初めての戦闘訓練翌日。
校門前にマスコミがわんさかと待ち構えていた。
もちろん目的はオールマイト。
「邪魔だよねぇ。斬っていいかなぁ?」
「駄目に決まっているだろう!乱刀さん!」
イラっとしたので不穏なことを呟いたら、いつの間にいたのか飯田が注意してきた。
それに顔を顰めた刃羅は、
「だったらぁ飯田君さぁ、君にマスコミのぉ対応お願いしてもいいぃ?私ぃああいうのぉ苦手なのぉ」
「ふむ……仕方ないな!いいだろう!」
「ありがとぉ」
面倒事をさらっと飯田に押し付けて、ユラリと校舎に入る刃羅。
そして教室に入り、席に座る。
「んあ~」
「どうしたの?刃羅ちゃん」
背もたれに体を預けてダラけると、梅雨が声を掛けてきた。
「ん~?ちょっとね~体が筋肉痛~」
「筋トレでもしたの?」
「『個性』の使い過ぎかな~。使い過ぎると~筋肉痛になるの~。轟君とやり過ぎたのと~帰って鍛練したら~ビキっときちゃった~」
「なるほどね」
発動型は容量超過すると何かしらの反動がある場合が多い。
刃羅も例に違わず、反動が襲い掛かっていた。
「ダルい~」
「大変ね。刃羅ちゃん」
そして予鈴が鳴り、相澤が教室に入ってくる。
戦闘訓練の話をして、すぐに本題に入る相澤。
「さて…HRの本題だ……急で悪いが今日は君らに……」
ゴクリと息を飲むクラスメイト達。
「学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいの来たーー!!』
その瞬間、ほぼ全員が手を上げる。
刃羅は興味がないので上げなかった。
(???なんで皆やりたいの~?)
内心90度近く首を傾げていたが。
そこに飯田が投票で決めることを提案したので、投票となった。
(う~ん……誰がよいじゃろうか?)
悩んでいると、ふと緑谷が視界に入る。
(ふむ。あ奴で良いか!)
こうして刃羅は緑谷に投票し、委員長が緑谷と副委員長が百に決定した。
昼食時食堂で梅雨や芦戸、葉隠とご飯を食べていた。
「ズズ~……ンマンマ……やっぱ美味いわ~。食べてまうわ~」
「お金大丈夫なの?」
「ズズ~……ンマンマ……あと……1000円やなって1000円!?誰や!うちの金盗んだんは!?うちか!昨日カップ麺めっさ買うたわ!どないしょ!これで今月乗り切れっちゅうんか!?あ。カップ麺持ってくればえぇんか!?ってアホ!!お湯はどこにあんねん!」
「待って!?ボケとツッコミが追いつきません!」
「未だに刃羅ちゃんの性格が分からないわ」
1人でボケとツッコミをしていく刃羅に葉隠がストップをかける。
そして梅雨が冷静に突っ込む。
「実際のとこさぁ、刃羅ちゃんって何で性格変わるの?」
「これだよ!」
刃羅はスカートのバッジを見せる。
「バッジ?」
「正確には武器だよ!武器によって変わるの!最近はこんな風にバッジでも変われるようになったの!えっへん!」
「どこに威張る要素があったのか分からないよ」
「ちなみに今はどの武器なのかしら?」
「今は【圏】だよ!さっきのは【鈎爪】!」
「じゃあ爆豪君みたいなやつは?」
「【ナイフ】!」
法則性があることは理解した梅雨達。
なんで性格が変わるのかという質問の答えにはなっていないが。
「で?なんで?」
「知るかってんだ!気づいたら変わってたんだよ!」
「切り替わるスイッチは?」
「んなもん気分に決まってんだろ!」
「気分なんだ!?」
「バトルだったら作った武器で変わるがな!」
「なるほど」
分かったようで分からない。そういうものだと思うことにした梅雨達だった。
その時、サイレンが鳴り響く。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』
すると、周囲の生徒達が慌てて走り出した。
「なに!?なに!?」
「セキュリティってことは、侵入者か?」
「そのようね」
