steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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104話 ガラガラ砂漠決戦3

 

 俺とシュナイダーが『エビルタローン』の正面に回ると、そこにはトロット楽団メンバーたちのビークルも居た。

 バニラとフェンネルを筆頭に、相変わらず敵の『ナイトメア』集団を相手に大立ち回りを演じている。

「くそっ、もう弾が残り少ないぞ!」

「僕もだ!」

 フェンネルとバニラの声がこちらにも聞こえた。

 弾数の少ないフェンネルは節制していたようだが、それをカバーするバニラもついにガトリングアームの弾丸が尽きかけている。

 俺のチェーンガンに比べれば携行弾数が少ないとはいえ、ガトリングアームは元々が装弾数の多い武器だ。

 相当、撃ったようだな。

 そして、俺とシュナイダーが群がる『ナイトメア』を弾き飛ばしながらバニラたちの元へ到着すると、少し離れた場所から聞き覚えのある声が響いた。

「しまった!」

「「バジル!」」

 バジルの【グリーン・リーフ】は、軽いボディの機動力を活かして何台かの『ナイトメア』をクローアームで撃破したが、ついには軽量タイプゆえの弱点を突かれてしまう。

 あいつのピンチというと、何となくネフロのキラーエレファント団襲撃を思い出すが、今回もなかなかにヤバい。

 敵ビークルにダッシュアタックで弾き飛ばされた【グリーン・リーフ】が体勢を立て直す前に、バジルの正面にはアックスを振り上げた『ナイトメア』が迫っていた。

 しかし……。

「ぁが!」

 今度もバジルが瀕死の重傷を負うことは免れた。

 【グリーン・リーフ】の目前まで迫っていた『ナイトメア』は、コクピットごと操縦手を撃ち抜かれてその場で動きを停止した。

 当然、敵を無力化したのは俺のチェーンガンだ。

 今回はミサイル弾を撃ち落とすより簡単だった。

「あ、ありがとう、グレイ……また、助けられたね」

「ああ、構わん。気にするな」

 生返事をしつつ、俺はバジルのビークルをざっと見まわした。

 駆動がイカれるほどの損傷は受けていないが、先ほどの衝突のダメージは結構な傷を齎している。

 少し危ないな。

「ボディの損傷がひどい。戦艦まで下がれ」

「……わかったよ」

 さすがにここで意地を張るつもりは無いのか、バジルはゆっくりとビークルを反転させると『ロングシンフォニー』の元へと戻っていった。

 マジョラムと行動を共にすれば、バジルも何とかなるだろう。

 続けて、俺はこちらを見ていたバニラとフェンネルに声を掛ける。

「バニラ、戻るのは少し待て! フェンネル、少し距離をおいて俺たちの後ろに。キャノンの準備を整えておけよ」

 そして、シュナイダーに目配せした俺は、そのまま再び『エビルタローン』の甲板へとビークルを向ける。

 【ジャガーノート】と【マキシマム】は並んで砂漠地帯を滑走し、敵ビークルの密集する最前線まで突撃した。

 

 

