不死騎団の副団長   作:ハルホープ

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狂いゆく歯車

「待ちなさい、その男とは……私が戦います!」

 

「……私が、とは……『私一人が』という意味かな、アバン」

 

 ところ変わってバーンパレス、白い宮庭(ホワイトガーデン)……そこでは最後の壁とでもいうべき男ミストバーンと、ダイ一行が対峙していた。

 しかし、そこに遅れて現れたアバンが、ミストバーンへと一騎打ちを申し出たのである。

 

「む、無茶だぜ先生!」

 

「そうよ! 先生に戦うなとは言わないけど、ハドラーたちのように一対一で正々堂々と戦う必要のない相手だわ! みんなで戦えば……っ!」

 

「……受けますか? ミストバーン……この私の挑戦を!」

 

 アバンを止めようとするポップたちだが敢えてアバンはそれを無視してミストバーンを挑発する。

 

「……断る!」

 

「なに……!?」

 

「忘れていたわ、あの男の存在を……酷く執念深い奴だからな……自分の獲物を横取りされたとあっては、何をされるか分からん……!」

 

「っ! 先生!」

 

 突然虚空より現れた穴から飛び出してきた鎌が、アバンの体を捕らえようとする。それに気づいたダイが声をあげるが、もはやどうしようもないと思われた。

 

 

 

 しかし、虚空から現れた鎌は、アバンの周りに突如現れた灰に阻まれる。

 

「えっ!?」

 

「……全ての戦いを勇者のためにせよ。ダイには悪いが、俺にとっての勇者は、やっぱりアンタだったみたいだ」

 

「あ、あなたは……」

 

「カロン!?」

 

 灰はゆっくりと人の形を……カロンの形を取ると、アバンを遠くへ突き飛ばし、自らは鎌が現れた虚空へと引き込まれていく。

 

「カロン、ダメ! それは死神の罠よ!」

 

「分かってる、だからだよ……なぁ、アバン」

 

「ロカ……? いえ、ロカは死んだ……まさか、あなたがカロン君ですか?」

 

 突然の展開にさしものアバンも驚いたようだが、それでも正確に事態を把握していた。

 

「礼はいらない。礼なら俺をこんな便利なビックリ存在にしたキルバーンと……そいつに言うんだな」

 

 カロンが現れたことで周囲に大量に舞った灰……それは一瞬ハドラーの形を取ったと思うと、風に流されて消えていった。

 

「ハドラー……」

 

「ヒュンケルの光の闘気で、俺ごと暗黒闘気が消えようとした時……ハドラーの声が聞こえた」

 

 万感の想いを込めてそう言った後……カロンは一転して、茶目っ気のある笑みを浮かべる。

 

「そうそう、『奴』が来たら言っといてくれ。お前の一番槍はカロンが頂いたってな」

 

 笑みを浮かべた後、カロンは手を振ってそのまま虚空へと消えていった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「まったく、肝心なところで邪魔をしてくれたね……!」

 

「まぁ、そう言うなよ」

 

 キルバーンがカロンを取り込んだ空間……そこは、魔界の者がどうしても決着をつけたい相手との決戦に用いる、一騎打ちの為の異空間。

 審判(ジャッジ)である機械型モンスターが、近くに佇んでいる。

 

「むしろ感謝して欲しいぜ? 俺が邪魔したおかげで、お前はアバンの策略に乗らずに済んだんだからな」

 

「……どういうことだい?」

 

「お前はアバンの作戦にまんまとハマったんだよ。死神の目を自分だけに向けて、ダイたちに余計な手出しをさせないのがアバンの目的だったのさ」

 

「なに……? いや、確かに考えてみれば、ボクの罠にハマって何もできずにダイが死ぬのが、アバンが最も警戒するところか……?」

 

「だから俺は、アバンが危険になった時に、ハドラーの灰を目印に飛んでくればいいだけだった」

 

 いくらラーハルトが早くても、空中を最短距離で、かつ障害物も僅かな隙間を通っていく灰よりは遅い。

 

「俺は別に、ここで未来永劫戦っていても構わない。アバンがダイの盾になったように、俺もアバンの盾になる。アバンやダイがバーンを倒してくれるまでな!」

 

「……君を玩具にしたのは失敗だった。あの日、あのまま死んだままにしておくべきだったよ!」

 

「は、ご愁傷様だな!」

 

 

 カロンとキルバーンは、互いに剣を構える。カロンが不死身であることも、ミストバーンの体が普通ではないことも、両者理解している。だからこれは、決着のつきようのない、ただ時間が流れるだけの泥仕合。

 

 しかし────

 

 

 

「泥試合は好きじゃないが……仲間の為に泥を被るのは嫌いじゃない」

 

 


 

 

 

