ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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#15 師と友の狭間で

 職場体験3日目。

 

 刃羅は、寝不足だった。

 

「……普通に夜這いにくるじゃねぇかよ鏡女ゴラァ。カギ閉めても入ってくっぞぉ」

「……ごめんなさい」

 

 目を血走らせて歯軋りをしながら、ミラミラにメンチを切る刃羅。

 顔と顔が触れ合いそうになるほどの距離で全く瞬きもせずに睨み続ける。

 それにミラミラは冷や汗をダラダラと流し、顔を背けて謝罪する。

 

 エクレーヌは毎晩刃羅の部屋に忍び込んできた。

 素っ裸で。

 1日目は斬りかかり、その後ずっと座って監視していた。エクレーヌはベッドで爆睡していたが。

 2日目は鍵を閉めて、窓も封をして寝ていたがいつの間にか真横にエクレーヌが立っていた。再び斬りかかるが避けられ、その後も座って監視していた。エクレーヌは爆睡していたが。

 そのため刃羅はほとんど寝ていない。

 

「なんだ……ここの事務所は寝不足の訓練でもさせる伝統でもあるのか……?」

「……ない……はず……多分……」

「どうしたんだ?」

「眠そうね」

「……コーヒー飲むか?」

 

 現れたのは初日にいなかった残りのサイドキック達。

 

 『モリアガ』。

 緑の短髪に目元を覆うマスク。腹部を曝け出すプロテクターを身に着け、黒のボンタンドカンを履いている大柄の男ヒーロー。

 

 『ローテリア』。

 金髪をワンサイド縦ロールに纏め、赤いバイザーに足のサイドにローラーが付いたコスチュームを着た女性ヒーロー。

 

 『フィクスマン』。

 黒髪ショートストレートで丸眼鏡をかけている中性的な男性ヒーロー。コスチュームは魔法使いのような黒いローブを羽織っている。

 

「頂くでござる」

「……ブラックだよ」

「大好き!」

「……なら良かった」

 

 フィクスマンからコーヒーを受け取る刃羅。フィクスマンはあまり表情が動かず、座っていると人形のように見える。

 刃羅はコーヒーを一気飲みをする。

 

「ふは~。おいし~」

「エクレーヌさんに夜這いされまくってるらしいです」

「あぁ~……なるほどなぁ。あの人ついに未成年に手を出したのかよ」

「今日は私の家に来る?」

「いいのぉん!?」

「流石にこれ以上夜這いされたら庇いようないもの」

 

 目をウルウルさせながら両手を組む刃羅に、ローテリアは苦笑しながら刃羅の頭を撫でる。

 サイドキック達は近くのマンションに住んでいるらしい。理由はもちろん夜這いされるから。

 

 そこにエクレーヌが現れる。

 

「おはよう皆。おや、随分と仲良くなったね。よかったよかった」

「相談受けてるんですよ。エクレーヌさんから夜這いされてるって」

「仕方ないじゃないか。夜は人肌が恋しいのさ」

「だからって未成年に手を出さないで下さい!」

「出してないよ?ただ抱き枕になってほしかっただけさ」

「十分怖いですからね?」

「そーだ!そーだ!」

「おや、それは残念」

 

 サイドキックと刃羅の抗議に肩を竦めるエクレーヌ。

 それに全員がため息を吐く。

 

「今日はどうするんですか?」

「午前中は待機だね。ヒーロー殺しの情報を集めて纏めるよ」

「了解。アラジンは少し横になってていいよ」

「いいのですか?」

「俺も寝るから構わねぇよ」

 

 ということで、刃羅は仮眠を取ることにした。

 

 

 

 

 夕方からはパトロールに出る。

 

「ヒーロー殺しは1件目以降まだ出てない。そろそろ動きがあってもおかしくない。1人で行動するのは控えるようにね」

「「「「「了解」」」」」

 

 エクレーヌの言葉に頷く一同。

 しばらくパトロールしていると、近くで爆発が起こった。

 

「爆発!?」

「行くよ!」

「了解!」

 

 走り出す一同。

 現場に付いた先にいたのは、脳みそが露出したような頭部をした肥満の大男がいた。

 

