先に水辺で釣りを始める。

 タマムシデパートで『すごいつりざお』は買ってあるのでひたすらキャッチ&リリースを繰り返し、目当てのポケモンを探す。

 一匹目はコイキングだったのですぐに出た。取り合えず捕獲難易度は非常に低いのでさくっと捕まえてボックスに転送しておく。

 もう一匹は中々出ない。一時間の制限時間があっと言う間に過ぎ、再入場。

 再び釣りを繰り返しながら二回目もダメかと思ったらようやく釣り上げる。

 

 ミニリュウである。

 

 初代において唯一の『ドラゴン』タイプを持つ。

 最終的には全ての能力値が高くなり、バランスも良い。

 ゲームだと特性は『ふしぎなうろこ』で厳選されていたが、状態異常が極めて現実的かつ凶悪なこの世界では『だっぴ』の場合も十分な効力を持つので実際どちらでも構わない。

 捕獲難易度は高いが、なんとか捕獲する。残り時間は少ないが、他にも何かいたかと考えながら歩き。

 

 そうして出会ったのはストライクだった。

 

 当然さくっと捕まえる。

 そしてデパートで買った『メタルコート』を持たせ適当に交換を済ませればハッサムの誕生である。

 通信交換施設はポケモンセンターで普通に使える。

 交換によって刺激を受け進化するポケモンもいるので施設の係員に言えば普通に交換進化をしてから返してもらえる。

 

 これで六匹。

 

 最終的な進化を考えればライチュウ、ダグトリオ、ヘルガー、ギャラドス、カイリュー、ハッサムと中々良いポケモンが揃ったと自負する。

 取り合えずまだ進化できるポケモンはさっさと進化できるようにしながら優先的にハッサムのレベルを上げてセキチクジムへと向かう。

 とは言え『どく』タイプ専門のこのジムでそれを無効できる『はがね』タイプのハッサムがいる上に『どく』の弱点である『じめん』タイプのダグトリオ、さらに『どく』タイプ持ちに多い『むし』ポケモンにヘルガーとタイプで完全に上回っているので苦戦も無くバッジを獲得。

 

 そうして七つ目のバッジを手に入れると最後の一つのあるグレンタウンへ向かうためにコイキングを育てる。

 コイキングは戦闘能力が低いので苦労はするがギャラドスへ進化すると同時に一転して凶悪な戦闘能力を有するようになる。

 とは言え進化したてだと使える技が『たいあたり』か『かみつく』の二択になるのでわざマシンで補強してやる。

 気性の荒さは戦闘意欲の表れだ、群がる敵を薙ぎ倒しながらギャラドスがぐんぐんと強くなる横でミニリュウの育成も平行して行う。

 ミニリュウはゲームでも必要な経験値の多い育成しづらいポケモンではあったが、レベルが上がるごとにその戦闘能力はぐんぐんと向上していく。この辺りはさすが『ドラゴン』というべきか。

 そうしてハクリューに進化するころには大半のポケモンが相手にならなくなっていた。

 とは言え、ここからカイリューまでが長いため気長にやることにする。

 

 ギャラドスが良い具合に仕上がってきたのでグレンタウンへと向かう。

 ゲームでは『なみのり』のひでんマシンが無ければ行けなかったが、じゃあ海に居るトレーナー全員それ持ってるのかよと言われれば別にそんなわけなく、ギャラドスの背に乗ってのんびりと行けば普通に渡れる。

 途中でふたごじまが見えたので寄ってみたい気もしたが、ゲーム時代から迷路染みた内部で迷子になる気がしたので止めた。

 もしやるならばバッジを全部集めてポケモンリーグを制覇してからで良いだろう。

 そもそもふたごじまの伝説フリーザーは中々に使いづらい。

 強いのは事実だが、『こおり』タイプという弱点の多いタイプなのもそうだし、さらにそこに『ひこう』タイプが入っているせいで『いわ』で即死する。

 『いわ』は攻撃タイプとしてはメジャーなタイプなので使うならばそれに合わせたパーティを組む必要がある。

 そもそも捕まえれる気がしない。何せ伝説のポケモンである。

 ゲームだと普通に最奥で待っていたが現実にはそこら中飛びまくっている。

 時々だが目撃例があるのだ、つまりあそこは住処、もしくは止り木であって普段は空の上と言ったところか。

 

 そんなことよりグレンタウンである。

 活火山の麓に街があるとかいう最高にクレイジーな街である。

 グレンジムはそんなグレンタウンにあるポケモンジムだ。

 尚近い未来においてグレン火山が噴火してふたごじまにジムを移すが今はこっちにある。

 

 最後のバッジということもあり、相手の質も高い。

 ジムリーダーも本気モードということだろう、今までは出なかった『ひんし』も出された。

 とは言えハッサム以外はタイプ相性的には悪く無いのだ。

 特にギャラドスやダグトリオが激しく活躍し、最後のジムバッジをゲット。

 

 これで八つ。

 

 ようやくポケモンリーグの挑戦権を得たのだ。

 

 




サブタイで分かるだろ。あと二話で終わりだよ。一発ネタだしな。

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