トリニティセブン-世紀王と7人の魔書使い-   作:雨森

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お久しぶりです。2,3年ぶりの更新になります。
転職や転職先の仕事に慣れず精神的に参っていることもあり、なかなか執筆が行えませんでした。
今も精神的な疲れが身体に表れてきてはいますが、気分転換もかねて少しずつ執筆をしながら更新できたらと思います。

お気に入りにして頂いている読者の皆様にはこれからもお待たせしてしまうことが多いと思いますが、よろしくお願いします。




第2巻
世紀王とメイガスモード


「アラタ!!」

 

 アラタの名をリリスが叫ぶ。彼女の視線の先はアキオの蹴りで校舎の壁が崩れた光景だった。

 

「ありがとうございます。アキオ」

 

 ミラの言葉にアキオは複雑な表情をしながら「…これで終わりか」と呟いていた。

 

「…彼の魔力が消えたわ」

 

 アリンはアラタの溢れたは膨大な魔力を吹き飛ばしたアキオの魔力を纏わせた蹴りの威力に驚愕していた。

 

「そ…、そんな…」

 

 リリスはその場で座り込んでしまう。

 

「さて…仕事は片付きました。帰りましょうかアキオ」

 

 ミラは保健室を後にしようとする。…が止めたはずの崩壊現象がまた起き始めた。

 

「なっ…!?」

 

 リリスは驚いて空を見上げる。そこには黒い太陽が浮かんでいた。

 

「崩壊現象が終わらない!?」

 

「どういうことだよ大将!!アイツが崩壊現象の基点じゃないのか!?」

 

「間違いないハズなのですが…っ」

 

 ミラも崩壊現象が起きたことに驚愕していた。同時に崩壊現象が続く原因にも考えがついていた。

 

「ですが考えられる最もシンプルな答えは一つ」

 

「まさか…。アラタ!!」

 

 

 

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「…ここは?」

 

 アラタは目を覚まし、周囲を見回す。そこは足元に水面が広がる周囲が薄暗い空間だった。

 

「たしか、アキオさんの魔術で吹き飛ばされたはずじゃあ…。それに右手にあった魔導書もなくなってる…。一体何が?」アラタは直前の出来事を思い出しながら現状を把握する。

 

 するとヴァイオリンの音色が流れてきた。

 

「ヴァイオリンの音?こんな何もない空間で?」

 

 アラタは音の流れる方向へ歩き出す、その先には扉があった。目の前の扉を開けるか否か躊躇うが意を決してドアノブに手をかける。

 

 扉を開けるとそこにはヴァイオリンを弾いている少女がいた。制服を着ていることから学園の生徒だということは理解できる。少女はアラタの存在に気づき話しかけてきた。

 

「ようこそユイの部屋へ、アラタお兄さん」

 

 少女の「お兄さん」という呼びかけにアラタは違和感を感じた。容姿からしては同い年とは思うが···。

 

「お兄さん…で合ってるのかな?年上っぽかったから…」

 

 アラタは少女の言葉に更に違和感を感じつつも話しかける。

 

「ユイさん…の世界?天国ではなさそうだけど」

 

「お兄さんは必殺のアキオちゃんキック‼で木っ端みじんになりそうだったからね」

 

「木っ端微塵かぁ…」

 

「ギリギリのところで引っ張りこんだんだけど、おかげで外もここも大変みたい」

 

 ユイはそう言いながらタンスに手を掛けて引き出す。タンスの中には崩壊現象が続いているビブリア学園の校舎が映っていた。

 

「…この現象を僕が?」

 

「そうだよ。このままじゃ学園崩壊だね」

 

「恐ろしいことをそんなさらりと…」

 

「だってお兄さんがやったんだよ?]

