steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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115話 銃身は赤熱し......

 

「……バニラ? バニラなの!?」

「っ! コニー! 今行く!」

 先ほどの騒ぎでこちらに気付いたコニーが声を掛けてくると、バニラはそのままコニーの檻へと向かった。

 バニラは檻の正面に駆け寄り、鉄格子を掴んで中のコニーを覗き込む。

「コニー、大丈夫かい?」

「うん! 大丈夫。……来てくれたんだね、バニラ」

「当たり前じゃないか! 本当に……無事でよかった」

 二人は感動の再会の真っ最中か。

 普段なら口は出さないが、今は配慮してやる余裕など無い。

 俺は武装解除した見張りの兵士の服をさらに探ったが、彼は檻の鍵を持っていなかった。

 近くに鍵を保管していると思わしき場所も無いし、他の方法で開けるしかない。

 俺は敵兵の死体を物陰に押し込んで隠すと、コニーとマーシュが閉じ込められている檻の前まで移動し、バニラに向き直った。

「バニラ、鍵をこじ開ける……のは無理か。俺がやるから見張りに立て」

「ああ、わかった」

 通路の入口に向かったバニラを見送った俺は、小さめの折り畳みナイフを取り出し、コニーの檻に付いている錠前の鍵穴に刃を差し込んだ。

 それほど高度な錠ではなさそうだが、開錠道具どころか俺自身にピッキングスキルが無いので、なかなか手間取りそうだ。

 せめて、器用なマルガリータが居てくれれば……。

「グレイも……助けに来てくれてありがとう」

「ああ。礼ならフェンネルにも言っておけ。敵の本拠地にもかかわらず、君を取り戻すために突入することを決めたのは、他の誰でもないあいつだ」

「そう、フェンネルが……」

 コニーは俺に答えつつも、微妙に顔を曇らせた。

 フェンネルが脱退した件もそうだが、彼女は物事をネガティブに捉えて自分を責めやすい傾向がある。

 きっと、迷惑を掛けて申し訳ないとか何とか考えているのだろうが……まあ、そいつをケアするのはバニラの役目だな。

 俺は引き続きコニーの牢の鍵と向き合った。

 しかし、その時、隣の檻から発せられた声が部屋に響いた。

「その声……コニー? コニーかい?」

 

 

「えっ……? 誰?」

 コニーは声のした方向に顔を向け、訝し気な表情を浮かべた。

 声の主が居るのはコニーの隣の牢だが、檻の後ろや左右は金属の壁となっているため、彼女から隣の様子は見えない。

「ボクだよ! マーシュだよ!」

「マーシュ!?」

 鉄格子を掴むようにして身を乗り出すマーシュの声に、コニーは耳を疑うように驚愕した。

 よく見ると、檻の中のマーシュは以前会ったときよりも怪我が増えていた。

 ドン・スミスの協力もあって、せっかく療養していたにもかかわらずこのザマということは……例のアジトを襲撃され潜水艇で攫われたときに負わされた怪我だな。

 なかなかに踏んだり蹴ったりなようだ。

 そんなマーシュは、隣に居るのがコニーであることを認識すると、唐突に謝り始めた。

「コニー、ごめんよ。昔のボクは、どうかしてたんだ」

「な……何よ、こんな時に……」

「ダンディリオンの才能が羨ましかったんだよ。貧乏なくせにって……馬鹿だったよ……」

「やめてよ。今、君の話なんて聞きたくない」

「チコリは……わざとじゃ……いや、わざとだったかもしれない。あの時は……本当に……本当に、ごめん!」

 コニーは突然のことに混乱しつつ拒絶の声を出すが、マーシュは構わず、俺のことも目に入らない様子で言葉を続けた。

「赦してもらえるとも思ってないけど……本当に……本当に、ごめんなさい」

 相変わらず、マーシュは涙声で謝罪を繰り返すばかりだ。

 しかし、ここに来て、コニーもただ俯いて拒絶するだけの態勢から、顔を上げて怒鳴るように言葉を返した。

「何よ! さっきから! 改心したから赦してくれって言うの!?」

「そんなつもりじゃないよ。本当にボクは悪いと思ってるんだ……!」

 弱弱しいながらもはっきりと否定するマーシュはさらに言葉を続けた。

「一人で海外で生活してわかったんだ。皆の大切さが……。ボクはもう昔のマーシュじゃないんだよ」

 勝手な言い分だ。

 本人も理解しているだろうが、全てはマーシュ自身の都合であり、謝ることで勝手に自己満足しているだけだ。

 人をいたずらに傷つけて殺しても何も感じないサイコではないことの証明にはなるだろうが、それが被害者にとって何の意味を成そうか?