 『エビルタローン』を守るように立ちはだかる『ナイトメア』の集団を前に、俺とシュナイダーはどちらともなく散開し波状攻撃を仕掛けた。

 敵も大量に自陣営のビークルを撃破した俺たちが現れたことで、僅かに浮足立って防御態勢を取った。

 俺は容赦なくチェーンガンを敵の燃料タンクに撃ち込みつつ、『ナイトメア』の数を減らしていった。

 シュナイダーはとにかく敵の至近距離まで接近して殴りつけ、俺は時々ブレードを振りつつチェーンガンで的確に敵ビークルを始末する

 そして、近くに居る敵ビークルがほぼ殲滅されたところで、先ほど簡単に打ち合わせた通り、シュナイダーに指示を出した。

「シュナイダー! そいつを抑えてろ!」

「ああ」

「っぐ、何を……っ!」

 この近くでは最後の生き残りとなった『ナイトメア』を、シュナイダーは金棒を絡めシールドアームSSで押さえつけるようにして拘束する。

 さすがに格闘戦の専門家だけあって鮮やかな手並みだ。

「いいぞ……」

「っ!」

 俺はシュナイダーが動きを抑制している敵ビークルの後ろに回し込むと、狙いすましてブレードを振るった。

 少し悪趣味な気もするが、これも一つの策のためと思い、俺は強化ブレードアームのレバーを慎重に操作する。

 コクピットごと斬殺された操縦者の遺体とともに、『ナイトメア』の武装やアームパーツなど重い部分がガシャガシャと音を立てて落下した。

 そして、アームを敵のビークルから離したシュナイダーに変わり、今度は俺が『ナイトメア』の残骸を【ジャガーノート】のアームで持ち上げる。

「こいつを……あの射出口に」

「…………」

 俺はシュナイダーほどビークル同士の接近戦や掴み合いに精通しているわけではないが、【ジャガーノート】のパワーは他の汎用ビークルを大きく凌ぐ。

 コントロールはともかく、シュナイダー以上の力で投擲すること自体は可能なのだ。

「ふん!」

 俺は両方のアームで『ナイトメア』を掴むと、スラスターの勢いも利用して敵を持ち上げた。

 周囲のビークル乗りからは何事かと視線を向けられるが、今は構っている余裕がない。

 俺はアームパーツで掴んで安定させた『ナイトメア』の残骸を、そのまま空中に放り出した。

 そして、放り上げた敵ビークルが『エビルタローン』の甲板を超えるくらいの高さに到達したタイミングで叫んだ。

「やれ!」

「むっ……」

 シュナイダーはほぼ無言だったが、先ほど軽く説明はしていたので、俺の意図をはっきりと汲んでくれた。

 空中に躍り出たシュナイダーは、接近戦の間合いのセンスを如何なく発揮し、空中で『ナイトメア』の残骸に体当たりして弾き飛ばす。

 まるでバレーボールのトスからアタックのようなコンビネーションだ。

 【マキシマム】のタックルの威力をまともに受けた『ナイトメア』の一部は、かなりの勢いで『エビルタローン』のビークル射出口に転がり込んだ。

 傍から見れば、敵のビークル射出口を塞いで時間稼ぎをしているだけだが、これで計算通りだ。

 そのまま近くに散らばる敵ビークルの残骸から、燃料タンクやら弾薬ボックスやらを引っぺがし、シュナイダーと協力して同じ場所に投げ込む。

 この段になると、敵も俺の意図に気付いたようだが、俺はさらに声を張り上げて指示を飛ばした。

「フェンネル! あそこだ、ぶっ放せ!」

「っ! おう!」

 事前の説明もないぶっつけ本番だが、フェンネルもそれなりのキャリアを持つビークルバトラーだ。

 突然のことでも、射撃の正確さは健在だった。

 【ブルー・サンダー】が放った長距離キャノンのミサイル弾は、見事に『エビルタローン』のビークル射出口に蓄積された危険物の山に着弾した。

 一瞬の静寂の後、視界がホワイトアウトしかける規模の閃光と衝撃が発生し、爆発の勢いで周囲に鉄の破片が乱舞した。

 

 

