サイヤ人のエリート兵士 作:うさぎのにくきゅう
フリーザ軍の中でもそこそこ地位が高い癖に物凄いモブ顔のせいでいまいち人気の無いキュイとの訓練を始めてから早数ヶ月。
と言っても……いや、何だかこの流れにはデジャヴを感じるな。やめよう。
この数ヶ月のキュイとの命がけの戦闘訓練はこれまで行ってきた任務での戦闘とはまるで比べ程にならない成果を出してくれていた。
サイヤ人の能力は十分に理解していたつもりだったのだが、今回の事は見込みが甘かったと言わざるを得ない。
具体的に言うとザーボンさんの期待通り、本当にベジータ君の戦闘力18000を超えてしまった。これには流石の僕もびっくりだ。
更に今回の訓練で僕の戦闘力が上がるにつれキュイとの戦闘力差も少しずつ縮まり、途中からはキュイも全く手を抜く事が許されない本気のガチバトルへと発展した事で、キュイの戦闘力も20000を超える程成長した。
だが、今回の訓練でよーくわかった。何故フリーザ様がわざわざ戦闘力20000すら超えている戦士の居なかったサイヤ人を滅ぼしたのか。
キュイとて十分にエリート戦士と言っても過言では無い戦闘力を持っているし、このまま真面目に訓練を続ければいずれドドリアやザーボンさんに迫る程の戦闘力を得る事ができるだろう。
だが、今では僕の方がキュイよりも戦闘力がかなり高い。
事実、訓練終盤の辺りでは序盤の僕がやられっぱなしになっていた立場が逆転し、僕の方がキュイを圧倒できる程の戦闘力を得た。
キュイと共に訓練したからこそわかる、サイヤ人の異常な成長速度。この勢いで訓練していればあるいはフリーザ様の戦闘力を超える事すら夢物語では無いのでは無いかとすら思えてくる程だ。
流石にフリーザ様の戦闘力を超えると言うには現実味に欠ける話なのかもしれない。だが、そんな存在が徒党を組んで反旗を翻せば一体どうなってしまうのだろうか。
少なくとも、フリーザ軍の壊滅は免れないだろう。例えドドリアやザーボンさんだって例外では無い。ギニュー特戦隊もただでは済まないだろう。
それに、サイヤ人は基本的にプライドの高い人間ばかりなのだ。当然フリーザ様に支配された現状をよく思って居なかった人間も多かったと聞く。
もしもあのまま野放しにしていたら大変な事態となっていたやもしれない。
だからこそ、フリーザ様は先手を打ってサイヤ人の住まう惑星ベジータを滅ぼしたのだろう。
……流石はフリーザ様だ!!
当時、僕はその意図がわからなかったが、フリーザ様は誰もが侮っていたサイヤ人の危険性に逸早く気が付き、フリーザ軍の危機を救い、対処してみせたのだ!
苦難もあった事だろう。確かにサイヤ人達の不満は溜まっていたようだが、明確に反旗を翻すのだと言える程の証拠があった訳でも無かったのだろうし、それにフリーザ軍においてもサイヤ人の存在は有益な物だった事は先ず間違い無いだろう。当然だ。平均的なサイヤ人の戦闘力はフリーザ軍の一般兵の戦闘力を優に超えているのだから。
サイヤ人を本当に滅ぼすのか否か、最後まで葛藤された事だろう。
今現在も数は少ないにしても確かにサイヤ人は生きている事からもそれは明らかだろう。
だが、それでも選んだのだ。
目先の益よりも、フリーザ様はフリーザ軍の未来を選んだのだ。
あぁ。我らが素晴らしきフリーザ様。
このロトリー。フリーザ様への忠誠を更に深めました。
そう言えば、僕達生き残ったサイヤ人は近頃、本気になって戦える程の相手との戦闘を中々行えずに戦闘力が伸び悩んでいたが、そう考えるとこれもやたらに危険因子である僕達サイヤ人の戦闘力を上げないようにしようという考えがあったのかもしれない。
それだけならばふむと納得できるが、それならば一つ可笑しな事がある。
そうだ。ついこの間もっとハイレベルな惑星の侵略の話をされたばかりではないか。あれはもしや戦闘力を上げても反乱は起こさないだろうという信頼の証なのではないか?
