ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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#29 掴み損ねた人を探して

 事件から翌日。

 世間では『雄英大失態』でもちきりだった。

 

 生徒40名の内、ガスによる意識不明者が15名。重・軽傷者が12名。無傷だった者は12名。そして行方不明者1名となった。

 プロヒーロー6名ではピクシーボブが重傷で意識不明。ラグドールが行方不明となった。

 

 刃羅達は合宿所近くの病院にて入院していた。

 無傷・軽傷だった者達は昨晩の間に帰宅させられた。

 

 刃羅と百は同じ病室で入院していた。百はまだ目を覚ましてはない。刃羅は先ほど診察を受けて、この後やってくるリカバリーガールによる治療後に退院しても構わないということになった。

 

 のんびりとベッドで横になっていると、梅雨、麗日、芦戸がやって来た。

 

「刃羅ちゃん」

「おう」

「大丈夫?」

「リカバリーガールがもうすぐ来てくれるそうや。リカバリーガールの治癒後に退院できるみたいや」

「良かった~……」

「百ちゃんは……」

「まだ起きてはいない。そろそろ起きるだろうとのことだ」

 

 刃羅の言葉にホッとする梅雨達。

 耳郎と葉隠は別室に入院しており、まだ意識は戻っていないとのことだ。

 談話室で話していると、百が目を覚ましたとのことで病室に戻る。

 

「百ちゃん!大丈夫?」

「ヤオモモ~!」

「皆さん。ええ、大丈夫ですわ。乱刀さんも無事でよかったですわ」

「そっちの方が重傷じゃわい」

「……爆豪さんは……」

 

 百の言葉に梅雨達は悲し気に首を振る。

 そして改めて昨日の状況を説明する。緑谷や葉隠達の事を聞いて、顔を歪ませて俯き、布団を強く握り締める百。

 そこに看護師が訪れる。

 

「リカバリーガールが来られました。それと八百万さん。後程、警察の方がお話を聞きたいとのことなんだけど……」

「はい。大丈夫ですわ」

「分かりました」

「失礼するよ」

 

 看護師と入れ替わりでリカバリーガールが入室してくる。

 

「災難だったね。無事でよかったよ」

「頷き辛いのです!!」

「だろうね。先に治癒するよ」

 

 「チューーー!!」と刃羅と百を治療するリカバリーガール。

 腕を振り回して、脇腹を確認する刃羅。包帯を外そうとしたが、梅雨達に止められて診察を待つことになった。

 その後、警察が来て百が事情聴取されている間に、刃羅は診察受けることになり、梅雨達は帰宅を促されて帰宅していった。

 

 診察して綺麗に傷が治ったので退院となった刃羅。

 病室に戻ると百の姿は見当たらなかった。どうやら百も診察に行ったようだった。

 刃羅は服を着替えて、帰宅の準備をする。

 メモでも残そうと思ったが、別にいいかと思い止めた。

 

「……ほな、さいなら」

 

 刃羅は鞄を担いで病室を出る。

 病院を出て、携帯を取り出す刃羅。

 

「もしもし?今、病院を出たわ。……ええ。そろそろ帰るわ。……ええ。じゃ、後でね」

 

 

 

 

 翌日。

 緑谷の病室にA組の面々が見舞いに来た。

 しかし、その顔は混乱と焦りが浮かんでいた。

 

「乱刀さんが……行方不明……?」

 

 その理由を聞いた緑谷は目を見開いた。

 

「ああ……昨日、病院を退院した後、行方が分からなくなったそうだ。今、警察が捜索してくれてる」

「……そんな……またヴィランが?」

「分からねぇ。流石にそこまで知らされねぇんだ」

「この情報もね、流女将さんから梅雨ちゃんに個人的に知らされたものなの」

 

 轟と切島が顔を顰めながら説明し、麗日が隣にいる梅雨を見ながら情報源を教える。

 その言葉に緑谷は梅雨に目を向ける。

 

