ステインの弟子は多重“刃”格で雄英生   作:岡の夢部

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#8 体育祭その1

 大会当日。

 校内は出店やマスコミ、観客で大賑わいだった。

 さらにプロヒーロー達も警備に当たっている。

 

 1-Aは与えられた控室で待機していた。

 

「コスチュームは無しか」

「普通科やサポート科は持ってないからだって」

「皆!準備は出来てるか!?もうじき入場だ!」

 

 公平を期すために全員体操服での参加となった。

 

「緑谷。乱刀」

「む?」

「轟君……何?」

 

 轟が話しかけてきた。

 

「客観的に見ても俺の方が実力は上だと思う」

「へ!?うっ、うん……」

「なんや?いきなり?」

 

 轟の言葉に緑谷はビクッとし、刃羅は顔を顰める。

 

「緑谷、オールマイトに目ぇ掛けられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇ。乱刀も前の戦いじゃあ決着付いてねぇ。だから……お前らには勝つぞ」

 

 いきなりの宣戦布告に緑谷は固まり、刃羅はめんどくさそうに顔を顰めている。

 

「おぉ!?クラス最強が宣戦布告!!?」

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……」

「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だって良いだろ」

 

 切島の制止を振り払う轟。

 それに緑谷は少しだけ顔を俯かせる。

 

「轟君が何を思って僕に勝つって言ってんのかは分かんないけど……そりゃ君の方が上だよ……実力じゃあ乱刀さんはもちろん大半の人に適わないと思う……客観的に見ても……」

「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねぇ方が……」

「でも……!!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって…後れを取るわけにはいかないんだ!僕も本気で獲りに行く!」

 

 緑谷は決意を秘めた目で轟に宣戦布告する。

 

「……おお」

 

 轟は静かにそれに頷く。

 刃羅は特に何も答えずドアに歩いていき、ピラピラと右手を振る。

 

「……っ!」

 

 それに轟は目を細めて睨みつける。

 

 そして入場口に向かう1-Aの面々。

 全員が気合を入れた顔で会場へと進んでいく。

 

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらあれだろ!?こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず!鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』

 

 プレゼント・マイクの声が響く。

 観客席にいる観客やマスコミも熱気を帯びてくる。

 

『ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?』

 

 アナウンスと同時に会場に入るA組一同。

 刃羅達に会場中の注目が集まる。

 

「わあああ……人がすんごい……」

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか……!これもまたヒーローとしての素養を身に着ける一環なんだな」

「めっちゃ持ち上げられてんな……!なんか緊張すんな……!なぁ爆豪」

「しねぇよ。ただただアガるわ」

「……なんかムカつくぅ」

「どうどう!!刃羅ちゃん!」

「こればっかりは仕方ありませんわ」

 

 その後も他のクラス達も入場してくる。

 他のクラスもA組に注目している。

 

「……なんか~ムカついてる~」

「どうどうどう!?刃羅ちゃん!?」

 

 葉隠が一生懸命刃羅を宥めている。

 

「選手宣誓!!」

 

 ピシャン!とミッドナイトが壇上に立ち、鞭を振って進行する。

 どうやら彼女が1年生の担当らしい。

 

「選手代表!!1-A爆豪勝己!!」

「ホワッツ!?ボンバーマン!?ホワイ!?ボンバーマンが宣誓して、ミーが反省文!この扱いのディフェレンス!」

「根に持ってるわね。刃羅ちゃん」

 

 爆豪はポケットに手を突っ込んだまま壇上に上がる。

 

「せんせー」

 

 嫌な予感がするA組面子。

 

「俺が1位になる」

「絶対やると思った!!」

 

 他のクラスどころかA組からもブーイングが飛ぶ。

 それに爆豪は更に煽る行動をする。

 

「まぁ、どっちにしろ私達は嫌われているからな。今更だろう」

「そこは許すんだ」

「この大会中に手足のどれかをもらう」

「許してなかった!?」

 

 少し狂気が宿った笑みを浮かべる刃羅。

 それに葉隠や芦戸は巻き込まれないように刃羅から離れる。

 

