無免ヒーローの日常   作:新梁

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お待たせ!みんな大好き心操回です。

……緑谷パンチが無くったってあのヤバ過ぎる状況をどうにか出来るって証明したかったんです。つまりヘドロvsデステゴロファミリーと同じ。

あ、それとみんな最新刊読もうな、デステゴロマジでカッコいいから。

リア10爆発46さん、壬生谷さん、誤字報告ありがとうございます。

追記

今回のあらすじ

悪気は無い。


第六十七話。『洗脳』のタダシい使い方(悪用編)

 ………………心操人使には、師匠が居る。

 

 

『いいか人使?』

 

 女にだらしない男だった。

 一つ所に留まれない男だった。

 正直言って人間として良い所の無い、まるで駄目な男だった。

 

『お前の武器は言葉だ。だからこそ、お前は誰よりもお喋りでなきゃいけない。四六時中起きてる間ずっと喋り続けてるようなキャラでなきゃいけないんだ』

『……ッス』

『それだよ馬鹿!』

 

 しかし、その男は心操の『個性』に対し、誰よりも──他の誰でもない心操自身よりも、遥かに真剣に向き合った。

 

『人使。お前はその無口クールイケメンを卒業して、お喋り好きで口説き上手なイケメンに転向しろ。それができりゃお前は最強だ!』

『……はぁ』

 

 折寺の馬鹿三人に出会ったばかりの当時、その時はまだ自身の強みを何も理解していなかった心操の心を一生懸命に解したのは、師匠のそういう態度であった。

 

 あの頃、心操は自身の個性を後ろ暗い個性だと捉えていた。むしろ今でもそう捉えている節はある。

 

『ソレソレソレソレだよ!! 何だァその気の無い『……はぁ』は! ヒーロー舐めてんのか!!!』

『い、いや……』

『……』

 

 言い訳をしようとする心操の目をじっと見つめる師匠。

 その師匠の真剣な眼つきに気圧され、彼はただ黙って目線を下に下げた。

 

 そして、目線と共に少し俯いた頭部に師匠のチョップが突き刺さった。

 

『鎌チョップ!』

『ゴアッ!?』

 

 師匠のヒーロー活動時の武器である、折りたたみ式の大鎌(軽金属製)が叩き込まれて混乱と共にチカチカと瞬く視界に惑いながら、彼はシバかれた場所を押さえてのたうち回る。

 

『いってぇぇぇ!?』

『あ? この俺の脳天直撃鎌チョップに何か文句あっか』

『文句って……アンタ……!!』

『文句があるなら言ってみろよ』

 

 師匠は、しゃがんで心操と視線を合わせ、ただ真っ直ぐに彼を見つめ、そう言った。

 

 …………が、彼は、文句を言わなかった。

 

 ……ただ、恨みがましく視線をやって、先と同じように少し下を向くだけだった。

 

 それを見て溜息を一つ吐いた師匠は、殴った部分を掌でガシガシと押さえつけるように撫で、それから彼の肩を掴んだ。

 

『……いいか人使。俺にはお前の気持ちは分からない』

『……』

 

 心操の個性……洗脳。

 

 喋るだけで相手を自失状態にし、その後言葉によって如何なる命令をも相手に強制することができる、強力で……恐ろしい個性。

 

 そのような個性、忌避されるのが当然。

 

 そのような個性(人間)、嫌われるのが、必然。

 

 その必然の中で生きてきた心操の心持ち等、所詮は『増幅』という、純粋に人の助けとなる個性を持つスピリットには理解できない。

 

 ……否。

 

 この個性社会広しと言えど……爆豪や芦戸のような『人に危害を加えやすい』等というレベルではない、『人に危害を加える事が前提』の個性を持つ人間の……持ってしまった人間の気持ちが分かる者等……果たして如何ほど居るというのか。

 

『だから、言わせてもらう』

『お前、胸張れよマジで!』

『その個性は『最強』なんだから!』

 

 だからこそ、そのような同情の気持ちは不要だ。

 

『……ンな事……』

『言っとくけど同情じゃねえぞ。ガチで言ってる』

『お前の個性をヒーローで欲しがらねえ奴は居ねえよマジで! だってお前、ソレ使えば敵も味方も止められるんだぞ!?』

 

『敵も味方も救けられる個性なんて、欲しくない訳無えだろ!』

 

 その、言葉が。

 

 その言葉で。

 

 心操がどれほど救われたか……辛いときに、どれほどの支えになったか……

 

 それを知るのは、彼のみである。

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオオ!!!!」

 