慌てる芦戸。それに刃羅と梅雨が冷静に話している。
出口には人が殺到していた。
「これでは逆に危険だな」
「そうね。誰が侵入してきたのかしら?」
「冷静過ぎるよ2人とも!?」
席から立ち上がることもなく刃羅と梅雨は話している。
それに芦戸が突っ込む。
「しかしな。あの中に突っ込みたくもないだろう?」
「そうだけどさ」
「あんな人ごみの中に入ってみろ。斬りたくなる」
「ヴィラン的思考!?」
「爆豪に同じこと言ってみろ」
「すいませんでした!」
ガバッ!と頭を下げる芦戸。
すると人ごみの中から誰かが宙に舞い、入り口の上に変な格好でへばり付く。
「大丈ー夫!!」
飯田だった。
「なにしてんの!?」
「何か分かったのかしら?」
「ただのマスコミです!!何もパニックになることはありません!!大丈ー夫!!」
飯田は大声で説明して騒ぎを収めようとする。
「マスコミだぁ?なぁんであのクソカメラ共が入って来てんだぁ?」
「確か入り口で止められるはずだよね?」
「あの扉を破ったの?」
「それってもう犯罪じゃないのかしら?」
「よっしゃあ!斬る!!」
「「ノォーーーウ!!!」」
「うおおお!?」
芦戸と葉隠が刃羅に飛び掛かって抑え込む。
そして抑え込まれたまま教室に運ばれる刃羅だった。
その後、緑谷から飯田に委員長交代が提案され、飯田が委員長になった。
その時刃羅は百によって作られた縄で席に縛られていた。
最初は暴れていたが、途中で悟りを開いたかのような表情になり、最後には。
「あぁ……♡もっとぉ……♡」
「ぎだーーい!!隣で何かに目覚めた人はどうすればいいですかーー!?」
「ほっとけ。本題を進めろ」
「そうよぉ……♡ほっといてぇ……♡この幸せをもっとぉ……♡」
「エロイぞぉーー!!ぎゅあ!?」
「席に座ってろ峰田」
目を蕩けさせて瞳が潤ませながら熱がこもった息をする刃羅に、隣の葉隠が立ち上がって報告する。
しかし相澤が無視を促す。それにさらに蕩ける刃羅に、2つ前の席の峰田が反応するが、それには相澤は反応し席に縛り付ける。
その後も刃羅は放置され、話し合いが終わったころには爆睡していたのであった。
日も変わって水曜日。
「今日のヒーロー基礎学だが……災害水難なんでもござれ人命救助訓練だ!」
相澤の言葉に一同は盛り上がるが、相澤に睨まれてピタっと収まる。
救助はヒーローにとって最も素質が試される活動だ。
ただヴィランを倒すだけでは、ヒーローとは言えない。
「……救助訓練のぅ。儂に出来るじゃろうか?」
刃羅は救助に関しては、イメージすらしたことがない。
刃羅のヒーロー像はステインだ。悪を斬るイメージしかない。
服を着替えるために更衣室に移動する一同。
「あれ?刃羅ちゃん、コスチューム変えたの?」
「そうよぉん。まぁ、ただズボンと袖を短くしただけなんだけどねぇん」
刃羅は前回の戦闘訓練でズボンが破けたので、サポート会社に修繕と改良を依頼している。それに合わせて上も袖を半袖にした。ナイフを装着していたベルトもズボンの上から身に着けている。
「なんかお色気忍者みたい」
「……なん……ですってぇん……!!」
耳郎の言葉に崩れ落ちる刃羅。
「……百っちの方がお色気じゃん!なんで私が言われないといけないの!?麗っちだってピチピチでエロイじゃん!それに葉隠っちなんてもう全裸じゃん!なんで私だけ辱められるの!?うわぁ~~ん!!」
「え!?ちょっ!うち、そんなつもりじゃ!」
「さりげなく私達もダメージを受けた……」
「乱刀さんの性格変化にまだついていけませんわ」
「私達だってまだついていけてないよ」
大泣きし始める刃羅に慌てる耳郎。
刃羅の言葉に麗日は顔を真っ赤にして、百がジト目で刃羅を見ながら呟くが、それに芦戸が否定の声を上げる。
「そろそろ行かないと相澤先生に怒られてしまうわ」
「あ!いけませんわ!ほら乱刀さん!行きますわよ!」
「びゃ~~ん!!」
