週に1回投稿するかしないか、みたいなペースだと思っていてくださっていると助かります!
別作品が今終盤に差し掛かっていますので、そちらを優先しております。
m(_ _)m
アリスの神聖術の修行は、フィアが教官役となっていた。元老長チュデルキンはそのことに当然反発したのだが、彼が心酔している最高司祭アドミニストレータがレオンハルトに任せると言ったのだ。その時のチュデルキンは驚愕しきっており、レオンハルトは腹を抱えて笑いながら煽っていた。
『げ、猊下がそうおっしゃるのなら。それとレオンハルト!笑い過ぎなのですヨォ!』
『いやぁわりぃわりぃ。けどその見た目からして人を笑わせるのがお前の仕事だろ?』
『違うのですヨォ!』
『ほんとか〜?ま、ともかくそんなわけだ。俺が言ったとおりだったろ?これでもうアリスの件に口出ししてくるなよ』
『ぐヌヌ…。しかぁし、分かってますよねェ〜?期間は2年だけ、時が来たら
『分かってるさ。ベルクーリにも言われたし、契約もある。その時が来たら』
──アリスを処刑すればいい
「…レオンハルト?」
「ん?どうした?アリス」
「それはこちらが言いたいわ。ぼーっとしちゃって」
「ちょっと考え事をな。それより、今日もしごかれるんじゃないか?」
「フィアって厳しいのね。普段との違いが凄いわ」
「フィアがアリスのことを好きだからな」
「そ、そうなのね」
「アリスって真っ直ぐ言われるのに弱いよな」
「そんなことないわよ!」
修行の休憩中にアリスと談話しているレオンハルトは、今後の内容を考えてるフィアに目を向けつつアリスを弄っていた。レオンハルトの肩を叩いて抗議するアリスだったが、レオンハルトに顔が赤くなっていることを指摘されて押し黙ってしまった。
「アリス」
「……なにかしら?」
「愛してるよ」
「ふぇぇ!?」
「冗談だよじょうだ「今何かおかしなことが聞こえたのだけど」……き、気のせいじゃないかな〜」
「アリスを口説いていたのかしら?」
「ハッハッハ〜、ソンナワケナイダロ〜」
「あ、あああ、あい、あいあい…わ、わたし…」
「アリスがあの状態なのが証拠じゃないかしら?」
「あれは…ちょっと妄想が酷いような…」
「あ、ああ、あの…れ、れれ、レオンハルト…その、私がその年齢に、な、なったら…う、うう、受け入れ、ます。め、名誉なこと…だもんね」
「……おーい…アリス〜?本気で捉えないでくれない?お前には、ほら、ユージオやらキリトやらがいるわけだしさ?」
「レ・オ・ン?」
「…フィア。……ごめんなさい」
まるで修羅がその場にいるような、そんな感覚を覚えたところでレオンハルトはフィアに全力で頬を叩かれるのだった。ちなみに、妄想の世界に入りきっているアリスもフィアに頬をつねられることで現実へと帰ってきた。そして、からかわれていただけと知ったところで、フィアが叩いたのとは反対の頬を叩いた。
「両頬が痛い…」
「自業自得だわ」
「レオンは自分の言動を見つめ直すべきね」
「曲がりなりにも整合騎士様なのだから、あなたにあんなことを言われたら本気で受け取るに決まってるじゃない」
「そういうもんなのか」
「そうよ」
「でも俺は誰彼構わず言ってるわけじゃないぞ?」
「なっ…!?」
「レオン?そういうとこなのよ?」
「…はい」
笑顔だが、目は笑っていないフィアに注意され、レオンハルトは大人しくなった。休憩ももう終わるのでレオンハルトはまた見守るだけになるのだが、修行に戻ろうとしたアリスを呼び止めた。
「なに?」
「修行が終わったら今日も出かけようか」
「!…いいの!?」
「あぁ。街中に行けるわけでもないが」
「いいえ。十分よ!ありがとう!」
両手を握って「よーし!」と気合を入れたアリスを見送りながら、レオンハルトは昨日の夜のことを思い返していた。ベルクーリとの会話を終えて部屋へと戻ったあとのことだ。
ーーーーーー
「おかえりなさい。レオンハルト」
「フィアただいま。アリスも大人しくしてたか?」
「子供扱いしないでください。それと、おかえりなさいませ、レオンハルト様」
「固いな〜。フィア」
「わかったわ」
「?なんですか?」
