ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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誠に遅くなりました(__)

遅れた理由としまして、
・刃羅を再び雄英から飛び出させるかどうか、およびそのタイミングが決まらなかった。
・原作のA組B組対抗戦を見通して、刃羅を投入するかどうか考えたかった。
・エリちゃんの経過をもう少し見たかった。
・ステインを今後、どう出していくかが纏まらなかった(そろそろキャラクターが維持出来なさそう)

と、今更ながらの壁にぶち当たりまして(-_-;)
今後も亀更新かもしれませんが、絶対に続けていくのでよろしくお願い致します。



#54 突撃

 刃羅からの情報提供を受けて、ナイトアイは最終確認に入った。

 本当にまだいるのかという確証がなかったからである。

 

 更に言えば、刃羅の情報源も問題だったため、むしろ調査内容は増えたと言っていい。

 かなり貴重な情報ではあったが。

 

 そして、相澤やヴァルキリから聞いた刃羅の詳細についても頭を悩ませていた。

 ステインの弟子であり、未だ刃羅はその思想に傾倒している。だがヒーローへの想いも人一倍強く、決して悪ではない。

 しかし、だからこそ必要以上の覚悟を備えている。

 弱き命を救けるためならば、悪の命を奪う覚悟。

 

 それは今のヒーロー社会としては、とても危うい覚悟である。

 しかし、もう刃羅本人は降りる気はないという。 

 ヴァルキリや流女将達が監視するとは言うが、話を聞いている限りでは抑えきれるかどうかは怪しい。

 

「……しかし、あの推察力と判断力は捨てがたい。実力はミリオに劣らず、経験はミリオに勝る。緑谷は言わずもがな」

 

 少なくとも現段階では裏切る心配はない。

 しかし、そう思ってはいても、やはり不安ではある。

 

「それを言ったら、まずは高校生を連れていくのを止めるべきか……」

 

 ナイトアイはミリオと緑谷を連れていく気でいる時点で、刃羅は駄目など言えるわけがない。

 そう考えて、思考を切り替えるのだった。

 

「サー。失礼します!」

 

 サイドキックのバブルガールが報告書を纏めて、部屋に入ってきた。

 

「報告を」

「はい!各地の調査ではやはり連中は大きな動きは見せていません。確認されている構成員は本拠地にて活動を続けています。ただ、治崎達の姿までは確認出来ていません。例の娘と思われる少女もです」

「……やはり隙は減ったか」

 

 僅かに眉間に皺を寄せる。

 

「……外出した構成員はいるか?デパートやスーパーなどに」

「え?あ、はい!……構成員の1人がデパートに入ったそうです」

 

 バブルガールがスマホを確認しながら報告し、それを聞いたナイトアイは椅子から立ち上がる。

 

「行くぞ」

「はい!」

 

 バブルガールは理由も聞かずに頷いて、ナイトアイに続く。

 作戦決行への準備は着実に進んでいたのであった。

 

 

 

 

 懐理の居場所が確定するまで、刃羅達はいつも通りの学校生活を過ごすことになった。

 ただし、インターンについては口外禁止となった。

 もちろん、刃羅がもう襲撃される心配がなくなったことも。

 

 ちなみに刃羅の警戒態勢は結局解除されることはなかった。

 

「なんでやねん!」

「襲撃の恐れは無くなったが、お前が逃げ出す可能性は一切消えていない。むしろ高まっただろうが。外せるわけねぇだろ」

「シィーーット!!」

「ということで、蛙吹、八百万。引き続き頼むぞ」

「「はい」」

 

 ということである。

 

 なので、刃羅達は今もヒーロー基礎学の訓練中だった。

 作戦に向けて気合が入っているのか、緑谷や切島達は普段以上に訓練に臨んでいた。

 

「なんかインターン組の動きがキレてる」

「外で何か掴みやがったなぁ!!オイコラ、言いやがれ!」

 

 爆豪が悔し気に叫ぶが、もちろん言えるわけもない。

 切島達の様子を刃羅は呆れ気味に眺めていた。

 

