steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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103話 ガラガラ砂漠決戦2

 

「グレイ! 無事!?」

「ああ、問題ない」

 【ジャガーノート】の後ろに背中合わせになるように滑り込んできたのは、サフランが駆る【スティール・モラル】だった。

 彼女がウィップアームを振るうと、少し離れた位置に居た二台の『ナイトメア』がレッグパーツに深刻なダメージを受けて移動速度が低下する。

 二台の『ナイトメア』はそのまま市民軍に参加するビークル乗りたちにタコ殴りにされて、稼働を停止した。

 その後ろに居た『ナイトメア』は市民軍のビークルに襲い掛かろうと飛び出したが、俺がチェーンガンで燃料タンク辺りを掃射し、爆散させた。

「キリがないわね、ホント」

「ああ。だが、片っ端からやるしかない」

 スナイパーアームで慎重に『ナイトメア』を撃ち抜くサフランに応えつつ、俺もチェーンガンで周囲の敵ビークルを掃射して潰してゆく。

 サフランがウィップアームでまとめて薙いで動きを止めた敵を、俺がチェーンガンの点射で止めを刺し、彼女が発砲している隙を突いて接近する『ナイトメア』はアックスアームごと俺が強化ブレードで切り裂く。

 俺とサフランはいつの間にかお互いの背中を預け合うようにして戦っていたが、敵を撃破する速さは加速度的に向上していった。

「こういう連携は初めてだけど……私たち、上手くやれてるわね!」

「ああ」

 俺が相槌を打つと、サフランは口元に明るい笑みを浮かべながらペダルを踏んで【スティール・モラル】のスラスターをふかした。

 お互い、ほぼタイムラグの無い自然な連携で左右から敵部隊に接近し、全方位から囲んで攻撃を仕掛けるようにして撃破していく。

「でも、本当にどうする? このままじゃ、お互いに犠牲が嵩んでいくだけよ」

「…………」

 俺とサフランは連携して周囲の敵を次々と屠っていたが、敵の前線部隊はなかなか減らない。

 弾薬はまだ十分余っているので、実際にはそれほど時間は経っていないはずだが、極度の緊張下にあるためか、もう何時間も戦っているような気がする。

 ……この状況が続くのはよろしくないな。

 こちらの集中力にも限界がある。

 しかし、先に前線が崩壊したのはブラッディマンティス側だった。

 ちょうどフェンネルが狙いすまして放った長距離キャノンアームが、『エビルタローン』の甲板から飛び出しかけた『ナイトメア』に命中した。

 完全に突撃体勢で前のめりになったところで先頭のビークルを吹き飛ばされ、敵のビークル部隊は一瞬だが混乱し圧力が弱まった。

「見たか!」

「いいぞ、フェンネル!」

 そのチャンスを逃すバニラではない。

 フェンネルよりも前に出ていたバニラは、そのままガトリングの乱射とトライデントの刺突で『ナイトメア』をまとめて撃破した。

 さらにシュナイダーもバニラの【カモミール・タイプⅡ】に続いて前線を押し上げる。

「くっ、止めろ! 奴らを止めろ!」

「囲め! 押し込むんだ!」

 『エビルタローン』への接近を許したくないブラッディマンティス側は防衛体制を取り、バニラとシュナイダーのビークルに『ナイトメア』が群がった。

 しかし、この段になると展開を読んでいた俺もサフランと散開して最前線へ駆けつけている。

 『ロングシンフォニー』は甲板で盾タンクと化しているマジョラムと、遊撃で護衛をしているサフランに任せてきた。

 『エビルタローン』の甲板上にはシュナイダーの【マキシマム】にキャノンの狙いを付けようとしている『ナイトメア』が居たので、俺は慎重にチェーンガンの狙いをつけて引き金を引いた。

 既に十分に敵艦を射程内に捉えるまで接近しているので、ここで狙いを外しはしない。

「ごわっ!」

 俺の放った弾丸は寸分違わず敵ビークルの弾薬ボックスを撃ち抜いた。

 爆発と破片に巻き込まれたことで、ブラッディマンティス側のビークルは『エビルタローン』の甲板上でもさらに一部がまとめて戦力を失う。

 これでシュナイダーの正面はクリアだ。

「そのまま進め!」

「む……」

 目の前で敵ビークルが爆散し俺に視線を向けていたシュナイダーは大きく頷き、『エビルタローン』に向き直るとスラスターをふかした。

 シュナイダーには何か策があり、敵艦の懐に潜り込みたがっていることは見て取れたので、俺は引き続き『エビルタローン』の砲台や周辺のビークルに牽制も兼ねてチェーンガンを撃ちまくった。

 そして敵艦の甲板上に躍り出たシュナイダーは、主砲が備え付けられた砲塔近くに【マキシマム】を着地させる。

「よし……」

 珍しくシュナイダーは口元に笑みを浮かべた。

 そして次の瞬間、『エビルタローン』の甲板上で眩い爆炎が辺りに飛び散った。

 

 

 

 

