原作をとても愛されてる方には不快かもしれませんが、それでも読んでいただけるのなら、そのことをどうかご了承ください。
長々と失礼しました。それでは、本編をどうぞ。
「ほらアリスじっとして〜」
「自分でできるのに…」
「いいじゃない。これもスキンシップよ」
「はぁ。…なんで私11歳にもなって、他人に
「ふふっ、やってみたかったの♪ほら、レオン相手にするのは違うじゃない?」
「えぇ!?2人でお風呂入るの!?」
「入らないわよ。…あ、もしかしてアリスはレオンと入りたかったの?」
「ち、違うわよ!」
「アリスったら元気ね〜。それより、そろそろ流すから目を瞑ってじっとしてちょうだい」
「…もぅ」
もう少し苦言を呈したかったアリスだったが、髪を洗い流されるため目を閉じて黙るしかなかった。ついさっきまで抱いていた不満もどこへやら、と言わんばかりにアリスは機嫌が180度変わった。というのも、フィアの髪の洗い方がうまいのだ。丁寧なその手つきがアリスを夢心地へと旅立たせた。
「はい、もういいわよ〜」
「…あら?もう終わり?」
「あらあら?もう少し構ってほしかったのかしら?」
「そういうことじゃないのよ…」
「むくれないでちょうだい。ほら、次は体も洗いましょ」
「それは自分でやるから!」
「ええいいわよ。でも、背中の流し合いはしたいわ」
「……まぁ、それなら」
背中はどうしても洗いにくい。そういう理由もあるが、お互いに背中の流し合いをするのは、妹のセルカと一緒にやっていたこともあり、アリスにとって懐かしい行為なのだ。実際の日付ではそこまで懐かしいわけではない。しかし、初めて訪れた央都、しかも公理教会があるセントラル=カセドラルに連行された。そして複数の整合騎士に会い、その団長に会い、元老長にあい、かの最高司祭にもあったのだ。随分と遠く離れた土地に、異世界に来たような感覚がアリスの中にあった。
そんな場所でなぜか罪人であるアリスを引き取ったレオンハルトと、彼と生活を共にするフィア。この二人との生活は、アリスの中にあった不安の大部分をたしかに取り除いていた。
──審問の後処刑される。
そう聞かされ、アリスはそうなのだろうと諦めていた。しかし、レオンハルトはそのアリスに2年間という僅かな猶予を与えた。レオンハルトとフィアはその期限の理由を何も言わなかったが、元老長は口にしていた。2年での成長具合では解放されなくもないと。だからアリスは、レオンハルトとフィアの行動を自分なりに解釈した。
気負い過ぎさせないようにして、フィアという神聖術の達人に教わることで帰らせようとしてくれているのだと。
「痒いところはない?」
「…あ…うん。大丈夫。ありがとう」
「……考えごと?」
「……うん。帰れるかもしれないんだなって」
「…っ。そうね。元老長がそう言っていたのかしら?」
「そう。2年でどこまで成長できるかによるって」
「…そうなのね。…私は何も聞いてないから知らなかったわ」
「え?そうなの?」
アリスは驚きのあまり後ろを振り返った。フィアもその事を知っているからこそ、神聖術を教えてくれているのだと考えていたからだ。アリスが振り返ったことで、動かしていた手を止めたフィアは、儚げな笑顔を浮かべて頷いた。自分は何も知らないと。
「私は基本的にレオンから話を聞くぐらいでしか情報が入らないのよ。やろうと思えばいろいろと情報収集はできるのだけど、レオンから話を聞くほうが面白いのよ。あと元老長には興味ないわ」
「最後のが本音だったように聞こえたのだけど…」
「よくわかったわね。ちなみに、より具体的に言うならレオン以外の男に興味なんてないわ」
「…ねぇ。二人の関係って「流すわよ〜」っわぷっ!」
「あらあら大丈夫?」
「なんで頭からかけるのよ!」
「つい♪」
「あーもう!それで、結局二人の「今度はアリスが私の背中流してね」…あとで聞くから」
一向に話そうとしないフィアに不貞腐れたアリスだったが、フィアの背中を流している時にふとある事に気づいた。いや、
アリスのその異変には、もちろんフィアも気づいていた。そもそもこうしてお互いに素肌を見せあっている時点で、気づかれないなどとは思っていないのだ。フィアはアリスが背中を流してくれたことにお礼を言い、湯船に浸かってから話を切り出すことにした。といっても、最初は他愛もない話なのだが。