「さーてそれじゃあ!早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者がティアドリンク!!」

 

 スクリーンが展開され、ドラムスクロールが鳴り響く。

 

「さて運命の第一種目!!今年は……コレ!!!」

 

 スクリーンに表示されたのは【障害物競争】。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!」

 

 すると、スタート地点と思われるゲートが開いていく。

 その前に生徒達が我先にと集まっていく。

 

「我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構えわないわ!」

 

 そしてゲートの上についている3つのランプの1つが消える。

 刃羅は周囲の人とゲートの先の通路を確認する。

 すると、刃羅は突如靴を脱ぎ捨てた。

 2つ目のランプが消える。

 

「刃羅ちゃん?」

「スタートが要じゃの」

「へ?」

 

 梅雨と葉隠が首を傾げる。

 そして3つ目が消える。

 

「スターーーーーート!!」

 

 一斉に駆け出す生徒達。

 

 しかし、ゲートが狭すぎてギチギチになり詰まってしまう。

 

「おらぁ!!どきやがれぇ!!」

「っ!?乱刀さん!?壁を!?」

「ず、ずりぃぞ!?」

 

 刃羅は壁を目指して走り出し、足の裏にスパイクのように刃を生み出して、一気に壁を走って抜き去る。

 

 しかし、それより先に進むものがいた。

 轟である。

 轟は通路の出口付近に氷を張り、足止めを図っていた。

 

「はっ!!やっぱクソイケメンが仕掛けやがったなぁ!!」

「甘いわ。轟さん!」

「そう上手く行かせねぇよ半分野郎!!」

 

 A組の面々も読んでいたようで『個性』を使って躱す。

 

『さーて実況していくぜ!解説アーユーレディ!?ミイラマン!!』

『無理矢理呼んだんだろが』

 

 刃羅は壁から飛び出すと、今度はスケート型に刃を生み出して地面を滑走する。

 轟を追いかけようと、クラスメイト達や他クラスの生徒達も猛然と走る。

 その先は広場だったが、

 

『さぁ!いきなり障害物だ!!まずは手始め……第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

 現れたのは入試で現れた巨大ロボの軍団だった。

 

「多すぎて通れねぇ!!」

 

(確かに多いが……あれは動きは鈍い!一気に足元に入り込む!!)

 

 刃羅は躊躇せず滑り出す。

 しかし、その前に轟がしゃがんで冷気を生み出した。

 

「!!」

 

 そして一気に冷気を放ち、ロボ達を凍らせる。

 凍り付いたロボの足元を走り抜ける轟。

 それに続こうとする他の生徒達。

 

「……ほんまに、いやらしぃなぁ。轟坊っちゃんは」

 

 刃羅は両手を太刀に変える。

 すると、凍ったロボット達のバランスが崩れて倒れていく。

 

『1-A轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!』

 

 倒れたロボットはバリケードのように後続の道を塞ぐ。

 

『すげぇな!!一抜けだ!!アレだな。もうなんか……ズリィな!!って、おおおお!?もう1人飛び出したぜクレバー!!』

「!!」

 

 轟が顔だけで後ろを振り返ると、すぐ後ろにいたのは。

 

「ちょいと舐めすぎやよって。轟坊っちゃん」

「乱刀……!」

 

『1-A乱刀!!いつの間にどうやりやがったぁ!?その腕イカしてるじゃねぇかー!!』

『……腕の刀と足の刃で倒れてきてたロボの破片を足場にしやがったな』

『マジで!?どんな神経してやがるんだブレイドガール!?』

 

 刃羅は太刀で破片を斬り飛ばしたり、足場に出来るように細かく斬り分けながら、移動していた。

 1つでも行動を間違えば破片に埋もれてしまう。そうなれば無事では済まなかっただろう。

 それを刃羅は顔色1つ変えず、当然と言う表情でやり遂げたのだ。

 

 腕と足を戻して着地する刃羅。

 

「ほれ、どないしはったん?轟坊っちゃん。わっちを凍らせんでよろしおすか?」

「……(まだ先が分からねぇ。消耗は出来ねぇか)」

 