「ケロ……ケロォ……」

 

 梅雨は携帯をずっと抱えながら泣いていた。

 刃羅にメールをしても、電話を掛けても繋がらない。しかし、それでも梅雨は諦めれられずに1時間ごとにメールと電話をしている。流女将からの連絡も待っているのも携帯を離せない理由である。

 梅雨の様子に耐えられないように俯く緑谷や飯田達。

 それに緑谷はあることを思い出す。

 

「……ヒーロー殺し……」

「え?」

「もしかして乱刀さんは……ステインの元にいるのかもしれない……!」

『!!!』

 

 緑谷の言葉に目を見開く飯田達。

 

「な、何言ってんだよ?ヒーロー殺しは捕まったんだろ!?」

「……いや」

「え……?」

 

 上鳴が冷や汗を流しながら叫ぶ。

 しかしそれを轟を否定する。それに芦戸が戸惑う。

 

「……親父から聞いた。奴は脱走してる。警察は発表してねぇけどな」

「そして、林間合宿で敵連合はステインの脱走を知らなかった。つまりステインと敵連合は別々で行動している……!」

「そんな……!」

「じゃあ、今回の事件を知って……!」

 

 轟と飯田の言葉に衝撃を受ける梅雨達。

 

「爆豪のことだけでも先生達一杯一杯なのに……!」

「ここでヒーロー殺しまで出てくるのかよ……!」

「……これが俺達の定めだとでもいうのか……!」

 

 両手を握り締めて顔を顰める常闇。刃羅に助けられた身として、何も出来ない無力さに苦しめられる。

 他のクラスメイト達も悔し気に顔を歪める。

 その時、切島が苦し気に顔を歪めながら、緑谷に声を掛ける。

 

「だからこそ……居場所が分かる爆豪を速攻で助ける。そんで、乱刀を探し出す!」

『え?』

 

 切島の言葉に轟以外の全員がポカンとする。

 

「い、居場所が分かるって……?」

「実は俺と轟は昨日もここに来ててよ。そこでオールマイトと警察に八百万が話しているのを聞いたんだ。ヴィランの1人に発信機を取り付けたってな」

『!?』

 

 緑谷達は目を見開いて驚く。

 切島が言いたいことが分かったからだ。

 飯田は両手を握り締めながら呻くように声を上げる。

 

「つまり……その受信デバイスを……八百万くんに作ってもらう……と?」

 

 それに頷く切島。

 堰き止めていた怒りが抑えきれなくなった飯田は声を荒げる。

 

「プロが2人倒れているんだぞ!?半数近くの生徒達が命の危機にあったんだぞ!?これ以上はプロに任せるべき案件だ!!俺達の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!!」

「んなもん分かってるよ!!でもさぁ!!なんっも出来なかったんだ!!ダチが狙われてるって聞いてさぁ!!ずっと苦しんできてたって分かってたのに!!なんっも出来なかったんだ!!ここで動かなきゃ俺は!!ヒーローでも、男でも、ダチでもなくなっちまうんだよ!!」

 

 切島も抑え込んでいたものが弾ける。

 爆豪とは仲良くして勉強も教えてもらった。刃羅には合宿中たくさんのことを教わった。ここで簡単に諦めることは納得出来ない。

 

「き、切島。落ち着けよ」

「飯田が正しいよ!!でもさぁ!!緑谷!!手はまだ届くんだよ!!」

 

 切島は緑谷に手を差しだす。

 緑谷は葛藤するように唇を噛む。

 

「ふっ!!ふざけるのも大概にしたまえ!!」

「待て。落ち着け」

 

 飯田が再び怒鳴るが、障子が手を出して制止する。

 

「切島の何も出来なかった悔しさも、轟の眼前で奪われた悔しさも分かる。俺だって、俺達だって悔しい。だが、これは感情で動いていい話じゃない」

「オールマイトに任せようよ。僕達の戦闘許可は解除されてるし」

「青山の言う通りだ。……助けられてばかりだった俺は強くは言えんが……」

 