「アリスの髪は綺麗よね」
「な、なによいきなり」
「素直に羨ましいのよ。輝くような金色の髪。サラサラとした髪質もあるし、手入れもきちんとしてるみたいね」
「そりゃあ髪は大事だもの。でも、そういうフィアだって髪がサラサラしてるじゃない。髪の手入れだってフィアの方が上手いわけだし」
「私の方が長生きしてるもの。あとでアリスにも教えてあげるわ」
「やった!それとフィアの髪だって綺麗な
「ありがとう。でも、
「……ぁ」
アリスは言葉を詰まらせた。フィアの肌色のことで頭がいっぱいになっていて、髪色の方には思考が回らなかったからだ。初めてあった時にも思ったはずのことなのだが、そういう人もいると受け流していたのも関係してくる。だが、フィアが自分で言った通り、その髪は肌と同様に白すぎなのだ。白魚のような肌という比喩が比喩として使えなくなるような…、そんな白さだ。
「その……フィアの髪も…肌のことと関係してるの?」
「そうね。ある意味病気とも言えるけど、何かの病にかかってるわけじゃないのよ?」
「そ、そうなんだ。…よかった」
「優しい子ね。…髪は元々白色だったし、肌もそうだったわ。でも、いろいろあったのと、外に出れないのもあって日に当たれる時間がほとんど無いのよ。だから色素が減っちゃったの。窓はあるけど、ずっと部屋にいるわけでもないしね」
「フィア…」
「そんな顔しないの。不幸だなんて思った事もないし、今はこうしてレオンとアリスと一緒にいれるもの♪」
アリスは自分同じ…いや、自分よりも幾分か色が薄いブルージルコンの瞳に見つめられ、考えを改めた。その瞳からは一切負の感情を読み取ることができなかったからだ。本人が気にしていないというのなら他人が意識するわけにもいかないだろう。そう考えたアリスは、先程から何度も誤魔化されていることを改めて聞くことにした。むしろこれが本題だと自分に思い込ませて。
「結局なんだけど、フィアとレオ「そろそろ上がろうかしらね。ノボせるわけにもいかないし」もうフィア!」
☆☆☆
「ぷはぁ〜。この1杯がイイんですよォ〜」
「今更だが元老長が酒飲むってどうなんだ」
「飲みたくなるものは仕方ないのですヨォ。喉が渇いたら水を飲む。お腹が空いたら食事を取る。それと同じデス」
「ま、俺からしたらどうでもいい事なんだけどな」
フィアとアリスが入浴してる一方で、レオンハルトは元老長チュデルキンと乾杯していた。元老長は騎士が嫌いなのだが、レオンハルトのことは騎士ではないと考えるようになり、そうしたらわりとウマが合うようになったのだ。言外に蔑視されているということなのだが、レオンハルトは周りの評価を気にしない騎士だった。自分の中の基準に従う、それがレオンハルトの行動指針だ。
「さて、では本題に入りますカァ」
「ふっ、俺の考えは変わらないぞ?」
「ヤレヤレ…、相変わらずのようですネェ。何度も言っているいるでしょう!最高司祭猊下がこの世で最もお美しく誉れ高き
「ハッ!あんな露出狂のどこが良いってんだよ!テメェが何と言おうがフィアが一番に決まってんだろ!」
「オォオ…お前はなんと恐れ多いことを…!よりによって最高司祭猊下を露出狂とォ!?その発言、万死に値するのですヨォ!それに!あんな女のどこが良いと言うのですカァ!あんな異端者ノォ!」
「アァン!?テメェ喧嘩売ってんのか!その丸っこい体引き裂くぞゴラァ!」
度数の高い酒を次々と飲んでいたせいで、レオンハルトとチュデルキンは既に酔いが回っていた。その状態でこんな話題を出せば必然とこの結末へと至る。お互いに罵倒しあっているのだから。
まさに一触即発という空気がその場を覆った。針の一刺しで風船が割れるように、何かの拍子にぶつかり合う。そんな状態なのだ。この場に他の誰もいなければ、誰かが来る予定もない。たとえこの状態を見た者がいても、近づいてこようとは微塵も思わないだろう。
「よっこらしょっと!」
「あー!酒がぁー!」
「何をするですかこの不届き者ォー!」
「いやなんか変な空気だったから」
二人が味わっていた酒が入ってある瓶を叩き割る、という暴挙に出ることでこの場を収めたのは、他でもない騎士団長のベルクーリだ。二人に睨まれようとも堂々としているベルクーリは、それでもせめてもの詫びということで、自分用に持ってきていた酒を分けることにした。毒気を抜かれた二人は、そういうことならばと椅子に座り直し、今度は三人で飲むことにするのだった。
