世に浮くご時世ー秀明神社の再興ー   作:健全太郎

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沼へのプロローグ

「おいブッシ、シッマ、部活どうすんだよ」

HRが終わり、担任が職員室へと帰った後、祐輔はそう言って話を切り出した。

「考えてないなー、バイトもしたいし帰宅部でもって感じ」

部活と言えば高校生活の目玉でもあるだろう。汗水たらして体動かすのも、文化的活動をするもの良し。ただ、お金を稼げるバイトは魅力的だと思う。

「そーかいそーかい、シッマは?」

「僕は別で習い事があるから無理かな。残念だけど。今日もあるんだ」

そう和樹は言った。

「習い事?何やってんだよ」

「んー、なんていうんだろうね。なんか家業というかなんというか」

「そうかい。じゃあ俺だけ部活入るんか」

聞きはすれ、たいして興味はなかったようで、祐輔は特に関心を示さなかった。

「俺はバスケ部に行くぜ。目指すは全国!そしてモテるのだ!」

「高校もバスケか、がんばれよ」

「おうよ!じゃあ入部してくっから、ここでな」

祐輔はすでにバスケ部への入部を決めており、これから部活へと向かうようだ。

「ん、じゃあな。また明日」

「じゃあね、がんばって」

祐輔は僕と和樹に別れを告げ、、足早に教室を出ていった。

「じゃあ俺らも帰るか」

そうだねと和樹は言い、下駄箱と降りた。

 

 

秀明神社境内本邸

「大源様、お嬢様がお帰りになりました」

神社に仕える巫女からそう報告されたのは飛鳥原大源。飛鳥原家当主にして秀明神社大宮司。秀明神社の長である。

「うむ、ここへ」

大源は自分の娘である飛鳥原香の帰路を待っていたのだ。

「はい、ただいま」

巫女はそう言い、香を呼びに後間へと下がっていった。

秀明神社には多くの人がいる。飛鳥原一族の他、大源を頂点として、小宮司、権宮司、禰宜が一人ずつ、権禰宜、宮掌など以下の役職に1000人ほど。分社、氏子組織、奉賛会などを含めると7000は下らない。そして氏子組織、奉賛会以外は十一家ある宮座から出されている。大源はそんな巨大組織の秀明神社の代表でる。

「ただいま帰りました。お父様」

頭を下げ、香は部屋へと入ってきた。座は正座。背筋は伸び、お手本のような座り方である。

「うむ、学校はどうであった」

「はい、非常に刺激溢れるものでありました」

「そうか、ならばよい。義務教育化されていない高校への進学は我が飛鳥原家ではあまりない事例である。新たな学びの場では、我が秀明の教育を上回ることだ。それが反対を唱えたものへの態度であると理解しているな?」

飛鳥原家は閉鎖的な秀明神社に仕える家であるだけに、高校からの教育は家内で済ませている。

「はい、重々承知しております。自分に与えられた3年間、価値あるものにしてみせます」

もちろん飛鳥原の者すべてが秀明神社内での教育を受けているわけではない。才能を見出され、さらに高度な学びの園へと参るものもいるがほとんどは家を追われる身であった。

「己が選んだ道、花の道となるか、茨の道となるか。それは自身の振る舞いが決めることだ。決して無駄にするな。糧となせ、いいな」

「はい」

「下がれ」

「失礼いたします」

そういって親子の面会はわずかに5分で終わった。

ただ、香は気づいていた。学業が終わる時間に合わせて時間を作り、話をしてくれたことを。幼き頃から父の背中しか見ることのできなかった身が高校進学という道を選ぶことによって顔を見せてくれたことが素直に嬉しかった。

「大源殿、本当によろしかったのですかな?」

そういって次に現れたのは秀明神社の小宮司の山岸斎賀であった。

「と、いうのは?」

大源も山岸斎賀が何を言いたいのかを把握しながらもあえて質問で返した。

「秀明の長が、一人娘を一時であれ秀明から離すことをですよ」

山岸斎賀は秀明神社の宮座十一家がひとつ、山岸家から神社へと仕えるよう向けられた者であった。

「秀明の立場からすれば、それが考えである。しかし、私は父でもあるのだ」

大源は、自分の娘が自らの意思でやりたいことを主張したことが嬉しかった。無論、秀明に仕える身からすれば、秀明で教育を受けてほしい。高校での3年間は秀明神社で生きていくために学ぶ時間を3年分、後に送っているにすぎないと。しかし、自分と同じ一生を秀明に仕えるなにも面白くもない人生を送るより、たったの3年間だけでも娘を自由にさせてやりたかった。

山岸斎賀もわかりきった答えが来たとばかり、左様ですか。と答え去っていった。

 

 

「まったくふがいない」

長い廊下を歩きながら、山岸斎賀は付き人にそう言った。

「香殿を溺愛しているのはわかる。それが悪いとは言わん。しかし、娘だけのみではないことをもっと自覚してもらわないといかんのだ」

山岸斎賀も大源という男がどうゆう男かは知っている。秀明の中で古くからの付き合いであるからこそ小宮司という座を得ている。しかし、山岸斎賀は、いや、山岸家は飛鳥原家が昔ほどの威光を放っていないことに対し、危機感を覚えているのだ。

神社には氏子の他に神社を支援する宮座というものが存在する。宮座は氏子のように人、家の出入りはほぼない。つまりは永久氏子とも言える存在であり、神社に対して大きな名声を有している。

山岸家は秀明神社に現存する宮座の1つ。2000年以上続く秀明神社に古くから関わっていた。

「本家へと参るぞ」

山岸斎賀は自身の出身であり、宮座が一つの山岸本家へと向かい、事の次第を報告することにした。

 

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