ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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梅雨ちゃんが好きです。雰囲気が


#2 実技試験

 実技試験に向かって、鍛練を続ける刃羅。

 流女将は基本昼間はパトロールに出ている。夜も食事時以外はあまり干渉してこなかったので、あまり窮屈ではなかった。

 走り込みや外出は流女将やサイドキックと一緒でないと出来ないが、道や店も分からないのでありがたかった。

 走り込み中にモジャ毛の少年が海岸のごみを片付けていたのを一度見かけた。体より大きい冷蔵庫やタイヤを運んでいて、何やっているんだろう?と思ったが、他の者達は気づかずに走っていたので、声までかけれなかったが妙に記憶に残っていた。

 

 そして試験当日。

 

「おぉ~!すっげぇ人!」

 

 刃羅はキョロキョロと周囲を見渡す。

 そんな刃羅をジロジロと見る受験者達。

 刃羅の服装は和服袴姿だった。帯にナイフ、剣、刀、槍を模したキーホルダーが4つぶら下がっている。

 完全に浮いているが、制服がないので仕方がない。

 会場に向かおうとすると、海岸でゴミ掃除をしていたモジャ毛の少年がいた。

 

(お!あいつは!ってことは、あれは訓練してやがったのか?)

 

 話しかけようとしたが、物凄く足がガクガクしていて、歩き出そうとして転びそうになって女子に助けられていたのを見て、今はやめておこうと決めた。

 入学したらクラスはともかく同じ学校だ。いつでも話す機会はあるだろうと判断した。

 

「まずは入学せねばな。お師匠に斬り殺されてしまう」

 

 刃羅は気合を入れ直して、会場に入る。

 行動の中にはかなりの人がいた。流石に競争率ナンバー1の学校である。

 席についてのんびりしていると、

 

「今日は俺のライブにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

 サングラスをかけた髪を逆立てたチョビ髭男が壇上に立って、いきなりハイテンションで叫び始めた。

 その男の声に返答する者は誰もいなかった。

 

「こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」

 

 YEAR!!と叫ぶが、それにも誰も反応はしない。

 

(……あんなのがヒーローなのかのぅ?本当に大丈夫なのかの?この学校。お師匠の不満も分かる気がしてきたのじゃ)

 

 ジト目で男、プレゼント・マイクを見つめる刃羅。

 その後試験の説明をしていく。途中で真面目そうな眼鏡男が声を上げるが、刃羅は特に興味がなかった。

 刃羅はずっとモジャ毛の少年を見ていた。ついでにその隣の少年も。

 

(あれは確かヘドロ・ヴィランに捕らわれていた少年ですね。知り合い……制服が同じなので同級生のようですわね)

 

 妙に場違い感が強い少年と、事件で取り上げられた少年。

 その2人に興味を持つ刃羅だった。

 

(試験会場も一緒だったら最高だぜ)

 

 ニィ~と笑みを浮かべて、ワクワクする刃羅。

 突然笑みを浮かべた刃羅に両隣の受験者はビクッ!としていたが刃羅は気づかなかった。

 

「《Plus Ultra》!!それでは受験生は良い受験を」

 

 プレゼント・マイクを終えて、刃羅は振り分けられた演習会場に向かった。

 会場に着いた刃羅は周りを見るが、残念ながら目当ての2人はいなかった。

 

「残念だな。……それにしても広い」

 

 目の前の会場はもはや街だった。ビルまで建っている。

 それがいくつも建っている。

 

「金がかかっているな」

 

 その時。

 

『ハイスタートー!』

 

「「「「ん?」」」」

 

 声が響いた。

 周りの受験者もポカンとしていた。

 

『どうしたぁ!?実践じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞぉ!?』

 

 その声に全員慌てて会場に向かって走り出す。

 しかしスタートダッシュしている者がいた。

 刃羅である。

 

「あぁん?随分のんびりとしてやがんな?こりゃあ……!」

 

 走っていると目の前にロボットが現れる。

 刃羅は両手の指をナイフにする。

 

「俺っちの独壇場じゃん!!」

 

 ロボットの腕を斬り飛ばして、今度は右足を刀に変えて、胴体を斬る。

 ロボットは機能を停止して崩れ落ちる。

 刃羅はそれを見届けることなく、次に向かって走り出す。

 