「へぇ、いい酒だな」
「ハハハ!だろ?飲みやすいが旨味もある。ま、後からクルやつではあるがな」
「そのへんの事は気にしないデスよォ」
「だろうな。で?お前さんたちは何してたんだ?」
場の空気が戻ったところで、事の発端を聞くことにしたベルクーリだったが、それは地雷を踏み抜くことと同義だった。ベルクーリに免じて流そうとしていたレオンハルトとチュデルキンは、説明しながら毒を吐いていき、仕切り直しと言わんばかりに威圧し始めた。
「ハァ、お前さんたちも馬鹿だなー」
「は?」
「それはどういう意味ですかァ?」
「漢たる者器を大きく!多様性を他人の意見を認めようぜぇ!…その上で自分の主張をすべきなんだよ」
「なるほどォ」
「ふん。言ってることはごもっともなんだがな。せめて自分の身の回りを自分で片付けれるようになってからいいやがれ!服も畳めねぇような男が漢を語るな!」
「テメッ!なんで知ってやがる!」
「…感心したワタシがオロカだったデス」
剣呑な雰囲気ではないが、三人で言い合っているところを止めに入る者がいた。恐れを知らない、と言われるようなその行動を取ったのは、レオンハルトが唯一頭の上がらない人物であった。
「何をこんなに飲んでるのかしら、レオン?」
「フィ、フィア!?」
「部屋にはアリスがいるのだし、お酒は控えるって話じゃなかったかしら?」
「これは…まぁ、…ちょっとした息抜きといいますか…」
「ま、まぁまぁフィア嬢落ち着いて。レオンにだって偶には飲ませてやってもいいんじゃねぇかなー、なんて…」
「団長は黙っててくれるかしら?こちらの問題なの」
「…はい」
「こ、事の発端はワタシが誘ったからなのですヨォ…」
「拒まなかったレオンがいけないのよ。それとあなたも控えるべき立場でしょ?」
「…仰る通りで…」
レオンハルトを庇おうとした二人の長をも黙らせたフィアは、必死に顔をそらしているレオンハルトの頬を両手で挟んだ。強引に目を合わせて、そのレッドアンバーの瞳を覗きこむ。さすがにそこまでされたらレオンハルトも意を決して真っすぐ見つめ返すしかなかった。
「男三人で盛り上がっちゃって…、下世話な話でもしてたのかしら?」
「誓ってそれはない。まぁ、チュデルキンと二人で飲んでた時は、好みの話にはなったが」
「……へぇ〜?」
「フィアが怒るような内容じゃないから。部屋に戻ろ」
「本当にそうかしら?」
「当然だろ?フィア以外興味ないから」
「…もぅ♪」
レオンハルトの腕に自分の腕を絡めたフィアは、機嫌を直してレオンハルトと部屋に戻るのだった。残されたベルクーリとチュデルキンはと言うと。
「なぁ…元老長」
「なんですカァ?騎士団長」
「飲み直さねぇか?」
「珍しく意見が合いましたネェ」
その日、ベルクーリとチュデルキンがお互いに持っていた秘蔵の酒が開けられたという。
「待ってたわよ!二人とも!」
「あらアリス。まだ起きてたの?」
「子供は寝る時間だぞ?」
「すぐに寝るわよ!でもその前に、今度こそ答えてもらうんだから!」
アリスがなぜそう息巻いているのか分からないレオンハルトは首を傾げ、事情を知っているどころか、答えを躱し続けていたフィアはむしろ感心していた。そこまでして知りたいのかと。
「単刀直入に聞くわよ!レオンハルト、フィア、あなた達って結婚してるのよね!」
「それ決めつけてね?」
「質問じゃないわよ?」
「あげ足取らないでよ!答えてよ!」
「駄々こね始めたぞ」
「子供ねぇ〜」
「こーたーえーなーさーいーよーー!!」
「ええー」
フィアには散々躱されたアリスは、標的をレオンハルト一人に絞っていた。レオンハルトに詰め寄って服を引っ張り答えを促す。出会った当初に見せていた優等生の姿はどこへやら…。
「子供にはまだ早い気が…。あ、ませてるのかしら?」
「なんでそうなるの!?」
「結婚してないから」
「やっぱりね!………え?してないの!?うそ!?だって…!」
「ほら寝るぞ」
「待って待って!話はまだ!」
「おやすみなさいアリス。明日も頑張りましょうね」
「ちょっとー!!」
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