 所変わって水難事故ゾーンでは、船のへりに登った峰田が雄叫びを上げながら頭部に生えている紫色の球を千切ってはポンポンと水面へ……正確には水面に顔を出しているヴィランへ、投げつけていた。

 

「……なんだ? 攻撃か?」

「ウェッ、ンだこの丸いの。気持ち悪ぃ……」

 

 ポチャパチャと情けない音を立てて落ちてくる紫色のもぎもぎを見て、ヴィラン達が怪訝な顔をする。

 

 そんな彼等に対し、上空から……船の上から、自身に満ち溢れた傲岸不遜を体現したような声が降り注ぐ。

 

「ウォイそこのヴィラン共! 耳かっぽじってよぉーく聞きやがれ!」

「いまコイツが投げた紫色のそれは何なのか!! 気になってるだろうから教えてやろう!」

 

 気味悪がって紫の球に近寄らないヴィランに、ふてぶてしい態度で話しかける男……心操は、勿体ぶるようにゆっくりと峰田の横に立ち、マスクを外し露わとなった悪辣な表情で、叫ぶ。

 

「ソイツを投げ込んだのはここにいるとあるヒーロー候補生君だ! そして! 彼の個性は『毒球』! 触れたものを全て強力な神経毒に侵す猛毒球を生成する個性だ!」

 

 ザワ……と小さな悲鳴でザワつくヴィランを眼下に、心操の横のヒーロー候補生君……峰田は、新たな毒球(仮)を手に持ちながら一筋の涙を零した。

 

(完ッッ璧に嘘っぱちじゃねェか────ッッッ!!)

 

 ペテン師ヒーロー心操人使の、産まれて初めてのヒーロー活動が幕を開けた。

 

 

 

 と、いうわけで時はちょっと遡り。

 

「早急にここを抜け出して、オールマイトを援護するんだ」

「そうね。何か作戦はあるかしら?」

「や、今から考える。ひいてはお前等の個性の詳細を……」

「ま、待てよ!?」

 

 ごく当たり前のようにこの場を切り抜ける事を……ヴィランと戦う事を選択した二人だが、それはどちらかといえば異常である。

 

 未だ多くに知られてはいないが、今期の新入生四十名の中でも特に冷静な考えを持ち、現状と予測を元にその場でするべき的確な行動を導き出せる、稀有な才能を持つ少女……蛙吹梅雨。

 

 未だ多くに知られてはいないが、今期の新入生四十名の中でも割とトんだ考えを持ち、度胸と根性を元に如何なる修羅場をも潜り抜ける特殊訓練を施された、稀有な経歴を持つ少年……心操人使。

 

 この二人の考えに着いていくには、峰田は少々経験が足りなかった。

 

「ヴィランと戦うつってもよ! オールマイトを倒せるような奴と戦えるわけねーだろ! ここは非力な学生らしく! 大人しく助けを待とうぜ!? な!?」

 

 人として、そして学生としても非常に真っ当な発言をする峰田だが、その意見を聞きもせずに人としても学生としてもイカレた野郎である心操は船べりにドリル*1で覗き穴を開けていた。

 

 ギョッとする峰田と、警戒しつつ場の流れを静かに見守っている蛙吹の分まで穴を空けた彼は、身振りで二人にそれを覗くことを促す。

 

 そして、それを覗いた事を確認すると、自身も穴に眼を当てながら自身の考えを深める。

 

「オールマイトを倒せる? ……アイツらが? どう見てもチンピラじゃん。オールマイトに当てる戦力は別で用意してるだろ……多分」

「多分で命を賭けれるかァアホォァ!!!」

 

 ガクガクと身体を震わせながらごく真っ当な反論をする峰田だが、現在の状況も、そしてそれに対応しようとする心操も少しばかり真っ当とは遠い所にある。

 

 そして、そのどちらもを…………は言い過ぎにせよ、少なくとも状況の異常さの方は……理解している一際総明な少女が、心操の肩を持つ。

 

「峰田ちゃん、ヴィラン犯罪におけるヒーロー到着までの時間と被害拡大率について、入試で出たわよね?」

「……は?」

「出たわよね?」

 

 唐突な蛙吹の言葉。それに峰田はポカンとしつつも一つ頷く。

 

 峰田はこれでもヒーロー試験座学上位の実力を持つ頭脳明晰な少年。三十余名の中でも上位に入る頭脳は、蛙吹の言いたい事を正確に察し、そして青褪める。

 

「……ソラで言えるわよね? だって……ヒーロー科なら常識だもの」

「……『凶悪ヴィラン犯罪における人命喪失のリスクは、ヒーロー未到着の場合事件開始から三分で五十%を越え、その後一分毎に十%づつ上昇する』……」

 

