ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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#36 入寮

 8月中旬。刃羅を確保した2日後。

 A組一同は雄英高校に集合していた。

 

 雄英敷地内、校舎から5分、築3日。

 『ハイツアライアンス』。

 今日からここが刃羅達の生活の場となる。

 

「すげー!」

「恵まれし子らのー!!」

 

 芦戸達がテンションを上げて、寮を見上げている。寮の入り口の上には【1-A】とデカく掲げられていた。

 それを刃羅は無関心とばかりに集団の後ろで立っていた。隣には梅雨と百。刃羅に声を掛けるが最低限の返事しかなく、少し寂しそうに刃羅を見ていた。

 

「とりあえず1年A組。無事にまた集まれて何よりだ」

 

 相澤が緑谷達に声を掛ける。

 それに感慨深げに頷く緑谷達。

 

「結構大変だったのにさ。林間学校から何だかんだで1週間とちょっとだもんね」

「本当になぁ」

「いいじゃん。集まれたんだしさ」

「だな」

「さて……!これから寮について軽く説明するが、その前に2つ」

 

 相澤が手を叩いて、静かにさせる。

 

「まずは乱刀についてだ」

「刃羅ちゃんの?」

 

 相澤の言葉に全員が刃羅に注目する。

 刃羅は顔を顰めて、胸の下で腕を組む。

 

「雄英には引き続き通えることにはなったが、脱走のリスクが消えたわけではないのは諸君らも分かっているな」

 

 相澤の言葉に緑谷達は少し悲し気に頷く。

 

「諸君らは嫌かもしれんが、学校としては対処せざるを得ん。だから、乱刀の首に発信機付きのチョーカーのようなものを常時身に着けることになった。基本的に外せるのは俺か校長のみ。無理矢理外せば即座に警報が鳴り響くことになっている」

 

 トントンと自分の喉を指し示し説明する相澤。梅雨達は刃羅の首元に確かに黒いチョーカーのようなものが巻かれている。

 

「いい気分ではないだろうが、しばらくは我慢してほしい。それを外せるように諸君らがしっかりと乱刀と信頼関係を築いてほしい」

 

 相澤の言葉に力強く頷く梅雨達。

 刃羅は顔を顰めたまま、黙って大人しくしている。

 

「続いて2つ目だが……轟、切島、緑谷、八百万、飯田、そして乱刀。この6人はあの夜、あの場所に爆豪救出に赴いた」

 

 相澤の言葉に顔を強張らせる一同。刃羅救出で集まった際に話は聞いていたのだ。

 

「そして、その後の乱刀救出には全員が来た。事情などは色々棚上げした上で言わせてもらうよ。オールマイトの引退と乱刀の特殊な事情が無ければ、俺は全員を除籍処分にしてる」

 

 相澤の言葉に目を見開いて固まる緑谷達。

 

「彼の引退でしばらくは混乱が続くだろう。敵連合、そしてヒーロー殺し達の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかない。理由はどうあれお前達は俺達の信頼を裏切った形だ。今後は正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい」

 

 そして、相澤はくるっ!と寮に体を向ける。

 

「以上!さっ!中に入るぞ。元気に行こう」

「行けるかい。ドアホ」

 

 流石に刃羅がジト目で突っ込む。

 

 その後、爆豪が上鳴を茂みに連れ込み爆発と電撃が響く。直後『ウェイ上鳴』が飛び出し、それがツボの耳郎が噴き出し、他の者も笑い出す。

 それで雰囲気が戻った一同は寮の中に入っていく。

 

 1棟1クラス。

 右が女子棟、左が男子棟に分かれており、1階は共同スペース。食堂・風呂・洗濯なども1階だ。

 共同スペースにはソファやテレビが置いてあった。

 それにテンションが上がる一同。

 

「広!キレー!そふぁああああ!!」

「おおおお!!」

「中庭あるじゃん!」

「豪邸やないかい」

「麗日くん……!」

 

 なんとエレベーターまで完備されており、2~5階が各部屋で1フロア男女それぞれ4部屋だ。

 部屋を覗いた全員が目を見開く。部屋はエアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット、ネット完備の贅沢空間だった。テレビも設置可能だ。

 

「すごいなぁ!」

「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね……」

「豪邸やないかい!」

 

 そして1階に戻り、相澤が部屋割りを発表する。

 刃羅は5階で梅雨と百と同じフロアとなった。

 

「蛙吹、八百万」

「「はい」」

「これを渡しておく」

 

 相澤が2人に手渡したのは鍵だった。

 