 障子の言葉に青山と常闇も同意する。

 そこで漸く梅雨が口を開く。

 

「皆、ショックを受けているのよ。切島ちゃん。私だって爆豪ちゃんを救いたいわ。でもね、刃羅ちゃんだって救いたいの。どっちが先なんて……決められないの。私は怖いの。爆豪ちゃんの救出によって、刃羅ちゃんが遠のいてしまうんじゃないかって……」

「梅雨ちゃん……」

 

 梅雨の背中を麗日がさする。

 梅雨の言う通り、爆豪救出により刃羅を奪い返されることを恐れたステインが闇に隠れる可能性は高い。

 刃羅救出にもオールマイトが関わってくることは間違いないからだ。

 それに全員が俯いてしまう。

 

 そこに医師が現れ、緑谷の診察の時間となった。

 それに芦戸達は病室から出ようとするが、切島は小さな声で緑谷に声を掛ける。

 

「八百万には昨日話した……行くなら速攻……今晩だ。重症のおめーが動けるか分からねぇ。それでも誘ってんのはおめーが一番悔しいと思ってるからだ。今晩……病院の前で待つ」

 

 切島はそう言って、病室を出ていく。

 それに緑谷は即答は出来なかった。

 

 

 

 

 耳郎達の見舞いも終えて、病院を出る梅雨達。

 外に出て、すぐに刃羅に電話を掛けるがやはり繋がることはなかった。流女将からも連絡はない。

 先ほどの話もあり、梅雨は自分がどうすればいいか分からなくなっていた。

 刃羅を探しに行きたい。しかし、手掛かりはない。手掛かりを得たとしても、ヒーローや警察以上の動きが出来るわけがない。下手に動いても刃羅の命が危なくなるかもしれない。でも、助けに行きたい。

 堂々巡りの思考の渦に梅雨は囚われていた。

 思い詰めている梅雨に麗日達はどう声を掛けたらいいのか分からなかった。

 

 先ほど百の病室にも顔を少し出した時、百も涙を流していた。

 

「昨日まで隣にいたんです……たった20分。20分離れていただけで……いなくなってしまうなんて。何も出来ないなんて……」

 

 そう言って後悔していた。

 

 沈んだ気持ちのまま帰路に就こうとした梅雨達。

 すると、梅雨達の前に流女将が現れた。

 

「流女将さん……!」

「何か見つかったんですか!?」

 

 芦戸の言葉に流女将は目を伏せて首を横に振る。

 それに肩を落とす麗日達。

 

「ごめんなさい。新幹線に乗ったところまでは分かったのですが……そこからはどうやっても……」

「敵の『個性』……」

「恐らくは……」

「ケロォ……」

 

 梅雨は目尻に涙を溜めて携帯を握り締める。

 流女将は梅雨に近づき、そっと抱きしめる。

 

「私がここに来たのはあなたが心配だったからです。あの子が戻ってきたとき、あなたがボロボロになっていたら悲しむでしょうから」

 

 梅雨の後頭部を撫でながら囁く流女将。

 

「今、私のサイドキックはもちろん、職場体験に行っていたエクレーヌの事務所も動いてくれています。流石に爆豪君ほどの人員ではないですし、大掛かりに動くとマスコミにバレてしまうので限界はありますが……」

「ケロォ」

「大丈夫ですよ。もうちょっとだけ、私達を信じて待っていてください」

「……分かったわ」

「ありがとうございます」

 

 その後、周辺で少し調べ物をするという流女将と別れて、帰宅する梅雨達。

 

 この夜に訪れる悲劇を知る由もなく……。

 

 

 

 

 夜。

 緑谷、轟、切島、百、飯田が爆豪救出に向かうことを決めたころ。

 

 オールマイト達、プロヒーローも動きを見せていた。

 百の発信機、相澤達の供述や警察の捜査により、敵連合の拠点を特定したのであった。

 それに合わせて様々なベテランヒーロー達に召集が掛けられ、一堂に会していた。

 