 再びところ変わって、カロンが消えた後のホワイトガーデンでは、アバンが鋭い眼光でミストバーンを射抜いていた。

 

「思わぬところで、思わぬ人物に助けられましたね……さてミストバーン、今度こそ私の挑戦、受けてもらいますよ」

 

「ぬぅ……」

 

「先生! 俺たちも!」

 

「いいえ。あなた達はただバーンを倒すことだけを考えてください」

 

「でも……!」

 

「先ほどカロン君も言っていたでしょう? 全ての戦いを勇者の為に……ダイ君には万全の状態でバーンと戦わなければなりません」

 

「なら先生! ダイは先に行かせて、私が!」

 

「いいえマァム。ここで言う『万全』とは、可能な限り多くの仲間も含みます。それに……ミストバーンとの戦いは、単純な力比べというわけにはいかないようです」

 

 

 アバンの類稀なる頭脳は、ミストバーンは『切り札』を隠し持っていること。そして『切り札』はミストバーンにとってもギリギリまで追い詰められないと切らない、言うなれば『爆弾』である事を見抜いていた。

 

 切り札の具体的な内容が分からない中で、追い詰め過ぎないように、かつ負けないように戦う……そのバランス感覚を若輩のポップやマァムに求めるのは酷だとアバンは一人で戦うことを選んだ。

 

「でも……」

 

「……みんな、行くわよ! みんなが行かないなら……私だけでバーンのところまで行くわ!」

 

 それでもなお迷うダイたちを一喝したのは、レオナであった。そしてあろうことか……一気に階段を駆け上がっていく。

 

「ええ!? ちょ、ちょっとレオナ!?」

 

「ちょ、そりゃねぇだろ姫さん!」

 

「みんな、待って!」

 

 そのままなし崩し的にレオナを追いかけるダイ、ポップ、マァム。後には、アバンとミストバーンのみが残された。

 

「……アバンよ、このまま私があいつらを行かせると思うか? 無粋ではあるが、パレス内部であればいくらでも先回りはできるのだぞ」

 

「ええ、思いますよ。みんなも以前戦った時よりレベルアップしたとはいえ、バーンの元へ辿り着く人数も減っている……『切り札』を切ってまで止めたいとは、思っていないでしょう?」

 

「……!」

 

 アバンやヒュンケル、先ほどのカロン、そして地上にいる戦士たちまでもがバーンに殺到するとなったら、ミストバーンもバーンを守る為に切り札を切りかねない。

 故に勇者ダイ、大魔導士ポップ、武闘家マァム、賢者レオナの4人パーティーがベスト。

 バーンパレス突入前、ダイ、ポップ、マァム、ヒュンケル、クロコダインの5人がかりでバーンに敗北したことはアバンも知っている。

 ミストバーンも高く評価しているクロコダインやヒュンケルがいないこの戦力が、おそらくはミストバーンが切り札を切らないデッドラインギリギリ。

 

 

「……本当は、死神の目を私だけに向けて、ダイ君たちに手出しさせないようにするつもりでしたが、ロカ……いいえ、カロン君のおかげで、その必要もなくなりました」

 

「アバン……全くもって、恐ろしい男だ……分かっていても、私はお前の策略に乗らざるを得ない」

 

 ミストバーンの『切り札』……大魔王バーンの全盛期の肉体は、バーンの許しがなければ決して使ってはいけない。

 アバンに時間を稼がれるのを分かっていても、『切り札』を切らずに戦うしかない。

 

「だが、私もただで奴らを行かせるつもりはない……貴様の悲鳴で、ダイたちを呼び戻してやろう!」

 

「それは……ごめん被りたいですね!」

 

 

 

 ここでもまた、バーンの名を関する幹部と、あの世から帰ってきた男の一騎打ちが幕を開けた。

 

 

 

 


 

 

 

「ふぅ、言わんこっちゃない……一人で突っ走るからそうやって捕まるんだよ」

 

「捕まったことは謝るわ。でも、ああでもしないとみんなはアバン先生のそばを離れなかったでしょ?」

 

「……ええ、私も頭が冷えたわ。ヒュンケルが後ろで大群を、カロンがキルバーンを、先生がミストバーンを抑えてくれている……なら私たちは全力で、バーンを倒しましょう!」

 

「にしても……ったく、ここまで来て変な相手だったぜ、ゴロアっつったっけ? 魔力を無駄にしちまったよ」

 

「あ、それならポップ君、先生から預かった羽があるわ」

 

 

 

 

 ────ポップとマァムがいたことで、ゴロアは呆気なく敗れた……ダイの紋章が、両手に移ることなく。

 

 それを、魔界の奥深くで感じ取ったヴェルザーは、一人不気味に微笑む。

 

 

「……ここが、分岐点だ」

 

 




ちょっとFF7Rに影響受けてますが、まぁ同じスクエニということで
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