 人生が狂うほどの被害を受けた人間は、そう簡単には救われない。

 加害者が排除されない限り、留飲も下がらない。

 俺がコニーの立場だったら……きっとマーシュを許せないだろう。

 きっとマーシュを殺そうとしただろう。

 彼と同じように……。

「いいわよね。君はそうやって改心して変われたんだから。私だって……私だって変わりたいのに!」

 しかし、コニーは皮肉っぽく吐き捨てつつも、その怒りはどこか自分へ向けられているようだった。

「あの時、チコリを誘わなかったら……あの時、時間通りに待ち合わせに行っていたら!」

「…………」

「ずるいよ……君ばっかり謝って……」

 コニーは決して全てをマーシュのせいにしない。

 全ての責任を他人に押し付けることができない。

 だからこそ、割り切れないのだ。

 全部マーシュのせいだと断じられるだけでも、相当楽になるはずなのに……。

 これを人は善良と言うのであろうが、ある意味で損な性格だ。

「コニー……」

 悲痛な声に耐えかねたのか、バニラはこちらへ向き直ってコニーに声を掛けようとした。

 しかし、今は鍵を開けて二人を助け出すことが先決だ。

 それはバニラも理解しているようで言葉に詰まり、しばしの間室内には沈黙が流れ、俺が錠前を弄る金属音だけが響いた。

 しかし、そんな居心地の悪い静かな状況も、一人の闖入者によって破壊される。

 突如、バニラが背を向けていた金属扉が開かれた。

「おい、コンフリー参謀が戻られていない! 偵察部隊を……」

「っ!」

 部屋に入って来たのは軍服を着たブラッディマンティスの兵士だ。

 明らかにブラッディマンティスの構成員ではないバニラを視認して、男は驚愕に目を見開いた。

 さらに、檻の前に俺の姿を認めた男は、慌ててホルスターの武器を取り出そうと試みながら、声を荒げて誰何する。

「き、貴様ら! 何者……ぉがっ!」

 しかし、男の言葉は途切れ、代わりに喉の奥から潰れたような悲鳴を絞り出した。

 敵がフラップ付きのホルスターから銃を取り出す前に、俺は咄嗟にナイフを放り出し素早くショルダーホルスターからS&W M10を抜いて発砲していたのだ。

 両手でがっちりとグリップをホールドし、男の体の中心を狙って二回トリガーを引く。

 4インチのバレルから放たれた二発の38口径弾は、的確に男の胸部を抉り臓器を破壊したことだろう。

 防弾チョッキも装備せずダブルタップを食らった以上、ダメージは確実に致命傷だ。

 ブラッディマンティスの男は信じられないものを見たような表情を浮かべた直後、たたらを踏んで後ろ向きに崩れ落ちた。

 

 