「なんだ!?あいつは!?」

「普通のヴィランではなさそうだね」

「……似ておる」

「アラジン?」

「雄英を襲ったヴィランの中にいた脳無という化け物に似ている。あれは危険だ」

「雄英襲撃だと?どれくらい化け物なんだ?」

「オールマイトの攻撃をほとんど吸収して、腕を斬り落としてもすぐさま再生しただよ」

「「「はぁ!?」」」

 

 刃羅の言葉にサイドキック達が目を見開いて驚く。

 エクレーヌも一瞬目を見開き、すぐに目を鋭くして脳無を睨む。

 刃羅も顔を顰めて脳無を見つめる。

 

「ちゅうことは、近くに敵連合も来とるんかいな?」

「おいおい!?マジかよ!」

「まずは奴を止めるよ。行くよ。皆」

「俺っちは?」

「モリアガに従って避難誘導してくれ」

 

 指示を出して、脳無に向かって飛び出すエクレーヌ。

 それにモリアガ以外の全員が駆け出す。

 

「いよっしゃあああ!!頑張れええ!!気張れええええ!!」

 

 モリアガがエクレーヌ達に声を掛ける。

 モリアガの『個性』は《声援》。対象を意識して応援の声を掛けることで、掛けられた者の身体機能や『個性』をパワーアップさせる。

 

「……頂戴」

「はい!」

 

 フィクスマンがミラミラに声を掛けると、ミラミラがフィクスマンに両腕以外の鏡を鏡を手渡す。

 受け取ったフィクスマンはそれを抱えて、走り出す。

 

「そこまでだよ!」

「止まりなさい!」

 

 エクレーヌとローテリアが脳無に呼び止めるが、脳無はそれを無視する。

 腕を振るい、ビルの壁を砕き、瓦礫を持ち上げて反対側のビルの投げ飛ばす。

 

「無視は酷いな!」

 

 エクレーヌが瓦礫に向かって、光弾を放つ。

 瓦礫に直撃すると、その瓦礫が爆発した。

 

「爆弾でも仕掛けられていたのか?」

「そんな!?だって、砕いてすぐに投げましたよ!?」

「だよね。ということは、あれが彼の『個性』ということだ」

「爆弾に変える『個性』……!」

「危険だね。彼の触った物に注意するんだよ!」

「「了解!」」

 

 エクレーヌは連続で光弾を放ち、脳無の注意を引く。

 脳無はそれを無視して、瓦礫を掴んでビルに向かって投げる。

 

「させないわよ!」

 

 ローテリアは体の周囲に旋回している瓦礫を飛ばして、脳無が投げた瓦礫にぶつけてビルにぶつかる前に爆発させる。

 ローテリアの『個性』は《回転》。両手から2m以内の移動しているものをその場で回転させたり、自身の周囲で旋回させて飛ばすことが出来る。注意がいるのは動いていないものは回転させられないし、手の平を向けたものでないと発動出来ない。

 

「ローテリア!」

 

 そこにエクレーヌが巨大な光弾を生み出して、ローテリアに向かって放つ。

 ローテリアは光弾に手を向けると、光弾はローテリアの周囲で高速で旋回し、それを勢いよく脳無の背中に飛ばす。

 脳無は前のめりに倒れるが、バイン!とゴム弾のように飛び跳ねて起き上がる。

 

「なに今の!?」

「本当に化け物染みているな」

 

 脳無の動きにローテリアが目を見開く。

 エクレーヌも顔を顰める。

 

 

 

 それを後方で避難誘導をしていた刃羅達も目撃していた。

 

「やっぱりぃ複数の『個性』を持ってるのかなぁ?」

「ありえねぇだろ……!」

 

 すると、他の場所でも爆発が起こる。

 

「他にもいやがるのか!?」

「まずいでござるな。これではここの応援も来れないかもしれないでござる」

「ちくしょう!」

 

 歯軋りをして、避難経路を考え直すモリアガ。

 刃羅も瓦礫が飛んで来ないように注意しながら避難誘導をする。

 

(しかし、何故このタイミングなのかのぅ?……嫌な予感がするのじゃ)

 

 何故かステインが頭に浮かぶ刃羅。

 その時、エクレーヌ達の動きが変わる。

 