 そう。それは、現代におけるヒーローの常識。『遅れて到着では話にならない』……そう言われる所以。

 

 偽れぬ、個性社会の暗部である。

 

「そうね。つまり、事件開始から八分経てばほぼ確実に死傷者が出てるって事……峰田ちゃん、今、私達がココに飛ばされてから……もう四分経ってるの」

「半分以上の確率で、もう誰か死んでる……か。ヒーローが既に三人現場に居るワケだけど……散らされちゃってるからな」

 

 心操が一人、ポツンと呟く。

 

「ヒーローたった三人で、完璧に準備してきたヴィラン相手に……この広い敷地に散らされた二十人守りきれるか……か」

「……な、な……!」

「峰田ちゃん」

 

 蛙吹は、声を荒らげない。

 

 ただ、峰田の目を見て、一言、想いを伝えるだけ。

 

「私達……ヒーロー候補(アカデミア)生でしょ?」

「……だ……」

 

 だって。

 

 そう言おうとした。

 

 だって、候補生なんて言ってもまだ何も教わってない。

 

 だって、相手はオールマイトを倒す算段を付けている程の相手だ。

 

 だって、水上で自分の個性は使いづらい。

 

 だって、だって、だって────

 

 否定(だって)は幾らでも頭に浮かんでくる。

 

 浮かんできて、浮かんできて、浮かんできて、頭がそれで一杯になって…………

 

「……心操」

「おう」

 

 …………全部、忘れてしまった。

 

「オイラ達が力を合わせれば、絶対勝てるか?」

「ああ。勝てる」

「蛙吹」

「梅雨ちゃんと呼んで」

「勝ったらおっぱい揉ませてくれ」

やっぱり名前呼び止めて

 

 

 

 そうして、時は再び戻る。

 

 

 

「なぁ心操!」

「どーした」

 

 船の外周をぐるぐると練り歩き全周に向けて毒球(嘘)を投げ込みながら、峰田はコソコソと頭上の心操に話をする。

 

「コレが『絶対勝てる作戦』なのか!?」

「俺は『勝てる』としか言ってない」

「この陰険MC*2クソ野郎……!」

 

 心操が自信たっぷりに語った内容がまさかの『ハッタリだけでうまいことやる』であった為、先程までの根拠の無いやる気は完全に萎えてしまっている峰田だが、眼下の状況は(驚くべきことに)概ね心操の思い通りに進んでいた。

 

『毒だと!? やべぇ! 逃げろ!』

『テメェこっちに寄せんじゃねえよ!』

『フザケやがって! くそ、クソ!』

「あーっはっハァ!! 逃げ惑えヴィラン共! 毒球()からは常に毒が滲み出てる! すぐにここら一帯すぐに毒の湖になっちまうぞ!! ああ! それと顔は水に浸けない方が良いかもなぁ! 水を飲んだら死んじまうからさぁ!! ひゃはははは!!!!」

(どっちがヴィランか分かんねえ……)

 

 ちなみに、峰田実の個性は『もぎもぎ』。

 建材の応急補修にも使える程に超強力な粘着性を持つ球体状の頭髪を半無限に生成できるという……強力ではあるが言ってしまえばそれだけの個性である。

 

 無論、ただの髪であるので人体に毒となるような成分など一切入っていない。

 

 涙目で湖に向かってそんな毒球()を投げ続ける峰田だが、唐突に心操にマフラーを奪われる。

 

 スルリと肌触りのいい布地が首元を離れ、同時に先程まで船のヘリに仁王立ちして、ぜんぶ嘘の情報でイキリ散らかしていた男が、そのイキり様が嘘のような冷静な声で峰田の頭を(というより頭髪を)ガッシリと掴み、引っ張る。

 

「モギモギ一つもらうぜ」

「え?」

 

 ニョっ、と頭皮を引っ張られる感覚の次に、ブニョンとモギモギのちぎれる感覚。

 チラリと後ろを向いた峰田は、手にマフラーを巻き付けた心操がモギモギを掴んでいるのを見た。

 

 先程、今の気が狂っているとしか思えない作戦の開始前に三人がそれぞれの個性を話した際、自分の服は自分の頭髪を元とした特殊素材によって作られており、モギモギが粘着性を発揮しないと説明していた事を思い出した。

 

「……お前、何して……」

「テメェさえ殺せばよォォ!!!」

 

 マフラー越しにモギモギをブニブニと弄び、「おーすげー新感触」とか言っている心操。

 その後ろに、いつの間にやら船上に這い上って来ていたヴィランが迫っていた。

 