「バニラ! 無事か!?」

「だ、大丈夫!」

 俺の問いかけにバニラは慌てて立ち上がりながら返答した。

 俺が放った銃弾はバニラの肩口を掠めたが、彼に流れ弾を当てるようなミスはしていない。

 敵にも、一発も撃たせなかった。

 精々、驚いて尻もちをついたくらいで、バニラは五体満足だ。

 しかし、船内は俄かに騒がしくなった。

 金属の床を駆ける足音がそこら中の通路から響き始め、伝声管からは怒号と状況確認を求める声が飛び交ってくる。

 まあ、あれだけ派手に銃声を鳴らせば当然か。

 間も無く、敵兵が大挙してこの部屋に押し寄せてくるだろう。

「何事だっ! 格納庫、応答せよ!」

「ちっ、離陸させなさい!」

 ベルガモットとセイボリーと思われる声も、伝声管を通して俺の耳に届いてくる。

 厄介なことになったな……。

 実は、コニーたちの檻の開錠はまだ全く終わっていないのだ。

 情けない話だが、俺のピッキングスキルは全く発揮されること無く時間が過ぎ、とうとう敵と遭遇してしまったわけだ。

 だが……ここまで騒ぎを大きくしてしまった以上、もう音に配慮する意味は無い。

「コニー、下がれ!」

 俺はコニーを檻の奥の方へ下がらせると、彼女の檻の錠前に拳銃弾を三発撃ち込んだ。

 38口径弾は現代の基準からするとそれほど威力のある弾ではないが、至近距離から何発も食らっては、何の変哲もない錠前が耐えられるわけもない。

 ロック機構は吹き飛び、ゴツイ錠はバラバラに飛び散る。

 そして、俺が鉄格子を掴んで引っ張ると、コニーの檻は簡単に開いた。

「バニラ、コニーを……っ!」

 しかし、俺が最後まで言い終わる前に、『グランドフィナーレ』の船体が微細に振動し始めた。

 やがて、ビークルのものとは比較にならないエンジン音が船内に轟き、火災報知器のようなベルまで鳴り始める。

「くそっ……離陸か」

 もう時間が無い。

 さっさとコニーとマーシュを助け出して飛行船を脱出しなければ……。

 バニラがコニーの手を引いて檻の中から連れ出すのを横目に確認し、俺はマーシュの檻へと向き直った。

 しかし……。

「っ! ここだ! こっちに来い!」

「あそこだ! 侵入者が居たぞ!!」

 先ほど撃ち殺した男が入って来たのと同じ扉から、今度は数人のブラッディマンティスの兵士が雪崩れ込んできた。

 しかも、それぞれが拳銃を手に持ち武装している。

 俺は咄嗟にS&W M10の銃口を上げて、先頭の兵士に向かって発砲した。

「がっ!」

「くそぅ!」

「奴を殺せ!」

「撃て! 撃ちまくれ!」

 俺の放った銃弾は敵兵の一人の顔を貫き致命傷を与えたが、当然他の兵士たちも黙っていない。

 彼らは殺気だってこちらに銃を向け引き金を引いた。

 撃ち返したいところだが、俺は今ので六発目を撃ったので弾切れだ。

「そっちだ! 隠れろ!」

「わっ!」

「きゃ!」

 俺がバニラとコニーを半ば突き飛ばすようにして、マーシュの檻の後ろに押し込んだ。

 俺も滑り込むように檻の後ろへ身を隠すと、続けざまに轟いた銃声とともに、近くの床や壁に拳銃弾が着弾する耳障りな金属音が響く。

 射線は切れているものの、跳弾がこちらに飛んでこないとも限らない。

 結局、撃ち合いだ。

 何とも嫌な状況に陥ってしまった……。

 

 

 俺はS&W M10のシリンダーをスイングアウトし、エジェクターロッドを押して空薬莢を捨てると、ポケットから取り出したスピードローダーで六発の38口径弾を装填した。