「準備OKです!」

 

 ミラミラが声を上げる。

 刃羅が目を向けると、脳無の周囲の空中に鏡が浮かんでいた。

 

「あれは?」

「フィクスマンの『個性』《固定》だ。手足で触れた空間を固定して、壁にしたり、物を設置することが出来る。10か所までだけどな」

「強っ!?」

「ただ生き物には効かねぇし、空間だけだと2m四方だけだ」

「……びみょ~」

「だから俺らと組んでるんだろ?」

「言われればそうやな」

 

 その鏡に向けてエクレーヌが光線を放つ。光線が鏡に吸い込まれると他の鏡から光線が飛び出し、脳無の脚に後ろから直撃する。

 

「……見事に近接系がおりまへんなぁ」

「だからお前さんに声掛けたんだよ」

「でも、今は参加出来ないですわ」

「仕方ねぇし、ここでお前を参加させたらプロの意味がねぇだろ?」

「そうだけど~」

 

 そこで刃羅の携帯が鳴る。

 確認すると、緑谷からだった。

 内容は位置情報だけだった。

 

「……保須市やな。……さっきの爆発の場所でもないし、路地裏や。……お師匠か?」

 

 顔を顰めて推測する刃羅。

 

(なんで緑谷がここにいるのかはともかく、近くにいるのは私くらいだろうな)

 

 画面を眺めて数秒考え込む刃羅。

 刃羅はエクレーヌ達やモリアガを見る。モリアガは住民の避難に集中していて、刃羅を見ていない。エクレーヌ達はもちろん脳無に集中している。

 それを見て、刃羅は人ごみに紛れて走り始める。

 

「くそ!数が増えるばっかりだな!ん?アラジン?おい!?アラジン!?」

「どうしたの!?」

「アラジンがいねぇ!!」

「え!?」

「……上からは見当たらん!」

「マジかよ!?」

「今は脳無と一般人が先だよ!」

「くっ!了解です」

「チキショウが!」

 

 刃羅がいなくなったことに気づいたモリアガ達だが、エクレーヌは脳無の捕縛と一般人の避難を優先するように指示を出す。

 それにモリアガは顔を顰めながらも従う。

 エクレーヌも表情を鋭くして、脳無に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

 刃羅はビルの屋上に駆け上り、位置情報の場所を目指して移動する。

 

(……クラス全員に一斉送信してやがる。お師匠が相手なら細かく書く暇はねぇよな。問題は……飯田や犠牲者がすでにいやがる場合)

 

 ステインの『個性』を知っている刃羅は、スピードを上げて走る。

 緑谷や飯田はもちろん、プロヒーローですらステインと戦って無傷で勝てるわけはない。逆にお荷物が増えるだけだ。

 

「あそこ!」

 

 ビルの上から現場を見ると、4人の人影が確認できた。

 

(お師匠と緑谷。倒れているのは飯田と……プロか?2人は《凝血》にやられているな)

 

 緑谷がステインに殴りかかる。

 刃羅はその動きに目を見張る。

 

(なんやあの動き!?数日で何があったんや!?)

 

 なんとステインの攻撃を躱し、一撃を加えた。

 しかし掠っていたのか、ステインがナイフを舐めると緑谷の動きが止まる。

 そしてステインは緑谷を無視して、飯田に向かう。

 

「緑谷君はぁ気に入ったのかぁ。って、あれはぁ!?」

 

 ステインが飯田に近づくと、ステインに向かって炎と氷が放たれる。ステインはそれを飛び下がって避ける。

 

「轟屋!?」

 

 

  

 

 現れたのは轟だった。

 

「緑谷。こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまった」

「次から次へと……ハァ……」

「何で君が……!?それに左……!!」

 

 緑谷と飯田は現れた轟に目を見開く。

 轟は炎を纏いながら、ステインを睨んでいる。

 

「何でって……こっちのセリフだ。数秒意味を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから。意味無くそう言うことする奴じゃねえからな、お前は」

 

 続いて氷を放ってプロヒーローや緑谷を凍らせる。

 それと同時に炎を放ち、プロと緑谷を飯田の近くに滑らせる。

 