「……気合を入れるのは構わんがのぅ。その前に体を壊しても知らんぞい」

「刃羅ちゃんはいつの間にやら冷めてるね!?」

「あれだけ先生達に言い放ったのに……」

 

 麗日と緑谷は刃羅の雰囲気に困惑していた。

 刃羅は肩を竦めて、気だるげに答える。

 

「あまり気合を入れ続けてもぉ本番まで保たないからねぇ。あくまでも体を鈍らせずぅ壊さない範囲でやらないとねぇ」

「ケロ。それもそうね」

「確かに下手に体を痛めては足手まといになるだけですわね」

 

 刃羅の言葉に梅雨と百は納得するように頷く。

 

「まぁ、どうせ緑谷や切島は動かなければ落ち着かんのだろうがな」

「……うん。やっぱりね……」

 

 どうしても緑谷は懐理やオールマイトの予知について気になってしまう。

 それを少しでも振り払いたかった。

 刃羅は少しだけ目を鋭くして、緑谷の頭をスパァン!と叩く。

 

「イタイッ!?」

「……後悔を引きずる暇があるなら、絶対に助けられるように備えることに集中なさい。今回は林間合宿のように相手はそう簡単に逃げるわけはないし、神野区のように『平和の象徴』は来ないのよ。分かってるの?」

「っ!!」

「あんたがあの子の『平和の象徴』になるの。あんたが憧れてるヒーローは、こういう時どういう顔をしてたか思い出しなさい」

 

 刃羅の言葉に緑谷は呆然としていたが、すぐにオールマイトの笑顔とある言葉を思い出す。

 

『私が笑うのは人々を安心させるためだけではなく、ヒーローの重圧、そして内から湧く恐怖から己を欺くためさ』

 

 それが『平和の象徴』としての在り方。

 緑谷が憧れた最高のヒーロー。

 

「……うん!」

 

 緑谷は歪な笑みを浮かべて頷いた。

 それに刃羅は小さく頷く。

 刃羅の言葉と緑谷の表情に梅雨達も改めて覚悟を決める。

 

 その後も表情や雰囲気はまだ固いが、いつも通りに過ごそうとする緑谷達。

 飯田や轟、芦戸達もその雰囲気を感じ取り、出来る限りいつも通りに接し、されど少しでも元気になれるようにしてくれた。

 

 仲間の温かい思いに感謝しながら過ごして、2日。

 その深夜に緑谷達インターン組の携帯に連絡が入る。

 

 刃羅達は1階に集まり、顔を見合わせる。

 

「来たか!?」

「うん……!」

「ケロ」

「……いよいよ、ですわね」

 

 決行日が遂に決まった。

 

 

 

 調査の結果、治崎と懐理は本拠地の地下にいる事が判明した。

 更にはナイトアイの《予知》により、懐理がいる部屋までの経路も判明した。

 

 そして、当日早朝。

 

 刃羅達はコスチュームに着替えて、警察署前に集まっていた。

 

「経路が判明しているとはいえ、『個性』を駆使されれば捜索は難航する。そこで分かる範囲だが八斎會の登録『個性』をリストアップしておいた。頭に入れといてくれ!」

 

 強面スーツの刑事がヒーローにリストを配る。

 刃羅と百は流女将と共にリストを見る。

 

「……屋内となると厄介な『個性』が多いでござるな」

「そうですわね」

「アラジン、クリエティ」

 

 ヴァルキリが近づいてきて、2人に声を掛ける。

 

「お前達は我と流女将と動く。エクレーヌ達は状況に合わせて警察への援護に回る」

「了解だべ」

「はい」

「オトメキシ。後輩を頼むぞ」

「私の方が足を引っ張りそうですがね」

 

 好女はヴァルキリの言葉に苦笑する。

 

 少し離れたところでは少し興奮気味の切島が緑谷に声を掛けていた。

 

「プロ、皆落ち着いてんな。慣れかな?」

「皆……グラントリノは?」

 

