steam and gunpowder smoke chronicles 作:張り子のキメラ
1話 転移
「ここは……」
都会では馴染みのない土と草の匂いで目を覚ました。
真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、空を覆う背の高い木々だった。
視界と背中に伝わる固い感触から、俺は地面に直接寝ているのだと理解する。
「どうなってんだ、こりゃ……」
上体を起こして辺りを見回してみても、近くにテントやキャンプ用品の類は見つからない。
こんな森の中で拠点も拵えず、シートすら敷かずに地面に寝っ転がるなど、現代人の感覚では考えられないことだ。
一体全体、俺は何故こんな場所に居るのか?
俺の最後の記憶といえば、久々の休日を昼間から惰眠を貪ることで堪能していたものだ。
ブラック企業に入社して数年、家でゲームをする時間を捻出することが最大の関心事である代わり映えしない日常だった。
今の俺は気付いたら突然どこかの山の中に倒れていたことになる。
非日常への憧れから、長野県かどこかの山奥にまでやって来たのではないかとも考えたが、その可能性は限りなく低いという結論に至った。
何故なら、俺の服装がどう考えてもこの場に相応しい恰好ではないからだ。
着ているものは部屋着のパーカーにスウェット。
さしてファッションに興味がない人間とはいえ、外出時にこの格好はないだろう。
部屋着にもかかわらず靴下とスニーカーを履いているところが妙だが、それでも山歩きを前提とした装備ではない。
キャンプ場の拠点から離れた場所で、頭を打って記憶が混乱しているパターンは無くなったな。
そもそも、キャンプやアウトドア系の趣味など俺には無かったはずだ。
そうなると誘拐か?
CIAの特殊部隊が自宅で寝ていた俺を拉致して山奥に……無いな。
こんな回りくどい始末をされるような覚えは無い。
「とりあえず移動するか」
ここに突っ立っていても始まらない。
俺は背中や尻の土を掃って歩き出した。
普通の遭難と違い、自分が来た道も街の方角など最低限の地理情報も不明なので、方向は完全に運任せだ。
移動中の俺はキャンプ中の記憶喪失と誘拐以外に、もう一つ夢のある可能性について考えていた。
俺くらいの歳ごろならば、誰でも一度は夢見たことがある異世界転移である。
小声で「ステータスオープン」やら「ファイヤーボール」やら言っていたのは見なかったことにしてもらいたい。
「まあ、そう都合よく異世界なんて無いよな……」
しかし、そんな俺の落胆は思いがけない形で裏切られることになる。
しばらく森を歩いたところで、俺は切り立った岩山の影に小規模な集落を見つけた。
数軒の木造の小屋だけでなくトタンの建物もある。
建造物の周辺には金属のスクラップが散乱している。
中世に近い剣と魔法の世界ならこういったものにはお目にかかれないだろう。
「まあ、そうだろうね……」
ここが現代の地球であるという確信を強めながら集落に近づいた俺だったが、次の瞬間、俺は慌てて近くの木陰に身を隠した。
「っ!」
重厚な音を響かせながら、トタンの建物から二つの金属の塊が歩み出てきたのだ。
そう、文字通り
自動車のボディに手足を付けたような高さ約四メートルのロボット。
あの物体には見覚えがある。
「トロットビークルだと……」
作者はバンピートロットの大ファンです。
アイレムソフトウェアエンジニアリングさんからバンピートロット2の開発中止が発表されたときには、学校の勉強が手に付かないほど落ち込んだものです。
絶体絶命都市4を完成させてくださったグランゼーラさんには感謝の極みでございます。
なろうに投稿しているオリジナルの異世界転生モノの気分転換に書き始めた本作ですが、少しでもバンピートロットファンの同志や開発者の皆様の活力になれば幸いです。
第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。
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是非、読みたい! 早く晒せ!
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要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
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そんなことよりお腹が減ったよ。