「応援を呼べってことだろ?大丈夫だ。数分もすりゃプロも現着する」

 

 そしてステインを見据える。

 

「情報通りのナリだな。こいつらは殺させねぇぞ。ヒーロー殺し」

 

 ステインは轟を見極めようと見つめる。

 

「そういうことじゃの」

『!!』 

 

 そこに声が響く。

 轟がステインの上を見て、目を見開く。

 それを見たステインは刀を横にして頭上に掲げる。

 直後、その刀に衝撃が走る。

 

「貴様は……!」

「乱刀……!!」

 

 刃羅が上空から飛び降りてきて、両腕を刀に変えてステインに振り下ろした。

 しかし、それは防がれて、弾かれる。

 弾かれた刃羅は、壁を跳ねて、轟達の前に着地する。

 

「乱刀さん!?君までどうして……!?」

「儂は元々この近くで職場体験じゃ。むしろお主らの方が何故ここにおる?」

「それは……」

「駄目だ!3人とも逃げるんだ!君達には関係ないだろ!?」

「まだそんなことを……!」

「残念じゃが儂には関係大有りじゃ」

「え?」

 

 飯田の言葉に刃羅はステインを見据えたまま、反論する。

 それに轟達が訝しむと、刃羅は腕を戻して前に歩み出る。

 

「おい乱刀……!」

「駄目だ!乱刀さん!そいつに血を見せると……!」

「摂取されると体の自由を奪われる……か?」

「!?どうして!?」

「何度もぉ味わったからねぇ」

「……え?」

「《凝血》。血を舐めることで体の自由を最大で8分間奪う『個性』だ。ただ……血液型で効果時間が変わる」

 

 刃羅はスラスラとステインの『個性』の内容を語る。

 それに目を見開く緑谷達と、顔を顰めるステイン。

 

「……なんでそんなことテメェが知ってんだ?」

「言ったでござろう。何度も味わったと。3年間ほぼ毎日味わえば理解出来るでござる」

「……3年間?毎日?……まさか……乱刀さんを攫ってたヴィランって……!」

「……!!」

「……久しぶりだな。お師匠。私を取り戻しに来ずに、こんなところで何をしている?」

 

 刃羅の言葉に目を見開いて、固まる轟達。

 

「……刃羅ぁ。貴様こそ、こんなところで何をしている……?」

「雄英でぇ職場体験ですぅ」

「……俺の信念を知っているのにか?」

 

 目を鋭く細めて、刃羅を睨むステイン。

 それに少し冷や汗を流して睨み返す刃羅。

 

「知っているね~。それでも~今はヒーロー志望だからね~」

「……私怨で戦うことは」

「失格でござろう。分かっているでござる」

「……」

「やけどなぁ……今、ここであんたの力一番わかっとるんはうちや。後ろの連中だけで戦わせられるかいな。……それであんたに殺されてもなぁ」

「……少しはマシになったか」

 

 刃羅は両腕をロングソードに変える。

 

「轟。そいつらを守れ。恐らく隙を突いて狙ってくる」

「お前1人でやる気か……!?」

「無茶だよ……!?」

「役割分担だ。貴様の氷と炎が適任なだけだ。頼むぞ」

 

 そして走り出す刃羅。

 それにステインも構える。

 

「お前が俺に勝ったことがあったか……?」

「ないな!だが、それは退く理由になるまい!?」

 

 腕を振り、斬りかかる。

 刀で防がれ、ステインが蹴りを放つと、刃羅も右脚をロングソードに変えて防ぐ。

 弾かれて後ろに下がると、今度は左前腕に鎌を生み出して斬りかかる。

 それを再び刀で防ごうとするステインを見て、左足を鎌に変えて振り上げる。

 刀が上に弾かれると、ステインは左手のナイフで斬りかかってくるが、刃羅は鉄刀を抜いて防ぐがへし折られてしまう。刃羅はすぐさま腕をサーベルに変えて斬りかかる。

 

「……ハァ……それで全力か?」

「そんなわけはないであります!」

 

 全身を動かし続け、ステインと斬り合い続ける。

 

 それを轟達は目を見開いて、見届けていた。

 

「すごい……あのヒーロー殺しと渡り合ってる……!」

「体育祭の時よりもキレがありやがる」

「……何でだ……!もう……やめてくれ……!」

 

 刃羅は内心では焦っていた。

 

(やっぱり……まだ手加減されているでありますな!いつでも斬れるという気配が飛んでくるであります!)

