steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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15話 シュナイダー戦

 

 シュナイダーのビークル【マキシマム】は、金棒アームとオリジナルのアームパーツであるシールドアームSSを装備した接近戦仕様だ。

 原作ではとにかく闘技場にあるものを持ち上げて投げつけ、プレイヤーのビークルにも投げ攻撃を仕掛けてくる。

 ゲームにおけるシュナイダーの攻略法は二つ。

 一つは正攻法の殴り合いだ。

 シュナイダーが物を持っていないときに接近し、一発打撃を食らうのを覚悟でR3とL3を連打してこちらが先に持ち上げ投げる。

 投げた後は確実に打撃を二発入れるようにすれば、どうにか削り切れるはずだ。

 もう一つは裏技的な戦術だが、これが一番簡単で有効だ。

 岩やバスなどの大型オブジェクトを持ち上げたところを射撃武器で狙い撃ちすれば、運がいいとノーダメージで倒せる。

 何せゲームではシュナイダーを操作するのはAIだ。

 何度撃たれようとも、愚直に物を掴んで投げてくるのだ。

 ガトリングアームかその劣化版のボウガンアームで撃てば、闘技場内のオブジェクトが切れる前に簡単に倒せる。

 原作でシュナイダーと戦うのは、普通のペースで攻略すればビークルバトルトーナメントが最初なので、やり方次第でボウガンアームもガトリングアームも手に入る。

 そんなわけで、Sランクに恥じない強さを持っているシュナイダーにも、ゲームではどデカい欠陥があるのだ。

 

 

「っ!」

 シュナイダーは俺のチェーンガンの早撃ちを横ダッシュで躱しながら一気に接近した。

 広大なフィールドならこちらも離脱しながら射撃を続けられるが、そこは狭い闘技場内。

 接近を許してしまった。

 シュナイダーの【マキシマム】のアームに掴まれるのを回避した直後、コクピットの前を金棒アームの打撃が通り過ぎた。

 やはり現実ではゲームのようにワンパターンでは攻略できない。

 シュナイダーは格闘系の接近攻撃を主に仕掛けてくるが、大きめのオブジェクトを見境なく掴むような真似はしない。

 そんなことをすれば、俺のチェーンガンで撃ち抜かれるのがわかっているからだ。

 俺もシュナイダーのレバー操作と同時に放たれる金棒アームの打撃と掴もうと伸ばしてくるアームの先端を避け、時には打ち合いながら強化ブレードアームを振るう。

 ブレードが【マキシマム】のブレストパーツを掠めた。

 シュナイダー自慢のオリジナルブレストパーツ、スパイクブレストSの破片が飛び散る。

「くっ!」

 体勢を崩したところを一気に畳みかける。

 ダッシュで接近しながら、強化ブレードアームを真っ直ぐに突き出し、【マキシマム】のボディに向かって刺突を放った。

「ぐぉ!」

 間一髪、シュナイダーはビークルを斜め後ろに後退させながら俺のブレードに金棒アームを打ち付けた。

 シュナイダーの卓越した反射神経と操縦技術でのエンジンの大破は防いだものの、【マキシマム】のボディには深い傷跡が刻まれた。

「ちっ」

 俺はチェーンガンを掃射しつつも、一度【ジャガーノート】を後退させた。

 

 

 強化ブレードアームは無事だった。

 刀身の横合いから金棒アームを打ち付けられた。

 普通のソード系アームなら真っ二つに折れていてもおかしくないだろう。

 黒鉄とオリハルコンの強化はさすがだ。

 ブレードには傷一つ付いていない。

「待てや!」

 ブレードの状態を確認しつつも、俺は大型オブジェクトを遮蔽物にして身を隠す【マキシマム】をチェーンガンで狙い撃った。

 数発ずつバースト射撃のように打ち出される大口径の銃弾が廃車のバスを貫通し、ついには後ろに隠れた【マキシマム】を捉えた。

 シュナイダーは再び【マキシマム】を転進させ、別の遮蔽物に逃げ込もうとする。

「逃がすか……っ!」

 俺は一瞬、遮蔽物の影まで深追いしそうになったが、慌てて後方にダッシュして距離を取った。

 嫌な予感は正しかった。

 先ほどまで俺が顔を出していた位置に、大岩が投げ込まれたのである。

 あれが当たれば、さすがの【ジャガーノート】も質量をもろに受けて大きくバランスを崩してしまうところだった。

 最悪、そのまま立ち上がれずにタコ殴りだ。

「(いやらしいことを……)」

 遮蔽物で俺の視線を遮り、うまいこと大質量の投擲物を用意して、引きつけたところでぶつける。

 なかなかいい手だ。

 

