あの丘の向こう側   作:トマトしるこ

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色んな作品を見ていると、束の口調って面白い
ほんわかしたもの、キリっとしたの。ウチは後者ですかね。


一章
02 未来人、ねぇ


「未来人、ねぇ」

 

篠ノ之束が白けたような、そっけない表情で俺を睨む。

 

そりゃそうだ。いきなり現れた男が「未来人です、助けてください」なーんて自己紹介して頭を疑わないほうがどうかしてる。苦笑いして引かれるより、科学者らしく値踏みするような目で睨まれるほうが百倍マシだ。というわけで百倍マシな現状なんだが素直に喜べる筈もない。

 

「それ、証明できるの?」

「物証が欲しい、と?」

「……そうだね。言っておくけど、ここは外から入ってくればどんな小細工だって見透かすシステムで囲ってある。穴掘ったって無駄。それらを掻い潜って現れたんだぜ? でも、平時じゃあり得ない歪みだって検知してるし、何かしら証拠があれば一先ず信じてやるよ」

「そうですか」

 

感謝します、と再度腰を折って頭を下げる。気に食わない、といった様子の篠ノ之束は良いから早く寄越せと目で訴えてきた。

 

取り付く島もない、美辞麗句がちっとも響かない人間、と聞いていたのでファーストコンタクトが最難関だと聞いていたが、これなら何とかなるか?

 

しかし、どうしたものか。ここまで来ていながら物証と成り得る物が手元に無い。本来の作戦プランなら、期日までに本部で用意してもらった物がナップザックに詰め込まれていた筈なんだ。それを使えば篠ノ之束も認めざるを得ない、と近親者に言わせるほどの確固たるブツが。生憎と手元に無いが。

 

あるはずがないと分かっていながら、数分前に預かったナップザックの中身を取り出していく。

 

当時――今現在ドイツを始めとした欧州で使われていた通貨、丁度現代ぐらいの世界地図、母さんお古のタクティカルナイフと自動拳銃、弁当…は格納したか。他には水と非常食に飯盒とマッチ、双眼鏡と……え、なんでアニメの初回限定版DVDが。これはちょっと分けわからんっすよ母さん。彼女がアニメ大好きなんて情報は聞いてないんだけど、これ絶対入れ間違えたでしょ…。流石に袋からは出さなかった。

 

ううん見事に何もない。

 

そも物体では納得してもらえるかどうか怪しいところ。例えば、未来で最新鋭の何かが中に入っていたとしても、ハンドメイドだと言われればそれまでだ。彼女を納得させるだけの裏付が無い以上、俺を未来人だと確信させるだけの材料にはならない。

 

段々と鋭くなっていく視線がそろそろ痛い。

 

あまり気は進まないが、これしかないのも事実…。

 

「どうぞ」

「……IS?」

「ええ。私の専用機、シックザールの待機形態です」

 

首から下げた黒いペンデュラムを差し出した。

 

ISの権威とも言える彼女に身の潔白を証明するなら、こんなにふさわしい物はない。最も強力な自衛手段の一つで無ければ喜んで真っ先に差し出したんだが。彼女は身体能力も非常に高いと聞くし。どれほどのものかはさて置き。

 

パチン、と篠ノ之束が指を鳴らすと、ISが武器を展開した時のように機械が現れ、その一部にペンデュラムを置いてホログラムキーボードを触りだす。それが一分ほど続いて、たっぷり数秒ほど画面を眺め、ほぅ、と彼女の唇から感嘆が漏れた。

 

