森の中で2つの影が飛び交う。
キィン!キキィン!
1人は目元を包帯で隠し、赤のマフラーを巻いている男。背中に刀を携え、数本のサバイバルナイフを全身に装備している。
「ふん……大分動きは良くなったな」
「そいつはどうもだぜぇ!」
相手は銀色の長髪を後ろで纏めた和服の女性。帯にはナイフや刀、剣、鎌、槍などを模したバッジが大量に付いている。
女性とは思えない口調で笑みを浮かべながら、男に飛び掛かる。
男はサバイバルナイフを抜き、女性を向かい討つ。
「だが……ハァ……まだまだ荒い」
「うぉい!?」
女性の顔に向かってナイフを投げつける男。
それをギリギリ顔を傾けて躱す女性。
「っ!女性の顔にナイフを向けるとは!傷が付いたら責任取れるのですか!?結婚してください!」
「やかましい」
「ぬお!?ちぇい!容赦ありまへんなぁ。もう少し手加減せぇっちゅうねん。死んでまうわ!」
「死ねばその程度だったということだろうが……」
「うわっち!?もう!少しはうら若き少女の未来を考えて頂けませんの!?」
声を出すたびに話し方が変わる女性。しかし、それだけでなく動きや顔つきも変わっているように見える。
それを男はメンドくさいとばかりにため息を吐きながらナイフを振るう。
女性はそれをギリギリで避けながら、殴る蹴るを繰り返すが、全て男に躱されるか受け流される。
「むぅ~!なんだよぉ!」
「ハァ……ここまでだなぁ」
プク~と頬を膨らませ目尻に涙を浮かばせる女性を見て、男は構えを解きナイフを仕舞う。
そして背を向けて歩き出す。それを女性は慌てて追いかける。
2人は寂れたマンションの中で向かい合って座っていた。
ズゾゾゾ~とカップラーメンを食べながら。
「ズズズ……ハァ……おまえこれからどうするつもりだ?」
「ズズ~……ンマンマ……ん?どうするって……お師匠と一緒にいるつもりだけど?」
「ズズズ……ハァ……このまま俺と居ても、おまえの成長には繋がらん。もっと様々なものを見て、俺の教えが正しいかどうか知らねばな。俺は盲信するだけの奴は好かん」
「ズズ~……ンマンマ……と言ってもさぁ~……ヴィランのとこ行ったって変わらなくない?学校も行ってないし」
女性はとある理由で中学校から学校に通っていない。
男が代わりに勉強を教えていたのだ。
「ズズズ……ハァ……俺に考えがある」
「ズズ~……ンマンマ……考え?」
「ズズズ……ハァ……お前を雄英高校に入れる」
「ズズ~……ンマンマ……頭壊れたの?お師匠」
中学校すら出てない女性が高校に進学できるわけがない。
女性はジト目で男を見る。
「ズズズ……ハァ……考えがあると言っているだろう」
「ズズ~……ンマンマ……どんな?」
「ズズズ……ハァ……俺に攫われ、監禁されていたことにする。洗脳されそうになったとでも言えばいいだろう」
「舐めてんのか刺し殺すぞゴラァ!」
「やってみろ馬鹿弟子」
カップラーメンを投げ捨て、目を吊り立てて男に詰め寄る女性。
男もカップラーメンを投げ捨てて、女性を睨み返す。
「……本気で言っておるのか?」
「ああ。ヴィランについては十分知った。ならば次は英雄を知れ」
男の眼差しに本気で言っていることを悟る女性。
男はそれに頷いて話を続ける。
「じゃが……英雄を名乗るのは嫌いなんじゃろ?儂はまだお師匠に殺されとうはない」
「俺が嫌いなのは私利私欲に走りながらヒーローを名乗る偽物だ。身勝手に英雄を名乗る気はないだろう?お前は」
「ないよ!学校行ってヒーロー名乗れるならオールマイトが有名になる理由ないもんね!」
「その通りだ。お前はそれを理解している。だからこそお前を送り出す」
「あん?」
コロコロと話し方が変わる女性。
それを男は無視する。
「俺の思いを知っているお前は『本物』になれる可能性がある。だから行け」
「……」
男の真剣な目を、女性は真顔で見つめ返す。
そして翌日、運命は動き出した。
夜。街中にて。
「助けて~おくんなまし~!!」
「……ハァ……下手か……本気で殺しに行くか」
