ただ、自分はそういうの好きでも、今のオリ主不憫路線が読者方にどう思われてるかちょっと不安なんで、よろしければ評価・感想・お気に入りお願いします
頭が痛い。ズキン、ズキンとした鈍痛が、武闘家……マァムという女と戦ってから続いている。
どこかで見たような気がする。あの顔を。似たようなものを知っている気がする。あの鎧を。
だが、そんなことは有り得ない。自分は『作られて』から……キルバーン以外と会話を交わしていない。
そう、あの日……地上の小さな村で目が覚めた俺は、隣にあった墓が何故か気になって、夢中で掘り返して……中身がちゃんとあるのを見て、とても安心して……その後……
「ぐっ……!」
頭痛のせいで思考が定まらない。俺が『作られた』日のことなどどうでもいい。
とにかく、勇者が罠で死ぬのを確認してから、残ったパーティーをさっさと始末して、人間も滅ぼして……
頭痛に耐えながら今後のことを考えていた時……キルバーンの罠にかかって死にかけていた勇者たちの周りに、眩い光が立ち込める。
「……あれ、は……」
あれは、そう……勇者の、光……
「アバン……! あの男、許さない……!」
ハドラーとの激戦の後の隙をつき、あと一歩のところまでダイとポップを追い詰めたキルバーン。しかし、生きていた勇者アバンによって、2人は救出されてしまった。
そればかりか、アバンに気を取られているうちに、自慢の罠を作動させる暇もなく、ダイたち勇者一行は一気にバーンパレスに辿り着いてしまった。
これだけでもキルバーンにとっては許し難い事態であったが、あまつさえアバンは、キルバーンの仮面を剣で破壊した。
キルバーンにとっては、これ以上ない屈辱。罠を破られたことも、仮面を壊されたことも……死神である自分が、一瞬、死の危険を感じてしまったことも。
あと少しアバンの剣が奥に届いていたら、自分は……
「クソッ!!」
怒りを発散するために周囲の物に八つ当たりしながら、キルバーンは代わりの仮面を探す。
伊達や酔狂だけで仮面を付けているわけではない。キルバーンにとって顔を隠すのは、死活問題であった。
「…………」
そんな荒れているキルバーンを近くで無言で眺めているのは、先ほどマァムを強襲した仮面の男。
「ああ、キミか……どっか行ってくれるかい? 最初はアバンを殺すのにキミを利用することも考えたが……あの男は、ボクが直々に殺さないと気が収まらない」
キルバーンにそう言われても、男は話を聞いているのかいないのか、自分の腕をぼぅっと見ている。
「……聞いているのかい? ボクは隙を見つけてアバンを狙うから、君はミストの手伝いでも……おや?」
キルバーンの言葉がピタリと止まる。なぜなら、呆けたように自分の腕を見ていた仮面の男の手の中に……突然、大振りの剣が現れたからだ。
先ほどまでイライラしていたキルバーンだが、それを見て興味深そうな表情をする。
「簡単な罠なら出せるようにしておいたけど……そんな手品は教えてなかったはずだよね? どうしたんだい?」
「……分からない……ただ、武闘家と戦ってから調子が悪くて……それで、勇者アバンを見たら、急にできるようになって……」
仮面の男が握っている剣……それは、諸刃の剣という……かつて不死騎団副団長カロンの使っていた、強力だが使用者にもダメージの行く、危険な魔剣であった。
しばらく剣を見ていた男だが、ヒュッ、と剣を横に振るうと、いつの間にか魔剣も消えていた。
「へぇ……以前の君を思い出しかけているのか……武闘家ちゃんやアバンを見てそれなら、ヒュンケルと会ったらどうなるだろうね……ククク」
「ヒュン、ケル……? っ゛、あっ……!? 頭、が……!」
ヒュンケル……その名を聞いた瞬間、頭を抑えて先ほど以上に苦しむ仮面の男。
キルバーンはそんな彼を見て、ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべる。
「まったく、仮面にヒビが入ったせいでおかしくなったのかい?」
そう言いながら、キルバーンは手を伸ばして、男の仮面……マァムとの戦いで欠けて、ピンク色の髪が覗いている部分に手をかける。
その瞬間、男…………カロンの全身を、凄まじい激痛が襲う。
「ぐっ……あぁああああああぁああ!!!」
「ロカの脱殻だった頃なら、かつての仲間を見て思う所もあっただろうけど……今の君は脱殻ですらない、空っぽの器だろ?」
グリグリと仮面の欠けた部分を抉るキルバーン。しばらくそうやってカロンを責めた後、腕を振るって彼を地面に叩きつけた。
「ぅ……! がはっ!! あ゛っ……げほっ!!!」
咳き込んだカロンの口の中から、血と……微かに赤く染まった灰が吐き出される。
「最早骨ですらない、残りカスの灰で作られた空っぽクンがそんな風に、誰かを見て感じ入る必要があるのかな?」
「う、ぐ……! そ、うだ……おれは、道具で……使われるのが、存在意義で……あの方の為に、地上を……」