フィアはアリスの前にしゃがみこんで、目線の高さを合わせた。…いや、フィアが逆に見上げているか。アリスは上位の人間が自分なんかに膝をついているという状況に混乱したが、フィアの柔らかな笑顔でなんとか落ち着くことができた。フィアは人差し指を立てて、アリスの口元に軽く押し当てる。そして聞き取るのが難しい速さで詠唱を始め、すぐに何かしらの術を発動させた。
「これで完了よ♪」
「相変わらず速いな。さすが騎士団一の詠唱者」
「ふふっ、褒めても美味しい料理しか出ないわよ?」
「出るのか…」
「んー、んーー!!」
「アリスに術の説明をしてやらないとな」
「そうね。まずは、いきなりこんなことしたことを謝らせてね。…ごめんなさいアリス」
「んー!?んーんー!」
「この術の効果はいたって単純よ。アリスが敬語を使わなければいいの。それなら話せるから」
「そんな術聞いたことないわよ!……あ、話せた!?」
「論より証拠ってな。これで理解できたろ?」
「ええ。でもいったいどうやってこんな術をんんー」
「ははは!アリスは面白いな〜。途中から敬語になるのか〜」
「そんな笑わなくてもいいじゃない!目上の人を敬う、当然のことでしょ!」
「アリス。それはとても大切な心がけだわ。でもね、私やレオンにはそんなのいらないわ。砕けた話し方でいいの。だってこれから同じ場所で生活するのだから」
「フィア……、でも」
「ま、慣れりゃいいんだよ」
頭を軽く押し付けるように力を加えながら、アリスの頭を乱雑に撫でる。髪が乱れたことに怒るアリスとそれを微笑んで見るフィア。それは、まだ出会ってから短いが、3人の関係がよくわかる光景だった。
アリスに必要な生活は明日にでも揃えようと検討するフィアだったが、その思考はレオンハルトの発言で中断することとなった。
「フィア、今から
「…え?」
「外?勝手に出ていいものなの?…フィア?」
「ほんとうに?ほんとうに外に連れて行ってくれるの?」
「ああ。
「レオン…ありがとう!嬉しいわ!」
「おっと…ははっ、そこまで喜んでもらえると、俺も嬉しいよ」
「レオン…」
フィアはレオンハルトに駆け寄って手を握ることで喜びを顕にしていた。その表情はとても弾けていて、まるで子どもがお願いを快諾してもらった時のようだった。フィアがここまで喜ぶのは当然のことだ。フィアだけじゃない、整合騎士たちは基本的に勝手な行動を取ることができない。セントラル=カセドラルの守護が任務だからだ。しかし、レオンハルトはそれを拡大解釈することで、実質の無視を行っていた。
『守護ってのは、外敵から守るってことだ。ダークテリトリーの軍勢は東西南北のどこも突破できていない。つまり外敵はいないというわけだ。それならずっとここにいないといけないということにならない』
それがレオンハルトの解釈なのだ。そもそもレオンハルトはアドミニストレータと取り決めた契約があるため、元老院の話を無視できるのだ。しかし、フィアはそうはいかない。だからレオンハルトもできるだけフィアの側にいるようにしており、可能な限り隙をついて外に連れ出すのだ。
しかし、アリスはその事情を一切知らない。そのため、なぜフィアがそこまで喜んでいるのか、その流れで何やらレオンハルトといい雰囲気になっているのかが分からなかった。
「えっと〜、外に行くっていうのは、結局どういうことなの?」
「あっ!ご、ごめんなさいねアリス。置いてけぼりになってたわよね」
「ま、その話は後でいいだろ。んじゃ!アリス!外に出かけるぞ!」
「ちょっ、ちょっと!持ち上げないでよ!自分で歩けるから!ってなんで窓の方に行くのよ!」
「ん?そりゃあ飛び降りるからだけど?」
「頭おかしいんじゃないかしら!?飛び降りるなんて正気じゃないわ!私階段でフィアと一緒に行くから!」
「アリス。何事も経験よ」
「見捨てないでよぉ!」
「叫んでると舌噛むぞ」
「え!待って待って…きゃああああぁぁぁ!」
体が宙に投げ出されることで生じる浮遊感。それに全く耐性がないアリスは絶叫したのだが、しばらくしてその浮遊感が消えていることに気づいた。もう着いたのかと思い、恐る恐る目を開けたのだが、全くと言っていいほどそんなことはなかった。では、なぜ浮遊感がなくなったのか。それは勿論のことながら、レオンハルトが原因だ。体は宙に浮いたまま、それでいて重力に従って緩やかに落ちているのだ。
「な、なにをしたの?」
「ん?単純な話だぞ?ちょっとばかし風を起こして、落下速度を遅くしてるんだよ。俺一人ならこんなことしないが、アリスがいるからな」