「これはこれは……面白いフラグメントマップを形成してるね。今稼働しているどの機体よりも搭乗者に対して順応して成熟しているし、武装や装甲への馴染み具合も申し分ない、誤魔化し様もなく時間を積んでるようだ。現代じゃあんなに苦心しているエネルギー周りの循環も随分とスッキリか。装甲材質も比較にならない程強固且つ軽量化が果たされて……おおお! エネルギー系統への耐性数値が高いと思えば、塗料に何工夫も施されているじゃないか! さしずめ粒子攪乱被膜ってところか、うむうむ実に面白い! 鉛玉と違ってシールドエネルギーに頼る他無かった分野はこんな形で解消されるとは思わなかった! いやぁ、考えた奴は私の足元にも及ばないだろうがそこそこやるね。それとも私が提供するであろう機体から着想を得たのかな? しかし、こっちの関節機構も目を見張るものがある。甲殻類のスキマの様なものが見られない巧妙な仕組みになっていながらも衝撃吸収と近接戦闘時の耐強度まで両立しているとはね。それでいながらも外観を損なわない、否、それすらもアクセントでしかない設計か。随分と肌面積を削ってスリムになったってのにトンだハイスペック! たまんないよ!」

「は、はは…」

 

淡々と画面を見つめては感心したような文句を口にしたかと思えば、段々とヒートアップして子供のようにきゃっきゃと騒ぎ出した篠ノ之束に苦笑する。機械の前でくねくねうようよと忙しなく喜びを表現するたびに、イメージしていた彼女の人間像が崩れていった。

 

未来における篠ノ之束の功績と人物像はさておき、過去を知る人物から聞いたものとはかけ離れていたのは間違いない。こっちの事情などお構いなし、やりたい放題を始めたかと思えば、興味を無くすと嘘のように去っていく。人を人として認識できない女。そんなものは災害でしかなくて、天才と引っ掛けて天災と呼ばれたその人。

 

気まぐれな猫だってもう少し人間に興味を持つぞ? 今の様子はご飯を前にして尻尾を振る犬にしか見えないが。

 

何にせよ第一人者である篠ノ之束があれだけ驚いているのだ、技術が進歩している様を見せれば証拠としては十分だろう。稼働時間を逆算すると白騎士事件以前に遡るからな。

 

「―――んんっ」

 

人前であることを思い出したのか、小躍りをしていた天災は咳払いをしてどこからともなく用意した椅子に腰かけた。

 

「いや、無かったことにはなってませんが」

「うっさいなぁ、話の腰を折らないでよ」

「えぇ、いや、いいですけど」

 

理不尽だ。これはひどい。耳が真っ赤に染まっている時点で言い逃れはできないわけだが。

 

「信じよう。専用機も返す」

 

すっと、スイッチの切り替わった目の前の少女が望んでいた言葉を口にし、先程まで設置されていた機械から待機形態のペンデュラムを掴みこちらに向けて差し出した。数歩あゆみ寄ってそれをそっと受け取り、元の様に首へかけて軍服の内側へ滑らせる。

 

「ありがとうございます」

「未来、と言ったね。25年後だったか、人間もISも、随分と進化していないみたいだ」

「そう、見えるのでしょうね」

 

たった数分でそれらを察してしまう少女に驚くと同時に分かりやすく落胆してしまう。

 

黎明期と言えなくもない現時点から数年間…具体的には織斑一夏が現れてIS学園を卒業するまで、ISの進化は目覚ましいものがあった。白騎士事件を経て各国に散らばったコアを研究し開発された量産機が、その数を増やし、専用機が現れ、企業が産まれては消えていく間、第三世代まで開発するのだから。それまで以上の時間を掛けていながら、第五世代にまでしか到達していない現状、遅いと言われるのも頷ける。第四世代を提唱して実現したのは篠ノ之束のみであり、世界が進めたのはたったの一世代なのだ。

 

とはいえ言い訳も聞いてほしい。過去くんだりまでやってきたことと、それとは密接な関係にある。

 

何にせよこちらが未来人であることは認めてもらえた。交渉するにあたってようやくスタートラインに立てたことになる。

 

「先の話になりますが」

「助力を乞いたい……助けてくれって言ったね」

「ええ。私の居た時間では―――」

「待った。私はその話を受けるなんて聞いてない。勝手にそっちの事情を喋るな」

 

ぴしゃり、と後の言葉を断ち切られてしまう。俺としては口をつぐむ他無かった。

 

