宮本 武 :本作の主人公。凡な高校生。ブッシの仇名を持つ
山田 祐輔:主人公の幼いころからの友人。スポーツマンでよくふざける
長嶋 和樹:主人公の高校からの友人。シッマの仇名を持つ
飛鳥原 香:謎がある美人。
神奈川の某所、自宅からほど近い高校へと進学を決めた俺は中学からの友人と入学式を除いた初の登校をしていた。
「おいブッシ、ついに始まるな。俺らの青い春が!」
「朝からうるさいぞ、祐輔。それとな、ブッシは継続なんだな」
俺のことをブッシと呼ぶ、隣を歩く友人は山田祐輔。幼いころからつるんでいたやつだった。
ちなみにブッシとは武という文字から武士が連想されてつけられた仇名だ。命名は祐輔。
「何を言う。貴様には侍スピリッツがないのか!?ブシドーを持ってしてクールなキャラで女子から持てようって作戦じゃないのか?」
「侍スピリッツもブシドーも持ち合わせてないわ!」
「でもお前クールじゃんか」
「つっこみをクールと呼ぶのは間違っているぞ」
相も変わらずペースを持っていかれる。しかし、こんなくだらない話がまた3年間できると考えるとささやかに高校生活が楽しめそうでうれしい。部活に打ち込んで、文化祭なり体育祭なりで楽しんで、いつかは彼女だってできるだろうか。
「こんなくだらない話がまた3年間できると考えるとな、ささやかに高校生活が楽しめそうでうれしいぜ。部活に打ち込んで、文化祭なり体育祭なりで楽しんで、いつかは彼女だってできるだろうかね!」
「お前エスパーかよ!?」
「は?何言ってんだお前」
考えることは同じ。だから馬が合うのだろうか。
学校は20分ほど歩いたところにある。正門から入り教室へと向かう。実質クラスメイトと顔を合わせるのは今日が初めてとなる。何人か見知った顔もあるが半分以上は知らない人だった。
「クラスどこだっけ?3組?」
「2組だ。勝手に3組行ってろ」
祐輔は変わらずマイペースだった。俺はちょっと緊張しているというのに。ちなみに祐輔とは同じクラスだった。クラスに知っている人がいるってわかっていると安心する。
2組に扉を抜け、出席番号に沿った席を探す。自分が目指す席を見つけそこに向かうその時だった。
「おいおいおいおい!?」
激しく頭をシェイクされた。脳みそが鼻か耳から出るとこだった。危ない危ない。
「俺を眠気から起こしてくれたのか?ありがたいがもう少し・・・」
「ちげぇよ!見ろ!美人!」
祐輔の目の先を追ってみれば窓から2列目最前列に女子がいた。客観的に見ても美人な子だった。おそらくあの子のことだろう。
「おおう、確かに美人だ。違いない。脳みそシェイクに見合うぞ」
「一目で惚れた。よし、行ってくる。帰りを待て」
おい、はえーよ。口と行動が両立する男の動きは速かった。自己紹介、からの告白。流れはシンプルで分かりやすい。しかし
「おかえり」
「断られた・・・。俺の何が駄目だったんだ・・・」
「早すぎたんだね」
「しゃべりが?」
「行動が」
「なるほど、よしトライアンドエラーだ。もう一度」
「マテ」
こいつは馬鹿だ。でもそれが祐輔のいいところだと俺は知っている。これをわかってやっているあたりが笑いを好む祐輔のすごいところだと。
そんなことを繰り返しているうちに担任がやってきた。確か長島先生。いぶし銀な男性の先生だった。
「はいはい席につけ。場所がわからんやつはおらんだろうな?」
いそいそと席に急ぐ、わき目で美人な彼女を見たがやはり美人だった。うん、いいね。
「ブッシ、横取りは許さん。俺が狙っているのだ」
隣の席になった祐輔が真剣な目でささやいてきた。今さっき敗北した奴が何を言うか。
「うるさい。HRだぞ」
「ははーん。ごまかすなごまかすな。俺の目には狂いはない。これは戦争だ」
勝手に三角関係を作られた。内容の薄い昼ドラマとなりそうな予感。
「そこ、うるさいぞ」
そして早速担任から目を付けられるのであった。
初日の授業というものは単純で楽だ。教科書の配布に授業の説明、先生の自己紹介などが内容だった。聞き逃しが無いよう、集中していたため昼休みまではあっという間だった。