 

「…確かにそうですけど、僕の意思で起こした訳じゃない!!」

 

 

 ユイの言葉を受け止めながらもアラタは否定する。

 

「そうだね。アリンちゃんに無理やりだもんね」とユイはクスクスと笑っていた。

 

「だったら僕を現実世界に戻してくれませんか」

 

「帰ってアキオちゃんにキックを食らうの?」

 

「それは…」

 

「それに…。崩壊現象を止める方法を知っているの?」

 

 ユイは真剣な表情でアラタに問う。 

 

「…」

 

 アラタはユイの言葉に何も言い返せなかった。崩壊現象を止める術をアラタは知らない。止める方法につながるであろう術に思い当たる部分はあるが、更に崩壊現象が大きくなる危険もあるので決断ができなかった。

 

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 その間にも学園の崩壊はどんどん広がっていた。

 

「なっ…、なんだ…。体が光りだして」

 

「うっ…、うわああああ!?」

 

 生徒の何人かが黒い粒子になり黒い太陽に吸い込まれていく。

 

「ひゃあぁぁぁぁ!?みんなー!!」

 

「魔力の弱い人からガンガン吸い込まれてるみたいっスね」

 

 驚くセリナにレヴィは冷静に状況を分析していた。

 

「…落ち着いてますね、レヴィさん」

 

「ふっ…。それほどでも…」

 

 だが、よく見るとレヴィの体は震えていた。

 

「超怖がってます…?」

 

 セリナはレヴィの意外な一面を見た気がした。

 

 

 一方、リリス達は周囲に結界を作り崩壊を遅らせることに精一杯だった。

 

「くっ…このままじゃ…。早くなんとかしないと…」

 

「いまいましい魔王候補めっ…‼」

 

「しかしこりゃ、ホントにヤバいかもなー」

 

 魔力も体力も消耗してしまうため、危機的状況であることに変わりはなかった。

 

 

 

 アラタは自身の無力を感じながらも口を開く。

 

「止め方は知らない…。それでも…。あれが僕の仕業だとしたら止めなきゃいけないでしょう‼」

 

 ユイはアラタの言葉に一瞬驚くも、笑顔になる。 

 

「…ふぅん。なるほど…。お兄さんは熱血だったんだね」

 

「…違いますよ。もうこれ以上理不尽で命や存在を失う人を見たくないだけです」

 

 アラタの決意を感じ取ったのかユイは一つの提案をする。

 

「じゃあコントロールすることを考えなきゃね」

 

「そんなことが出来るんですか!?」

 

「うん」と笑顔でうなずくユイ。

 

「できるよ。お兄さん自身が自分の『テーマ』を見つけて、ちゃんと魔力であの力を制御するの」

 

 たしかに、リリスが授業や質問の時に魔導のテーマについて語っていた。

 

「浅見先生も魔導にはテーマが重要って言ってましたけど」

 

「そうっ、魔導を目指すなら研究テーマが必要。全てはそこから始まりそこに帰結するものなの」

 

 自信満々にユイは語る。

 

「傲慢《スペルビア》」「憤怒《イラ》」「怠惰《アケディア》」「嫉妬《インウィディア》」

「強欲《アワリティア》」「暴食《グラ》」「色欲《ルクスリア》」

 

 ユイが言葉にした単語はキリスト教の教えにある七つの罪原である七つの大罪。

 

「この七つの大罪を書庫《アーカイブ》として、その中からそれにちなんだテーマを探す。それがお兄さんがあれをコントロールする一番の近道かな?」

 

「感情的なものの研究とはいえ…。少し複雑そうなかんじですね…」

 

「でも、人って色々な感情を抱えるものでしょ?人間を研究するようなものだから少しは複雑になるよ」

 

「そう言われるとたしかに…」

 

 ユイの言葉に納得しつつ、座り込んで自信に当てはまるテーマを考えるアラタ。

 

「七つの大罪…。そしてその下にあるテーマか…」

 

 一人の少女が浮かんだ神無月アリン。アラタが崩壊現象を起こす引き金となった人物であるが…。

 

「憤怒《イラ》のアーカイブって…」

 

「ああ…。アリンちゃんのテーマがある書庫《アーカイブ》だね。彼女のテーマは崩壊《ルイーナ》だったかな」

 