 峰田がその姿に叫び声を上げる前に、その手に持っていたナイフを閃かせたヴィランが彼を殺そうとその獲物を振り被り……割り込んだ心操に思い切り顔面パンチで迎撃された。

 

「ヒッ……!」

「ハイどうもお疲れさんでした!」

「おボォッ!?」

 

 モギモギを持った手でのパンチにより、顔面にそれが付着してしまったヴィランはナイフさえ取り落としてもがき出す。

 彼等にとってはモギモギは毒球であるのだからそれは正常な反応であるが、それはあまりにも悪手に過ぎた。

 

「がっ、ア、は、離れね、手まで離れねぇ!!」

 

 そう。モギモギの超粘着は、軽く百キロを超える重量と、それを動かせるだけの馬力を持つ雄英のヴィランロボさえ完全に固定してしまう程の強力さ。

 手で外そうとすれば、逆にその手がくっついて離れない。壁に引っ付けるなりして自重で外そうとすれば、粘着に重力が負けて身体が宙に浮く始末。

 

 まぁ詰まるところが、人力でどうにかなるような代物ではないのだ。

 

 焦りと恐怖で腰を抜かし、ジタバタと芋虫のようにもがくヴィランの襟首を掴み、近くの船べりへとその身体を突き出す。

 

「聞けクソヴィラン共! コイツはもう神経毒に侵されちまった! もう助からねえ! やがてコイツの身体は麻痺し、動かなくなる! ……おいお前、個性は何だ」

「お、俺の個性は水を打ち出す『水鉄砲』だ……た、助けてくれ! 落とさないでくれ! 俺は水中呼吸できないんだ! 麻痺したら、し、死んじまうよ!」

 

 ガクガクと身体を震わせながら命乞いをするヴィランと、それをニヤニヤと黙って聞いている心操に頭のおかしい人間を見る目を向けながら、峰田は作戦の『仕込み』を行う。

 

 その仕込みとは、いい加減に千切り過ぎで頭皮が痛くなってきたモギモギと共に、心操の所持品であるケミカルライトを船の真下に投下する事。

 

 心操の真横で行われたその仕込みは、毒球()を恐れて船からなるだけ離れていたヴィラン達には気付けない。

 

 チラリと視線を向けてくる心操に親指を立てて合図すると、彼は一息吐いてからヴィランに質問した。

 

「おいてめーら! いいか? コイツは人質だ! てめーらが何か怪しい動きをした瞬間にコイツを突き落とす! そしたらコイツは死ぬ! だからヘックショイ!!! あ、ごめん手ェ離しちった

「あ゛」

 

 ヴィランに対して人質とかいうヒーローの風上にも置けないようなクズ作戦をやり始めていた心操だが、唐突にクシャミをしたことによりヴィランを支えていた手が離れ、絶望の表情を浮かべたヴィランは水柱を上げて湖に沈み……そして、二度と浮かんでは来なかった。

 

『あ゛ァァァ────っ!!!! 人殺し────ッッ!!』

「うるせえな! 弾みだ弾み! うっかりだ! 過失過失! ドンマイ!」

「お前本当にヒーロー志望かよォ!?」

それはオイラもそう思う……

 

 ヴィランの叫びに共感する峰田であるが、最早毒球()の威力をその目に焼き付けてしまったヴィラン達は平静では居られない。

 周囲を毒球で囲まれた彼等は、毒の溶けた水中に逃げる事もできず、毒球を押しのける為に互いに向けてバシャバシャと(毒の)水掛け遊びをするしかない。

 

 そして、その内に一人のヴィランの背中に毒球()が貼り付く。

 

「あーっ!! そこのお前、アウト!」

「えっ嘘だろ────ぁ」

 

 心操の声に背中を見た、その姿勢でカチリと固まってしまうヴィラン。そして、哀れなる第二犠牲者はその姿勢のままにブクブクと沈んでいった。

 

 それを見ていたヴィラン達の顔ときたら……完全にトラウマを植え付けられた表情である。

 

 途端に、辺りは恐慌状態となり、パニックを起こしたヴィラン達がなりふり構わず互いに毒を押し付け合う地獄が顕現する。

 

「ワッハッハッハ!! アーッハッハッハッハァァ!!!」

(なんかこのテンション第四十六話(入試の時)の発目を感じる!?)