 

 刃羅は鎌を生やして斬りかかる。

 

「ひょう!」

「ハァ……少しは動きが良くなったか」

「しぃ!」

「だが、まだ遅い!」

「くぅ!?」

「乱刀さん!?」

 

 ステインは落ちてくる刀を目も向けずに、掴み取りナイフと共に高速で振り、刃羅を弾き飛ばす。

 緑谷が叫び、轟が氷を放つ。

 氷で邪魔をし、ステインの足止めする。

 刃羅は轟達の傍に飛び下がってくる。

 

「乱刀さん!大丈夫!?」

「血は取られてねぇよ。ギリギリだったがなぁ……」

 

 刃羅は斬られる寸前で刃を生み出して、ステインの刃で防いだ。

 刃は欠けたが、血を取られることはなかった。

 

「が、これからが本番だがな」

「っ!血が!」

「私の刃はぁ脂肪と筋肉でぇ出来てるからねぇ。刃が砕かれたらぁ体が削られたのとぉ一緒なのさぁ」

 

 刃羅の右腕と左脚から血が流れていた。

 

「緑谷は何型?」

「え?……あ……O型だよ」

「なら、もうすぐだね!」

「けど、僕が加わったところで……!」

「もう逃げてくれ!これ以上、僕の個人的なことで!僕がやらなきゃ……!」

 

 飯田が倒れたまま涙を流しながら叫ぶ。

 

「わっちはお断りやよって」

 

 刃羅はステインを睨んだまま、飯田の言葉をぶった切る。

 

「それに逃げる余裕もなさそうだしな。氷や炎も避けられる程の反応速度だ」

「逃げるためには誰かが残らないといけない……!そんなことは出来ない!」

「でも……!」

「轟屋ぁ!氷と炎は出し過ぎるなよぉ!あ!奴はその隙を見逃さぁねぇよい!」

「そこまでまだ出来ねぇ」

「緑谷も真正面から攻めるな!」

「分かった……!」

 

 その言葉と同時に飛び出す刃羅。

 

「いくわよぉん!」

 

 両手と左脚を蛇腹剣に変えて斬りかかる刃羅。

 ステインは冷静に躱しながら、ナイフと刀を振るう。

 刃羅は常に全身を動かして、振り続ける。

 

「すごい……!踊ってるみたいだ!」

「けど、あれだと俺は援護できねぇ」

 

 今度は刀に変えて、斬りかかる。

 しかし、ステインに腹を蹴り飛ばされて、壁に叩きつけられる。

 ステインの靴先の棘が突き刺さり、腹部から出血する。

 

「ごぉ!」

「結局使えるのは1種……ハァ……慣れれば隙を突くのは容易い」

「乱刀さん!」

 

 轟が氷を放ち、ステインが上に飛んで避ける。

 そこに緑谷が飛び出し、ステインの首元を掴んで投げる。

 ステインは体勢を立て直して、着地する。

 そこに刃羅が斬りかかる。

 ステインが刃羅の相手をした瞬間、緑谷が後ろに回って飛び掛かる。

 すると、ステインの雰囲気と動きが変わり、刃羅は蹴り飛ばされ、緑谷が足を斬られる。

 

 ステインは刀に付いた緑谷の血を舐めながら、轟に迫る。

 轟は氷を壁にするが、斬られて砕かれてしまう。

 

「やめてくれ……僕は……もう……」

「やめて欲しけりゃ立て!!!」

 

 轟が氷を張り続けながら飯田に叫ぶ。

 

「なりてぇもんちゃんと見ろ!!!」

 

 炎を放つ轟。

 それをステインは紙一重で躱し、轟に迫る。

 

「氷に炎。言われたことはないか?『個性』にかまけ挙動が大雑把だと」

「化け物が……!」

 

 轟の懐に潜りこむように刀で斬りかかる。

 刃羅が後ろから追いかけるが、間に合いそうにない。

 

「おのれ……!」

 