隣を覗いてみれば祐輔はすでに友達ができていたようだ。いつの間に。
「おいブッシ、こいつおもしろいぞ。来いよ」
「ははは、展開が早いや」
新しい友人も祐輔のテンポには困惑している。
「ほい、こんちわ。ブッシです」
「君が突っ込みの武士ね。僕は長嶋和樹。和樹でいいよ」
「残念、侍ではないんだな。宮本武だ。色々あってブッシと呼ばれている」
「名前が武って字だからかな?武士からブッシってとこか」
和樹は物腰柔らかなさわやか青年って印象だ。イケメンスマイルがまぶしいぜ。
「聞けブッシ。シッマはあの撫子美人と同中だったそうだ」
「あら、飛鳥原さんだっけ?それはそれは」
いつの間にか和樹にも仇名ができていたようだ。もうそこには突っ込まないぞ。
「攻略の糸はここにあり、だ」
「同じ中学ってだけだからね?当てにしないでおくれよ」
「そんなわけでわかることを全部教えろシッマ!お前だけが頼りだ!」
祐輔は肉食っぷりが発揮される。
「そうだ!吐け!吐くんだ!」
「なんだなんだ!?いきなりがっつくねぇ!」
おもしろそうなので適当に乗ってみた。気分は取り調べする刑事。
和樹の困惑する姿が面白い。高校生にして人生初であろうボケ。突っ込み以外もやると楽しいもんだな。
「いいかよく聞けシッマ。俺は全ての高校生活をこの瞬間にかけている。今までのすべてを無駄にしないためにできることはなんだってする覚悟だ。今まで支えてくれた家族友人に、犠牲となった尊い人々に顔向けできるようここで失敗するわけにはいかないのだよ」
「高校生活始まって2日目だよ!?一体今まで何があったの!?誰が犠牲になったの!?」
和樹の鋭い突っ込み。ど真ん中ストレートの直球な突っ込みはキレッキレであった。
「あれは悲惨な光景だった。戦いに敗れた祐輔は見るもの皆が目を背けるほどひどい姿であった」
そしてまた、乗ってみる。悲惨な光景とは朝の突撃告白の敗北。見るもの皆とは僕のみだけどね。祐輔が情けない姿であったのは間違いないだろう。
「君らは飛鳥原さんと戦争でもしてたのか?違う中学だったのに。もしかして、学校同士の喧嘩?君たちって不良なの?え?え?」
おっと。あまりの誇張表現と見る者を圧倒する演技力に和樹の脳みそがパンクしている。ちょっと面白いじゃんか。少し眺めているとどんどん暴走していった。
「飛鳥原さんは僕と同じ中学でそこの女ボスだったのか。あんなきれいな子が手を血で濡らしていたなんて」
おおっと。このままでは意識が異世界へと行ってしまいそうだ。このままでは精神科送りとなりそうなので和樹をなだめることにした。
「和樹、違うぞ。そんな大層なことは起きていない。ただ祐輔が朝いきなり飛鳥原さんに告白して振られただけだ。落ち着け落ち着け」
「ああぁ、そうなのか。びっくりしたよ。あはは」
思わず苦笑いを交わす和樹と僕。楽しい時間の幕切れかと思ったその時だった。
「いーや、大層なことだ。実に重大でいんぽーたんとなのだよ」
「あー、君にとってはそうだったね」
つい冷ややかな目線を送ってしまった。覚えたての英単語を使うあたりが滑稽。
「んん?重大ってことは飛鳥原さんに一世一代の告白をしたってこと?実は昔から思い続けていたとか」
「違うぞ和樹。こいつの言葉を真に受けてはならん」
昔からの友人としての忠告だ。祐輔の言葉は浅く受け取れ、だぞ。
「俺はっ!一目ぼれだった!あの輝く黒髪、麗しき瞳、清楚で可憐な佇まい、そして優雅なそのオーラが俺を夢中にさせたのだっ!」
「よくもまあそんな弁舌がべらべらとでるねぇ」
今日の祐輔は絶好調なのだろう。
「まぁ確かに、そこは同意できるね。中学の時も何人も告白していたよ」
「和樹は告白しなかったの?」
そんな美しい女性が同級生にいて告白はしなかったのか。聞いてみることにした。
「僕には彼女がいるからねぇ。一筋だし」
「は?」
さらっと告げられた和樹の彼女がいる宣言。そこに素早く反応したのは祐輔だった。