 ブラッディマンティス側の陸上戦艦『エビルタローン』の甲板上で起こった爆発は、ビークル部隊が一瞬動きを止めて注目するのに十分な規模のものだった。

「うぉ! 何だ……?」

「シュナイダーだ! 【マキシマム】が突っ込んだぞ!」

「どうなったんだ!?」

 一見、敵艦に特攻したシュナイダーが爆発四散したかのような光景だ。

 だが、もちろん彼はそんな間抜けではない。

 【マキシマム】は『エビルタローン』の甲板上で健在だ。

 シュナイダーが使用した武器は、バックパーツの『エクスプロージョン』だ。

 強力な爆弾を周囲にぶち撒ける一回使い切りのアイテムだったはずだが、ビークルバトルで使うような武器ではないため、俺もこの世界で実際に使われるのを見たのは初めてだ。

 シュナイダーはさすがに愛用しているだけあって、使い方もタイミングも完璧だった。

 『エビルタローン』の主砲がいくつか潰れ、船体の装甲にも所々大きな亀裂が入っている。

 敵の武装はいくつか無力化できたうえに、内部へ攻撃を仕掛ける足掛かりとなる状況も作ることができた。

 シュナイダーが突出して『エビルタローン』に到達したときは、普通に砲塔を殴ると思っていただけに、戦果としては想像以上のものだな。

 だが……『エビルタローン』を撃破するには至らないか。

 本人にしてみれば、エクスプロージョンは囲まれたりや巨大ビークルと戦う羽目になったりしたときの切り札だろうが、巨大な陸上戦艦の耐久力はそれ以上だったわけだ。

 まあ、バックパーツを丸々占領するサイズの爆薬とはいえ、ビークル一台で破壊できるほど巨大戦艦は甘くはないということだ。

 

 

「くっ……」

 シュナイダーはスラスターをふかして後退った。

 『エビルタローン』の無傷の砲塔が【マキシマム】を追い、次々と砲弾を撃ち出す。

 先ほどの一撃で、敵艦の砲術クルーはシュナイダーを集中的に狙い出したようだ。

 【マキシマム】には遠距離兵装が無いので、エクスプロージョンを使い切った今、シュナイダーにまともな反撃の術は無い。

 後退しつつ翳されたシュナイダーのオリジナルパーツであるシールドアームSSは、砲弾の破片を受けて所々が抉られている。

「シュナイダー、下がれ! 野郎ども、制圧射撃だ!」

「「「「「おう!」」」」」

 俺の指示で、一時的に混乱していた志願兵のビークル乗りたちは勢いを取り戻し、敵艦に近い位置に居る者たちは『エビルタローン』に砲弾や弾丸を浴びせた。

 そして、すぐにまた目の前の敵ビークルとの取っ組み合いに戻ってゆく。

 援護は一時のものだったが、シュナイダーが離脱する時間は十分にあった。

 彼は敵の集団から抜け出るようにビークルを滑らせると、俺の近くまで戻ってきた。

「おい、無事か?」

「問題ない」

「……無茶しやがる」

 言葉は少なかったが、シュナイダーに深刻なダメージが無いことは見て取れた。

 戦闘を継続できると判断した俺は、周りを見回してシュナイダーと敵の位置をざっと確認する。

 俺たちはお互いにカバーし合うポジションで並び、こちらに接近する『ナイトメア』の集団と対峙した。

「……で、どうするんだ?」

「ん? 何が、だ!」

 シュナイダーが張り倒して動きを止めた『ナイトメア』を横目で見つつ、俺はその後ろから迫る別の敵ビークルをチェーンガンで撃ち抜いた。

 俺が振り向きざまに別の『ナイトメア』のアームを斬り飛ばしダッシュアタックで弾き飛ばすと、既に最初の敵を始末していたシュナイダーが俺のお残しにも止めを刺して戻ってくる。

 まるでプロレスの連携技だが、自然にできるあたりが何ともシュナイダーの格闘スキルの高さを物語っている。

 至近距離に詰めた敵ビークルのアームを掴んで捻るようにして拘束し、コクピットを金棒アームで叩き潰したシュナイダーは、こちらへ僅かに顔を向けて呟いた。

「このままでは、厄介なことになる……」

「…………」

 確かに、シュナイダーの言う通り、戦況はそれほど良くない。

 まだ前線が押し返されはしていないものの、市民軍のビークル部隊が敵艦に到達できないまま時間が過ぎ、『エビルタローン』の主砲によってもビークル部隊にそれなりの被害が出ている。

 仮にこのまま状況が拮抗すれば、恐らく市民軍側が僅かに不利になる。

 敵艦の射程内ということもあるが、何よりビークルの性能の差が看過できない。

 お互いのビークル部隊の戦力は、ブラッディマンティス側はほぼ制式化された量産型戦闘ビークル『ナイトメア』で統一されているのに対し、市民軍側は一部にビークル乗りが自前で用意した汎用型も含まれるが半数以上を警察ビークルの砂漠仕様『ギャロップ・タイプD』が占めている。

 ハッピーガーランド警察には最新式の『ギャロップ』も配備されているが、そのほとんどが平地仕様である。

 火力とシールドの性能こそ優れているものの、警察用の量産型として規格化されている以上、汎用性が低く砂漠対策の面で大きく劣る。

 そんなわけで、市民軍に参加する警察官や兵士は主に『ギャロップ・タイプD』を引っ張り出して使っているわけだが……。

 この機体……ファーガスンや警察関係者曰く、先のデザートホーネット団の大規模討伐の際に活躍した機体もあるそうだ。

 歯に衣着せず言えば、型落ちのポンコツだ。

 はっきり言って、こちらの主力ビークルは性能的に『ナイトメア』に一段劣る。

 原作とは明らかに違うが、こういうところが現実の恐ろしい部分だな。

「……一石を投じる必要があるか」

「?」

「シュナイダー、手を貸してくれ。まずはもう一度正面に突っ込むぞ」

「……ああ」

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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