もし本当にそうなのだとすればこれ程嬉しい事は無い。
そうだ。久しぶりにフリーザ様にお会いしたい。良く考えればもう一年以上もフリーザ様にお会いしていないのだ。
そうと決まれば一先ず一度惑星フリーザに戻ろう。
もう既にベジータ君の戦闘力は超えた事だし、訓練は取り敢えず切り上げてしまっても構わないだろう。
ちょうど僕がそう決意した所だった。スカウターからの通信音が鳴り響いたのは。
……この反応はどうやらベジータ君からのようだ。当然どうしたのだろうか。
普段わざわざ連絡を取ってくる事なんて無いというのに。
折角テンションが上がってきたのにと少し不満だったが、取り敢えずベジータ君に変に勘づかれてもいけないのでフリーザ様への湧き上がる忠誠心と高まった興奮を抑え、通信に応えた。
「やぁ。突然どうしたんだいベジータ君」
『クックック。よぉロトリー。早速だが、良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?』
おや。どうしたのだろうか。珍しく機嫌が良さそうだな。珍しい。
フリーザ様の元へ帰りたい気持ちはあるが、ベジータ君がこうも上機嫌だとそれはそれで気になる所だ。
そうだな。折角だから僕はその悪い知らせを選ぶぜ。
『悪い知らせか……簡単な事だ。ラディッツの野郎が死んだ。詳しくはわからんが、迎えに行った筈のカカロットに殺されたようだ』
「あー。そういえばそろそろ一年だったっけ。えっと、確か地球?だったっけ。カカロットって案外強かったんだ」
『いや、あの弱虫だらしのない事に戦闘力1000ちょっとの奴ら数人にやられたようだ』
「うわぁ。流石に弱虫過ぎない?」
確かラディッツの戦闘力は1500くらいはあっただろうか。いずれにせよ格下にまんまと殺された事に変わりはないだろう。
あーあ。ラディッツの為に新技も用意してたのに。
まぁ大体はキュイに実験体になって貰っていたから構わないけどさ。
まぁ、ここで死ぬのならどうせ例の惑星に侵略していても死んでいたのだろうな。情けない。
「それで?良い知らせって言うのは?」
『あぁ。そのカカロットの居る地球だが、聞く所によると何でも願いの叶うドラゴンボールと言う願い玉があるそうだ』
「なんでも願いが叶うだって?確かなのかい?」
『あぁ。地球の奴らが自慢げに話していたよ。ラディッツとの戦いで道ずれとなって死んだカカロットを生き返らせるのだとな。ククク。俺達で今からその地球とやらに行って──』
「成程。じゃあ僕はお留守番しているね」
『────何?』
うん。何でも願いが叶うなんて、そんな与太話信じる訳無いだろう。アホなんじゃなかろうか。
大方、ラディッツを殺した後死人に口なしとばかりにめちゃくちゃに適当な事を口にしたのだろうが、嘘を吐くにしてもせめてもっとマシな嘘は吐けなかったのだろうか。
そしてそれを当然のように信じるベジータ君&ナッパ。本当にフリーザ軍の人間は素直で大変よろしい(笑)。
それに、僕は久しぶりにフリーザ様のお顔を拝見しに行かねばならんのだよ。ベジータ君。
だが、それをそのまま伝えても納得する筈も無いのでちゃんと断る理由を考えてあげねば。
「ほら、ただでさえ僕が私用で結構離れちゃっていたでしょう?今回は申請もしてたからまだ良かったものの、その上更に往復で二年間も離れちゃったら流石に問題になりそうだし。ベジータ君らは居なくなっても最悪バレないかもだし。ね?」
『……ククク。成程な。OK、ならば仕方が無い。俺とナッパだけで向かうとしよう。』
「はいはーい。ま、結果が良ければまた教えてよ。独り占めはしないでね?」
『あぁ。わかっている。ではな』
ふう。何とか疑われずに済んだみたいだ。
……僕の生まれ変わったような戦闘力、気がついて貰えなかったな。まぁ、普段一々確認する事も無いだろうし仕方が無いか。
しかし、今回の件は直接フリーザ様のお耳に入れておきたいな。何でも願いの叶う願い玉だなんて、もし本当ならば物凄い手柄だ。
フリーザ様にお会いしたいと言っても何か建前が欲しかった所だ。丁度良い。
そうと決まれば早速帰還だ。
「おーーい!キュイー!帰るよ支度しなーー!!」
おや?返事が無い。……あぁ。ぎりぎりの戦闘でただの屍のようになってしまったからメディカルマシーンに入れておいたのだった。
だがまぁ、多少身体にダメージが残っていようとも一応ポッドでも多少治療はできるのだし、もう出してしまって構わ無いだろう。僕は今すぐに戻りたいのだ。
……と思い、キュイをメディカルマシーンから出そうとすると、治療員に全力で止められてしまった。殺す気ですか!!って、大袈裟な。確かに訓練で少しやり過ぎた所はあったかもしれないが、その時点で生きてるのだからちょっと回復した今なら死ぬ事は無いでしょ?駄目?
……仕方が無い。一人で帰るとしよう。