 緑谷は周囲を見渡す。しかし、この前までいたグラントリノの姿が見えなかった。

 それにナイトアイが答える。

 

「あの人は来れなくなったそうだ。敵連合の方で動きがあったらしい」

「そうですか……」

「八斎會と敵連合、一気に捕まったりしてな!」

「それだ。っし……!」

 

 切島の励ますような言葉に緑谷も笑みを浮かべて頷き、気合を入れ直す。

 そこに相澤が近づいてくる。

 

「おい」

「あいっレイザーヘッド!」

 

 相澤と呼びそうになって、無理矢理言い直す緑谷。

 

「俺はナイトアイ事務所と動く。意味分かるな?」

「はい……!」

 

 ヴァルキリと刃羅のように、相澤が緑谷の監督役になる。

 その意味に気づいて緑谷は頷く。

 

 そして、刑事がヒーロー達に向かって声を掛ける。

 

「ヒーロー。多少手荒になっても構わない。少しでも怪しい素振りや反抗の意志見えたら、すぐに対応を頼む。相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずに各員の仕事を全うしてほしい!それでは、出動!!」

 

 刑事の号令と共に警察官達やヒーロー達がそれぞれのバスに乗り込み、移動を開始する。

 と言っても移動は30分もかからず、八斎會の事務所兼邸宅に到着する。

 速やかに展開して、和風の門の前に整列する。

 

「緑谷君!いよいよだね……!」

「はい……!」

 

 ミリオと緑谷が両手を握り締めて、門の向こうの建物を睨みつける。

 刑事が令状を手にして、ヒーロー達に向く。

 

「令状読み上げたらダーッと行くんで!速やかにお願いします」

「ケッ。しつこいな。信頼されてねぇのか」

「そういう意味やないやろ。いじわるやな」

 

 ロックロックが不満そうに愚痴り、ファットガムが注意する。

 そして、刑事が門横のチャイムへと歩み寄ろうとする。

 

「……待てや、ポリ公」

 

 そこに刃羅が声を上げて、歩き出す。

 

「ら、アラジン……!?」

「アラジン、どうした?」

 

 百とヴァルキリが呼びかける。他の者達も訝しむように刃羅に目を向けて、刑事も足を止める。

 

「なんだ?あまり、ここでもたつくわけにはいかん」

「貴様が先ほど言っていた怪しい素振りというのは、()()()()()()()()()()()()()()にも適応するのか?」

『!!?』

 

 刃羅は門を鋭く見つめたまま、刑事に訊ねる。

 その内容に全員が目を見開き、刑事は素早く門から下がる。

 それと同時に刃羅が両腕を太刀に変えて、高速で両腕を振って門を細々に斬り落とす。

 

「えぇ?いきなり門を壊すとかぁ何なんですかぁ?」

 

 斬り落とされた門の奥にいたのは、拳を構えていた仮面を被った大男。

 大男もまさかの行動に驚いて固まっていた。

 刃羅は腕を戻して、ニイィィと笑みを浮かべる。

 

「戦闘態勢を確認やよって。つまり反抗の意志アリ、やねぇ」

「暴論にも程があるでしょう!!」

 

 リューキュウが怒鳴りながら駆け出す。

 大男もすぐに復帰して刃羅に向かって殴りかかる。

 

「子供が何なんだよぉ!」

「アラジン!!」

 

 ヴァルキリも走り出し、他のヒーロー達も動き出す。

 刃羅は迫る拳をヒラリと回転しながら紙一重で躱し、大男の足元に潜り込む。そして両腕をロングソードに変えて大男の両脚を斬りつける。

 

「イッタァ!?」

「脚の腱を斬った。これでいくら活力を吸おうと、すぐには歩けんだろう」

 

 刃羅は背中に回り、腕を戻しながら言い放つ。

 大男は振り返ろうとしたが、その前に目の前に巨大な影が出現し、それに腕を掴まれる。

 

「っ!?」

「全く……。とりあえず、ここに人員を割くのは違うでしょう。彼はリューキュウ事務所で対処します。皆は引き続き仕事を」

 