 

 

 …………とりあえず、彼らの作戦を説明しよう。

 

 まず要となるのが毒々しい色をした峰田のモギモギであり、まずはそれを毒球であるとヴィランに信じ込ませる。

 取り敢えず、何も考えずにコレを撒き散らす事のみが峰田の仕事である。簡単ではあるが、すべての作戦の要であるため重要度は他とは桁違いだ。

 

 そして、モギモギがある程度水に浮かんだ時点でさり気なく毒球から毒が水中に染み出している事を周知し、ヴィランの意識を強制的に水面へと固定する。

 

 自身に張り付いてしまえばもはや致命的である毒球が今現在水面のどこにあるのかを確認しつつ、更には飛沫から目鼻口の粘膜を守らなければならないとなれば最早水中を意識する余裕など無い。

 

 まして、そんな焦った視界では蛙の生態の一つ『保護色』を使い船体と同一色となって壁を這い降りる蛙吹の姿を見つけること等出来る訳も無いのだ。

 

 ……ここまでが、第一段階。

 

 そして、モギモギがある程度隙間無く水に浮き、蛙吹が水中に身を潜め、ついでに心操がサイコパスロールプレイ(サイコパス演技参考:超絶一番世界最高ドッ可愛いメインヒロイン発目明)に熟れてきた頃に作戦は第二段階へと移行する。

 

 それが、適当な一人のヴィランを心操の個性で洗脳する事だ。

 

 何度も言うが、心操の個性は『洗脳』。

 言葉を掛ける事で相手を自失状態にし、そうして自失状態となった人間をこれまた言葉で操る事が出来るという強力極まりない個性……なのだが、ここでは操る事はせず、相手を自失状態にすることのみが必要なのだ。

 

 自失状態になる、という事は即ち水に浮く為のバタ足等の動きも無くなるという事。

 

 つまり、当たり前だが泳がなければ人は水に沈んでいくのだ。

 

 そして、それを水中から蛙吹が見つけ出し、その舌等を使い拘束、顎を叩き即昏倒。

 近くの陸に上がってから腕と足を一纏めにし、豚の丸焼き的体勢で両肘と膝を捕縛用簡易タイベルト(合金芯入り)で縛り上げる。

 

 その間には、船に進む道も陸に戻る道も水中すらも塞がれたヴィランが泣き叫んでいるので、後は助けを求める声を上げるヴィランに心操が適当に声を掛け、力の抜けた奴から順次蛙吹が運搬する……という流れである。

 

「いやー、船に上がられた時はヤバい! って思ったけど、それも結局俺の発目ロールプレイに一役買ってくれたし……いやぁ我ながら……なんて完璧な作戦なんだ……!

この地獄の惨状見て、普通その感想出る? 

 

 眼下では、最早パニックに陥ったヴィラン同士がモギモギを押し付け合い、蛙吹に足を引っ張られたりもして、やがては絶望と怨嗟の声を上げる巨大な一つの肉の塊となってプカプカと浮かんでいた。

 

「ただいま」

「おっ、お帰り梅雨ちゃん。怪我は?」

「無いわ……それと心操ちゃん、絶対悪の道には進まないでね

るせーやい

「蛙吹、さっきの約そボハッ!? 

 

 

 

 船に備え付けてあった救命ボートの用意を済ませ、後は乗り込んでここから離れるだけ……となった時点で心操が肉団子となったヴィランを見下ろし、小さなリモコンをヒラリと手のひらに乗せて見せつける。

 

 

「じゃあな、良い夢見ろよ」

 

 ボタンが一つと、チャンネル設定用のツマミがいくつか付いたそのリモコンは、心操のトラップ遠隔作動用のリモコンである。

 

 

 それは、固まったヴィランの塊の中にいくつも紛れ込んでいた。

 

 万が一作戦がうまく行かなかった場合に混乱させて逃走を図る為に、水に浮く峰田のモギモギに貼り付けられた、ありったけの電磁スタンボムや通電ワイヤートラップ。

 

 発目明謹製の優れた防水性と受信感度により水面でも一切問題なく内部に溜め込んだ電気エネルギーを放出した。

 

 本来ならばこの人工湖全域を感電させるような威力は無い為、包囲網の一角を崩すくらいにしか使えなかったソレは、一塊となったヴィランの中で起動する事でこの場で最大限の効果を発揮する。

 

『ギャァァァァ!!!!!』

 

「さ、行こーぜ」

 

 

 この時、クラスメイトの二人には自分の個性(洗脳)を知られた時の百倍くらい警戒の目を向けられて傷付いた事を心操は後に語る。

 

 余談だが、その傷付いた気持ちに共感してくれるのは緑谷だけであったらしい。

*1
トラップ設置用工具

*2
MC:マインドコントロールの略称




緑谷が居なくてもあのヤバ過ぎる状況をなんとか出来ると証明したかった(扇動)(脅迫)(詐欺)(人質)

……ウン!ミッションコンプリート!
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