ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

44 / 54
鎌切君。やはり刃羅と『個性』丸被りでした。
ある意味もったいなかったかもしれませんね(-_-;)



#44 仮免試験開始!

 ヒーロー仮免試験当日。

 刃羅達は試験会場に到着した。

 

「降りろ、到着だ。試験会場、国立多古場競技場」

 

 バスを降りた目の前には巨大な競技場が建っていた。

 会場が見えたことで緑谷達は緊張が高まり、ソワソワしてきていた。

 

「この試験に合格し仮免許を取得できればお前達タマゴは晴れてヒヨッコ。特に乱刀」

「ほえ?」

「お前は落ちたら容赦なく留年だからな。気合入れろよ」

「へ~い」

「ちゃんとして刃羅ちゃん」

 

 梅雨の言葉に刃羅は肩を竦めるだけで答える。

 

「いよっし!不安も緊張もいつもの一発決めて吹き飛ばそうぜ!」

 

 切島が空気を変えるように、声を上げる。

 それに緑谷達も乗り、拳を構える。

 

「せーのっ『Plus……!」

 

「Ultra!!」

 

 そこに黒帽子を被った丸刈りの男が掛け声に参加してきた。

 その後ろにいた同じ服装の者達が、丸刈りの男に注意する。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるものではないよ。イナサ」

「ああ、しまった!!」

 

 イナサと呼ばれた男はハッとして、唐突に頭を地面に叩きつけて謝罪する。

 

「どうも!!大変!!失礼致しましたぁ!!」

『ヒイィ!?』

 

 余りに唐突の出現、そして思い切りのよい頭突きの謝罪に緑谷達は慄く。

 

「なんだ!?このテンションだけで乗り切る感じの人は!?」

「切島と飯田を足して二乗したような……!」

 

 戸惑う上鳴達。

 その周囲では他の受験者達が緑谷達やイナサを見て目を見開いている。

 

「おい、あの制服って……!」

「アレじゃん!西で有名な……!」

 

 その声に応える爆豪が呟く。

 

「東の雄英。西の士傑」

 

 士傑高校。

 数あるヒーロー科を抱える高校の中でも雄英と並ぶ難関校である。

 

 するとイナサがガバァ!と体を起こす。

 

「一度言ってみたかったっス!!プルスウルトラ!!自分、雄英高校大好きっス!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス!よろしくお願いします!!」

 

 ドロッと額から血を流しながら、元気よく話すイナサ。

 そしてイナサは他の者達に連れられて会場へと向かっていった。

 その後ろ姿を見ながら、相澤が呟く。

 

「夜嵐イナサ」

 

 それに葉隠が反応する。

 

「先生知ってるんですか?」

「夜嵐イナサ。あいつは昨年度……つまりお前達の年の推薦入試でトップの成績で合格したにもかかわらず、何故か入学を辞退した男だ」

 

 その言葉に周囲は目を見開く。

 

「え!?じゃあ、1年!?ていうか推薦トップの成績って……!」

 

 緑谷は冷や汗を掻きながら、轟を見る。

 それは轟や百より実力が上ということだ。

 その事実に切島達も腕を組んで唸る。刃羅も腕を組んで、イナサを見る。

 

「そして2年生と一緒に仮免を受けることが出来る程の実力者ということであるな」

「あ!?」

「そういうことだ。ありゃあ、強いぞ」

 

 相澤も認めたことにゴクリと唾を飲む緑谷達。

 すると刃羅がスパァン!と緑谷の頭を叩く。

 

「いた!?」

「何をビビっておるのじゃ。あ奴が推薦トップじゃろうが、お主らがすることは変わらんじゃろうが」

「そ、それはそうだけど……!」

「我らは1年全員で仮免試験を受けれる。奴が推薦でトップを取った時の貴様らと今の貴様らとは、もう天と地も離れているだろうが。士傑如きにビビるな」

 