「崩壊《ルイーナ》か…」

 

「うんっ。崩壊《ルイーナ》は憤怒《イラ》の書庫《アーカイブ》に属しているテーマだよ」

 

 ユイの言葉にアラタは目を閉じる

 

「崩壊か…」

 

 考えがまとまったのか目を開き。決意を固めた表情をする。

 

「魔導のヒントは掴んだような気がします。あの人のアレが崩壊なら僕は正反対な気がするので」

 

「そう。それなら良かった」

 

 アラタは立ち上がりユイに礼を言う。

 

「ありがとうございます。えっと…」

 

「ユイだよ、倉田ユイ。もう帰るの?」

 

「早くアレを何とかしないとなんで」

 

そう言いながらアラタは視線を上に向ける。そこには黒い太陽が部屋を侵食してきていた。

 

「早くしないとこの部屋も危険なんですよね?」

 

「まあね。もう行けそう?」

 

「あれを抑えて来るんで現実世界に戻してください」

 

「わかった。じゃあね、お兄さん。あと、ユイは年下だから敬語じゃなくていいよ」

 

「えっ!?分かりまし…じゃなくて、ありがとうユイさん」

 

 ユイは微笑みながらアラタを送り出した。

 

 

 

 現実世界では崩壊が更に強まり、黒い太陽は大きくなっていた。

 

「いよいよこのままだとジリ貧ですね…」

 

 リリスは現状の打開策が浮かぶ諦めかけていた。

 

「アキオ。いっそこの辺りの空間ごと消し飛ばしてしまいましょう」

 

「はぁ!?」

 

 ミラの提案にアキオは驚愕の声をだすが、他に方法もない。渋々といった表情でアキオは脚に魔力を纏わせる。

 

「ったく…、無茶いうよな大将は…ん?」

 

 ピシっとアキオの足元にヒビがはいる。

 

 ドゴッ‼という音と同時に何者かの腕が出てきた。

 

「うわぁ⁉」

 

「えっ…」

 

「なっ!」

 

 割れた床から出てきたの消し飛ばされたはずのアラタだった。

 

「あっ…アラタ‼生きていたのですか⁉」

 

「えっと…。ヴァイオリンを弾いていた女の子に助けられて」

 

「ヴァイオリンを弾いた…」

 

「多分…ユイ…。あの子の夢の世界ね」

 

「アキオ…。どうやら貴方は失敗していたようですね」

 

 アキオにジト目を向けるミラ。

 

「いや、ユイが庇うなんて思わなかったしっ!!」

 

「ではもう一度。今度は確実に仕留めてください」

 

「…マジかよ大将」

 

 ミラの指示に躊躇うアキオ。そんな中アラタは声をかける。

 

「あの…。この崩壊現象なんですけど…、基点になった僕がコントロールできれば問題ないですよね?」

 

 アラタの発言にミラは「何を言い出すかと思えば…」と呆れていた。

 リリスは信じられないといった顔で「そうですよアラタ‼崩壊現象なんてコントロールできるハズありません‼それに貴方は魔導を学び始めたばかりでしょう⁉リスクが高すぎます‼」と危険性を説く。

 

「でも『魔導はすべての可能性を否定しない』んですよね?だったらやってみなきゃ分からないでしょう」

 

「詭弁です。私の正義《ユースティティア》はそんな言葉では揺らぎません」

 

 アラタの言葉をミラは聞き入れない。だが、アラタは言葉を続ける。

 

「なら、もしコントロールできなかったら容赦なく消してもらっても構いません」

 

「そんなこと言われなくても今すぐに…」とミラがアキオに指示を出そうとする。

 

 だが、アキオは「まあいいじゃないか、ミラ」と笑みを浮かべていた。アキオの言葉にミラは驚きつつもため息を吐く。

 

「わかりました。仕方ありません、いいでしょう。ただ…少しでも失敗したら本当に容赦なく消滅させます」とアラタを睨む。

 

 アラタは無言で頷き、魔導書に問いかける。

 