 すると、飯田の拘束が解除されたのか飯田が飛び起きて走り出す。

 

「飯田!?」

「レシプロ!!バースト!!」

 

 高速で走り出し、ステインの刀を蹴り上げてへし折る。

 そのまま回転して、再びステインに蹴りかかる飯田。

 ステインは防ぐが、勢いは殺せずに後ろに下がる。

 

「轟君も緑谷君も乱刀さんも関係ないことで……申し訳ない……」

「まだ……そんなことを……!」

「だからもう、3人にこれ以上血を流させるわけにはいかない」

 

 飯田は覚悟を決めた顔をステインに向ける。

 

「感化され取り繕おうとも無駄だ。人間の本質はそう簡単に変わらない。お前は私欲を優先する偽物にしかならない!ヒーローを歪ませる社会のガンだ。誰かが正さねばならんのだ」

「時代錯誤の原理主義だ。飯田、人殺しの理屈に耳を貸すな」

(耳に痛い!そして、もう耳を貸してるのあたし!)

 

 刃羅は轟の言葉に地味にダメージを受ける。

 

「言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格は……ない。それでも折れるわけにはいかない」

 

 飯田は肩から血を流しながら両手を握る。

 

「俺が折れればインゲニウムが死んでしまう」

「論外」

「果たしてそうか?」

「!!」

 

 飯田を鋭く睨むステインに、刃羅が右脚を蹴り出しながらパルチザンに変える。

 それをステインは仰け反って躱すが、刃羅は突き出した脚を無理矢理横に振る。

 折れた刀で防ぐが、後ろに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 刃羅は脚を戻しながら、轟達の傍に移動する。

 

「確かに私欲。ヒーローとしては最低だ。せっかく忠告したのだがな」

「……すまない」

「……ハァ……」

「されど元々誰かを救うという行動が私欲。それが憧れから来るものでも、恨みから来るものであっても、論外と決めるのは早計ではないか?師匠殿」

「……」

「偽物が本物に変わる所を見るのも一興とは思わないか?」

「……戯言だな。刃羅……貴様はそれを良く知っているだろうが」

「知っているさ。だからこそ……一興だと思った。……すまんな師匠殿。我はこの者達を殺させたくない。だから……貴様を倒す」

 

 刃羅は『友』を選ぶことを決めた。

 それにステインは一瞬笑みを浮かべるが、すぐに顔を鋭くして刃羅を睨む。

 

「気を引き締めろ!!奴にはもう時間がない!!プロがこれ以上来たら勝機はないからな!!」

 

 刃羅が怒鳴りながら、ステインに飛び掛かる。

 

「ハァ!」

「覚悟してもらおう、お師匠!!」

 

 ロングソードに変化させて、高速で斬りかかる刃羅。

 折れた刀とナイフでそれを捌くステイン。

 

「無駄だ。お前の戦い方は熟知している」

「だろうな!!それでもねぇ!!」

「!!」

 

 刃羅は両腕がロングソードのまま、右足を大鎌に変えて蹴り上げる。

 ステインは目を見開いて、顔を傾けるだけで避けるが、左頬から血が噴き出す。

 

「2種……!?」

「ぐぎいいいい!?」

「乱刀さん!?」

 

 刃羅は『個性』が解除されて、歯を食いしばりながら叫びながら後ろに倒れる。

 

(筋肉痛ってレベルじゃないいいい!?やはりいぃ!無茶過ぎたかあああ!!)

 

「……ハァ……未熟者が」

 

 ステインは小声で呟いて、刃羅を無視して轟に向かって走り出す。

 

「くそっ!!」

 

 轟の氷にステインは上に飛んで躱す。

 

「轟君!俺の脚を凍らせてくれ!排気筒は塞がずにな!」

「!!」

「邪魔だ」

 

 ステインが轟にナイフを投擲するが、それを飯田が庇う。

 そこに更にステインがナイフを投擲し、飯田の腕を地面に縫い付ける。

 ステインはそのまま折れた刀で轟達に斬りかかる。

 

 飯田は口でナイフを抜き、一気にエンジンを吹かして飛び出してステインに迫る。

 ステインは飯田を斬り払おうとしたが、その横から緑谷が飛び出してきて一瞬固まる。

 