 刃羅の言葉に一瞬目を見開く緑谷達。

 すぐに発破をかけてくれているのだと理解し、力強く頷く。

 

「ケロケロ」

「流石ですわね」

「ふん」

 

 刃羅の横で梅雨と百が笑い、刃羅は腕を組んでそっぽを向く。

 それに緑谷達も笑っていると、そこに更に近づく者が現れる。

 

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!!」

 

 かけられた声に相澤がビクリと震え、顔を顰めながら声がした方を見る。

 そこにいたのはオレンジのバンダナを巻いた緑髪の女性がいた。制服ではなく、相澤に声を掛けたことからプロヒーローであると推測するA組達。

 

「テレビや体育祭で姿は見たけど、こうして直で会うのは久しぶりだな!!」

 

 笑顔で声を掛けてくる女性ヒーローに相澤は渋い顔を隠すこともしなかった。

 そして近寄ってきた女性ヒーローに緑谷は目を見開いて、刃羅は顔を顰める。

 

「あの人は……!」

狂笑(きょうしょう)……」

 

 スマイルヒーロー『Ms.ジョーク』。『個性』《爆笑》で強制的に笑わせて、思考や行動を鈍らせる戦闘スタイル。ジョークがいる戦場は狂気に満ちているらしい。

 

 刃羅が呟いた言葉が聞こえた梅雨や百、飯田が首を傾げる。

 

「狂笑?」

「戦闘中に強制的に笑わされるんや。そのせいでまともに戦えんようになる。ヴィランではそこそこ有名な奴や。うちやステインみたいな接近戦メインのもんは関わりたぁない奴やな」

「なるほど……」

 

 強制的に笑わされるということは、呼吸を乱されるということ。それによって体の力みが乱れたり、呼吸困難になることで動きが鈍りかねないのだ。

 

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭になるんだぞ?」

「お前に限ってはその家庭は幸せじゃないだろ」

「ブハ!!」

 

 本気なのかジョークなのか分からない求婚をしているジョーク。それに相澤が返答して吹き出している。

 どうやら顔なじみのようだ。

 

「お前の所もか」

「そうそう、おいで皆!!雄英だよ!!」

 

 ジョークが後ろにいる集団に声を掛ける。

 

「おお!本物じゃないか!!」

「すごいよすごいよ!テレビで見た人ばっかり!」

「1年で仮免?へぇー。随分ハイペースだね。まぁ、色々あったからねぇ。流石やることは違うよ」

「傑物学園2年2組!私の受け持ち。よろしくな」

 

 すると黒髪のイケメンが緑谷の手を握る。

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!」

「えっ?あ」

 

 真堂はササッと他のA組の面々にも握手をしていく。

 

「しかし君達はこうしてヒーローを目指し続けてるんだね。素晴らしいよ!不屈の心こそ、これからのヒーローが持つべき素養だと思うんだ!」

「まぶしい……!!」

 

 さわやかな笑顔で言葉を紡ぐ真堂。

 上鳴達はそれに感心しているようだが、刃羅は目を細めて胡散臭げに真堂を見ていた。

 

「中でも神野事件を中心で経験した爆豪君!」

「あ?」

「君は特別に強い心を持っている。今日は君達の胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

 

 真堂が爆豪に手を差し出す。それを爆豪は顔を顰めながら払い退ける。

 

「フかしてんじゃねぇ。台詞と面があってねぇんだよ」

「こら、おめー失礼だろ!」

 

 切島が注意するが、爆豪は取り合わない。

 真堂はそれに気分を害していないと笑顔で答え、他の者にも挨拶して回る。

 

 そこに相澤が準備に動くように声を掛けて、移動を始める。

 

「やっぱ結構有名人なんだな。雄英生って」

 

 上鳴が気分よさそうに歩いており、その横で耳郎も恥ずかしそうに頷いて歩いている。

 