 不敵に笑いながら挑発する刃羅。

 轟はそれを無視して、足を速める。

 刃羅はチラッと後ろを見ると、他の面々も続々とロボットを躱していた。

 

『一足先に行く連中。A組が多いなやっぱ!!』

 

「お~お~。爆豪坊っちゃん飛び越えてきてはるやん。これはすぐ追いつかれてまうなぁ」

 

 刃羅は爆発させながら飛んでくる爆豪を見て、すぐに追いつかれることを悟る。

 しかし、特に妨害や速度を上げることなく走り続ける。

 

 すると、後ろで更にデカイ爆発音が響き、続いて轟音が轟く。

 見ると巨大ロボットが尻餅を着いて倒れていた。

 

「ワァオゥ!!派手デース!」

「……(相変わらず性格が掴めねぇ。後ろ見る余裕もあって、汗1つ掻いてねぇ)」

 

 轟は刃羅がまだまだ余力を残しながら、自分から付かず離れずの距離を保って走っていることに警戒を強める。

 読めないのは話し方が変わるたびに走り方も変わっていることだ。

 それでもスピードは変わらないし、バランスを崩すこともない。

 得体のしれない女。それが轟の刃羅に対する評価だった。

 

 次の障害は綱渡りだった。

 底は見えず、落ちたら間違いなく脱落扱いだろう。

 

『落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーーーール!!!』

 

 轟は立ち止まることなく、綱を渡り始める。

 

(流石に同じ綱は渡れねぇな!!)

 

 刃羅は轟とは異なる綱を選び渡り始める。

 綱はしっかりと固定されていた。

 

「これなら思いきり走れるアル!」

「っ!」

 

 刃羅はほぼスピードを落とすことなく、走り抜けていく。

 それに轟もスピードを上げていく。

 そこに爆発音が近づいてくる。

 

「アイヤ~。爆豪には綱なんて関係ないアルか!ここは仕方ないアルか」

 

 爆豪が空を飛びながら渡ってくる。

 刃羅には空を飛ぶ手段はない。

 後ろを見ると、どんどんと差を詰めてきている後続。

 

「むぅー!身体強化タイプに有利!」

 

『とか言いながら渡った綱斬り落としてるじゃねぇか!!』

『まぁ、常套手段だな』

 

 刃羅は渡り切った瞬間、自分が使った綱を斬り落としていく。

 それにより遠回りすることになる後続組。

 

 刃羅は轟達より少し遅れて第二関門を突破する。

 

「スピードアップでござる!」

 

 ドン!と速度を上げる刃羅。

 すでに轟の後ろ姿が小さくなっている。

 

『先頭は一足抜けて、下は団子状態!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は……一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置は良く見りゃ分かる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!』

 

「もう少し私に優しくしてよぉ!びぃえ~ん!!」

 

『おぉ!?どうした乱刀!?さっきの不敵さドコに失くした!?』

『ほっとけ。すぐにまた変わる』

『変わんの!?クレバーだな!!』

 

 刃羅は泣きながらも的確に地雷を躱していく。

 

『大泣きしながら軽やかに躱しやがんな!!逆に怖えぇぞ!!』

 

 前や後ろで爆発が起こりながらも刃羅はピョンピョン!と地雷を躱していく。

 

「はっはぁー!俺は関係ねぇーー!!」

 

 ここで爆豪が轟に追いついた。

 

『ここで先頭が変わったーー!!喜べマスメディア!!おまえら好みの展開だああ!!って、また来たあああ!!』

「「!!」」

「おんどりゃあああ!!」

『ホントに元気になってやがんな!若い子分かんねー!』

 

 刃羅が一気に間を詰める。

 刃羅は轟と爆豪が足を着けた場所を踏んで走っているので、地雷を踏む心配はしていない。

 そして2人に後3mも無くなった時、

 

ボボオオオォォォン!!!