 そして飯田の左脚がステインの脇腹に、緑谷の拳がステインの顔に突き刺さる。

 ステインはそれでも刀を振り、飯田に迫る。

 

「お前を倒そう!今度は犯罪者として……!ヒーローとして!」

 

 再び飯田がエンジンを吹かしてステインを蹴る。

 更に轟の炎がステインの顔を焼く。

 

「がっ……!?」

 

 轟が氷を生み出して緑谷や飯田を受け止める。

 

「立て!!まだ奴は……」

「もう気絶している」

 

 ステインは氷の途中で引っかかり、気絶していた。

 刃羅が足を引きずりながら轟達に歩み寄る。

 

「オールマイトじゃねぇんだ。頑丈さまでは真似できねぇよ。ステインでもな。あれだけボコボコにされりゃあ気絶するだろ」

「じゃあ、拘束して通りに出よう。何か縛れるもんはねぇか?」

「武器も全部外しておこう」

 

 轟と緑谷はステインの拘束を開始する。

 プロヒーローも効果が切れて動けるようになった。

 

「はぁ……しんどぉ……でぇ?飯田君はぁ落ち着いたぁ?」

「あ……あぁ……すまない。迷惑をかけてしまって……」

「それはあっちの2人に言うべ。おいらも私欲優先だっただ」

「……そうだな」

 

 刃羅は飯田の背中をバンバン!と叩いて、ステインの武器を外すのを手伝いに行く。

 

「さてぇ……これからぁどうするべきかなぁ……。とりあえずぅあの子達にぃ連絡入れとこぉ」

 

 刃羅は倒れているステインを見つめながら小さく呟き、ステインの対応を考えるのだった。

 

____________________

人物紹介!

 

 

・モリアガ

 

 誕生日:7月22日。身長188cm。A型。

 好きなもの:スポーツ観戦

 

 緑の短髪に目元を覆うマスク。腹部を曝け出すプロテクターを身に着け、黒のボンタンドカンを履いている大柄の男ヒーロー。

 

 エクレーヌのサイドキックで最古参。

 面倒見がよい男気気質。

 

 個性:《声援》

 応援することで意識した対象をパワーアップさせる。

 声が聞こえる範囲であれば、何人でもパワーアップさせられる。重ね掛けは出来ず、連続でパワーアップさせると、効果が下がっていく。

 災害救助でも大声で声を掛けて、被災者をパワーアップさせて救助までの体力を保たせる事も出来るので、地味に重要な役割を担う。

 使い過ぎると、モリアガ本人が無気力になる。

 

 

 

・ローテリア

 

 誕生日:11月2日。身長:167cm。A型。

 好きなもの:子猫、アボカド

 

 金髪をワンサイド縦ロールに纏め、赤いバイザーに足のサイドにローラーが付いたコスチュームを着た女性。Bカップ。

 

 エクレーヌのサイドキック。

 彼氏募集中。

 

 個性:《回転》

 両手から2m以内の移動しているものをその場で回転させたり、自身の周囲で旋回させて飛ばすことが出来る。注意がいるのは動いていないものは回転させられないし、手の平を向けたものでないと発動出来ない。風なども旋回させることも出来る。

 使い過ぎると麗日同様、酔う。

 

 

 

・フィクスマン

 

 誕生日:1月23日。身長:160cm。B型。

 好きなもの:コーヒー、眼鏡

 

 黒髪ショートストレートで丸眼鏡をかけている中性的な男性。

 コスチュームは魔法使いのような黒いローブを羽織っている。

 

 エクレーヌのサイドキック。

 無表情で人形のような美形のため、女性陣に化粧や女装などの玩具にされている。

 

 個性:《固定》

 手足で触れた空間を固定して、壁にしたり、物を設置することが出来る。固定できるのは10か所まで。

 生き物には使用できず、空間でも2m四方までしか固定できない。

 ミラミラの鏡を空中で固定して、エクレーヌの光閃を様々な角度から放てるようにする。標的の四方を固定して、捕縛することも可能。

 災害救助では、瓦礫を固定して崩れないようにすることが出来るため、これまた地味に重要視されている。

 使い過ぎると、手足が震えてくる。

 

 

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