元英雄が紡ぐ物語   作:因幡の黒兎。

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豊饒の女主人の『男店員』

「ガぁ…アア゛アァアァ゛ァァアァア゛ァァア゛ァ!??!」

 

 

血まみれの手で頭を押さえて声を荒げる。辺りには襲ってきた盗賊達の無惨に引き千切られた骸が転がり、血と腐敗の異臭を放っていた。

 

 

?「ねぇ、貴方」

 

「………」

 

 

声がした方を見ると、薄い水色の髪に金の盾を右肩に着けている可憐な女神が立っていた。

 

折角の白く美しいキトンが飛び散った血で汚れてしまっていた。

 

 

「…お前、神だろ。何でこんな場所に居るんだ…」

 

?「私、天界から降りて来たのだけど、降りる場所を間違えてしまったのよ…」

 

「…ほんと、神様は良いよな。娯楽の為に地上(こんな場所)に来て、自由に遊ぶんだろ…」

 

?「私が降りてきた理由は、貴方よ。――くん」

 

「何を言っているんだ…?」

 

?「貴方の神様だった、大神からの伝言を伝えに来たのよ」

 

「ッ…」

 

?「『お前は悪くない。無理をさせて本当にすまなかった。そして、お前は自由に生きるべきだ』…ってね」

 

 

そんな事を言う訳が無い。俺のせいで死なせてしまったのに…。

 

 

?「『そして、お前に呪いを掛けてしまって本当にすまなかった。謝って許される事では無いと言う事はわかっている』」

 

 

呪い…あぁ、この身に起きている()()は呪いだったのか。でも、そんな事はどうでも良いんだ。

 

 

?「『これ以上は長くなる。だから最後に……儂もヘラもお前を、お前達の事を本当の孫のように思っておった。後悔しないように生きるのだ、――よ。去らばだ』…しっかり伝えたわよ。ゼウス、ヘラ…」

 

「ッ…!」

 

 

これが本当だと言う証拠は無い。だが、信じてしまう。

 

 

?「ねぇ、――くん」

 

「グスッ……っ……なんだ……」

 

?「お願いを聞いてくれないかしら?」

 

 

お前の、願い?

 

 

?「…私の…私の家族になってくれないかしら?」

 

「…俺なんかに……そんな資格は…」

 

?「ふふっ、貴方が良いの。こんな事を神が言うのもおかしな話だけど…私は、産まれて初めて他者を好きになったのよ? 一目見た時から貴方の事を…」

 

 

血など知らぬと頬に触れられる。暖かく柔らかな手が優しく頬を撫でられる。

 

それが、異様に心地良かった。

 

 

?「私のお願い、聞いてくれるかしら?」

 

「……先に言っとくが、俺にはもう【英雄(イロアス)】としての力は無いぞ?」

 

?「そんな事、どうでもいいわ。私が欲しいのは貴方なの」

 

「…ククッ…良いぜ? 叶えてやるよ、その願いをな。女神さまよぉ…!」

 

 

女神の前で膝を付き、差し出された手をとる。

 

 

「俺はこれから、()()って名乗るぜ?」

 

?「良い名前ね。どうしてかしら?」

 

「俺はライムが好きだからな。“イ”を抜いただけの安易な名だけど、良い名だろ?」

 

?「ふふっ…そうね。ラム」

 

「それで、お前は?」

 

?「私? ふふっ…私ね―――」

 

 

 

その日、俺の中に小さな種火が産まれた。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

『―ヵ―――ヲ――セ―』

 

 

 

 

 

 

そんな、ノイズ混じりの耳障りな幻聴が、強く聞こえるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

…はぁ。

 

 

ラム「…懐かしい夢を見たな…」

 

 

重たく感じる身体に鞭を打ち、上半身をゆっくりだが起こす。

 

窓から見えるのは、まだ霧掛かったオラリオの街。少し肌寒く感じる。

 

 

ラム「あ、それは裸だからか…」

 

 

寒いのは服着てなかったからだった…。

 

大きなベットの上には、俺以外に一糸纏わぬ姿の美少女が4人。

 

 

ラム「…ん?4人?」

 

 