「うおおおお!?ちょっ!ひええええ!?お助けーー!!」
街中で刀を振り回す男に追われる女性が目撃される。
涙や鼻水を流して、男から全力で逃げるその姿は真に迫っており、疑う者はいなかった(本気で泣きながら逃げていた)。
「待て!」
「……来たか」
「きゃあ!?掠った!?掠ったわ!」
「ヒーロー殺し!?何故少女を!?」
現れたヒーロー達は男を見て目を見開く。
「たしゅけてー!殺されるー!連れ戻されるー!」
「ちぃ!ヒーロー共か……。止まれ!さっさと帰るぞ!」
「やだぁ~!もう戻りたくない~!おうち帰りたい~!」
「ヒーロー殺しが誘拐!?少女の保護を優先するぞ!」
「「「おう!」」」
ヒーロー達は個性を発動して、男を牽制する。
男はそれに怯んだふりをする。
その間に少女は英雄に保護される。
「ちっ!……ハァ……せっかくここまで育ててやったのに」
「育てた!?お前が!?」
「その娘を大事に扱え。近いうちに取り戻させてもらう」
「ま、待て!」
男は捨て台詞を吐くと、闇に姿を消す。
「くそ!」
「追うなよ。俺達じゃやられかねん」
「分かってるさ」
ヒーロー達は保護した少女に声を掛ける。
「君!大丈夫かい?もう大丈夫だからね!」
「は……はい……」
「申し訳ないけど一度警察で話を聞くことになる。大丈夫かい?」
「はい……あの人は……また来るんですか?」
少女は不安な表情を浮かべて、ヒーロー達に声を掛ける。
それにヒーロー達は安心させるように声を掛けながら、警察署に移動させる。
それを建物の屋上から見守る男。
「……ハァ……これで身軽になるな。それにしても、この俺が誘拐犯か」
ため息を吐いて、少女の背中を見つめる。
「まぁ、弟子のために悪を被るも一興か。お前がどのような道を歩むのか、少しだけ……楽しみにしていてやろう」
そして男は再び街の闇に消えていった。
少女は警察署で話をしていた。
「ということは君は3年近くもステインの元で教えを受けていたと?」
「は、はい。……毎日、刀を振り上げられて追いかけられました……ぐすん」
「大変だったね。おうちはどこだね?」
年配の男性警察官が微笑みながら、少女に1つ1つ質問していく。
少女はオドオドしながらも質問に答えていく。
「家は……ありません。両親が死んで、施設に入れられたので」
「……そうか。……ふむ」
男性警察官が顎を擦りながら考え込んでいると、1人の女性警察官が近寄ってくる。
(部長。確認取れました。名前は
(ふむ。彼女の言葉通りだな。他に親戚は?)
(残念ながら確認出来ませんでした。個性登録はされています。中学校1年になった直後に行方不明になっています)
女性警察官の言葉に男性警察官は腕を組んで顔を顰める。
ステインは少女を取り返しに来ると言っていた。警察署でずっと預かるわけにもいかないし、また施設に入れても護りきれる可能性は低い。
誰かに後見人になってもらおうにもステインを退けられる者でなければならない。
「乱刀さん。君はこれからどうしたい?」
「え?……あ、あのぉ……」
「構わないよ。言ってごらん?」
「ヒ、ヒーローになりたいなってずっと思ってて……雄英高校に通うのが夢でしたので……それが出来るようになればいいかなって」
「ほう!雄英か!」
男性警察官と女性警察官はその話を聞いて、顔をほころばせる。
「ただ……中学校に通ってないから……」
「ふむ。そうだな。それに君の後見人も決めねばならん」
「……一度雄英高校に連絡を入れてみますか?」
女性警察官の言葉に男性警察官は頷いた。
学園の教師ならば後見人には相応しいと考える。
雄英高校に聞かなければならないので、今は何とも言えないが。
「しばらくはここで部屋を用意するよ」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる刃羅。
とりあえず第一関門は突破したようだと刃羅はホッとした。
2日後。
刃羅を訪ねてきた者達がいた。