「……上鳴。お前はあの男が言っていた意味を理解しているのか?」

「え?」

 

 刃羅が呆れた目で上鳴に声を掛ける。

 それに上鳴や他の者達も首を傾げる。刃羅は真堂達が離れていることを確認して、上鳴達に向き直る。

 

「あいつは遠回しに『俺は君達を知っている』って言ってんだぞ?この意味分かってんのか?」

「へ?」

「はぁ……つまり吾輩達のことを調べていると言ったのである」

『!?』

 

 刃羅の言葉に上鳴達は目を見開く。

 刃羅は呆れた目で言葉を続ける。

 

「体育祭であれだけ騒がれたのだよ?彼らがそれを見ていないとでも思うのかね?唯一、ライバルである雄英ヒーロー科の生徒の『個性』を見られると言うのに?」

「あ……」

「特にA組はUSJ事件で注目されていたのです。そして、体育祭でもA組ばかりが目立ったのです。ここにいるほぼ全員の『個性』はバレているはずなのです」

「……でも、僕達は誰も知らない」

「その通り~。つまり私達は~アドバンテージを失っているのさ~。さて~手の内が分かっている者と~分かってない者~。どっちが狙いやすい~?」

 

 刃羅の問いかけに、上鳴達は仮免試験で起こりうる事態にようやく理解する。

 

「ちょ……え?……まじ?」

「競争的な試験だった場合、間違げぇなく雄英は狙われんべ」

 

 ゴクリと唾を飲む上鳴達。

 

「んなもん、どうだっていいんだよ!」

「爆豪……!」

「どうせやり合えばバレんだろうが。全員、正面からぶっ殺せばいいだけだ!」

「ま、そうゆうことやね。士傑の時に言うたんと同じ。やることは変わりまへん。どうせプロになったらバレることやよって。相手の狙いごと、踏みつぶせばええどす。故にPlus Ultraやよって」

 

 やることは変わらない。待ち受ける戦いは厳しい。されど、それを乗り越えるだけ。

 いつもやっていることをやる。

 緑谷達は改めて気を引き締める。

 

 

 

 

 コスチュームに着替えたA組一同は、会場に入る。

 会場内を埋め尽くすほどの受験者に緑谷達は目を見開く。

 

 すると、壇上に疲れ全開の男が立つ。

 

「え~……ではアレ、仮免のやつをやります。僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」

 

 今のも倒れそうな顔で自己紹介をする目良。

 

「仕事が忙しくてロクに寝れない……!人手が足りてない……!眠たい……!そんな信念の元、ご説明させていただきます」

 

 目良の様子を心配そうに見つめる受験者一同。

 

「ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいます」

 

 目良の唐突な説明にざわつく受験者達。

 それに刃羅は腕を組んで顔を顰める。

 

「いきなり厄介な……」

「刃羅ちゃんが言ってた通りになりそうだわ」

「もはやそう思って備えるべきですわね」

「マジかよ~……!」

 

 峰田がビビりながら周囲を見渡す。

 目良は説明を続ける。

 

「現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステインの逮捕以降ヒーローの在り方に疑念を呈する向きも少なくありません」

 

 英雄回帰。

 緑谷達は刃羅を見ながら、その言葉を思い出す。

 

「まぁ、一個人としては、動機がどうあれ命がけで人助けをしている人間に『見返りを求めるな』は……現代社会において無慈悲な話だとは思うワケですが……。とにかく、対価にしろ義勇にしろ、多くのヒーローが救助・敵退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間はヒくまでに迅速になっています。君達は仮免許を取得し、いよいよその激流の中に身を投じる。そのスピードについていけない者ははっきり言って厳しい」

 

 目良の言葉に受験者達は顔を引き締める。

 しかし次の言葉に目を見開くことになる。

 

「よって試されるはスピード!条件達成者、先着100名を通過とします」

 

 1540人中100人のみ。

 恐ろしいまでの厳選にざわつく受験者達。

 