一人、エルフの少女が足りない。

壁に掛けられた時計を見ると4時半を指していた。

 

 

ラム「あー、この時間は…」

 

 

どうせ汗をかく。シャワーは後で良いだろう。

 

薄いシャツと動きやすい半ズボンを履いて、静かに部屋を出た。

 

 

ラム「もう少し寝てて良いからな。昨日は無理させてごめん」

 

 

幸せそうに眠る彼女達を起こさぬようにと。

 

 

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

ラム「朝から頑張るな、リュー」

 

リュー「ラム。起きたのですね」

 

 

鮮やかな金の髪を揺らしながら、こちらを向いて微笑むエルフ。

 

 

ラム「おはよ。リュー」

 

リュー「はい、おはようございます。ラム」

 

 

軽く挨拶をして、ラムは木刀片手にリューに前に立つ。

 

 

ラム「遅刻してごめんな。と、言う事で…始めよっか?」

 

リュー「お願いします」

 

 

互いに先程のような微笑みでは無く、殺気染みた威圧を放ちながら木刀を構える。

 

 

リュー「はぁっ!」

 

ラム「疾ッ!」

 

 

ゴンッ、ガンッ、カンッ!

 

木刀がぶつかり合い、静かな朝を騒がしく変える。

 

 

リュー「そこッー!」

 

ラム「残念だが、それは駄目だよ」

 

 

わざと見せた隙。脇を開き、腹を晒した。

そこに反応してしまったリューは空かさず一撃入れようと木刀を振ったのだが、ラムは難なく受け止めた。

 

 

ラム「お前の剣速なら、普通の奴には今ので仕留めれたと思う。…だが、相手が格上だと反応されてすぐに反撃されちゃうよ?――こんな風にさッ!」

 

リュー「ッ!?」

 

 

木刀を飛ばされ、体勢を崩してしまった。

 

尻餅をつき、見上げると顔のすぐ横には木刀。余裕そうに笑顔を見せながら頬に木刀を添えるはラム。

 

 

リュー「……参りました…」

 

ラム「そうだね。続けられると、素手で戦わないと行けなくなってたし」

 

リュー「?何でですか?」

 

ラム「木刀、もう壊れかけ。あと一撃喰らってたら粉々になってた」

 

リュー「すっ、すみません…」

 

ラム「いいよ。リューは加減が出来ない事くらい知ってるしね」

 

リュー「うぅ…///」

 

 

昨夜の事を思い出しているのだろう。顔どころか、エルフの特徴的なピンとした耳までもが真っ赤になっている。

 

 

ラム「ほんと、防音結界を使わないと喘ぎ声が外に漏れちまうもんな」

 

リュー「言わないで下さい…!///」

 

ラム「でも、防音結界って意外と高いんだぜ?しかも使い捨てだし…。アスフィが安くしてくれるとは言え、お兄さんの貯金が無くなっちゃうレベルだし…」

 

リュー「嘘ですよね?」

 

ラム「バレた?」

 

リュー「その嘘はわかりやす過ぎますよ。少し前までは凄腕の賞金稼ぎだったんですから…」

 

ラム「だよなぁー」

 

 

こうやって、彼女達と話している時は心が安らぐ…。

 

 

リュー「…ラム…」

 

ラム「ん?」

 

 

急に抱き寄せられたと思ったら、そのまま膝枕をされた。

 

 

ラム「リュー?」

 

リュー「また昔の夢を見たんですか?」

 

ラム「………」

 

 

頭に手を添えられ、そっと撫でられる。

暖かいリューの手の感覚と優しい声、こんな事をされたら、誰でも歯向かえない。

 

 

ラム「あぁ。また、懐かしい夢を見ていた…」

 

リュー「………」

 

ラム「俺は()()()に救われた。でも、もう居ない…。寂しいよなぁ~……」

 

リュー「…これじゃあ、気休めにもならないでしょうけど…」

 

 

膝枕のまま、ぎゅっと頭を抱え込まれる。

 

 

リュー「大丈夫……貴方は一人じゃ無いです…。だから、大丈夫です…」

 

ラム「むぐぅ…」

 

 

リューに「ありがとう」と感謝の思いを伝えたかったが、口元が彼女の腹部に押し当てられているので声が出ない。

 