「そうそうたる顔ぶれが集まってくれたな。さぁ!作戦会議を始めよう!」

 

 警察の塚内による主導で状況と作戦が伝えられる。

 

「今回の最優先は拉致被害者の救出だ。そのため、そっちに主戦力を割くことになる。しかし、生徒が仕掛けた発信機が別の施設にて反応している。そのため救出と同時にアジトを襲撃し、逃げ道を塞ぐ。さらに『プッシーキャッツ』の1人、ラグドールが拉致されている可能性がある。他にも犠牲者がいる可能性も考慮に入れて欲しい」

 

 塚内の言葉に頷くヒーロー達。

 No.2ヒーロー:エンデヴァー、No.4ヒーロー:ベストジーニスト、No.5ヒーロー:エッジショット、No.10ヒーロー:ギャングオルカ

 シンリンカムイ、Mt.レディ、虎、グラントリノ

 そしてNo.1ヒーロー:オールマイト

 

 トップヒーローの半分が顔を揃える事態に緊張感は嫌でも高まる。

 

「……塚内君」

「なんだい?オールマイト」

「……乱刀少女の方は、何か聞いているかい?」

「……残念ながら、これと言った情報は見つかっていないそうだ」

「そうか……」

「まずは目先のことに集中してくれ。彼すらも助けられなかったら、それどころじゃなくなってしまうぞ」

 

 塚内の言葉に頷くオールマイト。

 しかし、どうしても刃羅の事が頭から離れなかった。

 

(ヒーローを信じてくれと言っておいて、この始末か。本当に……情けない……!)

 

 その時、

 

プルルルルル。プルルルルル。

 

 会議室の電話が鳴り響く。

 

「何か動きがあったのか……!?」

 

 塚内が慌てて受話器を手に取る。

 

「どうした?……っ!?何者だ!!」

『!!』

  

 塚内の剣幕に部屋にいた全員が注目する。

 塚内は顔を顰めて、逆探知の指示を手で部下に出しながら、スピーカーモードに変える。

 

「……変えたぞ」

『ゴ協力感謝イタシマス。塚内殿』

 

 部屋に響く無機質な声に全員が顔を引き締める。

 相手はボイスチェンジャーか何かで声を変えていた。この状況で、この部屋にそんなことをしてくるなんて普通ではない。

 

「どうやってここを?」

『ハッキングヲサセテ頂キマシタ。突入前ニオ伝エシタイ事ガアリマシテ』

「……何者だ?」

『今回ノ敵連合襲撃ヲ歓迎スル者、トダケ』

 

 顔を顰めるエンデヴァーや何人かのヒーロー達。完全に内情がバレてしまっている。

 

『時間モナイデショウカラ本題ニイキマショウ。私ハ『ラグドール』ヲ保護シテイマス』

「「「「「!!?」」」」」

 

 目を見開く一同。

 それを聞いた瞬間、虎が電話に詰め寄る。

 

「どこだ!!ラグドールはどこにいる!!」

「虎!落ち着け!」

「ラグドールは無事であろうなぁ!?」

 

 ギャングオルカが虎の肩を掴んで宥めるが、虎はもちろん収まらない。

 その時、

 

『虎ぁ?虎ぁ?』

 

 今度ははっきりとした声が聞こえてきた。

 

「ラグドール!!無事か!?無事なのか!?」

『アハハハハ……多分……目隠しされてるし、動けないから……』

『ゴ安心……ハ出来ナイデショウガ、治療モシテオリマス。流石ニ目隠シト拘束ハサセテモラッテイマスガ、ソレ以外ハ一切手ヲ出シテオリマセン』

「どこだぁ!!」

『今カラオ教エシマス。場所ハ神奈川県横浜市南戸区猫屋町〇✕-△-303号室デス。鍵ハ開イテイマス』

 