「これは何かしら?」

「乱刀の部屋の鍵だ。お前達には乱刀の監督役をしてもらう」

 

 梅雨と百は間にいる刃羅を見る。刃羅は相変わらず腕を組んで黙っている。

 

「ちなみに窓も鍵がかかってる。窓が開くと警報が鳴る」

「そこまで……」

「ケロ……」

「それだけの事をしたってことだ。まぁ、どういう風に監督するかはお前らに任せる」

 

 そして、本日は部屋作りとなった。

 

「八百万」

「はい」

「あれ、お前の部屋に入らなかった荷物だ」

 

 相澤が指差した先にはピラミッドのように積まれた段ボール。

 それを梅雨と刃羅が唖然と見上げる。

 

「これ全部ぅ?」

「凄い量ね」

「どうしても必要な分だけ選んで送り返せ」

「ええ!?そんな!?」

「物が多いのも考えものでござるな」

「そうね」

 

 梅雨と刃羅は落ち込んでいる百を放置して部屋に向かう。

 一番端の部屋が梅雨。その隣が刃羅。一部屋空いて、百の部屋となっている。

 刃羅の荷物は流女将が送っていた。

 

 部屋に入り、制服を脱いだ刃羅は青の甚平に着替える。

 

「さっさと終わらせるか」

 

 ベッド、机、タンスは備え付けの物を使うことにした。

 どうやら流女将の部屋で使っていたものは、ほぼそのまま送って来たようだ。刃羅はクリアボックスをクローゼットに突っ込んで、梅雨達と買った服を吊るしていく。タンスに下着や部屋着を突っ込んで、教科書を机に並べる。そしてベッドにシーツを敷く。

 1個段ボールが残り、首を傾げる。服は全て出している。もう荷物はないはずだ。

 段ボールを開けると、中にはカップ麺と電気ポッド、割り箸が詰められていた。

 

「……」

 

 一番上にメモがあり、それを開く。

 

『1日1つ。食べ過ぎないようにしてくださいね。麺類ばかりじゃなく、バランスよくご飯は食べてください。体を大事に』

 

 流女将の文字だった。

 

「……うっせぇよ」

 

 ポットをタンスの上に設置して、タンスの横にカップ麺が入った段ボールを置く。

 これで全て終了した。開始してまだ1時間だった。

 刃羅はフローリングに座り、ベッドにもたれ掛かり座禅を組む。そして目を瞑る。

 

「……私が犠牲になって、取り戻した『英雄』は認めない…か」

 

 刃羅は梅雨の言葉を思い出して、顔を顰める。

 『英雄』は犠牲があるから、そう呼ばれるに足る。そう刃羅は考えていた。犠牲が出ない世界に『英雄』は必要ないからだ。誰かが倒れ、誰かが血濡れて、それでも弱き者のために立ち上がるから『英雄』なのだ。

 しかし、

 

「……『英雄』を生み出すために犠牲になるのは違う…ということかのぉ」

 

 梅雨の真意を考える刃羅。

 その後も色々と考えていく。もちろん答えなど出るわけがない。

 ただ、

 

「あそこまで来させて、あそこまで言わせて、捕まったからと不貞腐れているのは……情けないにも程があるか。今度は我がステインに怒鳴られる」

 

 どんな形であれ、不本意であれ、こうなった以上適当にやることは()()()()()()()()()()()()()()()

 あそこまで色々と啖呵を切った以上、情けない姿は晒せない。

 そう吹っ切る刃羅であった。

 

 

 

 瞑想を続けていると、ドアをノックされる。

 

「ん?」

「刃羅ちゃん。入ってもいいかしら?」

「構わんのである」

「お邪魔するわ」

 

 入ってきたのは梅雨だ。梅雨は体操服に着替えていた。

 

「もう終わったの?」

「わっちは荷物やほぼありまへんよって」

「私はもう少しかかりそう。百ちゃんはどうしてるのかしら?」

「まだ気配はないでござるな」

 

 梅雨は刃羅が答えてくれることに笑顔を浮かべる。

 休憩がてら1階に様子を見に行く2人。

 そこで見たのは、

 

「銀の食器セットは……いらない。絵画も……1枚でいいですわね。ティーセットは……皆さんにも飲んで頂きたいですし……」

 

 唸りながら取捨選択に未だ追われている百。

 まだ段ボールの山の半分も見れていないようだった。

 

「……もう誰もいない2階全部を百の部屋にしてやったらどうだ?」

「今日中に終わりそうにないわね」

「あ……蛙吹さん、乱刀さんも……」

「一体何を持ってきたのかしら?」

「えっと……最新式家電一式に、イブ二ングドレスに、世界中の図鑑と百科事典に、ティーセットに、食器に、絵画に……」

「「……」」

 

