プロゲーマーやってたら妹がアイドルになっていた件について。   作:河竹

3 / 8
口調が違ったら感想欄でご指摘くださればありがたいです


優勝できなかった件について。

 結果、俺は優勝することができなかった。

 ほんの一瞬の油断だった。

 最終戦、スコア的に俺と世界トップランカーのアメリカ人プロゲーマー、ジェイコフとの一騎打ちとなった。

 

 最後の決戦。俺とジェイコフは最後の二人まで残っていた。スコアは同点。どちらかが勝てば一位が決まるのである。

 

 建物の陰に隠れ、ジェイコフの位置を確認する。

 おそらくこの建物の陰にいて見えない、そして足音もしないということは草原に隠れている可能性が高い。

 

 俺は再び建物から顔を出し、周囲を確認した。

 

 その時だった。

 

 慢心だった。

 

 俺はゲーム内で最高の防具を身につけていた。

 

 だからだ。

 俺はあいつの武器を確認することもせず、呑気に顔を出してしまった。プロゲーマーとしてあるまじき行動をとってしまった。

 

 次の瞬間には俺のパソコンには2位と表示されていた。

 

「はは、嘘だろ?」

 

 現実が受け入れるのを拒む。

 

 負けた。負けてしまった。10億だぞ。一生遊んで暮らせる額を手に入れる千載一遇のチャンスをみすみす逃してしまった。

 

 張り詰めた糸が解けるように、俺は意識を失っていった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あれ?凛、どうしたの?」

 

 先程までスマホの画面とにらめっこしていた凛の顔が急に青ざめる。

 

「え、っと。ううん、なんでもない」

 

 嘘だ。現に凛の目は私の目と合わせないように宙をさまよっている。

 凛はスマホを隠すように後ろ手に持った。

 

「ごめん、加蓮。今日先上がっていい?」

 

「いいけど、本当に大丈夫?」

 

 凛は滅多に先に帰るなんて言わない真面目な子だ。それはこの数ヶ月間一緒にいた私でもわかる。

 そんな凛の今まで見たことのない落ち着きのない様子に、私はただ混乱した。

 

「ん?どうしたんだ凛?」

 

 すると休憩から帰ってきた奈緒が、焦った様子の凛へと声をかけた。

 これほどまでに奈緒を救世主だと思った日はこれまでにない。

 

「ちょっと急用を思い出して」

 

「んー、なんか訳ありっぽいな。わかった、私がプロデューサーに言っとくから」

 

 さっき奈緒の事、救世主って言ったよね。

 あれ、嘘。

 なんの役にも立たなかった。

 

「ごめん、ありがとうね奈緒。それじゃまたね」

 

 そう言うと、凛は手早く荷物をまとめ足早に練習スタジオを後にした。

 

「なぁ〜おぉ〜!」

 

「ひっ!なんだよ!」

 

「なんで帰すのよ!」

 

 抗議の意味を表すように奈緒に後ろから抱きつく。

 

「だってあれは流石に訳ありって感じだろ!?」

 

「そーだけどー。でも何があったか気にならない?」

 

「それは、気になるけど。でも、凛ならそういうのは後でちゃんと言ってくれるじゃん」

 

 その言葉に私は言葉を失った。

 

 かっこいい。そんなの凛のことを絶対的に信頼してないと言えないじゃん。なんか凛がちょっと羨ましい。

 

 そう思うと急激に練習に対する意欲が萎えてきた。

 

「はぁ、私も帰ろっかな」

 

「ええ!?ちょ、それは流石にプロデューサーに怒られるって!!」

 

 なんかもう居残り練習の気分じゃなくなっちゃったな〜。

 

「大丈夫、大丈夫。レッスンも今日は残ってないし〜。なら奈緒、あとはよろしくー」

 

「て、早!?ちょ、ちょ、待てってー!」

 

 私は手早く荷物をまとめると、スタジオを後にした。

 後ろで奈緒の叫び声が聞こるけど聞こえないフリをして足早に帰宅する。

 

 スタジオに入った時までは秋晴れって感じの気持ちいい天気だったのに、今の空には分厚い雲が立ち込めていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。