 【ジャガーノート】のコクピットで姿勢を低くして衝撃と破片をやり過ごした俺は、敵の陸上戦艦『エビルタローン』に視線を戻した。

 相変わらず巨大兵器の佇まいは健全だが、船体には大きなダメージを受けていることが見て取れる。

 ビークル射出口がズタズタに破壊され、まさに満身創痍といった様相だ。

 敵の弾薬や燃料をありったけ再利用した破壊工作は、先ほどのシュナイダーのエクスプロージョンに劣らない威力を発揮したようだ。

 艦橋や砲塔にもかなりの損害が出ており、今が畳みかけるチャンスだ。

「止めだ! 突入するぞ。バニラ!」

「っ! ああ」

 俺は近くに居たバニラに声を掛けると、【ジャガーノート】のスラスターを起動して素早く『エビルタローン』に上がり込んだ。

 大きく抉れたビークル射出口と艦橋近くの亀裂にチェーンガンを撃ち込むと、中から人の呻き声が発せられる。

「おらっ!」

 さらに、強化ブレードで亀裂の入った装甲を斬りつけると、爆発の圧力で大きく歪んでいた戦艦のボディは今度こそ大きく切り開かれ、中の様子が露わになる。

 ブラッディマンティスの軍服を着たクルーと目が合い、連中が息を呑む声が聞こえた気がする。

「う、うわぁあああぁぁぁぁぁ!」

「く、来るな!」

 ブラッディマンティスの兵士たちは我先に艦の右舷へと殺到し、隔壁や扉を潜って逃げようと試みた。

 銃で武装している奴も居るみたいだが、ざっと見たところ、反撃してくる度胸のある奴は居ないようだ。

 俺は容赦なく後ろからチェーンガンの弾丸を浴びせてゆく。

 バニラも穴が開いた場所を中心にガトリングアームを撃ちまくり、直接人体の撃ち込むことは躊躇しているが、戦艦内部を破壊することによって破片や倒壊した資材で乗組員に攻撃を加えていった。

「ひ、やめ……」

「ぁ……が……」

 悪いが、これは戦争だ。

 ここで勝たないと、さらに犠牲が増えてしまう。

 バニラのガトリングアームはそろそろ弾切れのようだが、俺はさらに容赦なくチェーンガンを撃ちまくり、銃身が赤熱しそうなくらい弾丸を連射した。

 そして、ついにこちらの弾丸は『エビルタローン』の燃料系統の配管を捉えた。

 噴き出した炎は一気に広がり、艦橋や甲板も不完全燃焼の火に包まれる。

 激しく炎上を始める『エビルタローン』を見て、市民軍側もブラッディマンティス側もこちらに視線を集中させた。

「っと……離れろ! 皆、退避しろ!!」

 俺は力の限り叫んでバニラたちに離脱を促した。

 炎はさらに勢いを増し、さすがに状況が状況だったため、近くに居た市民軍ブラッディマンティス双方のビークルは機体を反転させてその場を離れようと試みる。

 そして……。

「うぉ!」

「くっ……」

 次の瞬間、『エビルタローン』の船体の中心で爆発が起こり、敵艦はパーツをぶち撒けて稼働を停止した。

 黒煙を吐き出しながら艦体が崩壊を始めているあたり、完全に大破と言っていい状態だ。

 どうやら、砲塔下の弾薬庫に誘爆したようだな。

 さすがにここまでのダメージを受けては、巨大な決戦兵器といえど戦闘継続は不可能だ。

 既に『エビルタローン』の所々のハッチから、転がり出るようにクルーが退艦を始めている。

 ブラッディマンティス側の旗艦が撃沈された事実は、瞬く間に戦場の双方の兵士に共有された。

「やった! ブラッディマンティスの戦艦を破壊したぞ!」

「我々、市民軍の勝利だ!」

 歓声を上げる市民軍とは対照的に、ブラッディマンティス側の兵士たちの間には悲壮感と混乱が広がっていく。

 油田基地の方角へ逃げ出す者、その場で動かずに立ち尽くす者、ビークルを降りて降伏する者……それぞれの方法で、敗戦の現状を受け止めた。

 そして、市民軍側の司令官であるファーガスンは、喜びに沸く俺たちに淡々と告げた。

「よし、帰還するぞ」

 あっさりとしたものだが、俺たちの目的は敵戦力の撃破と油田の解放であって、略奪でも虐殺でもない。

 荒くれどもには少し不完全燃焼かもしれないが、あとは石油会社の技術者も合流した部隊が油田を掌握する段になっての話だ。

 この状況に乗じてコンフリーやベルガモットあたりを確保できないものかとも考えたが……こちらの戦艦やビークル部隊にも被害が出ている以上、深追いは危険だな。

 ガーランド警察の関係者が最低限のブラッディマンティス構成員を捕縛し、市民軍のビークルは砲塔と甲板の一部が破壊された『ロングシンフォニー』に乗り込み、俺たちはコンドル砦へと帰投した。

 




今回で、砂漠の決戦は終了となります。

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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