 大男の腕を掴んでいたのは、竜の姿になったリューキュウだった。

 リューキュウは大男の腕を引いて、地面に押し倒す。

 

「はい!今のうちに!」

 

 その言葉と同時にナイトアイやファットガムが飛び込む。

 梅雨、麗日、ねじれはリューキュウのサポートとなる。

 

「刃羅ちゃん!あまり無茶した駄目よ!」

「デクくん!皆!気を付けてね!」

「無茶言うんじゃねぇべさ」

「無茶ではない!」

「イッダァ!?」

 

 梅雨と麗日が刃羅や緑谷達に叫び、それに刃羅が呆れながら先に進もうとすると、ヴァルキリが拳骨を叩き込む。

 手甲での拳骨はかなりのダメージで、ゴガァン!と鈍い音が響いた。

 

「お前はまだ仮免であろう!待ち構えているなら我らに任せんか!!」

「だったら、まず自分達で殺気に気づきやがれってんだゴラァ!!」

「気づいたなら全員に伝えぬか!!」

「ケンカしている場合ではありません!」

 

 言い合いをする刃羅とヴァルキリを、百が叫んで制止する。

 それに呆れながらファットガムやロックロック達は敷地内に入っていく。

 

 すると、早速構成員が出てきて、道を塞ぐように立ち塞がる。

 

「おォい!なんじゃテメェら!」

「勝手に上がり込んでんじゃねぇぞ!」

「警察とヒーローだ!!違法薬物製造・販売の容疑で捜索令状が出ている!!」

「こてこての人だ。すげぇ!」

 

 切島が何やら変なところで感動している。

 

「知らんわぁ!!」

 

 構成員の男が腕を振るうと、すぐ横の樹に生えている葉が飛び出して警察に襲い掛かる。

 それをヒーローの1人が全て叩き落としながら押さえ込む。

 

「っと!大人しくして!!」

「でけぇ奴といい、怖くねぇのかよ!?」

 

 ロックロックがまさかの抵抗に理解不能とばかりに叫ぶ。

 それに緑谷や切島、百も内心同意する。

 

「アホか。極道やぞ?警察とドンパチする覚悟なんざ盃交わした時に出来とるに決まっとるやろ。やから、ここまで生き残ってるんや」

 

 刃羅が呆れながら言う。

 

「覚悟しときなよ~。ここにいるのは~そこらへんの~ヴィランとは違って~、自分の利益を度外視しても~向かってくる連中さ~」

 

 緑谷達はゴクリと息を呑む。

 しかし、だからこそ刃羅は違和感を持つ。

 

「けど、治崎がそこまで忠義を捧げる奴には思えないのです……」

「治崎は若頭だ。ここにいるほとんどは組長に盃を捧げたはずだ」

「……となると、あの大男は治崎の側近なのかね?」

「ああ、治崎の側近はマスクを身に着けているとの情報がある。恐らくは構成員は組長への忠義と、治崎への恐怖があるのだろう」

 

 ナイトアイの言葉に刃羅は納得する。

 その周囲ではファットガムが呆れ、相澤、流女将はため息を吐いた。

 

「あの嬢ちゃん。俺らより極道理解してへんか?」

「「……はぁ」」

「それと先ほどの戦いで、かなり違和感を植え付けたんじゃないかい?まぁ、前の会合でも浮いていたけど」

 

 エクレーヌが苦笑しながら、問題点を伝える。

 殺気を察知して、一切躊躇することのない攻撃。そして、今の会話。

 とても仮免を取得したばかりの高校1年生とは思えないことばかりである。

 

「これはステインに攫われていた最中に、奴に無理矢理教えられたことであるな」

 

 それに刃羅が取って付けたような言い訳をする。

 真相を知っている百達や相澤達は呆れるが、警官やロックロックなどには説得力があった。

 

「そういや、お前は攫われてたんだったな」

「イエス!スリーイヤーズも一緒にいれば嫌でも覚えるデース!」

「喋り方が落ち着かねぇな!」

「それは儂に言われてものぅ」

 