「そんなこと…」
「できるんだなぁこれが。コツがあるのも事実だが、そのへんの事は俺の担当じゃないからな。興味があるならフィアにでも聞け」
「興味はないわよ。…でも、気にはなるわね」
優等生でありながら好奇心の塊であるアリスに感心しつつ、レオンハルトはイタズラを考えついた。それは減速をやめるというだけのことだ。アリスが舌を噛んでしまわないように、高さに気をつけて行われたそれは、レオンハルトの思惑通り成功した。アリスが「ビックリした!怖かった!」と非難を浴びせながらレオンハルトの頭をビシビシ叩くのだから。
「まったく、大人になりきらない人ね」
「お、フィアも来たか。それと、俺は頭の固い大人になりたくないだけだ」
「あなたの場合は子どもなのよ…。アリス怪我はない?」
「フィア〜、怖かったぁー」
「よしよし、もう大丈夫よ。これが最初で最後だから」
「見捨てた奴なんだけどな〜」
「なにか?」
「いえなにも。天翔、出てこい」
レオンハルトの相棒である天翔は、「やっとか」という思いがありつつも、フィアのためだからとすぐに出てきた。まずレオンハルトが飛び乗り、フィアが持ち上げたアリスを引っ張り上げる。そして最後にフィアが乗ったら準備完了だ。レオンハルトが手綱を握り、その後ろにアリスがいてその後ろにフィアがいる。
「それじゃあ出発するから掴まっとけよ」
「ええ。ほらアリスもレオンの体に掴まって」
「う、うん」
「遠慮がちね〜。全身でしがみついてもいいのよ?」
「そんなことしないから!」
「そう?私は2人の時はよくそうしてたけど」
「…ずっと思ってたけど、2人のかんけ──」
「飛ぶぞ〜」
仲が良いを通り越しているとしか思えない2人の関係を聞こうとしたアリスだったが、天翔が飛び立ったため言葉が遮られた。連行された時はデュソルバートの飛竜で飛び立っており、何だかんだで優しく飛び立っていた。しかし、天翔は違った。一気に高度を上げようと飛ぶため、アリスは振り落とされないように必死にしがみつくことになったのだ。
「雲を抜けるぞ。…ここまで飛ぶなんて今日は張り切ってんな〜」
「ふふっ、いいじゃない。天翔、ありがとう」
「ヴォ」
「も、もう大丈夫かしら?」
「ええ。ゆっくり飛んでくれてるわ」
「ほっ。…それで、フィアはなんで外に出れないの?」
「アリス。まず大前提として、レオンハルトの自由さを考慮しちゃだめよ。例外だから」
「わかったわ」
「整合騎士はね、任務を与えられるのよ。多くの場合ダークテリトリーが侵入してこないように四方の守護。それ以外の騎士は中央の…正確には教会の守護が任務なの。だから中央にいる騎士は外に出ることが滅多にないわ。…その中でも私は少し特殊で、
「な、なんで!?」
「俺はそれが気に食わないから、こうやって時をみて外に連れ出してるってわけだ。連れ出したところで俺にもフィアにも罰則が与えられることはないからな。口約束みたいなもんだし。…だが、外に出てることを知られてないわけじゃない。そのことを追及してくる奴もいるんだ」
「だから極力レオンハルトと一緒にいるのよ。そうすれば追及されないから。団長も許してくれる人だから、レオンハルトがいない時は団長が一緒にいてくれるのよ」
「…2人ともいなかったら?」
「その時は副団長よ。私、あの人とも仲いいのよ」
「…なんで……なんでフィアだけそんなことになってるの?」
「……それはまた今度にしましょうか。せっかく外に来たんだもの。雲の上まで飛んでくれていることだし、星を見ましょ?」
「……わかった」
渋々といった感じだが、アリスはそう答えるしかなかった。フィアの悲しい笑顔を見たからだ。その表情を見ただけで、これ以上は聞いちゃいけないのだと悟った。そして、フィアの言うとおり星を眺めることにした。いつも見てた時よりも星を見渡すことができ、いつもより少しばかり星に近い、そんな状況にアリスは目を輝かせずにはいられなかった。楽しそうにはしゃぐアリスと一緒にさっきとは違う、明るい笑顔をフィアも浮かべていた。その様子を見て、レオンハルトと天翔は、外に連れ出してよかったと、心から思うのだった。
新たに高評価してくださった方、ありがとうございます!!
これからもコツコツと頑張ります!
(お名前はあげない方がいいかなと思いあげておりません。ご了承ください)