「失礼しました。私が未来から来たことの証明と、これとは別の問題でした」

「ほぉ。分かってるじゃない。大抵の有象無象はそれを一緒くたにして何故どうしてと喚くんだが」

 

意図を先読みし、直ぐに己の失態を理解し切り返しの一手を放つ。幸いそれをお気に召した様で、乾いた拍手の音が隠れ家に響いた。

 

篠ノ之束の価値観は凡そ常人では測れない、というのが世界の常識である。それは自分を基準とした優れた人間と、それ以外の凡愚といった超が付くほど極端なもの。彼女はさして力も無く意志や志を持たない凡愚が大嫌いだった。自分が居た時代では、近親者の必死の説得と逼迫した世界情勢が、歪んだそれを矯正されるわけだが、この時代ではそれも無い。

 

俺は自分が彼女と、あるいは織斑千冬の様な存在と並んで立つ人間とは思っていない。だが、彼女が思う凡愚ほど底辺にへばりつくクソとも思っていない。

 

貴女には劣るがそこいらの連中とは違って優秀ですよー。

 

そんな気持ちの詰まったアピールだ。

 

今の俺は“謎理論で侵入してきた不審者”から“謎理論で侵入してきた未来人”。これをどうにかして改め、現代での生活基盤を手に入れつつ篠ノ之束から好印象を得て尚且つコネを作る必要がある。

 

なんつー無理ゲー。

 

「何をすれば、お眼鏡にかなうのでしょう?」

「自分で考えれば? 未来から来たって言うのなら、私のことも、この時代で起きていることも、未来も過去もぜぇんぶ分かってるんでしょ」

「……今現在の時間を聞いても?」

「2028年、5月21日。18時ピッタリだね」

 

遊ばれている、と思った。

 

彼女はあらゆる意味で規格外の存在だ。その頭脳もさることながら、身体能力もずば抜けて高い。織斑千冬には僅かに劣ると言われているが、総合的に見れば篠ノ之束の方が厄介で、手強く、強かである。彼女が数年も雲隠れが続けられたのは単純に頭脳と技術力が桁外れだったから、だけではないという事。

 

先の一言で興味を抱いたからこそ、こうやって吹っ掛けられているのだ。少しは認められていると思えば良い気もするが、数秒前の自分が首を絞めていると思うとそれも霧散していく。

 

一人でも十分な私に何をしてくれるのかな? という問い掛け。それらは当然、篠ノ之束が実行するよりも良い結果を齎すことが大前提で、尚且つ気に入ってもらわなければならない。実用的かつユーモラスなスキルを秘めていなかったかと心の中をひっくり返す、がそんなものは無い。

 

「そうですね…」

 

切り口を変える。

 

2028年の5月と言えば、ちょうど白騎士事件から半年後、世間では第一世代が量産され研究が進んでいる頃だ。あと数か月もすれば第二世代が提唱される、そんな時期。この一年を境に男女関係は大きな変化を迎え、“ISは女性しか扱えない”という欠陥ともいえる条件を振りかざして権利を主張する社会問題が起きた。中身は贔屓目に見てもただのわがままでしかない、そんなふざけた内容だったが、これを認めてしまった国家がある。

 

日本だ。

 

彼の国では亭主関白なんて言葉があり、女性は男性の後ろを慎ましく歩くというか、黙って男性を立てるのが良い女というか……女よりも男が偉い、それが20世紀の日本の常識だった。今でもそんな考えが残っている、あるいは親のそれを見て倣っている為、女性の社会的立場は弱い。

 

そこに日本人女性(女性というよりは少女)が女性にしか扱えない、何よりも価値のあるマシーンを開発した。抑圧されてきた女性がこれを利用しないわけがない。詳細は省くが国は折れてしまった。

 

一つの国が、それも発祥国が認めてしまえばどうしようもなかった。ドミノ倒しの様にパタパタと倒れ、あっという間に世界中で女尊男卑の図式が完成してしまったわけである。

 