 『お前は何しに来た』と内心ツッコむ刃羅と梅雨。

 特にイブニングドレスは何の式典に出る予定なのだろうか。

 

「ドレスなんて何処で着るつもりだ?」

「パーティーの授業があったときに……」

「あるわけねぇべ」

「家電も最新式ばっかりよ。百ちゃん」

「マイルームでティーにケーキをクックするなら別デースが」

「……流石にそこまでは……」

「電子レンジとか食器は食堂に寄付してもいいでしょうけど……洗濯機はもう置くところはないわ」

 

 ジト目で百にダメ出しする刃羅達。

 2人も手伝って必要なものを選別し、部屋に運んでいく。

 そして百の部屋に入り、更に呆れる刃羅と梅雨。

 

「……ベッドとぉ本棚がぁ大き過ぎぃ」

「本当にお嬢様なのね。百ちゃん」

「あのベッドってぇん、どうやってぇん入れたのかしらぁん?」

「百ちゃん、この部屋にあの段ボールの中身は無理だと思うわ」

「まさかここまで狭いとは思ってなくて……」

 

 天井ギリギリの天蓋付きベッド。どうやっても部屋の扉よりも大きい。そして分解できるようなものでもない。

 物を運ぶ『個性』を使わせたのだろう。そこまでさせたのは雄英かそれとも八百万家かは分からないが。

 刃羅はその後も百の手伝いをする。梅雨は途中で自分の部屋の片づけに戻った。

 

「すいません。乱刀さん」

「まぁ、構いませんが……送り返すだけでも一苦労ですわねぇ」

「……反省しますわ」

「とりあえず~これで全部かな~?」

「はい!後は自分でやりますわ!ありがとうございましたわ!」

 

 仕分けした荷物を運び終えると、百はフンスと両手を胸の前で握って気合を入れて部屋に入っていく。

 刃羅は部屋に戻ろうとすると、反対側の男子棟5階で何か大きいものが動いているのが見えた。

 

「……轟屋か。……畳?」

 

 轟は畳を運んでいた。

 

「畳なんてどこから持ってきたのよ……。そういえばエンデヴァーの息子だったっけ。金持ちの可能性はあるか……」

 

 呆れた顔で轟の行動を見つめる刃羅。

 畳を部屋に持ち運んでどうする気なのか。気にはなるが、流石に反対まで行くのは面倒なので部屋に戻る刃羅であった。

 

 

 

 

 ATTOIUMANI……YORU。

 

 部屋の片づけが終わった男子は、1階の談話スペースに集まっていた。

 

「疲れたー」

「共同生活ってワクワクすんなぁ!」

「共同生活……これも協調性や規律を育むための訓練……!」

「気張るなぁ。委員長」

 

 ソファでダラけている切島の後ろで飯田がカクカクと腕を動かして気合を入れていた。

 それを緑谷達は苦笑して見ていた。

 そこに刃羅達女性陣も降りてくる。

 

「男子部屋出来たー?」

 

 芦戸が声を掛ける。

 

「うん。今くつろぎ中って乱刀!?服ヤバいって!」

「谷間ーーーー!!!」

「あぁん?」

 

 上鳴が手を上げて答えると、刃羅の甚平を見て顔を赤らめる。

 刃羅の甚平は前が少し開けており、谷間がかなり露出していた。それに峰田が目を見開いて叫びながら興奮する。

 刃羅は髪も下ろしており、下もホットパンツ位なので太ももが露出しており妙にエロイ。

 梅雨と百が呆れたように刃羅を見る。

 

「峰田ちゃんが喜ぶだけだから、着替えたらッて言ったのだけど」

「面倒だと押し切られてしまいまして……」

「興味もない男共に見られたところでどうでもいいのです」

「「ちくしょー!!」」

「乱刀くん!!だからと言って、そのような刺激が強い服を着るのは……!」

「その前にそこの葡萄頭のセクハラ発言注意せぃ」

「む……確かに……!」

 

 刃羅の言葉に上鳴と峰田が崩れ落ち、飯田が刃羅を咎めるが、簡単に言い包められる。

 

「でね!今話しててね!提案なんだけど!お部屋披露大会!!しませんか!?」

『……え?』

 

 芦戸の言葉に男子数名が絶句する。

 しかし芦戸達の勢いそのままに部屋を見に行くことになった。

 

 まずは男子棟2階。

 緑谷の部屋。

 

「わああ!!ダメダメ!ちょっと待っ……!!」

 

