プロゲーマーやってたら妹がアイドルになっていた件について。 作:河竹
「まじかー。いや、なんつうの。こう、半端ねーな」
あまりの衝撃にボキャブラリー能力が崩壊してしまう。
まあ、確かに昔からあいつは近所では可愛くて有名だった。
一緒に歩いてるとよく近所のおばちゃん達に飴をもらったものだ。殆ど凛のおかげだけども。
それはともかく、知ってしまった以上何も無しというわけにもいかないか。
時刻は午後10時過ぎ。流石に仕事も終わっているだろう。
とりあえず凛へ電話をすることにした。
待つこと数コール。
「お兄ちゃん?どうしたの、急に?電話なんてしばらくぶりだね」
「あー、久しぶり。今大丈夫だったか?」
「うん、丁度用事が終わったとこ。どうしたの?」
用事、アイドル関係の仕事かな。
今はもうすでに10時過ぎだというのに大変だな、なんて他人事のように思う。
「いや、ほら、一応おめでとうって言っとこうかなって」
「おめでとうって、あぁ!シンデレラガールズの。知ってたんだ」
「ま、つっても知ったの今日なんだけどな。でもまじでびびったぞ。まさか凛がアイドル、それも選挙で一位になるほどの人気アイドルになるなんてな」
「まあ、ちょっと前までの私じゃああり得ないもんね」
「ほんとほんと、凛、めっちゃ無愛想だしな」
「うるさい切るよ?」
電話越しに怒気を感じる。我が妹ながらさすがの迫力である。
「すまんすまん。んでさ、なんかお祝いとかしたいから今度帰るわ。いつとか家いる?」
「ん、ちょっとまってて」
ガサゴソとバッグを漁る音が聞こえる。流石アイドル。スケジュール管理は徹底してるんだろうな。
「んーと、明後日の夜は何も仕事ないよ」
「すまん、先に言っとけばよかったな。今週はちょっと用事で外せねーんだわ」
「あ、そうなんだ。私も今週は総選挙の後だから色々と忙しいからむしろ都合がいいよ。来週は殆どオフにしてもらってるからそっちにしない?」
まあ、流石にこんだけ大きなイベントの後だもんな。
「なら、来週どっかご飯でも行くか?好きなとこ連れてってやるよ」
「え、でもお兄ちゃんお金とか大丈夫なの?」
「あー、そういえば凛には言ってなかったっけな。俺、プロゲーマーになったんだよ」
受話器越しにぽかんとした顔が眼に浮かぶ。
数秒の静寂の後、耳に強烈な振動が伝わる。
「ええええええええ!!!!!いつの間に!?」
「いや、そんな驚くことか?」
流石にそこまで驚かれたら兄として割とショックなんだが。つか未だに俺は無職だと思われてたのか?
「いやいや、だって急に家を飛び出して行ったと思ったらいつの間にかプロゲーマーになってたとか」
「そんなこと言ったらお前がアイドルになってた方が俺は信じられないんだが」
「まあ......それはそうだけど」
「一応そういうことだから、まあ、金のことは気にすんな。それにあんまり兄貴としての責務を果たせてなかったからな、偶に兄貴づらさせてくれよ」
子供の頃は買い物とかは一緒に行くけど、他では家の手伝いとかであんまり構ってやれなかったからな。
まあ、だから喧嘩したことないってのもあるかもな。
「んー、そういうことなら仕方なく奢られてあげる。感謝してね」
「なんだお前」
受話器越しにくつくつと笑う声が聞こえてくる。
まあ、なんだ。元気そうでよかった。
「んじゃ、また来週な。日程はまた後日絞ろうぜ。それじゃ」
「あっ、ちょっと待って」
通話を切ろうと操作する寸前でストップがかかる。
「一つお願いがあるんだけど」
「お願い?いいけど、何?」
「実はもう二人呼びたいんだけど、いい?」
二人?あー
「もしかしてユニットの子か?」
「うん、今回もすごいお世話になったし。それに、その......」
「その?」
「感謝の気持ち的な」
照れ臭そうにいう妹。おそらく電話越しでは顔をちょっと赤くして俯いていることだろう。
それにしても我が妹ながら殊勝な心掛けだ。兄としても素直に感心する。
まあ、奢るのは俺なんだけどな。
「いいぞ、つかその二人は予定は大丈夫なのか?」
「多分、来週はは二人ともオフだったと思う」
「おっけ、なら詳しいのはまた後日決めるか。明日早いからもう寝るわ、おやすみ」
「うん、おやすみ。ありがとね」
俺は通話を切り、明日の朝5時にアラームを仕掛けて布団に潜り込む。
妹があんだけ頑張ってんだ。次は兄である俺の番だな。
いつもより大会が楽しみになってきた。