「クフフ……ま、君のおかげで少しは気が晴れた……ボクはアバンを狙うから、君には本来の仕事をしてもらおう……幸い、ヒュンケルはしんがりみたいだし、ね」
今の不安定な状態のカロンとヒュンケルを会わせる……キルバーンにとっては是非ともその時の状況を見て愉しみたい所だが、今はそれよりもアバンへの怒りが勝った。
お楽しみをこの目で見れないのは残念だが……その結果どうなったかは、アバンを殺した後にでもゆっくり確認すればいい、とほくそ笑むキルバーン。
アバンに壊された代わりの、怒りの仮面を付けたキルバーンは、そのままアバンたちの元へと向かって行った。
「……俺、の……剣……」
後に残されたカロンは、再び手の中に剣を出現させ、刀身を撫で回した後……剣を引きずりながら、ゆっくりと歩き出した。
……ヒュンケルと会うために。
ヒュンケルは絶望の決戦に挑もうとしていた。
目の前には王であるマキシマムが率いる、オリハルコンでできた金属戦士たちの軍団。対するは、ヒムとの闘いでボロボロになったヒュンケルただ一人。
誰が見ても、ヒュンケルに勝ち目はないと断言するだろう。
実際、ヒュンケルはこれを自らの最後の闘いであると位置付け、ヒムはヒュンケルの後ろで必死に逃げるよう促している。
「ヒム、悪いな……約束は、果たせそうにない……」
もう一度相手をする、という約束を守れそうにないことを謝罪するヒュンケル。
それでも、ダイたちに手を貸してもらうため、何より、友となったヒムを見殺しにしないために、決死の戦いを挑もうとした。だが、その時……
「ヒュンケル、お前……!? な、なんだアイツは!?」
「…………」
いつの間にかヒュンケルとマキシマムたちの間に、怪しげな仮面をつけた男が現れていた。
「っ!? お前は……!?」
「んー? なんだ、誰かと思えばキルバーンの奴の手下か……まさかとは思うが、吾輩の手柄を横から奪おうというわけではあるまいな?」
「……別に、手柄を奪おうってわけじゃない」
「ふん、ならば、一体何の用でここに……な、なにぃ!?」
突然、マキシマムが驚愕したような声をあげる。それもそのはず、味方であるはずの仮面の男が……いつの間にか取り出していた剣で、ヒュンケルに向かっていたポーンの駒を破壊したのだから。
その剣は、刀身が灰で覆われている、奇妙な剣であった。
剣の形状自体は華美な装飾もない、質実剛健を表したようなシンプルなものだからこそ……その灰の異質さが際立っている。
「……ロカの剣を、俺の灰でコーティングしてみたんだが……オリハルコンも砕けるなら、十分以上だな」
「き、きき、木様ぁ!! 血迷ったか!? やはり吾輩の手柄が目的か……それともキルバーンの差し金か!?」
「…………全部思い出したよ、自分のことを……あと、思い出してもどうにもならないってことも」
「ええい、何をわけのわからないことを……! 構わん! そいつを殺せ!」
マキシマムの命令で、駒たちの標的がヒュンケルから仮面の男に変わった。
向かい来る駒を前に、仮面の男……カロンは、既に握っている灰の剣とは別の剣……諸刃の剣を取り出すと、二つの剣を別々に構えた。そう、所謂二刀流である。
「……最近、あるクソ野郎のせいで器用になってな……こんな芸当もできるようになった」
「やれぇ
ビショップが全身の刃物を光らせて、カロンへと迫る。カロンもがボロボロになる姿を想像し、ニタリと笑うマキシマムだが……その直後、ビショップはカロンの後ろから伸びてきた槍に呆気なく貫かれる。
「……新たな敵にかかりきりになり、既存の脅威を疎かにするとは……指揮官としても2流だな」
それは、マキシマムがカロンに気を取られている間に、槍を回収したヒュンケルの攻撃であった。
「ば、馬鹿な!? 貴様はもう立っているのがやっとのはず!?」
「お前の不死身っぷりには、もう驚かないよ、ヒュンケル」
「……行くぞ、カロン……久しぶりだが、合わせられるな?」
「おいおい……当然だろ」
その直後、ヒュンケルとカロン、それぞれの武器が同時に煌めいた。
ヒュンケルは剣から槍へ、カロンは一本の剣から二刀流へ……武器は変わっても、根底の戦い方は変わらない。
不死騎団であった頃、長い間共に戦っていた2人の動きは、正に阿吽の呼吸……マキシマムの出す指示による、駒たちの仮初の連携とは雲泥の差だ。
「お、おのれぇ……! ナイト! ジャンプだ!」
マキシマムの指示を受けて、ナイトがその機動力を活かして空高くジャンプする。
剣士である2人には、空中への攻撃手段がないと思っての行動だったが……
「……カロン!」
ヒュンケルは、自分の槍をカロンへと投げ渡す。槍の方を見もせずにそれをキャッチしたカロンは、槍を利用して棒高跳びの要領で高く跳び上がる。
「げ、げげぇ──!?」
「……はっ!」
ナイトの駒と同じ高さまで飛び上がったカロンは、一太刀でナイトを斬って捨てる。そのまま、飛び上がるのに利用した槍の位置まで着地していく。
「おのれ、ならば……!
