steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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113話 合流

 

 ブラッディマンティスのビークルが全て片付くと、フェンネルが俺の方へビークルを進めてきた。

「……相変わらず派手にやってるじゃねぇか、グレイ」

「ああ、フェンネル。さっきは助かったよ」

「気にすんな」

 フェンネルは些か居心地が悪そうに口元を歪めたが、さっきの援護は本当に助かった。

 足場の悪い位置に追い込まれ、残り少ない敵の始末に手間取っていた。

 最悪、コンフリーを逃がしてしまうところだった。

 迅速に敵を殲滅できたのはフェンネルのおかげだ。

「ところで、こんな時間に街の外まで来るなんて……どうしたんだ?」

「……ローズマリーのところに、な。生まれ故郷とはいえ、住み慣れた街を離れて、女の一人暮らしだ。色々と物入りだと思ってよ」

 【ブルー・サンダー】のシートを見ると、日持ちのする食品や菓子類や雑貨など、街でないと入手しにくい消耗品が積まれていた。

 ローズマリーへの差し入れとしては、なかなかに気が利いている。

 フェンネルは斜に構えているようで、何気にこういう気遣いはできる男だ。

 買い物で予想以上に時間を食ってしまったのかもしれないが、こんな夜更けにもかかわらず、訪ねるのを明日にしないあたり……何と言うか、一本気な奴だ。

「いざ街から出てみれば、爆発音が聞こえたんでな」

「なるほど」

「お前は……例の盗賊討伐の続きか?」

「ああ、ホトトギスの森でブラッディマンティスの動きがあるって情報が入ったからな。ファーガスンには警察署の方を任せて、俺は先行してこっちに来たんだ」

「そうか」

 フェンネルは少し深刻な表情で何かを考えるような素振りを見せたが、ここに留まっていても事態は好転しないので、俺は彼を先へ促した。

「フェンネル、俺もローズマリーさんの様子が気掛かりだ。今からでもゴールドーンへ行こう」

「ああ」

 

 

 俺とフェンネルはホトトギスの森の山道を川に沿ってビークルを進めた。

 周囲を警戒しつつ進むが、幸いブラッディマンティスの別動隊には出くわさない。

 コンフリーの性格を鑑みれば、さらに二段三段構えの罠を仕掛けていてもおかしくないので、この道を進むだけでもなかなかに緊張する。

 そして、ダンディリオンの楽器工房が見えてきた辺りで、俺たちはついに遭遇した。

「あれは……っ! コニー!」

 思わずフェンネルが声を上げて視線を向けた先に居たのは、ブラッディマンティスのビークル『ナイトメア』の編隊だ。

 ちょうどゴールドーン方面からやって来たビークル集団の一台は、ボディにポールのようなパーツが突き立てられており、そこにはコニーが縛り付けられている。

 見たところ、彼女は気を失っているようだ。

 ……原作では、睡眠薬らしきピンク色のスプレーを噴射して攫う描写があるので、コニーの命に別状は無いはずだが、そんなことは今のフェンネルにとって何の慰めにもならない。