 

リュー「っん…」

 

 

擽ったかったのだろうか、リューが小さく色っぽい声を漏らした。

そんな姿が可愛くて、ついイタズラをしたくなってしまう。

 

顔を動かして服の下を、直接腹部に息を掛ける……つもりだったのだが、更に強く抱き締められてしまい、キスになった。

 

 

リュー「んぁ…//」

 

 

そんな声を漏らされると、こっちも我慢が出来なくなる。

 

口を開けて白くきめ細かい肌を舐める。

 

 

リュー「ぁんッ…!///」

 

 

これは歯止めが効かなくなるやつだ。

 

ポンポンと彼女の背を軽く叩き、ホールドから解放してもらう。

目尻に雫を浮かばせ、若干息を荒げたリューは可愛くて、と言うよりも色っぽくて、本当に我慢が出来そうに無い…。

 

 

ラム「リュー、良いか?」

 

リュー「…///(コクコク)」

 

 

二回ほど頷いた。頬に添わせるように手をやり、そのまま手は顎へと。

優しく持ち上げると、艶々とした唇がすぐ近くに見える。

 

覚悟を決めたようにリューは眼を閉じ、俺は眼を細めてゆっくりと顔を近づける。

 

互いの呼吸が嫌でも大きく聞こえる。

 

熱くなった彼女の吐息が頬を擽り、理性はゴリゴリと削られて行く…。

 

もう1cmも無く、薄めに開いていた眼を閉じて………

 

 

「コホンッ!!!」

 

ラム、リュー「ッ!?!?」

 

 

誰かの咳払いにビクリと肩が跳ねた。

 

 

シル「何してるのかな?2人ともぉ?」

 

ラム「(-_-;)」

 

リュー「///」

 

冷や汗が止まらない。

 

 

アーニャ「リューだけズルいにゃ!」

 

クロエ「そうニャ、そうニャ!」

 

ルノア「あのねぇ…。イチャつくのは良いけど、室内でしなさいよ…」

 

 

興奮し過ぎて周りが見えてなかったか…。いつの間に全員集まってたんだ?

 

 

ラム「すまん。リューが可愛すぎてな…」

 

リュー「ラム!?/////」

 

ラム「なっ?」

 

シル「なっ?じゃ無いですよぉ!リューばっかりズルいです!」

 

ラム「いや、昨夜は全員纏めて相手してやっただろうが。均等にヤったつもりなんだが?」

 

シル「そっ、それはそうですけど…///」

 

ラム「一応言っとくけど、ちゃんと避妊はしたからな?」

 

シル「生々しい事言わないでぇ!///」

 

 

生々しいと言うか、重要な事だし…。

 

 

ラム「まぁ、出来ても責任は取るけどな」

 

シル「/////」

 

 

プシューと頭の天辺から蒸気を発てて、真っ赤に赤面しているシル。よく見ると全員真っ赤になっていた。

 

 

ラム「まぁ、取り敢えず…」

 

『チュッ…』

 

リュー「!?!?/////」

 

皆『!?』

 

 

油断していたリューの唇を奪う事にした。

 

 

ラム「…くちゅ……じゅる…」

 

リュー「………れろっ、んちゅ…///」

 

ラム「…こくっ…んっ………」

 

リュー「んんっ……ん~…/////」

 

ラム「………ぷはぁ……」

 

 

舌でリューの口の中を好き放題に蹂躙し、口から口にと銀色の橋を掛けながら離れる。

 

 

ラム「前から思ってたんだが、女って甘いよなぁ~。ほんと、不思議だよな」

 

 

舌舐めずりをしながら、まるで味見をするかのように首を傾げる。

 

 

リュー「きゅぅ……/////」

 

 

パタッ…。

 

 

ラム「あっ」

 

ルノア「リューが倒れたぁ~~~!?」

 

 

オーバーヒートで赤い絵の具をぶちまけられたように紅色に顔を染め、リューは気絶してしまった。

 

 

ラム「初々しいねぇ。何十、何百回ともしてるのにさぁ~♪」

 

クロエ「何してるニャ!?///」

 

アーニャ「ラムがリューを違う意味で殺したにゃ!///」

 

シル「ほわぁ……///」

 

ルノア「うっ、うわぁー…///」

 

 

4人とも真っ赤だよ?まさかお前達も?