「弱いのぅ!もっと楽しませぇい!」

 

 両腕を刀に変えて、舞を踊る様にロボットを斬り捨てていく刃羅。

 それに他の受験者も慌てて追随する。

 

「出遅れた!」

「急げ!」

「ポイント高いやつぅ!」

 

 刃羅はロボットを斬りながら、周囲を見渡す。

 

「……ふむ。実技にしては……単調じゃのぅ。それにただ倒すだけかの?」

 

 妙にこの試験に違和感を感じる刃羅。これではどちらかと言えばヴィランの試験に感じる。

 考えながら戦っていると、ロボットに押し負けて倒れる受験者が現れた。

 ロボットは倒れた受験者に腕を振り上げる。

 

「うわああ!?」

「しぃ!!」

 

 刃羅は袖からチャクラムを3枚取り出して、ロボットに向かって飛ばす。

 チャクラムはロボットの腕を斬り飛ばして、脚や胴体も斬りつける。

 ロボットが立て直そうとしているその隙に刃羅はロボットに近づき、右腕をコルセスカ風の槍に変えて、ロボットを突き貫く。

 

「大丈夫ですか?」

「お、おう……」

「無理してはいけませんわ。倒れては守るべき人達が守れませんわ」

 

 そう言って受験者の前を去る刃羅。

 その後、怪我人を担ぎ上げたり、先ほどと同じ様にロボットに負けた受験者を助けたりして撃破数を稼いでいた。

 

(怪我人が出てきやがってロボットに集中出来ねぇ!くそが!)

 

 チャクラムはそろそろ刃こぼれが酷くなってきた。

 今度は袖から鎖鎌を取り出して、怪我人達を鎖で搦めて引っ張って回収する。

 それをまだ無事な受験生達は鼻で笑い、ロボットに向かっていく。

 

「てめぇら!それでもヒーローになる気かゴラァ!!」

 

 刃羅は目を吊り上げて怒鳴る。

 そこにピンク色の鞭のような物が伸びてきて、怪我人を回収し始めた。

 

「あぁん?」

「手伝うわ」

 

 現れたのはビルの壁に貼り付きながら舌を伸ばしている蛙のような少女。

 唯1人だけだったが、それでもいないよりはマシだった。

 

「よっしゃあ!とっとと釣り上げっぞ蛙女ぁ!」

「蛙吹梅雨よ。随分荒っぽいのね、あなた。ケロ」

 

 梅雨とその後も続々と怪我人を運び出す刃羅。

 時間切れが近くなってきたその時、

 

ドドオォォン!

 

『は?』

 

 ビルの向こう側から巨大ロボットが現れた。

 それに受験者達は唖然と見上げる。

 巨大ロボットが受験者に向かって歩き始めた瞬間、一斉に逃げ始める一同。

 

「今度は逃げんのかよ!?うおぉい!巨大化出来る奴とかいねぇのか!」

「いないみたいね。それにあれはポイントにはならないみたいだし」

 

 梅雨の言葉に顔を顰める刃羅。

 誰もロボットに向かおうとしないのを見て、1人駆け出す。

 

「!!ちょっと!?」

 

 梅雨が呼び止めるが、刃羅は止まらなかった。

 足の裏に刃を生み出し、スケートのように滑る。

 

「あんたの言う通りだな。期待した俺っちが馬鹿だったぜ。ステイン」

 

 巨大ロボットの足元に滑り込むと、両手を重ね合わせてクレイモアを思わせる巨大な大剣を作り出す。

 そして巨大ロボットの右脚に向かって飛び掛かる。

 

「……斬」

 

 無表情で呟き、両腕を振り抜く刃羅。

 大剣は巨大ロボットの右脚半分を斬るが、まだ停止までは持っていけていない。

 

「……再」

 

 振り抜いた勢いを利用して回転し、再び大剣を右脚に斬りつける。

 今度こそ右脚が斬り飛ばされ、巨大ロボットがバランスを崩す。

 

「……退」

 

 腕を戻し、再びスケートのように滑って離れる刃羅。

 ロボットはそのまま横倒しになる。

 それを見届けた刃羅は息を大きく吐き出す。

 

「はぁー……上手く行ったか。()()()()()()()()()

 