「この性格は初めてじゃない?」
「そうね。響香ちゃん、責任を取っておぶってちょうだいね」
「……仕方ないか」
「びぇ~~ん!!」
耳郎が大泣きしている刃羅を背負う。
「えぇい!胸も背もデカい……!」
「うっせぇな!好きででかくなったぐぇ!?」
「泣き止んだなら自分で歩け!」
泣き止んだ瞬間投げ落とされた刃羅。
それに葉隠が手を差し伸べて刃羅を手助けする。
バスに乗り込んで向かった先は、巨大な施設だった。
「すっげー!!!USJかよ!?」
「本当に金があるよねぇ」
そこはあらゆる災害や事故を想定した救助活動が出来る施設だった。
担当はスペースヒーローの13号。そして相澤だった。
「この授業では心機一転!人命のために『個性』をどう活用するかを学んでいきましょう」
13号の言葉に全員が拍手する。
そして授業が始まろうとした時、
刃羅はゾワリと背中に寒気が走った。
「!!!」
「どうしたの?刃羅ちゃん」
梅雨が刃羅の様子に気づき、声を掛けると、
「一塊になって動くな!!13号!!生徒を守れ!!」
相澤が突然大声で指示を出し始めた。
すると施設の真ん中で黒い渦のような物が現れ、そこから大量の人が出てくる。
「奴らは……!」
「何だアリャ!?また入試の時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!!あれはヴィランだ!!」
相澤の言葉に一気に緊張が高まる生徒達。
相澤はゴーグルを身に着け、戦闘の準備をする。
刃羅はヴィランを見つめる。
(移動手段はあの黒靄の男。首謀者はあの手みたいな仮面の男か?……統率性はない。なのになんだ?この気持ち悪さは)
相澤は避難の指示を出すと、1人でヴィランに飛び掛かる。
(プロヒーローは2人。13号は戦闘には向いていない。イレイザー・ヘッドだけでは全て防げん。出るか?)
他の生徒達が避難を開始しようとすると、出口に黒靄の男が現れる。
「初めまして。我々はヴィラン連合。せんえつながら……この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして」
それに目を見開く生徒達。
(ここにはオールマイトもいる予定だった。内通者がいるってことか!)
刃羅は歯軋りをする。
すると、黒靄が動き出す。
そこに爆豪と切島は飛び出す。
2人の攻撃は黒い靄で防がれる。
「しぃ!!」
「!!」
刃羅も斬りかかるが、防がれる。
「ちぃ!!」
「危ない危ない……そう……生徒とはいえ優秀な金の卵。散らして、嬲り、殺す」
そう呟いた瞬間、ボアっ!と黒い靄が全員を飲み込む。
刃羅も離れようとしたが、飲み込まれてしまう。
「!!」
靄をくぐる様に飛ばされたのは火に囲まれた場所だった。
「……火災ゾーン?遠くに飛ばされたわけではないのか」
周囲を見渡して場所を把握する。
「!!」
「なんだぁ?1人かよ」
「つまんねぇなぁ」
囲むように現れたのはヴィラン達。
ニタニタと笑いながら、刃羅を見る。
(なるほど。バラバラにして殺すつもりでござるか。……1人と、言っていたでござるな)
刃羅はニタァと笑みを浮かべる。
「「「!!」」」
「な、なんだぁ?何笑ってやがる?」
「怖くて壊れたかぁ?」
「いや?そっちが殺しに来るなら、私が殺しても不満はないな?屑ども」
「……あ?」
両手をロングソードに変える刃羅。
「徒に力を振りまく屑ども……粛清対象だ」
「「「ひぃ!?」」」
刃羅の雰囲気がガラリと変わって、悲鳴を上げて後退りするヴィラン達。
「全ては正しき社会のために……血を流せ!!屑ども!」
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新!刃格!
ククリ刀:超M。一人称は「この雌犬」
フランベルジュ:超被害妄想で泣き虫。一人称は「私」