「……ヒーロー飽和。そしてステインの英雄回帰にオールマイトの引退。量ではなく質、ということじゃな」

「そうですわね」

「これはぁ……結構厳しいぃ試験になるかもねぇ。一次試験でぇこれだもんねぇ」

「ケロ。そうね。頑張りましょう」

 

 梅雨の言葉に頷くA組面々。

 

「で、その条件と言うのがコレです」

 

 目良が取り出したのは手のひらサイズの機械とボール。

 

 受験者は3つ、ターゲットを他人からよく見える体の好きな場所に取り付ける。

 そしてボールは1人6つまで所持できる。ターゲットはボールが当たると発光する仕組みで、3つ発光した時点で失格となる。

 ただし、3つ目のターゲットにボールを当てた人が『倒した』ことになり、2人倒した者から勝ち抜きとなる。

 

「常に周囲を観察する必要があり、連携を意識させてますわね」

「ええ。しかも2人抑え込まないといけないことからも、チーム内でも誰がターゲットにボールを当てるかが大事ですね」

 

 刃羅と百はルールを吟味して、作戦を練る。

 チームを組んでも1人の者がさっさと2人倒してしまうと連携が崩れる可能性がある。

 

「最低でも人数分の相手を同時に抑え込む必要があるであります。さらにその間、他の者達に3つ目をかすめ取られないように注意しながら」

「……中々厳しいわね」

「かと言って単独行動も厳しいですわね」

「えー……じゃあ展開後、ターゲットとボールを配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートです」

『展開?』

 

 目良の言葉に首を傾げる受験者。

 すると会場の天井や壁が開いて行く。

 開ききると、そこには山や森、工場、街など様々なフィールドが広がっていた。

 

「……雄英がマネーを掛けるリーズンがディスデースか」

「大掛かりだね!」

「こりゃ更にムズイなぁ」

 

 刃羅は呆れながらターゲットとボールを受け取る

 葉隠が緊張でハイテンションになり、砂藤がフィールド選びで唸る。

 

 刃羅はターゲットを腹部に横に2つ、背中に1つ設置する。そしてボールが詰められたバッグを腰にセットする。

 

 すると爆豪、切島、上鳴が飛び出し、轟も1人で走り出す。

 それに緑谷は顔を曇らせる。

 

「緑谷。今は乗り切ることに集中するアル」

「乱刀さん」

「始まった瞬間に来ると考えるでござる。皆の者、下手にボールを投げてはいかんでござる!相手のボールとぶつかっては投げ損でござるからな!」

「確かに!」

「ってことは、捕縛優先だな!」

 

 緑谷達は山フィールド方向に移動する。

 そしてカウントダウンが始まる。

 すると、やはり緑谷達に近づく気配を感じ取った。

 

「来るよ!!」

『おう!!』

 

『2……1……START!!』

 

 合図と同時に目の前の岩陰から大量の人影が飛び出してきた。

 その中には先ほどの真堂達がいた。

 

「自らをも壊す超パワー、それに刃を生やす体。まぁ……杭が出れば、そりゃ打つさ!!」

 

 そして全員が同時にボールを緑谷達に向かって投げる。

 大量のボールが緑谷達に迫る。

 

「生温いわぁん」

 

 刃羅は不敵に笑いながら、両腕と左脚を蛇腹剣に変えて舞う。

 その周囲では緑谷がボールを蹴り飛ばし、芦戸が酸で溶かし、瀬呂がテープで防ぎ、常闇が黒影で弾き、百が盾を生み出して防ぐ。

 誰1人としてボールが当たる者はいなかった。

 

「締まって行こう!」

 

 緑谷が全員に声を掛ける。

 

 それを真堂達はある程度予想していたので、そこまでショックはなかった。

 

「ほぼ弾くかー」

「こんなものでは雄英の人達はやられないな」

「けどまぁ、見えてきた」

 