「あなたが乱刀刃羅ちゃんね!」
現れたのはSMを思わせる服装をした眼鏡をかけた女性。
その後ろには2本脚で立つ小さなネズミ。
最後に和服を着た女性。
「やぁやぁ!初めまして!僕が雄英高校校長の根津さ!」
「……あなたが校長?」
「そうさ。今回は君の処遇について話に来たよ」
「!!」
根津の言葉に背筋を伸ばす刃羅。ここが正念場だからだ。
「部長さんから話は聞いたよ。君は雄英に来たいけど、中学校は出ていないらしいね」
「……はい」
「でも、だからと言って中学校を初めからやり直すのも大変さ。そこで君にはまず試験を受けてもらうことになったのさ」
「試験?」
「簡単な筆記試験さ。でも、中学校卒業レベルさ。それを受けて十分な結果を出せれば受験資格をあげるって話になったのさ!」
それに刃羅は頷く。それは予想していたことだ。
「それとね、こちらの女性ヒーロー『
「よろしく」
流女将は水色の髪を後ろで纏めた美女。水色と白の波模様が描かれた小袖を着ている。
刃羅もペコリと頭を下げる。
「そしてこっちが雄英高校教師の『ミッドナイト』さ」
「よろしくね」
「……教師?」
「見た目は18禁だけどね」
ウィンクしてくるミッドナイトに刃羅は首を傾げるが、根津がいるから今更かと思い、受け入れることにした。
(本当に英雄を育てる学校なのかなぁ?)
と内心疑問が湧いてきているが。
その後、刃羅は試験を受けた後に流女将が用意してくれた家に向かう。何故かミッドナイトも付いてきたが。
家は流女将の事務所の上のワンルームマンションだった。流女将はその上の階に住んでいるらしい。
すでに家具は揃えてくれており、必要な物は少しずつ揃えてくれるようだ。
と言っても刃羅は物欲があまりなく、必要最低限の服と下着があればよかった。
「そう言えば、あなたの『個性』を見ていませんでしたね」
「そうね。見せてもらえるかしら」
「は、はい」
2人の言葉に頷く刃羅。
すると右手の指をナイフを思わせる刃に変える。
それに2人は目を見開く。
「俺っちの『個性』は《刃体》!体の一部を刃に変えたり、刃が付いた武器を作り出せんだぜ!」
「……性格も変わるのね」
「けどねぇん。武器を生み出すのは1種類だけなのよぉ」
「それぞれの武器を使い分け、使いこなせないといけないというわけですか」
「そういうこっちゃな!」
「……武器ごとに性格変わるのね」
指の刃を蛇腹剣風に変え、次は指の付け根から鈎爪を生み出す。
その度に言葉遣いが変わることにミッドナイトは苦笑する。
「しかし、応用範囲はかなりのものですね」
「そうね」
刃羅の個性の汎用性に期待感が高まる2人だった。
そして翌日、文句なしの合格を告げられた刃羅は3か月後の入学試験を受けることになった。
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誕生日:1月1日。身長:174cm。AB型。
好きなもの:ステイン、時代劇、麺類
銀髪の長髪をスパイキーに逆立てて、後ろで纏めている。
目つきは性格により変わるが、基本鋭め。Eカップ。
ステイン唯一の弟子。しかし誘拐されたわけではなく、自分から売り込んだ。最初は無視されていたが個性で斬りかかり続けて、なし崩し的に弟子になった。中学には行っていないが、ステインに勉強を教えてもらい独自で勉強していたため、そこそこできる。
個性:刃体
体を刃に変えることが出来る。さらにナイフや剣、刀など刃が付いている武器にも変えることが出来る。
武器に変える際は実物を見て、実際に振って動きを理解する必要があるため、武器収集に金がかかる。また同時に変えられるのは一種類だけ。
苦無やチャクラムなど飛び道具は生み出せないが、扱う事は出来る。
使えば使うほど筋肉痛になる。
また『多重刃格』で武器ごとに性格が変わる。思考も変わるため戦闘スタイルも変わる。
バッジなど武器に模した物を身に着けるだけでも性格を変える事は出来る。記憶は共有している。