 刃羅はロボットがビルに倒れ込まないように、倒れ方を計算していた。

 そして少し崩れはしたが、大通りに倒れて倒壊したビルは1棟もない。

 そこで試験終了の声が響く。

 

「……まぁ、入学は出来るだろうがよぉ」

 

 刃羅は全く喜ぶこともなく、出口に向かって歩く。

 

「こんな連中と一緒じゃあ期待できねぇなぁ」

 

 ボリボリと後頭部を掻いて、周囲に不機嫌なオーラを振りまいて歩く刃羅。

 不機嫌オーラの刃羅に梅雨も他の者も声を掛ける事は出来なかった。

 そして、不機嫌そのままに帰宅した。

 

「どうでしたか?」

「余裕に決まってんだろ。むしろあれで落ちたらヒーロー終わりじゃね?」

 

 流女将の質問に刃羅は不機嫌なままに答える。

 それに苦笑して食事の準備をする流女将。

 

 

 そして1週間後。

 雄英高校から通知が届いた。

 

「合格~」

「よかったですね」

「どうかなぁ~」

「何位だったのですか?」

「2位だって~」

 

 間延びした話し方で報告する刃羅。

 性格の変化にもう慣れた流女将は特に気にすることなく喜ぶ。

 

「そう言えば~受かったらここ出ていった方がいいの~?」

「ん?いえ?このまま住んでいて構いませんよ。寮はまだ完備されていませんからね」

「ありがと~」

「ふふふ。どういたしまして。あぁ、そうでした。受かったなら学校にコスチュームの要望書を出す用意してくださいね?」

「もう終わってるよ~」

 

 紙を取り出してピラピラする刃羅。

 それを流女将は微笑んだまま見せてもらうが、見た瞬間笑顔が固まる。

 

「じ、刃羅さん?」

「な~に~?」

「これは……本気ですか?ステインを思わせるのですが」

 

 刃羅が書いた要望書は和服をイメージさせるが、腰にナイフ、背中に刀を携えている。どう見てもステインを意識している。

 それに刃羅はにへらと笑う。

 

「うん~。あんまり~嬉しくはないけど~やっぱり鍛えられてたせいか~どうも戦いやすいのが~それになっちゃうの~」

「……そうですか」

 

 要望書を見て、顔を顰める流女将。

 思っていた以上に刃羅への影響は大きかったようだ。

 だからと言って無理に変えさせると、それこそ戦いでは命に係わる。

 今後変わっていくことを祈るしかない流女将だった。

 

 

 部屋のベッドに横になる刃羅。

 

「お師匠の言う通り、本当にあの学校が英雄を育ててるのか怪しいかんじだなぁ」

 

 少なくとも試験でまともに感じたのはあの蛙のような少女だけ。

 他の連中は弱く、自己利益しか考えていない『偽物』だった。

 

「……そっかぁ。学生の選別を私がやればいいのかぁ」

 

 寝ころんだままニヤァと笑う刃羅。

 

「私が英雄に相応しい子を選別すればいいよねぇ。そうすればお師匠の仕事も楽になるかなぁ」

 

 ステインの信念を一番知っているのは自分だ。だからプロになる前に選別すれば『偽物』は減るはずだ。

 

「お師匠は怒りそうだけどぉ……それも楽しそうだよねぇ」

 

 ニマニマと笑みが止まらない刃羅。

 少しだけ高校生活が楽しくなりそうだと思ったのだった。

 

 

__________________________

刃羅の刃格一覧!

 

ナイフ:やくざのような乱暴な言葉遣い。一人称は「俺っち」

ロングソード:騎士を思わせる厳格な言葉遣い。一人称は「私」

打刀:のじゃ口調で古風な性格。一人称は「儂」

コルセスカ:お嬢様言葉で歩き方もモデル歩きになる。一人称は「わたくし」

トゥハンドソード:無口、無表情で一言だけで話す。一人称は「わ」

大鎌:「だなぁ」と少しだけ間延びして、いやらし気な笑みを浮かべている。一人称は「私」

圏:快活な子供っぽい言動になる。一人称は「あたし」

鈎爪:関西弁。一人称は「うち」

蛇腹剣:お色気たっぷりのお姉さん。一人称は「私」

ダガー:「だね~」と完璧な間延び口調になり、常に微笑んでいる。一人称は「私」

 

今後も出てきたら記載していきます。

 

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