 すると仲間内でボールを手渡す。

 ボールを受け取った者が腕を大きく振ってボールを投げる。そのボール達は地面に突き刺さり、地面を掘り進んでくる。

 

「皆下がって!ウチやる!」

 

 そこに耳郎が両腕のアンプにプラグを突き刺して、それを地面に当てる。

 

「ハートビートファズ!」

 

 耳郎が地面に音を響かせて、地面を砕く。

 それによりボールが地面から飛び出て峰田に向かう。

 

「おいらに来てるぅ!?」

「よよい!」

「粘度、溶解度MAX!アシッドベール!」

 

 刃羅が右腕を薙刀に変えて斬り払い、残りを芦戸が溶解液を壁のように放出してボールを塞き止めて溶かす。

 

「助かった!いい技だな!」

「へっへーん!どろどろにして壁を張る防御技だよー!」

「隙が生じた!ブラックアンク!宵闇よりし穿つ爪!!」

 

 耳郎の攻撃で地面が砕かれてバランスが崩れたところを常闇が逃さずに黒影を巨大な手のように伸ばす。

 真堂の近くにいた女子生徒に迫るが、その女子生徒は上半身を体に埋めて逃れる。

 

「危な!ふぅー……強い」

「体育祭で見てたA組じゃないや。成長の幅が大きいんだね」

 

 真堂も流石に顔を引き締める。

 すると、

 

「ふっ!」

「!!」

 

 刃羅が真堂に向けてボールのようなものを投擲する。それを避ける真堂は投げられたものを見て、目を見開く。

 

「石!?」

 

 それはボールと同じ大きさの石だった。

 

「ふむ。君は攻撃系の『個性』ではないようだね」

「!?」

「それに今も特に攻撃しない。触れることで発動するタイプか」

 

 刃羅は真堂の回避行動で『個性』の特徴を見抜く。

 その言葉に真堂や周囲の者は目を見開く。

 

「あれだけで……!?」

「十分だろう。回避行動は、人の得手不得手を表す。ヴィランを相手にこれくらい出来ないと死んでしまうのでな。ここ数か月で目が肥えてしまった」

「……はは…!それはまだ俺達には厳しいかな」

 

 真堂は笑いながらも冷や汗を流す。

 たった一手で刃羅が場を支配した。

 

 

 

 その状況を相澤とジョークは近くで座って眺めていた。

 声が聞こえないので、話などは聞こえないが。

 

「乱刀……やはりあいつが場を動かすか」

「随分と雰囲気がある子だね。まぁ、体育祭の話からすれば仕方がないけどさ」

「色々あるし、あったからな。あいつは。正直、受験者の中ではある意味飛び抜けているだろう」

「……お前がそこまで言うなんてね」

 

 ジョークは少し意外そうに目を見開いて相澤を見る。

 しかし、すぐさまを顔を鋭くする。

 

「でもね、ヒーローを目指す子をいるのは星の数ほどいるわけで、その志の高さには有名も無名もないんだぜ?主役面をして他を見下してっと返り討ちに遭うのはそっちかもよ」

「……それはどうかな」

「え?」

 

 相澤は会場を見下ろしたまま、ジョークの言葉に答える。

 

「志の高さに有名も無名もない。それには同意するよ。そんなもので決められるなら、それこそこの社会は終わってる」

「……」

「ただ……主役面も見下してもいない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あいつらはいつもどん底から、ただ上を目指して足搔いてるだけだ。『ヒーロー』という存在に誰よりも向き合っていると俺は思ってる」

「……イレイザー」

「A組ってクラスをしばらく見ていて、分かったことがある。連中は気づいているかどうかは分からんが、A組はその実、3人の作用が大きく作用している。クラスをまとめているわけでもないし、中心にいるわけでもない。おまけに仲が良いわけでもない。だが、いつの間にか3人の熱はクラスに伝播していく。妙なことだが大事の渦中の中には必ず3人の誰かがいるんだ。あいつらを見てると、プロの俺達すらも引っ張られることがある。ジョーク、俺はな期待してるんだ。あいつらの存在が、クラスを底上げしてくれる」

