プロゲーマーやってたら妹がアイドルになっていた件について。   作:河竹

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妹が案外素直だった件について。

 大会終了後、決勝戦で意識を失った俺が次に目覚めたのは病室のベッドの上だった。

 

 帰国してから聞いた話だがあの後の会場はかなりのパニックに陥ったみたい。

 まあ、そらそうだわな。なんせゲームで倒されたと思ったらリアルでもノックアウトしてんだもんな。

 

 俺もまさか自分がショックのあまり気絶してしまうなんて思いもしなかったわ。

 

「うわっ、着信履歴すげーことになってんじゃん」

 

 体を起こし、ベッドの横のテーブルに置いてあったスマホの電源を入れると、すでに50を超える着信履歴が残っていた。

 

「つか我が妹の着信履歴が9割くらいなんだが。こえーよ」

 

 とりあえず俺は見なかったことにし、再びベッドの中に潜り込む。

 

 すると、夢の世界へと飛び立とうとしたタイミングで見計らったかのようにスマホの着信がなった。

 スマホの画面に表示されている『凛』の文字に頭が痛くなる。

 

「これ、絶対怒鳴られるやつだわ」

 

 思わずスマホの電源を切りたい衝動に駆られる。

 が、とりあえず無視したところでまた掛け直してくるのは確実なので、とりあえず先延ばしにすることなく電話に出ることにした。

 

「もしも「お兄ちゃん!?大丈夫!?」」

 

 案の定、俺が電話に出た途端に大声が響く。

 

「お、おう、どうした?」

 

「どうしたじゃないよ!大丈夫なの!?」

 

「あー、まあ、一応は」

 

「一応は!?」

 

「あ、いえ、確実に大丈夫です」

 

「本当に?はぁ、心配したんだよ?」

 

 電話越しに安堵の声が聞こえる。

 なんだ、案外素直じゃないか。

 もっとこう、「べ、別に心配したとかじゃないんだからね!」とか来るかと思っていたが。

 

「すまんな、心配かけたみたいで」

 

「ううん、でも大丈夫そうで安心した」

 

 どうやら本当に心配してくれてたみたいだな。

 明らかに先程より声に落ち着きが出てきた。

 というかなんか人から、しかも実の妹から心の底から心配されるのってなんだかむず痒いものがあるな。

 

「あ、その、残念だったね」

 

「あー、大会か?」

 

「うん、あと一歩って感じだったから」

 

「ま、あれは俺の油断が招いた結果だしな。それにまあ別に最初から優勝できるなんて思ってねーよ。寧ろよく2位に入れたなって感じだよ」

 

 確かに賞金の10億は惜しかったが、2位でも2億5000万ほど貰えるのである。それでもそれにそこにまだその他諸々のお金が入るからな。ま、その分引かれる方もあるんだけども。

 

「そっか。気持ち的にも大丈夫そうだね。あ、でも来週は大丈夫?」

 

「多分今日か明日には即退院って感じだろうから、いけると思うぞ」

 

「わかった。でもそんなに無理しないでよ、倒れられたら運ぶの大変だから」

 

「安心しろ、倒れてもお前にだけは頼まねーから」

 

「ねえ、それどういう意味か説明して?」

 

「あー、わり、そろそろ看護師呼ぶから電話切るわ。それじゃ」

 

「ちょっと待っ!」

 

 有無を言わさずに通話を終了させ、ついでに電源も切る。

 よし、これで一時の俺の身の安全は確保された。

 まあ、ほんの一時的なものだけどな。帰ってから怒鳴られるのが目に浮かぶ。

 

 俺はスマホを元の位置に戻し、とりあえず意識が戻ったことを伝えるべく、ナースコールで看護師を呼んだ。

 

 その後、いくつかの検査が終了し、当たり前だが特にこれといった異常が見つからなかったことから、精神的なストレスだろうということで、一応大事をとって翌日に退院することになった。

 

 退院した後、回復したことをチームの方に報告し、予想外の事態のせいで急遽キャンセルとなってしまったフライトとは別に、新たに取った飛行機のチケットで日本へと帰国した。

 

 帰ったらまずはスポンサーへの挨拶回りとかチームへの報告とかやんねーとな。

 俺はこれから待ち受ける多くの仕事に頭が痛くなる。

 

「ま、とりあえず家に帰りますか」

 

 帰国ロビーからタクシー乗り場へと移動し、明日からのスケジュールを確認していかに来週までに終わらせるかを考えながら俺はタクシーに乗った。

 

 タクシーに乗りながら、東京の夜の空はほとんど星は見えないが、それでも見えない星と同じくらい綺麗な夜景に俺は目を奪われた。

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