ここまでがスクールで習う歴史の授業だが、裏ではこう素直に終われる訳がない。何せ積もりに積もった怨み辛みをぶちまけられた一部の男性は仕事と家庭を失っていくのだ。そんな目にあったのは決まってプライドの高い連中だったが、だからこそ、それを取り戻そうと躍起にもなる。男が使えるようにする為の非人道的行為であったり、本人にどうにかさせようとありとあらゆる方法で捕えようとしたり、よくもまぁ成人していない子供にそこまでできるものだと話を聞いた当時は思った。

 

未来での彼女は決して逃亡生活の話をしなかった。何があったのか、何をしていたのか、織斑千冬と篠ノ之箒にさえ彼女は口を割らなかった。それほどの時間だったのだろうと、俺は思っている。そしてそれを現時点で理解していない天才ではない。

 

で、あれば――

 

「未来において軍人とは、大変名誉な職業なのですよ」

「ふぅん、いきなり自慢?」

「まぁ聞いてください、自分を売り込むのですから。で、なぜかと言うと、多くの職業に対する適性が無ければ務まらなかったからです」

「軍事特化の器用貧乏集団ってこと? 随分とまぁ、現代とは違うことやってんだね」

「これに関しては情勢から語る必要があるのですが……簡単に言うと、人が足りなくなったんですよ。老若男女問わずすべての人間に役割を与えても足りなかった。滅亡は人類の隣人だったのです。不足した全てを補う誰かが必要になり、その対象が国家人民に粉骨砕身する軍人だった、というわけです」

 

そう、何もかも足りないのだ。特に食料と医療は薄皮一枚で何とか繋いでいた状態で、軍人で高官だからと有事の為に俺も母さんも多少は優遇されていたが、一般兵卒や生産職の国民の生活はそれは酷いものだった。最後に受け取った弁当なんて、最高級ホテルの最上階で夜景を肴にディナーを満喫するものだ、とよく言われた。昇進するほど贅沢になるのが嫌で配給や給金の大半を支援に充てていたが、それすらも雀の涙程度でしかない。

 

気にしなくていいのは娯楽ぐらいだろうか。以前の暮らしを知っていながら身をやつす人々は、生きていることが幸福だと思い込まなければならず、昔を知らない俺ぐらいの年代からすれば今が普通だった。歌を歌う、トランプで賭ける、能力で競う、ボロいボールで遊ぶ。大人になれば、階級が上がれば上がるだけ良い酒と良い女を味わえる。

 

裕福な過去を思うのはただの無いものねだりで、馬鹿げた妄想と切り捨てる他無かった。だから、ある意味で自由だったと思う。

 

「ですから、召使いなんて如何ですお姫様? あぁ、博士と言うなら助手でも構いませんが」

 

――使い勝手の良い駒を欲していたのではないだろうか。自分一人でも十分だが、それなりに優秀で指示や扱いにも困らない、しっかりと結果も出すような駒を。

 

記憶違いでなければ、人体実験は既に始まっているしそれを知らない彼女ではない。技術者として自身が開発した作品に愛情を抱くなら、それを汚す行為を見逃す筈もない。軍事的価値を見出してスポーツに落とし込まれるISは彼女の妥協点ギリギリだったというのが、後に織斑千冬によって語られている。故に行方を眩ませたんだ、と。

 

それは篠ノ之束とその周囲を付け狙う武装組織から身を護る為でもあった。

 

狙う立場であり、狙われる立場でもある。まぁ猫の手も借りたくなるだろう。しかし、頼れる友人にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない、というのが彼女の結論だった。織斑千冬は、まだ幼く無関係な織斑一夏を守らなければならない。かと言って家にそのままでは最愛の妹である篠ノ之箒が危ぶまれる。そして、彼女が成長する為に両親は欠かせない。結果、誰に頼れることも無く一人でどうにかしなければならなくなった。他にも思惑があったと思われるが、それらを隠す意味でも自身を損得勘定から外せば雲隠れは良い判断だ。結果、逆鱗に触れることを恐れた世界は三人を守る様に働いたのだから。

 