「あいつら……待ちやがれ!」

「フェンネル!」

 俺が制止する間も無く、フェンネルは飛び出した。

 長距離キャノンアームを構えた【ブルー・サンダー】は一気に坂を駆け上がる。

「っ! 敵襲!」

「迎撃準備! ターゲットを早く向こうへ!」

 しかし、これだけ堂々と正面から突っ込めば、敵もこちらの存在を早々に察知してくる。

 コニーを運ぶ『ナイトメア』を庇うように他のビークルが立ちはだかり、フェンネルに向けてキャノンを発砲した。

 逆にフェンネルは炸裂弾頭を持つ武装ゆえに、コニーまで巻き込む可能性を考慮して発砲できない。

「くそっ、どけぇ!」

 そうしている間にも、コニーを乗せた『ナイトメア』は川に掛けられた跳ね橋を渡り、フクロウヶ森の方へさっさと進んでいってしまう。

 俺も掩護したいが、この狭い山道だとフェンネルの後ろからチェーンガンを撃つのも一苦労だ。

 さらに、間の悪いことに……。

「ふぁ……何の騒ぎです……? おや、グレイさんにフェンネルさん?」

「トニオ! 来るな!」

「え……うわっ!」

 楽器工房からは、就寝中だったと思わしきダンディリオンの弟子トニオが出てきた。

 彼は呑気に寝ぼけ眼で俺とフェンネルに声をかけてきたが、『ナイトメア』の放ったキャノンの弾が工房の庭近くに着弾すると、ドアの前でひっくり返って尻もちを付いた。

「そこから動くな! 頭を低く!」

「は、はい!」

 流れ弾や破片が彼に飛ばないとも限らないので、俺は【ジャガーノート】を加速させて少々強引に前に出て攻勢をかけた。

 敵弾の破片を少し食らったが、ミスリル装甲ならばこの程度は屁でもない。

 チェーンガンで制圧射撃をしながら距離を詰め、どうにか回避も防御もできない狭く遮蔽物の無い山道を抜けると、そのまま『ナイトメア』に急接近して強化ブレードを振るう。

「ぐぉ」

「ぅわぁぁぁ!」

 左側の敵機のコクピットを俺が撃ち抜いて無力化し、最後に後ろへ下がった『ナイトメア』をフェンネルが長距離キャノンで撃ち抜き、俺たちは敵の足止め部隊の殲滅を終えた。

 

 

 

 

「トニオ、無事か?」

「あ、はい…………グレイさん、これは……?」

 俺が声を掛けると、高床式の玄関アプローチの柵から身を乗り出したトニオが、恐る恐る返答してきた。

「ダンディリオンは?」

「あ、先生なら今日は出られています。大切な商談があるとかで、今夜は帰らないと……」

 今頃、ダンディリオンはグランドフィナーレに乗っているか、そうでなくとも近くに居ることだろう。

 まあ、ダンディリオンが適当な外出理由を告げているだろうとは思っていたので、トニオの返答は予想通りだ。

 俺は怪訝な表情をするトニオに向き直り口を開いた。

「トニオ、これからこの辺りで盗賊の掃討作戦がある」

「え……うちの近所で、ですか?」

「ああ、ガーランド警察も動いている事案だ。すぐに片付くとは思うが、ならず者のビークルが逸れて街道近くに出てくる可能性はあるからな。さっきみたいに。今日のところは、外出を控えてしっかり戸締りをしてくれ」

「はい、わかりました。グレイさん、わざわざありがとうございます」

 トニオは特に疑わず、俺の指示に従った。

 エンディング後の彼を思うと、何とも言えない気持ちになるが、今ここで俺がネタバレをしても信じないだろうし意味も無い。

 工房の中へ戻るトニオを見送った俺は、フェンネルの元へとビークルを進めた。

 

 

 再びゴールドーンの方からビークルが近づいてくる音が聞こえてくる。

 今度は編隊ではなく一台のものだ。

 タイミングからしてその正体には察しがつくが、俺が口を開く前にフェンネルが声を荒げた。

「おい! バニラ!」

 慌て気味にビークルを走らせてきたのはバニラだった。

 辺りに『ナイトメア』の残骸が散乱する状況に目を白黒させているが、フェンネルは構わず詰め寄った。

「さっき、コニーを運んでるブラッディマンティスのビークルを見たぞ。あれはどういうことだ?」

「どうやら、攫われたみたいだ!」

「何やってるんだ!? コニーのことを頼むと言っただろう!」

「…………」

 フェンネルの言葉で状況を瞬時に理解したバニラは端的に告げる。

 わかりきったことでも、いざ実際に耳にすると頭に血が上るのを避けられないのか、フェンネルはサングラスの奥で目を剥いてバニラを怒鳴りつけた。

 しかし、ここでバニラを責めたところで仕方ない。

 それはフェンネルも理解しているようで、それ以上の暴言や嫌味をバニラに浴びせることは無かった。

 そして、ブラッディマンティスが撤退時に跳ね上げて封鎖していった橋に勢いよく向き直ったフェンネルは、【ブルー・サンダー】を旋回させて長距離キャノンアームの狙いを付ける。