 緑谷は止めるも容赦なくドアを開けられる。

 部屋中オールマイトで埋め尽くされていた。

 

「おお!!オールマイトだらけだ!オタク部屋!」

「緑谷ちゃんらしいわね」

「憧れなんで……恥ずかしい……」

 

 緑谷が顔を真っ赤にして俯いている。

 刃羅は集団の後方で面倒臭そうに壁にもたれている。

 

「人の部屋見て楽しいアルか?」

「俺は興味ねぇ」

「俺もだな」

 

 同じくどうでもよさげな轟と障子も刃羅の言葉に頷く。

 轟の声を聞いて、あることを思い出した刃羅。

 

「そういえば、轟殿。畳を運んでいたが何処から持ってきたのだ?」

「学校の粗大ごみ置き場だ。色々あってリカバリーガールから教えてもらった」

「部屋の床を全部畳にしたのか?」

「ああ。家が日本家屋でよ。フローリングとか落ち着かねぇんだ」

「……百と言い、あんさんも面倒なやっちゃなぁ」

「そうか?」

 

 障子と刃羅は呆れながら轟を見る。

 轟は不思議そうに首を傾げるが、それ以上刃羅達は何も言わなかった。

 その後も部屋を見ていき、峰田達が何故か対抗心を出して、女子の部屋も見せろと言い出す。

 それに芦戸が同意し【第1回部屋王】を決める事になった。

 

「梅雨。まだ付き合わなければ駄目か?」

「駄目よ。刃羅ちゃん」

「人の部屋に興味などないのだがね」

「一緒に居ることが大事なの」

 

 梅雨の言葉にガックリと肩を落とす刃羅。

 その様子を少しだけ嬉しそうに見る麗日達。

 そして轟の部屋を見に行く一同は、扉を開けると目を見開いた。

 

「和室だ!?」

「造りが違くね!?」

 

 フローリングは畳に変わり、カーテンは障子に変わっていた。

 

「……どれだけゴミ置き場から持ってきたのよ……」

「壁まで変わってるな」

「あいつは来年寮を移ること理解しとるんかいな?」

「してないだろうな」

 

 刃羅と障子はもはや轟に何か言うのは諦めていた。

 次の砂藤の部屋ではシフォンケーキが振舞われた。

 刃羅以外の女性陣はそれに食いつき、笑顔で頬張る。

 

「あまぁい!フワッフワ!」

「ボーノ!ボーノ!」

「素敵なご趣味をお持ちですのね。砂藤さん!今度私のお紅茶と合わせてみません!?」

「とても美味しいわ。砂藤ちゃん」

「オォ…こんな反応されるとは……」

 

 砂藤は梅雨達の反応に照れて顔を赤くする。

 轟や障子達と後ろでモチャモチャと食べる刃羅。

 

「ングング……ンマンマ……障子君の複製腕って胃袋に繋がっているのです?」

「ああ」

 

 と、どうでもいいことを話しながら。

 

 その後は女子棟も見て回る。

 最後に5階に上がり、梅雨の部屋。

 

「私も普通の部屋よ」

 

 梅雨の部屋は窓横に観葉植物が置かれており、緑色を基調としたカーペットにシーツが敷かれている。

 

「なんか落ち着く~!」

「梅雨ちゃんっぽくて可愛い!」

「ケロ」

 

 麗日達の反応に照れるように笑う梅雨。

 そして次は刃羅の部屋。

 

「何も~見るものは~ないよ~?」

「ショッピングモール行くときも何もなくて驚いたもんね。外出用の服すらほとんどなかったもん」

「あぁ……だから皆で集まったんだ?」

「そうよ。今着てるような服しか持ってなかったもの」

「めっちゃ買ったよね~」

 

 そして開けた部屋は、ぶっちゃけモデルルームそのままだった。

 

「そのまま!」

「障子の部屋よりはあるけどな」

「ベッドやらを出すのも面倒じゃっただけじゃ」

「そんな理由かい!?」

「俺っちは寮の部屋の要望は出してなかったかんな。モデルルームのまんまだったんだよ」

「なるほどな」

 

 耳を小指でほじりながら話す刃羅に納得する一同。

 

 そして最後。百の部屋だ。

 巨大なベッドと本棚が部屋を占拠していた。

 

「私、見当違いをしてしまいまして……皆さんの創意溢れるお部屋と比べて……少々手狭になってしまいましたの」

「でけぇー!狭!?どうした八百万!?」

「私の使っていた家具なのですが……まさかお部屋の広さがこれだけとは思っておらず……」

「段ボールだけでも3部屋は埋め尽くせるほどだったものね」

「ドレスやら家電一式やら……一軒家にでも行く気だったのかと思ったぞ」

「ご迷惑をおかけしました!」

「シーツやらの洗濯は自分でやるのだよ」

「分かっていますわ!」

 