 

 

ラム「…なら、試さなきゃねぇ~?」

 

 

この後、何があったかと言えばこの場に居た()()除く全員が気絶した。

 

もちろん、オーバーヒートでだ。言ってしまえば、ディープキスをされてだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 

 

 

 

 

 

 

 

ミア「全く…王子は朝から飛ばしすぎだよ…」

 

ラム「てへぺろ☆」

 

 

アイデンティティーのアホ毛が星の形になっている。どうしてこうなっているかは本人すらも解らない…。

 

 

ミア「年相応の態度をとりな…」

 

ラム「見た目は10代後半だぜ?まぁ、中身は40歳くらいだけどな…」

 

 

白黒半分の色が違う髪、右紅左黄金の眼を持った若々しい兎っぽい少年。

 

の、ように見えるのだが、中身は四十代後半。

 

これには理由があるのだが、それは別の機会に説明する事にしよう。

 

 

ラム「と言うか、皆まだ再起動してないの?」

 

ミア「なんなら起こしに行ってやりな」

 

ラム「…俺のせいだしな。責任取りに行くかね」

 

 

よっこらせと椅子から立ち、皆が眠っている俺の部屋に戻る。

 

いらない説明だろうが、ベトベトになったシーツは交換済みである。

シャワーも浴びている。気絶中の彼女達はラムが洗った。

 

 

ラム「おーい、いい加減に起きないと開店時間過ぎちまうぞ~?」

 

 

声を掛ける。起きそうにない。むしろ、一切反応無し。

 

 

ラム「…こうなったら…」

 

 

ニヤリと口元が三日月型に裂ける。中身はアラフォー。だが、身体にあわせて精神も少し幼いのだ。

 

 

ラム「てぇーい!起っきろぉー!」

 

 

スヤスヤと心地よさそうに眠っている5人目掛けて大ジャンプ。そのまま落ちて……

 

 

皆『―――ッ!?!?!?』

 

 

急な圧迫感と痛みに安眠ガールズは一瞬で眼が覚めた。

 

 

ラム「起きた?」

 

シル「ぅう…!」

 

アーニャ「急になにするにゃァ!?」

 

ラム「皆の愚痴を聞く前に…クローゼットの方から右側をご覧下さいな」

 

 

言われた通りにクローゼットの右側、壁の方を見る。

 

 

ラム「時計がございまーす」

 

 

そして、その時計は8時を指している。開店時間になったのだ。

 

 

シル「………遅刻ッ!?」

 

ラム「じゃ、俺は先に行っとくね~」

 

リュー「あっ!ラム!」

 

ルノア「ちょっと待ちなさいッ!」

 

 

後ろから色々聞こえるが、スルーする~。…あれ、なんか寒気が…。

 

 

ラム「今日もブラックな社会を生き抜くぞ~!」

 

 

黄緑のシャツにキッチンエプロン、ここ(豊饒の女主人)制服を纏った後に頬を叩いて気合いを入れる。

 

 

―ラム!まだかい!?

 

ラム「今行くっての!ったく、人使いが荒いオーナー様だ事…」

 

―何か言わなかったかい!?

 

ラム「言ってなーい!」

 

 

更衣室から出てから店の中を見渡すと、もう数名の客が入っていた。

 

 

ラム「いらっしゃいませ!」

 

 

今日も1日、張り切って行きましょうかねぇ!

 

 

唯一、豊饒の女主人で男なのに働いているラム。

 

相当な人気があるのだが、本人は知る余地も無いのである。

 

なぜかって?

 

 

ミア「ほら! 今は1人なんだからジャンジャン働きな!」

 

ラム「ぅわぁーん…ッ!」

 

 

 

     忙し過ぎるからだ。

 

 




うん、いきなりやらかしましたね。

反省はしていない。後悔もない。

主人公のステータスはまだ出しませんが、相当強いです。

あと、主人公の髪型はウルフカット(右もみ上げのみ伸ばしている)+アホ毛って感じのイメージです。

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