マキシマムは今度は、武器をカロンに投げ渡して丸腰のヒュンケルを攻撃するように指示を出す。
槍は地面に転がっていて、カロン本人はまだ着地していない。武器を投げ返すとしても、まだ少し時間がかかるはずだ。
故に、その間にヒュンケルだけでも倒そうとしたのだが……
「ヒュンケル!」
カロンは、不死身である自分以外が使えばダメージを受けてしまう諸刃の剣ではない方の、灰の剣を空中でヒュンケルに投げ渡す。
灰の剣は、吸い込まれるようにヒュンケルの手の中へ収まった。
「……大地斬!」
久しぶりの剣だが、そんなブランク程度で鈍るほどヒュンケルの腕は甘くない。ヒュンケルの剣は寸分違わず、ルークの駒を両断する。
「お、おのれぇぇい……! 我が最強のオリハルコン軍団が、なぜ……!」
「……こいつらには、心がない……ハドラー親衛騎団とは似ても似つかない、ただの人形だ……!」
「心のない、本当の意味での『人形』……同情するね……ヒュンケル!」
カロンは悠然と着地すると、落ちていた槍を拾ってヒュンケルに投げ返す。
「これは実体験なんだが、俺の剣とロカの剣をただ思いように振っていたら、割とサマになる二刀流ができた……つまり」
「……アバン流刀殺法と槍殺法、それぞれをマスターした俺ならば……全く新しい戦い方も可能、ということだな」
「こうなれば、玉砕覚悟……! 残る
マキシマムの無茶苦茶な指示を受けて、ポーンたちが特攻紛いの突撃を始める。
それに対しヒュンケルは……片手に槍を、片手に剣を持った状態で、群がるポーンの駒たちに立ち向かっていく。
「ヒュンケル、今だけは、昔に戻ったみたいだ……思い出すなぁ……血塗られた道を征く人間と、人間ぶるのが好きな骨の……あの戦いの日々を」
「一刀一槍……ブラッド・ボーン!!」
槍と剣、どちらを扱わせても超一級のヒュンケルが、その両方を振るえば……その力は計り知れない。
ましてや今のヒュンケルは、カロンと共に戦っていることで絶好調。
特攻のどさくさに紛れて、最後の足掻きでヒムを人質にしようというマキシマムの企みも失敗に終わった。
予想以上のスピードで倒されていく駒たちを制御しきれず、僅かに残った駒もカロンの剣で次々と壊されていったからだ。
「ぐ、ぐわああぁああああ!!!??」
最後に残ったマキシマムは、その自慢の頭脳を活かす暇もなく……ヒュンケルの剣と槍によってなます切りにされ、爆発しながら息絶えた。
「す、すげぇ……流石ヒュンケルだ! あの怪我でなんてぇ動きだよ……! そっちの変な仮面の兄ちゃんもやるじゃねぇか!」
ヒュンケルとカロンの抜群なコンビネーションによる圧倒的な戦いを見て、興奮した声をあげるヒム。
一度は絶望したからこそ、その喜びはひとしおだ。
「……相変わらず凄い動きだな、ヒュンケル……多分わざわざ俺が助けに行かなくても、お前ならあの場を切り抜けられただろうな」
「……カロン……」
「そして、今は敵を倒して、かつての弟分とも再会して、油断している……もし例の死神だったら、喜んでこのタイミングで仕掛けるだろうな……油断させるためなら、味方すら殺して」
「……! そう、か……カロン、お前は……」
「ヒュンケル……呆れるだろ? 性懲りもなく俺は……お前にも姉さんにも、手をかけさせてばかりだ」
「ふ……お前は確かに手のかかる奴だが……それ以上に、何度も助けられた……今、俺の危機を教えてくれたようにな」
「……? おい、お前ら……何の話をしてるんだ?」
だが、ヒュンケルとカロンの間に、重いとも軽いともつかない微妙な空気が流れているのを感じて、ヒムは怪訝そうな顔をする。
「ヒュンケル……もう一度だけ、俺を助けてくれ」
「……お前がどれだけ運命に翻弄されようと……俺が何度でも助けてやる」
「お、おい、お前ら!?」
ヒムが困惑の声をあげた瞬間……ヒュンケルの槍とカロンの剣が、激しい火花を散らしてぶつかり合った。
ここに来て初のオリ技
しかし使うのはオリ主ではなくてヒュンケルという