 刃羅は肩を竦めて、スピードを上げる。

 

 その先からは構成員達が玄関や窓から溢れるように飛び出してきていた。

 まさしく刃羅の言葉を肯定するかのように。

 

「その心意気や良し。……されど」

 

 刃羅は目を鋭くして両手に鉄鞭を握って振るう。

 先頭にいた構成員2人の足を払う様に鉄鞭が叩きつけられて、地面に転がる。

 

「「ぎゃああああ!?」」

「「「うおおおお!?」」」

 

 目の前で転んだ仲間を避け切れずに、踏んだり足を引っかけて転ぶ者達。さらに避けようとしてバランスを崩したところに後ろから突っ込んできた仲間に押されて、また折り重なるように倒れていく。

 

「こちらも時間が惜しいでな。百!網で寝ておる奴らを押さえるのじゃ!」

「は、はい!」

 

 刃羅は転ばした連中を踏んで飛び越えて、百に指示を出す。

 百はすぐに右腕から網を《創造》して、倒れている者達を拘束する。

 刃羅は両足をコルセルカに変えて、玄関の上の壁に突き刺して固定する。

 

「更にはか弱い娘を救わねばならん。故に我も容赦は出来ん!」

 

 鉄鞭を連続で振るい、構成員達を打ち倒していく。

 さらにヴァルキリも柄を地面に着けて、土の大剣を作り出す。

 

「道を開けよ!!打ちどころが悪くても謝らぬぞ!」

 

 ヴァルキリは大剣を振り上げて、地面に叩きつける。

 構成員達は慌てて横に跳んで躱す。

 その隙を百が再び網で捕らえ、エクレーヌやフィクスマンが押さえ込む。

 

「数が少し多いね。ここは私達が受け持つよ!」

「頼んだ!」

 

 エクレーヌがナイトアイに叫んで、道を塞ごうとする構成員に光弾を放って道を作る。

 ヴァルキリが大剣を突きの構えで玄関に飛び掛かり、刃羅が壁から下りて両腕をトゥ・ハンド・ソードに変える。

 

 そして2人同時に扉を叩き斬る。

 

 扉を斬り飛ばした刃羅とヴァルキリはそのまま中に飛び込む。

 

「む。中は空か」

「で?どこが地下への入り口アルか?」

 

 ヴァルキリは土の大剣を解除して周囲を満たす。

 刃羅も腕を戻して、続いて入ってきたナイトアイ達に顔を向けて尋ねる。

 すると、相澤の捕縛布が飛んできて刃羅を縛り付ける。

 

「ぐべっ!?」

「気持ちは分かるが、先行し過ぎだ。いい加減にしとけ」

 

 刃羅は斬って逃げようとするが、相澤に封じられていた。

 

「ムッキー!!マジキモイ!視姦ヒゲ!セクハラ親父!イシャリョー寄こせ!」

「アラジン!やめてください!」

「……アラジン?いい加減になさいね?」

「ひぃ!?」

「……視姦ヒゲ」

「ドンマイやな。これを機に見た目に気ぃ使いや」

 

 刃羅はバタバタと暴れながら相澤を罵倒する。

 百が顔を真っ赤にして止めかかり、さらに流女将が凄みのある笑みで詰め寄ることで刃羅は顔を引きつかせて震えて大人しくなる。

 相澤は地味にダメージを受けて、ファットガムがフォローのようでフォローじゃない声かけをする。

 

「本当にあいつは何なんだ……」

「緑谷君。彼女は一体どれくらい性格変わるんだい?」

「いやぁ……僕にももう何個あるのか……」

「武器の数だけ変わるんすよ。最近は2つ同時に使う時でも、また変わるから……」

「……なんて話しにくい子なんだ」

「何言ってるんだ、ノミ。ミステリアスなところが素晴らしいし、君より凄まじく話しやすいよ」

「酷い……!」

 