 

「「「「!!!?」」」」

『後方で大爆発!!?何だあの威力!?A組緑谷、爆風で猛追!!?っつーか!!!』

 

 刃羅の真上を何かが通り過ぎ、轟達をも超えていく。

 それは鉄の板に乗った緑谷だった。

 

『抜いたあああ!!!』

「なんじゃそりゃあ!?」

 

 刃羅も目を見開いて緑谷を見る。

 

「デクァ!!!!俺の前を行くんじゃねぇ!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ……!」

 

 爆豪が手で爆破を起こして、飛び出す。

 それに轟が地面を凍らせて道を作って追いかける。

 

「ラッキ~!」

 

 轟が作った氷の道を刃羅は足の裏に刃を生み出して滑り出す。

 失速した緑谷に追いついた爆豪達だが、そこに緑谷が紐で縛っていた板を振り回して爆豪と轟の間の地面に叩きつける。

 カチカチカチっと何かを踏んだ音がする。

 

「うぇ!?」

 

ボオォン! 

 

 板が叩きつけられた地面が爆発する。

 3人の真後ろにいた刃羅はモロに爆発を浴びる。

 

『緑谷!間髪入れずに後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザー・ヘッド!お前のクラスすげぇな!!どういう教育してんだ!』

『俺は何もしてねぇよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろう』

 

「ブホォア!?あのモジャ毛ぇ!!」

 

 刃羅は爆煙で体を黒くして走る。

 

『さぁさぁ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムに還ってきたその男……緑谷出久の存在を!!』

 

 歓声が上がるスタジアムに刃羅もゴールする。

 観客席の方を見てながら何か感極まっている緑谷を見つけると、

 

「緑谷ぁ!!」

「え!?」

「あなた!!よくも乙女の顔に爆風と煙に土を被せてくれましたわね!!どう責任取って頂けるんですの!?」

「えぇ!?ご、ごめん!?……ち、近い

 

 刃羅は目を吊り上げて緑谷に詰め寄る。

 緑谷は謝りながら顔を真っ赤にする。

 そこに麗日や飯田も近づいてくる。

 

 刃羅は5位だった。

 爆発に巻き込まれている間に1人抜かれたのだ。

 

「むぅ~!」

「これも勝負よ。刃羅ちゃん」

「でも、確かに髪の毛煤だらけだね。ってか髪硬!?」

「毎日頑張って手入れしてるのに~!」

「そっちに怒ってたんだ」

「刃羅ちゃんも女の子だものね」

 

 頬を膨らませていた刃羅を梅雨、葉隠、麗日が宥めている。

 顔を煤は拭いたが、髪はまだ汚れていた。

 刃羅の髪はかなり硬めで毎日朝早くから手入れをして、柔らかくして纏めている。

 時間が経つと硬くなるので、今は手入れしたくても出来ないのだ。

 

「次、絶対ボコボコにしたる!」

「これはデク君が悪い」

「そうね」

「そうだね」

 

 女の髪は命である。

 それを穢した罪は重いのだ。

 

「予選通過は上位42名!!!次からいよいよ本選よ!!」 

 

 ミッドナイトが進行する。

 

「さーて第二種目よ!!私はもう知ってるけど~~何かしら!?言ってる傍から!」

 

 そしてスクリーンに表示されたのは、【騎馬戦】だった。

 

「騎馬戦?」

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら?」

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど1つ違うのが、先ほどの結果に従い各自にポイントが振り当てられること!」

 

 その説明に腕を組み、意味を考える一同。

 

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!!!えぇそうよ!!下から与えられるポイントは5ずつ!そして1位に与えられるポイントは1000万!!!!」

 

 ポイントが告げられた瞬間、全員が緑谷を見る。

 刃羅に至っては舌なめずりすらしている。先ほどの恨みもあり、完全にハンターになっている。

 それを察知しているのか緑谷はダラダラと冷や汗を掻いている。

 

「上位の奴ほど狙われちゃう!!下剋上サバイバルよ!!」

 

 

「きひひぃ!いいねぇ!斬っていいよねぇ!」

「それは駄目よ。刃羅ちゃん」 

 

 

_________________________

新!刃格!

 

太刀:京都弁。一人称は「わっち」

 

 

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