 シリンダーを戻して再び銃を構えた俺は、マーシュの檻を遮蔽物として背中をぴったり付け、敵の銃火が止む瞬間をじっくりと待つ。

 敵の銃声の重なり方が弱くなった瞬間から一拍置き、俺は素早く遮蔽物から身を乗り出して拳銃を構えた。

「……っ」

 ちょうど当たりを付けた場所に体を乗り出している敵兵が居たので、俺はその男の体の中心を狙って二回トリガーを引く。

 俺は素早く体を引いて遮蔽物に身を隠したが、ターゲットの男が胸に弾を食らって横に倒れる姿を視界の隅で微かに捉えていた。

「くそぉ! 一人やられた!」

「野郎っ、ぶっ殺してやる!!」

 ブラッディマンティスの兵士たちは、相変わらず次々と銃弾を撃ち込んでくる。

 銃声から察するに、敵の数も徐々に増えているようだ。

 今の敵の数は十人強といったところで、向こうにはオートマチックを所持している者も居る。

 一人減らしたところで、どうにもならない。

 人数でも武装でも完全に負けている以上、奴らを全員撃ち殺して脱出することは不可能だ。

「くっ」

 俺は激しさを増した敵の制圧射撃に顔を顰めつつ、銃を握った手だけ遮蔽物から突き出して、ブラインドファイアで三発ほど発砲した。

 残念ながら、今のは命中しなかったようだ。

「さて、どうするか……?」

 後悔先に立たず……マジで白兵戦装備を充実させておくべきだったな。

 こんなことなら、SMG(サブマシンガン)でも調達しておけばよかった。

 せめてグレネードがあれば……。

 しかし、そんなことを考えていると、突如『グランドフィナーレ』が激しく揺れた。

「うぉ!」

「なっ」

「きゃあ!」

 俺の横で体を小さくするようにして身を隠していたバニラとコニーも、思わずと言った様子で声を上げた。

 近くの窓の外を見てみると、微かに明るくなってきた空に照らされる森が、徐々に下に移動している。

 ついに、『グランドフィナーレ』が上昇を始めたようだ。

 

 

「まずい……」

 このまま上空に連れていかれたら、完全に逃げ道が無くなる。

 こちらの武装は貧弱で弾も少ないので、この狭い船内で逃げながら戦っても必ず追い詰められる。

 そうなれば、いずれはブラッディマンティスの兵士たちに包囲され、俺たちは全員捕らえられてしまうだろう。

 俺がどうすべきか思案していると、俺たちが盾にしている檻の中から弱弱しい声が聞こえた。

「皆、ボクのことはいいから、逃げて」

「っ! 何言ってるの!?」

 コニーは思わずと言った様子で叫んだ。

 マーシュがわだかまりのある相手とはいえ、この状況で彼を見捨てて逃げるなど、彼女の良識からすれば考えられない話か。

 しかし……。

「早く! このままじゃ、皆……」

「くっ……」

 マーシュの絞り出すような声にバニラは悔し気に顔を歪めるが、この状況では他にどうしようもないのも事実だ。

 ブラッディマンティスの兵士たちが放つ銃弾の勢いは未だ衰えることがなく、どうやらライフルを持ち出してきた奴も居るようだ。

 俺たちが盾にしている遮蔽物は分厚い金属の檻なので、弾が貫通してくることは無い。

 しかし、檻の正面に回ってマーシュを助け出し、尚且つケガ人の彼を担いで脱出するのは、さすがに無理ゲーだ。

 そして、このまま時間が経てば経つほど、脱出は絶望的になる。

「……バニラ、コニー、下がれ」

「っ……」

 俺は近くの窓に拳銃を向けると、トリガーを引いてガラスに38口径弾を撃ち込んだ。

「ぅわっ」

「きゃ……」

 目の前で飛び散ったガラス片に、バニラとコニーは顔を背けつつ微かに声を漏らした。

 幸い、高度はまだそれほど高くなかったので、気圧差で急激に窓から吸い込まれて外に放り出される心配はない。

 そして、またしても拳銃のシリンダーが空になったので、二つ目のスピードローダーで弾を装填する。

 これが最後の予備弾……敵から奪ったスナブノーズの六発を合わせて、残弾数は十二発だ。

 ……やるしかないな。

「二人とも行くんだ。俺が撃っている間にその窓から逃げろ」

「でも……」

「早くしろ。もう弾にも余裕が無い」

「……わかった。コニー」

「…………」

 コニーは些か戸惑っていたが、覚悟を決めたバニラに促され、彼女は俯いたままコクリと頷いた。

 バニラはコニーの手を取ったまま俺を力強い目で見据えてくる。

 俺はバニラの視線に応えるように、フル装弾したS&W M10を握り直し、左手にも敵兵から奪った38口径スナブノーズを持った。

 

 

「よし、行け!」

 俺は二人に合図を出すと、素早く遮蔽物から身を乗り出し、両手の拳銃を乱射した。

 三発ずつの速射で放たれた銃弾は全部でたったの六発だが、二丁拳銃による制圧射撃だ。

 現代の火器の基準からすれば非効率的な戦術だが、少なくとも小火器がボルトアクションライフルとリボルバー拳銃くらいしか無かった時代においては、こうして二丁拳銃を用いて瞬間的な高火力を出す戦術というのは普通に用いられていたものだ。