 しかし、俺はフェンネルを手で制して止めた。

「待て、二人とも」

「あ?」

「え……?」

 フェンネルはイラついた様子で俺を見たが、俺の視線は山道の下に降りた方向を向いている。

 微かに響くこちらへ接近するビークルの足音を、俺の耳は確かに捉えていた。

「(おぉーい!)」

 ビークルの音に混じって搭乗者と思われる男性の声が山道に木霊すると、フェンネルとバニラも向こうの存在に気付いたようだ。

 やがて、声の主は山道をビークルで上り切り、俺たちの前に姿を現した。

「おぉーい! グレイ君!」

「ファーガスン! どうしたんだ?」

 新品の警察ビークルに搭乗しているが、明らかに慌てて息を切らしているファーガスンの様子に、俺はただごとではないと理解した。

「き、緊急事態だ……君に……って! 何だこれは!?」

「ブラッディマンティスにコニーが攫われた。今から助けに行くところだ。それで、そっちは何があった?」

 辺りに散乱するブラッディマンティスのビークルにファーガスンは驚愕したが、一呼吸おいてから口を開いた。

 案の定、彼が放った一言は衝撃的なものだった。

「スームスームのドン・スミスからグレイ君宛てに電報が来た。内容は……保護していたマーシュが攫われたらしい」

「何だって!?」

 聞けば、スームスーム沿岸に潜水艦型の巨大ビークルが現れ、街を襲撃したそうだ。

 潜水艦ビークルがブラッディマンティスのものだということは、すぐに判明した。

 当然、治安部隊が出動し、ドン・スミスファミリーとスームの街に停泊中の船舶が迎撃に当たった。

 進水式が済んでいない『ジュニパーベリー号Ⅱ世』も緊急発進し、スーム沿岸では大規模な砲撃戦が繰り広げられたらしい。

 だが、それと同時に、街の内部でもドン・スミスが所有する物件への襲撃が相次いだ。

 海の迎撃で人手と意識が割かれている間に、陸地でも電光石火の破壊工作。

 ドン・スミスファミリーに成す術はなく、しらみ潰しにアジトや倉庫が襲われ、マーシュも見つかって連れ去られたそうだ。

 何てこった……。

 ドン・スミスの影響力が強いスームスームで守れば大丈夫だと高を括っていたが……そうは問屋が卸さなかったか。

 セントジョーンズ卿のゴールドーン案よりはマシだと思ったが、これに関しては俺のミスだと認めざるを得ない。

 電報を寄越している時点で無事だと思うが、ドン・スミスファミリーや『ジュニパーベリー号』の連中のことも気掛かりだ。

「待て、マーシュだと?」

「話せば長くなるが、スームスームで匿っていたんだ。……それで、マーシュはどこに連れてかれた?」

 俺はフェンネルに一言で説明すると、再びファーガスンの報告に意識を戻した。

「奴らは小型の潜水艇ビークルに乗り換え、北の方の川を上って逃亡したらしい。スーム近郊から少し離れた山中の川だそうだ」

「そこを内陸に進んだ先は……フクロウヶ森か?」

「その通りだ」

 つまり、マーシュもこの先の『グランドフィナーレ』に監禁されている可能性が高い、と。

 結局、原作通りの展開になっちまったな。

 ドン・スミスを責めるわけではないが、俺の根回しが全てパーだ。

 まあ、下手にマーシュの捜索で頓挫されて、ダンディリオンたちが尻尾を出さなくなってしまったら、それはそれで困るが……。

 今は、この状況からしっかりとノーマルエンドルートを目指すために、原作通りの戦いを切り抜けるしかないか。

「グレイ君、やはりこの森には……」

「ああ、奥にブラッディマンティスの拠点があるはずだ。そこで、何かドデカいことをやらかそうとしている。そうでなきゃ、ノーラを使って俺たちの目を逸らした理由に説明がつかない」

「確かにな……」

 

 

「話は終わったか。さっさとブラッディマンティスを追うぞ」

 いい加減、俺たちの会話に焦れていたフェンネルは、苛立ちを隠すことなく俺たちに宣言した。

 ファーガスンは慌ててフェンネルを止める。

「ま、待て、フェンネル君。グレイ君の話が本当ならば、この先はブラッディマンティスの本拠地なのだろう? 奴らの軍事力は強大だ。不用意に踏み込むなど……」

「何だっていい! 仲間を誘拐されて、黙ってられるかってんだ!」

 フェンネルはファーガスンを一蹴した。

 こういう時にブレない奴なのは、俺もよくわかっている。

 そして、フェンネルは【ブルー・サンダー】の長距離キャノンアームを構えると、跳ね橋の根本の辺りを狙ってトリガーを引いた。

 無誘導で発射された炸裂弾頭は跳ね橋の巻き上げ機構を破壊し、降りてきた橋が向こう岸とこちら側の土手を連結する。

 これで、フクロウヶ森と繋がるルートは確保された。

「行くぞ! ついてこい! コニーを取り戻すんだ!」

 さっさと鉄橋を渡ってしまうフェンネルにファーガスンは戸惑っていたが、バニラは少し迷った末にフェンネルに続いた。

 まあ、彼にとってもコニーの奪還が最優先だからな。

 俺はファーガスンに向き直った。

「敵の警戒は厳重だ。しかし、あれだけ派手に動いていた以上、今のブラッディマンティスはてんてこ舞いで人手に余裕が無い。応援を待つのもいいが、今なら少数で潜入した方が有利かもしれない」

「むぅ……致し方ないな」

 こうして、半ば強引にファーガスンも引っ張っていき、俺たちは原作よりも二名ほど多いメンバーで、コニーの奪還に向かう運びとなった。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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