 刃羅の言葉に顔を赤らめながらも力強く頷く百。

 偉そうに言う刃羅だが、刃羅も流女将にやってもらっていたので人の事は言えなかったりするのだが、梅雨達は知らないので誰もツッコむことはなかった。

 

 

 

 1階に集まり、誰の部屋が良かったのかを投票する。

 

「えー。それじゃあ皆さん!投票はお済でしょうか!?自分への投票はなしですよ!?」

 

 芦戸が箱を持って全員に呼びかける。

 

「それでは!爆豪を除いた……第1回部屋王暫定1位の発表です!!」

 

 結果は……。

 

「投票数5票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は……!!砂藤ー!!力道ー!!」

「はああ!?」

 

 結果に砂藤が目を見開いて驚く。

 

「ちなみにその5票は梅雨ちゃんと刃羅以外の女子!理由は『ケーキ美味しかった』だそうです」

『部屋は!?』

 

 告げられた理由に上鳴達が叫ぶ。

 

「ちなみに梅雨ちゃんと乱刀はどこに入れたんだ?」

「私は轟ちゃんよ」

「おいらは梅雨だべ」

 

 上鳴や峰田達が砂藤に抗議している横で、切島が刃羅達に声を掛ける。

 終わったことでそれぞれが就寝に動こうとした時、緑谷が声を上げる。

 

「あ。飯田君!乱刀さん!ちょっといいかな?」

「ん?なんだ?緑谷くん」

「ほえ?」

 

 飯田と刃羅が緑谷に顔を向ける。近くにいた切島、梅雨、轟も緑谷に顔を向ける。

 緑谷は2人に近づく。

 

「2人にお願いがあって……」

「お願い?」

「うん。乱刀さん林間合宿で言ってたよね?僕の攻撃は拳だけで読みやすいって」

「そやね」

「実は……あの戦いで腕に爆弾が出来ちゃって。あの時と同じ怪我をすると、もう腕が使えない生活になるかもしれないんだ」

「何だって……!?」

「マジかよ……!?」

 

 緑谷の言葉に刃羅以外の4人が目を見開く。

 かなりの大怪我だったことは見ていたので知っていたが、そこまでとは思っていなかった。

 刃羅は腕を組んで緑谷を鋭く見つめる。

 

「……なるほど。だからマガクモに飛び掛かった時に蹴りを使ったのだな?」

「うん」

「緑谷ボーイのお願いはキックメインのバトルスタイルのコーチデースね?」

「うん」

「なるほど。もちろん構わないぞ!君に教えることで俺も見直す事にもなる!」

 

 刃羅の推測に頷く緑谷。

 飯田は納得して頷き、ビシィ!と腕を伸ばして快諾する。

 

「ありがとう!飯田君!」

「ほなら基本的には飯田坊っちゃんに教わりなはれ。男と女では体の使い方が異なるさかい。わっちは時折アドバイスか組み手の相手してあげますよって」

「十分だよ!ありがとう!」

「ケロケロ」

 

 刃羅の言葉に緑谷が頭を下げ、梅雨が刃羅の横でニコニコと笑う。

 

「乱刀!俺も俺も!また組み手してくれ!」

「何その話!?ずるい!刃羅~!私も格闘術教えてよ~!」

「あ!私も!」

「私もお願いしますわ!武器の取り扱いなども教えて欲しいです!」

 

 切島がガン!と拳を合わせて声を上げると、芦戸、麗日、百も刃羅に指導してほしいと詰め寄る。

 刃羅は顔を引きつかせるが、さりげなく梅雨が後ろに回り込んで逃げ道を塞ぐ。

 

「梅雨ちゃん!?」

「ケロケロ……モテモテね。刃羅ちゃん」

 

 梅雨は笑って、後ろから刃羅の腰に抱き着く。芦戸達も刃羅の腕や腰に抱き着いて笑いながら、刃羅に詰め寄り続ける。

 

 それに峰田や上鳴が鼻を伸ばして、耳郎にプラグを刺されて爆音を流されて撃沈させられる。

 

 葉隠も飛び掛かり、慌てふためくも振り解かない刃羅を轟や緑谷達は微笑んで見つめる。

 

 いつもの日常が戻ってきた。

 

 様々な不安を乗り越えて、【1-A】はまた前に向いていく。

 

 

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