顔は真顔中の真顔。状況を理解するのに数秒を費やしていた。
「シッマ。彼女いたのか・・・」
瞼が全開となって見える瞳は虚ろに見える。これはいつものふざけている祐輔ではない。
「お、おう。中2で告られた」
「だーーっ!てめえぇぇぇ!貴様から青春への貪欲な魂が感じられないのはこうゆうことだったのかぁぁぁ!」
泣きながら和樹の胸倉を掴む祐輔。脳みそシェイクが目の前で行われていた。
「祐輔はなぜ泣くんだ?関係なくね?」
「馬鹿野郎!俺らはここに運命共同体を築くはずだっただろうが!」
いつの間にそんな話ができていたのだろうか。
「聞かせろ!彼女はどんなやつなんだよ!」
「小さいの頃からの幼馴染だよ!何かとよく遊んでたんだ!」
剣幕を見せ、尋問をする祐輔。必死に答える和樹の姿は申し訳ないが見ていて面白い。
「は?幼馴染?そうなの?」
突然手は離され、涙流す鬼の形相は普段フェイスへと移行。もちろん、シェイクも止まった。
「あ、ああ。そうだけど。ちなみに高校もここ」
「なーんだ。そーゆーこだったか」
「祐輔どーした。尋問は終わったのか?」
「幼馴染だろ?そんなの強くてニューゲームじゃんか」
「は?どうゆうことだし」
「青春を語る以前のはるか昔。幼き頃のかわいい話ってことだ」
「よくわからないが耳から脳みそが出る前に終わってよかったよ」
おお、脳みそシェイクを味わった人にしかわからない経験。友人としての距離が少し、縮まった気がする。
「だが運命を共にはできんな。そこはしっかり線引きをしよう」
祐輔の至極まじめな顔に僕と和樹はまた苦笑いを浮かべていた。
「さて話がそれてしまったな。女神のことについて吐いてもらおうか」
祐輔は肘を立て、指を組んだ。さながら使途を倒す司令のようだ。
「あ、ああ。えっと、彼女の名前は知っての通り飛鳥原香。見ての通り美人べっぴん大和で撫子だ」
「うむ、その通りだ」
祐輔は深く頷いた。おそらく美人の件で共通の認識をしているからだろう。俺もそう思う。
和樹の話は続いた
「彼女は秀明神社っていう古い神社の家系らしいんだ。君たちも聞いたことはあるんじゃないかな」
「秀明っていうとあの?綺麗ででかいけどいつも門が閉まっているっていう」
「そうだ。らしいっていうのはそこから飛鳥原さんが出てきたっていうのを目撃した奴がいるのと、自分の家について語りたがらない飛鳥原さん。これがこの推測の根拠だ」
秀明神社とはこの住宅地だらけの地域に見合わない規模の大きさを誇る神社のことだ。普通の神社とは違い門は開放されていない。たまに、高級車が入っていくのを見るくらいの謎がある神社だ。
「もちろん君の悪い話かもしれないがそのミステリアスな感じがまた人気を呼んでいたね。それに誰にでも分け隔てなく接するから、もかな」
「なるほど、美人で神の御膝元に住まう謎有の女、か」
聞けば面白い話が出てきたもんだ。
「いいねぇ」
祐輔が口を開いた。
「つまりあの子は神当然ということだな」
「「は?」」
「でけえ神社の家系にして聖人君子、だれもが振り向く美しき麗し。実質神じゃないか」
拡大解釈が神だった。
「つまり俺が感じていたのは恋ではなく愛。神を崇める心だったのか」
祐輔は恋だか愛だか知らないが宗教的な何かを感じ始めたようだ。
「好意ではなく崇拝かい・・・あっはっはっは」
和樹は腹を抱えて笑っていた。
「おもしろいや、確かに神なのかもね、あー涙出てきた」
どうやら和樹にはツボだったらしくその後しばらく腹を抱えていた。
「じゃあ祐輔は信仰を持つわけだな。信じる神は同じクラスの女の子、信者一名だ」
「いや信者はたくさんいるかもしれない。中学の時はファンクラブがあったから」
「なるほど、そいつは立派な宗教になりそうだな」
そんなような話を放課後になるまで続けていた。高校生活の始まりとしては上々といえるだろう。
神社を題材に筆を持ちました。
このハーメルンに何年ぶりに戻ってきて思ったのが、
マヴラブの作品終わってないやん・・・
マヴラブのスピンオフも書いていこうかなって思ってます。