 ロックロックが呆れて見つめており、ミリオが緑谷に質問するが緑谷も首を捻ることしか出来ない。

 それに切島も小さくため息を吐きながら答えて、天喰がフードを深く被って言うと、好女がすかさず貶す。

 

 それを横目にナイトアイが掛け軸が飾られている壁に向かう。

 

「ここだ」

 

 そして花瓶が置いてある床の板敷を順番に押していく。

 

「これを順番に押すことで、隠し通路が開く」

 

 ナイトアイが押し終わると壁から音がし始める。

 

「忍者屋敷かっての」

「見てなければ分からんな。まだ姿を見せていない『個性』に気を付けましょう」

「……側近1人だけしか、まだ出てないでござるな」

「今頃地下で隠蔽や逃げる準備だろうな」

「子分に責任押し付けて逃げようなんて漢らしくねぇ!!」

 

 バブルガールが呆れ、センチコイルが周囲を警戒する。

 開いていく壁を見ながら、解放された刃羅も目を鋭くし、相澤も頷く。

 それに切島が拳を握り締めて叫び、ファットガムも頷いている。

 

「女の子の体を材料にしている時点で、漢と呼ぶのは疑問であるな」

「そうだな。もはや人間ということすら疑問でもある」

「ヴァルキリ。気持ちは分かりますが」

 

 刃羅は切島の言葉に首を傾げ、ヴァルキリも同意しながら更に苛烈な事を言って、流女将がすぐさま咎める。内心では同意するが。

 百は刃羅の腕を掴んで、飛び出さないように警戒している。

 

「しかし、先ほどの数を見る限りだと、地下にはそこまで人はいないはずだ」

 

 刑事が表で暴れていた人数を思い出ながら告げる。

 表にいた人数だけでもリストの7割くらいの人数がいた。

 

 そして、通路が開ききろうとした時、

 

「っ!来はんで!」

 

 刃羅が殺気を感じて叫ぶ。

 それにセンチコイルが素早く構える。

 

「なんじゃあぁおどれらあぁ!!!」

 

 中から3人の構成員が飛び出してきた。

 センチコイルが両腕を伸ばして2人拘束する。

 

「1人頼む!」

 

 その声にバブルガールが動き、残った1人を素早く押さえ込む。

 

「疾ぇ!」

「追ってこないよう大人しくさせます!先行ってください!」

 

 切島や百があまりにも無駄がない動きに目を見開く。バブルガールは床に押さえ付けながらナイトアイに先に行くように促す。

 

「もうすぐだ!急ぐぞ!」

 

 ナイトアイが先行して階段を駆け下りる。

 猛スピードで地下通路を進むが、何故か行き止まりに突き当たった。

 

「行き止まり!?」

「道合ってんだよな!?」

「説明しろ、ナイトアイ」

「俺が見てきます!」

 

 刑事とロックロックがナイトアイに叫ぶ。そこにミリオが声を上げて、ヘルメットを脱ぎ捨てて壁をすり抜けていく。

 ミリオのコスチュームはヘルメット以外は、ミリオの毛髪から作られている特別製なので脱げることはない。

 ミリオはすぐに戻ってきた。

 

「壁で塞いであるだけです!ただ、かなり厚い壁です!」

 

 ミリオの報告にヴァルキリとファットガムが構える。

 

「ふむ。随分と」

「小細工を……!」

 

 2人が壁を壊そうとすると、それより先に緑谷と切島が飛び出す。

 

「来られたら困るって言ってるようなもんだ!」

「そだな!妨害出来てるつもりならめでてーな!」

 

 そして、緑谷が蹴りを、切島が硬化した拳を叩き込む。

 壁は容易く砕かれ、大きな穴が空く。

 

「流石ですわ!」

「っ!?なんかいる!」

 

 百が笑みを浮かべて切島達を称える。

 その時、刃羅が上から視線を感じて叫ぶ。

 それに全員がすぐに構える。

 

 すると、床や壁がうねり出して、道を変えていく。

 

 八斎會がいよいよ本腰を上げて、襲い掛かってきたのだった。

 

 

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