 虎は飛び出そうとするが、ギャングオルカに羽交い絞めにされる。

 

「落ち着けと言っている!!1人で行くな!!罠の可能性もあるのだぞ!!」

「ぐうううう!!」

『続イテ、乱刀刃羅ニツイテデス』

「「「な!?」」」

 

 塚内、オールマイト、虎は驚きの声を上げる。

 エンデヴァーやベストジーニストなども聞き覚えがある名前に眉を顰める。

 

『ハッキリト申シ上ゲマス。彼女ハ自分ノ意思デ、アナタ達ノ前カラ去リマシタ。今ハ探ス必要ハアリマセン。コレハ流女将ニモ伝エテイマス』

「……それを信じろと言うのか?」

『私ハ言ウシカアリマセンノデ。ソレデハ、健闘ヲオ祈リシテオリマス』

「待て!乱刀少女はどこ……!」

『ツー。ツー。ツー』

 

 今度はオールマイトが詰め寄るが、すでに電話は切られていた。

 塚内が部下に逆探知がどうだったかを確認するが「先ほどの住所からです」ということだけだった。通話記録の解析を指示して、流女将達に連絡を取るように指示を出す。

 

「虎。君はラグドールの方に行ってくれ」

「よいのか?」

「落ち着かないだろ?問題なければ駆けつけてくれればいい」

「感謝する!」

 

 塚内の言葉に虎はすぐさま飛び出す。

 見送った塚内はオールマイトに目を向ける。

 

「オールマイト!彼女の事は流女将達が動いている!!尚更、この作戦を早く終わらせるぞ!」

「……そうだな。その通りだ!!」

 

 塚内の言葉に頷き、拳を握るオールマイト。

 

(必ず2人を助けて見せる!!!)

 

 そう誓いながら。

 

 

 

 

 

 ある廃ビルにて。

 

「さて……では、行きましょうか」

「……」

 

 たった今、通話を終えた電話を置いて、背後に声を掛ける執事服を着た女性。

 声を掛けられた銀髪の女性は、空き部屋にポツンと置かれたベッドに横たわっている目隠しをされた女性を見つめていた。

 目隠しをされた女性は先ほど少し電話で話しをさせると、すぐに麻酔で眠らされた。

 

 2人は部屋を出て、出口を目指す。

 

「まだ怒っているのですか?刃羅さん」

「当たり前だ。メールくらい前もって送るくらい出来ただろう。鎧関まで使っておいて」

 

 執事服を着た女性、ドクトラをギロリと睨みつける刃羅。

 ドクトラは肩を竦める。

 

「あれだけの作戦をあなた1人に教えた所でどうにもできないでしょう?」

「……それはぁそうだけどぉ」

「ストレディを送っただけでも喜んでもらいたいものです。おかげでラグドールを奪われずに済んだでしょう?スピナーとかいう者の死体も回収させましたし」

「……けっ!」

 

 ラグドールを攫い、森の中で刃羅と出会ったのはストレディだった。

 ストレディの『個性』《収納》。手で触れたものを合計600Kgまで体に収納でき、自身の体もまた開け閉め出来る箱であれば、どんな大きさでも入り込むことが出来る。

 そして鎧関はドクトラが送り込んだスパイだった。ストレディが隠れたサイコロサイズの箱を出撃中に森に捨てて、ストレディは森の中を移動していた。

 敵の標的であるラグドールを先に奪う予定だったが、脳無の方が早かったのだ。しかし刃羅が介入してきたので、隙を突いて収納し、一度箱に隠れた。その後、一度刃羅に声を掛けようとして、スピナー粛清場面に出くわしたのだった。

 

「これでラグドールは問題ないでしょう。後は神野区ですね。すぐに終わればいいのですがねぇ」

「お主がそう言うとすぐに終わった試しはないぞ」

「オール・フォー・ワンが相手では私も予想は出来ませんよ。都市伝説とされたヴィランの生みの親ともいえる存在ですよ?」

 