「…僕のテーマを言うよ」

 

「なんだぁ…。やっと決まったのか」待ちくたびれた様な声を出すアスティルの写本。

 

「うん。これからまた自分の運命と向き合うことにもなるし、苦労を掛けるかもしれない」

 

「ははっ!!何言ってんだ。お前があたしのマスターになった時に分かっていたことさ‼…さあ、言えよアラタ」

 

「…僕のテーマは創造だ」

 

 すると魔導書に掛けられていた鎖がはずれ、光をはなつ。

 

「確かにお前の存在、本質、魂の意味。それは真に創造《パルタム》だマスター‼そしてそれは憤怒《イラ》の書庫《アーカイブ》にある‼」

 

「神無月さんのテーマがヒントになったんだ」アラタの言葉にアリンは驚いた表情をする。

 

「今ここにアスティルの写本は憤怒《イラ》の書庫《アーカイブ》に属する創造《パルタム》をテーマにするマスターと契約することを誓うぜ‼さあ言えアラタ契約だ‼」

 

 アスティルの写本の言葉にアラタは答える。また運命向き合うと決意を言葉を。

 

「憤怒《イラ》の書庫《アーカイブ》に接続…。テーマを実行する‼」

 

「そんなっ…」

 

 アラタを包みこむ魔力に驚きの声をだすリリス。

 

 アラタの服装が変わっていく。黒を基調としたコートに袖には銀色に一本線がはしり、七分丈の位置に黒いバンドがある。ズボンは黒一色になっていた。

 

「アラタのメイガスモード…。すごい魔力」

 

 アラタから溢れる魔力に驚きを隠せないリリス達。

 

「周囲の空間を崩壊前に創造して戻す‼」

 

「あいよマスター‼」

 

 魔力を纏った右手をアラタは振り下ろす。すると崩壊していた壁やものが元に戻り始めた。それは崩壊していた校舎も同様だった。周囲に立ち込めていた黒い粒子と空に浮かんでいた黒い太陽も消えていた。

 

「まさか…。本当に…」

 

 リリスは目の前の減少が信じられなかった。1週間前までは魔導士の存在を知らなかった少年がメイガスモードとなり、崩壊現象を止めたのだ。アリンも無表情であるが「これはビックリ。空間を創造して元に戻すなんて」とアラタの力に驚いていた。

 

 ミラは黙り込みながらもアラタを睨みつけており、アキオはこうなることを予想していたのか満足げな表情をしていた。

 

 大量の魔力を使ったのかメイガスモードは長く持たず、制服の姿に戻るとアラタは片膝をつく。リリスは「大丈夫ですかアラタ⁉」と駆け寄る。駆け寄るリリスに「な、何とかなりましたね」と返すアラタ。

 

 二人のやり取りを見ていたミラはドアの手を掛けてその場を立ち去ろうとする。

 

「あの…。見逃してくれるってことは認めてくれたということですか?」アラタはミラに問いかける。

 

 ミラはアラタの言葉に振り返ると「まぁ、崩壊現象も止まっているわけですし。不本意ながら退くしかありません」

 

 ミラに言葉に安心するアラタだがミラは鋭い目つきで言葉を紡ぐ。

 

「ただ、次こんなことがあったら許しませんから」そういって保健室から出て行った。そんなミラ「待てよ大将‼」と追いかけるアキオ。

 

 安心したのかアラタそのまま床に倒れてしまう。リリスの声が聞こえるがその声も遠のいてアラタは目を閉じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渡り廊下を歩くミラとアキオ。ミラは立ち止まって振り返るとアキオに話し掛ける。

 

「…アキオ。彼を、春日アラタを知っているようでしたが?」

 

「知ってるよ…。魔導士として再開するとは思わなかったけどな」アキオは悲しそうな目で答える。

 

「彼との間に何があったかは聞きません」

 

「そうしてもらえると助かる…。そう簡単に話せることじゃないからな」

 

「…学園長に任務の報告に行きましょう」

 

 そういうとミラとアキオは歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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