 一瞬で至近距離に銃弾を立て続けに叩き込まれたことで、驚愕した敵兵は慌てて遮蔽物に身を隠した。

「死ねやぁ!」

 しかし、中には蛮勇を振るって攻撃に転じて来る兵士も居る。

 箱の上から身を乗り出すようにして一人の兵士が自動拳銃を連射してきたので、俺は慌てて遮蔽物の影に引っ込んだ。

 しかし、敵は堂々と姿を晒しているため、マーシュの檻の近くにある貨物の隙間からも奴の姿は丸見えだ。

 俺は箱の隙間からをS&W M10を突き出し、ゆっくりとトリガーを引いた。

 うまい具合に額に38口径弾を食らった男は、血とあまり見たくない内容物をぶち撒けて絶命した。

「コニー、早く外に」

「う、うん……」

 俺が再び遮蔽物に身を隠して視線を横にやると、ちょうどバニラがコニーの体を支えながら二人で船外へ這い出しているところだった。

 まだ弾は残っているので、もう一度くらい援護できる。

 俺は二度目の制圧射撃を行うため、遮蔽物から身を乗り出そうとした。

 しかし、次の瞬間……。

「ぁ……!」

「コニー!!」

 突如、『グランドフィナーレ』の後部で爆発が起こった。

 その衝撃で、コニーはバニラの手を離してしまい、不自然な体勢で湖へ落下してしまう。

「くっ!」

 バニラは迷わずコニーを追い、頭から水面へ飛び込んだ。

 無茶をしやがる……。

 二人とも、ケガをしなければいいが……。

 

 

「何だ!? 何が起こった!?」

「わかりません!」

「こ、攻撃です。地上のビークルから……」

「何だって!?」

「高度が下がっているぞ!」

 どうやら、誰かが『グランドフィナーレ』の後部エンジンを攻撃して損傷させたようだ。

 下に居る味方といえば、フェンネルとダッドリーとファーガスンだが……あの中で空中の『グランドフィナーレ』を攻撃できる武装を持っている奴といえば、フェンネルだ。

 恐らく、ドンパチで中の状況に気付いたフェンネルが、飛び立つ『グランドフィナーレ』のエンジンに長距離キャノンアームをぶち込んだのだ。

 まさかコニーの乗っている飛行船にそのような暴挙に及ぶとは思っていなかったが、中で撃ち合いが起こっている状況を見て取って、少しでも掩護するつもりでやったのだろう。

「ぅ、わわ……っ!」

 衝撃と船体が傾いたことで、俺から見える位置にブラッディマンティスの兵士が滑って来たので、俺はそいつの体に左手の38口径スナブノーズの残弾を撃ち込んで止めを刺した。

 スナブノーズのリボルバーは銃身の短さゆえに遠距離だと命中精度がかなり悪いが、室内戦の距離で三発も撃てば、使い慣れていない銃でも人体のどこかには普通に当たる。

 俺は弾の切れたスナブノーズを捨てると、再び外に視線をやった。

 エンジンを損傷した『グランドフィナーレ』は少しだけ下降したものの、どうにか航行は続けられるようで、また高度を上げ始めている。

 徐々に傾きも安定してきた。

「…………」

「グレイさん、行ってください」

 俺がマーシュの牢に意識を向けると、向こうも何となくそれを悟ったのか、彼は俺に退くよう促してきた。

 バニラとコニーを逃がすことには成功した。

 しかし、こんな状況にもかかわらず、ブラッディマンティスの兵士たちは相変わらずこちらに発砲してきている。

 混乱に乗じて錠を破壊してマーシュを助け出し、さらに彼を担いで逃げるなんて芸当は不可能だ。

 しばしの逡巡の後、俺は立ち上がった。

「マーシュ、すまない」

 俺は彼に詫びつつ、自分もバニラとコニーが脱出した窓に向かう。

 俺に動きがあったことを察知したのか、ブラッディマンティスの兵士たちはさらに拳銃やライフルを発砲してきたが、俺はS&W M10から残りの弾丸を彼らに向けて適当に撃って吐き出すと、そのまま一目散に窓へ走った。

 下を見ると、意外と遠い水面に少しビビったが、ここで時間を食っても状況は悪化するだけだ。

 拳銃をショルダーホルスターに仕舞い覚悟を決めた俺は、前世のテレビで見た災害時の飛び込み姿勢を思い出しつつ、湖の水面に向かって『グランドフィナーレ』から飛び降りた。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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