 ドクトラの言葉に顔を顰める刃羅。

 ドクトラと刃羅は廃ビルを出て、道路を挟んだ対面のビルに入る。

 

「それにしても、良かったのですか?あんな別れ方で」

「……そんな別れ方をストレディに指示を出したんはおめぇだべ……」

「そうではなくて、まるで攫われたかのような状況にしておいて、結局あの電話での言葉ではないですか。どうやっても探しに来ますよ?」

「そのつもりじゃからのぅ」

「はい?」

 

 ドクトラは首を傾げる。

 

「今、下手に動けばマスコミがうるさいのである。いなくなるだけならば敵連合かもしれないと情報は封じられるである。更にあの電話で誰もが情報規制に従うであろう?あんなところに電話をすることが出来る者が相手であるから。そしてこの戦いが終われば、別に雄英生が1人いなくなっても大して騒がれないのである。敵連合やオールマイトに目が行くはずである」

「まぁ……その可能性はありますがねぇ」

「注目が逸れている間に堂々と別れを告げますわ。それでおしまい」

「だといいですが……」

 

 ドクトラは妙に懐疑的だった。

 しかし刃羅は、どうせ戻る気がないのだから、周りが何を言おうとどうでもいいと思っている。

 

「頼んどった装備は持ってきてくれはったかえ?」

「ええ。その部屋に」

「センキュー!」

 

 ドクトラが示した部屋に入っていく刃羅。

 それを見送ったドクトラは顎に手を当てて考えながら自分の待機部屋へと向かう。

 

「……そう上手く行きますかねぇ。まぁ、いいですか。雄英に戻るなら、それはそれで面白いですし」

 

 そして部屋の扉を開けるドクトラは、この後のための手配に意識を切り替えるのだった。

 

 

_________________________

人物紹介!!

 

・ストレディ/多納(たのう) 収未(おさみ)

 

 誕生日:10月10日。身長:165cm。A型。

 好きなもの:収納棚、整理整頓

 

 黒髪ショートパーマに目元を覆うマスクに、黒の羽根つきチロリアンハットを被った手品師風の格好をしている。Bカップ。

 

 20代後半。

 運び屋。ドクトラの組合に所属しているため、普段はドクトラが指示を出すものを運んでいる。

 シャフルとチームを組むこともあり、仕事内容に筋が通っていれば文句は言わない。

 刃羅とはドクトラの依頼で知り合い、顔見知り程度の付き合い。

 

 Mr.コンプレスが大っ嫌い。

 

 個性:《収納》

 手で触れたものを体に収納できる。限界容量は600Kg。それを超える量を入れると一気に体重が全重量分になる。開閉できる箱であれば大きさ関係なく自分の体を収納できる。フェリーや飛行機も箱であれば大きさ関係なく収納できるが、重さは変わらない。

 

 

 

・鎧関/鎧藤(がいどう) 甲大(こうだい)

 

 誕生日:3月30日。身長:214cm。O型。

 好きなもの:相撲、ちゃんこ

 

 黒い髷に浴衣を着ている。脂肪で目が細くなっており、右頬に一筋の傷痕がある。

 

 30代後半。

 傭兵のように全国を歩き回りながら用心棒をしており、最近はドクトラが抱える施設で活動している。

 刃羅とはドクトラの依頼で共に用心棒をした仕事仲間。刃羅からは「苦手」と言われている。

 ヒーロー志望だったがステイン同様、当時のカリキュラムや教育理念に疑問を感じて中退する。その後はヴィジランテ的活動を続けていた。

 

 個性:《肉鎧》

 筋肉を鎧に変える。筋肉が多いほど鎧が硬くなるので、必然的に関取になった。集中力がいるのと鎧のままで1日いると筋肉痛になる。

 刃羅やステインの天敵とも言える『個性』。

 

 

 




ラグドールは無事です。
プッシーキャッツも好きなんですよ。アニメでの姿が特に!
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