「……」

 

椅子の肘掛けで頬杖を付く彼女の前にそっと右手を差し出す。ダンスに誘うように、腰を折って笑顔を張り付けた様で。

 

彼女は、

 

「ぷっ」

 

笑った。

 

「あはははははっ!!」

「お気に召して頂けましたかな?」

「あはは! うんうん、面白いねぇ! この私をお姫様だってさ! お気に召しましたとも! ……って言えば満足?」

「概ねは。何せ真面目な軍人ですので、冗談は苦手なんですよ。様にはなっていたと思いますが」

「ぼちぼち」

 

頬杖を付いたまま、篠ノ之束はわざとらしく足を組む。直立すれば足首まであるスカートは防御力が高く、残念ながら脛まで覆うブーツしか見えなかった。ふわりと浮いたスカートが太ももに落ちて主と目が合うと、にやけた表情で俺を見下す。途中で気づいたがもう遅い、ならばせめてと食い入るように見てやった。というところまで見透かされていたのがまたムカつく。俺の方が頭の位置が高い筈なのに、心身共に見下されていた。

 

「歳、幾つ」

「18」

「私は16。年下に興奮しちゃってまぁ。スケベ」

「これでも男です、目の前に美しい女性が居れば目で追ってしまうもの。むしろ自分の魅力を自覚しているなら自重すべきでは? 出来ないなら責任を果たしていただきたい。そもそも慣れない色仕掛けなぞ止めた方が……いえ、せめて相手を選ぶべきかと。いやいや、止めるべきでしょう。価値を分かっていながらそれを振り撒くのは実に悪質で罪深い。何より安売りは物の……貴女の魅力を大いに損なわせる。今後しない事、よろしいです?」

「え、えっとごめんなさい……じゃなくて! 私のお父さんか!!」

「分かったら揶揄わない事です。貴女は生まれながらに規格外でしょうが、私も歳の割にはいささか経験を積んでますので」

「タイサ、だからか」

「ええ」

 

組んだ脚をすっと戻して差し出した俺の手を取ると、篠ノ之束はゆっくりと立ち上がった。思っていたよりも身長差があって、頭一個半ほど見下ろす形になる。ブーツの底は少し厚めだったから、裸足になればもっと見下ろすことになりそうだ。

 

改めて、篠ノ之束を見る。

 

中々に奇抜な服装をした16歳の少女。年齢と反比例して大人顔負けの美貌とスタイルには、流石に女性慣れした俺でもくらりと来る。髪色は…うん、ピンクということにしよう。胸に垂れる横髪は編み込んであり、腰まで届くロングヘアに癖は見られない。が、羽織る白衣は皺が寄ったりオイルやほこりで煤けてみすぼらしく見えるし、折角の整った髪にも汚れが。自信がある癖に身だしなみに気を使わないというアンバランスな感覚は、身近にいた技術者の女性を思い出させる。そういう生き物なんだろうな。

 

「よろしく、タイサ」

「大佐は階級であって名前ではありませんが」

「お前はタイサで十分でしょ。器用貧乏程度で助手を名乗れると思うなよ」

「聞く人が聞けば卒倒するセリフですな、博士」

「それは気に食わないと言った」

「階級で呼ぶなら、私もこう呼びますとも」

「……召使い」

「お呼びですか、お姫様」

「うあああぁぁぁああ!! ぞわってきた! 今背中のあたりがぞわぞわってきた!」

「お嬢様はあまり調子が良くない様子」

「変わらないよ! お姫様もお嬢様も同じだよ! ぞわぞわするってほんと!」

「……お」

「博士でいいよ!!」

 

してやられたと顔を、耳まで真っ赤にしながら取り乱す篠ノ之束……博士は見ていて飽きない。気持ち悪い、というより言われ慣れて無さからくる恥ずかしさがそうさせるらしい。出来すぎるあまり敬遠されて、自分でも他人を遠ざけたから、だな。そう思うと胸の奥から切なさがこみ上げた。

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  • 小(原作前終了)
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