 

 その視線の先では事態が動き出していた。

 

 

 

 真堂が両手を地面に触れていた。

 

「離れろ!彼ら防御は硬そうだし、彼女は厄介そうだ。割る!!」

 

 真堂の動きに刃羅は足元にあった大きめの岩を両手で上へ放り投げる。

 その岩に他の者達の注意が向く。

 直後、

 

「最大威力!震伝動地!!」

 

バガァ!!

 

 耳郎の数倍の範囲と威力で地面が割れる。

 地面が盛り上がり、緑谷達はクラスメイト達と分断されてしまう。

 

「必殺技なら当然こっちも編んでるよ」

 

 真堂の『個性』《揺らす》。

 触れたものを揺らす。ただし、揺れの大きさや速度に応じた余震が体に来て動けなくなる。

 

 真堂は余震が引くのを待ちながらしゃがんでいると、その首に鞭のようなものが巻き付く。

 

「!?」

 

 真堂は目を見開くが、まだ体が動かない。慌てるが何も出来ることはなく、引っ張られて体ごと宙に持ち上げられる。

 

「ヨーくん!?」

「真堂!?」

 

 持ち上げられる真堂の姿に離れていた仲間達が目を見開いて驚く。

 真堂が引っ張られた先を見ると、その先には刃羅が鞭を右手で引っ張りながら真堂を見据えていた。

 刃羅は真堂の攻撃の前に岩を投げて自分から注意を逸らし、地面が砕かれながらも真堂に近づいていたのだった。

 

「俺っち達に固執し過ぎだ。2回目の攻めが防がれた時に一度退くべきだったなぁ」

「くっ……そ!」

「そして、やっぱり両手で触れる必要があるようですわね?」

 

 刃羅は左手でもう1本の鉄鞭を取り出して、真堂の両腕毎体を縛る。それと同時に首の鞭を外す。

 

「ぐ!」

 

 刃羅は目の前まで引っ張られた真堂の顎を蹴り上げる。そのまま振り上げた脚を振り下ろして、真堂の頭に踵落としを叩き込んで顔から地面に叩きつける。

 

「っ!?」 

「焦りよったなぁ。これで終わりや」

 

 刃羅はボールを取り出して、素早く真堂のターゲット3つに当てる。

 

「ほな、また来年。お気張りやす」

 

 鞭を回収して、刃羅は素早く移動を開始する。

 

「さて!どうしよっかな!?」

『あ、ようやく1人目の通過者が……うお!?脱落者120名!たった1人で120人脱落させて通過した!!』

「1人目が出たかよい!あ!ならぁあっしも一気に行くかぁあ!」

 

 周囲にクラスメイトは見当たらない。刃羅は下手に合流を狙うよりも通過に向けて単独行動することに決めた。

 まだ周囲は砂塵が漂っている。それに身を隠しながら、気配を消して移動する。

 少し高めの岩の上に登って、周囲を改めて見渡す。

 

「駄目でござるな。他のA組は見当たらんでござる。周りにいるのは……真堂の仲間でござろうか?……否。便乗した連中でござるか」

 

 現れた者達は互いに競い合いながらも周囲を見渡している。

 やはり雄英狙いの者達のようだ。

 

「……合流出来る可能性もあるが、この状況での混戦は厳しいか。別エリアに向かうとしよう」

 

 刃羅は更に便乗する連中が増えると予想し、一度離れることを決めた。

 

 そして刃羅は高層ビルエリアを目指して移動を始める。

 

 仮免試験一次選考はまだまだ混乱を極めていくのであった。

 

 




真堂ファンの皆様ごめんなさい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。