 

「…………」

 シュナイダーは無表情を装っているが、今の奇襲を躱されたのは予想外だったようだ。

 いつもより表情が歪んでいる。

 横にダッシュで回り込んでチェーンガンで撃とうとする俺に対し、エルダーの戦闘スタイルを研究し対策を立てつづけてきたシュナイダーは見事に回避しつづける。

 これだけ弾速の速い掃討用の射撃武器を、現実でこうも躱し続けるとは、その技量は賞賛に値する。

「だが……これで、終わりだ」

 シュナイダーの【マキシマム】は、今度は堂々とバスの残骸を持ち上げた。

 そのままチェーンガンの狙いを定めると、円を描くように遮蔽物の裏に移動した。

 どうやら、あの大きなスクラップを投げつけるのとともに決着をつけるつもりらしい。

 普段の盗賊討伐なら、そんな挑発に乗ることは無いが、これはビークルバトルだ。

 受けて立とうじゃないか。

 俺は盾にしていた大岩の影から徐々に顔を出した。

 そのままシュナイダーの隠れた遮蔽物に回り込んで近づく。

 観客も固唾を飲んで見守っており、会場には【ジャガーノート】の僅かな駆動音のみが響く。

「っ!」

 上方から大きなスクラップの塊が投げ込まれた。

 シュナイダーの攻撃だ。

 俺のチェーンガンでズタボロになったバスの残骸だが、近距離から覆いかぶさるように投げられたので、ダッシュでの回避は間に合わない。

「せぃ!」

 俺の操作で強化ブレードアームが一閃し、かつては車のボディだったジュラルミンの板を真っ二つに切り裂いて叩き落す。

「なっ!」

 しかし、次の瞬間、俺は驚くべき光景を目にした。

 何と、残骸の奥からシュナイダーの【マキシマム】が姿を現し、真っ直ぐに突っ込んできたのだ。

 側面から回り込んでくると思っていたので虚を突かれた。

 急いでチェーンガンを連射するが、弾丸は【マキシマム】の前面に突き出されたシールドアームSSを穴だらけにしてズタボロにしただけだった。

 満身創痍の【マキシマム】が金棒アームを振りかぶる。

 完全に上を取られた攻撃なので、打撃力は相手の方が圧倒的に勝る。

「もらった!」

「ヤバっ」

 俺は咄嗟にハンドルを操作してビークルのボディを上方に向けた。

 ビークルのコクピットを上から叩き潰そうと打ち下ろされた金棒は、【ジャガーノート】のボディの装甲を斜めに叩く。

 普通のビークルならばボディをぺしゃんこにされて大破、良くても大ダメージを受けていただろう。

 しかし、ミスリル合金の傾斜装甲を装備した俺のビークルは、そんな攻撃ではほとんどダメージを受けない。

「何っ!?」

 驚くシュナイダーを尻目に、千載一遇のチャンスを得た俺は、そのまま強化ブレードアームを【マキシマム】のエンジンに刺し込み、ダッシュで体当たりして引き離した。

「がぁ!」

 衝撃に呻き声をあげるシュナイダーに、レッグパーツから崩れ落ちる【マキシマム】。

 黒煙を吐き出していた【マキシマム】もついには動かなくなった。

 俺は油断なくチェーンガンを向け続ける。

「が、はぁ! くそっ……」

 シュナイダーの戦闘継続が不可能だと判断した運営が試合終了を宣言した。

 俺の勝利だ。

 会場はその日一番の歓声に包まれた。

 

 

 

 

「はい、これがS級バトルライセンスよ」

 試合終了後、ビークルを修理工に預けて簡単なメンテナンスと弾の補給を頼んだ俺は、すぐに支配人のディーノのもとを訪れていた。

 彼は約束通り、俺にS級のバトルライセンスを渡し、シュナイダーとの試合を次々回のビークルバトルトーナメントまで行わないことを記した書類にサインした。

「あとこれ、今回のファイトマネーね。今回だけの特別マッチだから、報酬も特別よん」

 ディーノは俺に10万URを渡した。

 今回の対戦は、その希少性ゆえに大幅な観客増が見込めたのだ。

 プロボクシングなら日本タイトルマッチ並みの金の動きだが、まあシュナイダーと俺の対戦ならこんなものか。

「どうも。それじゃあ、俺はこの辺で」

「あぁ~ん、もう行っちゃうの~?」

 俺はディーノがまた面倒なことを言い出す前に、そそくさと事務室を退出した。

 

 

 選手控室に戻ると、既に俺のビークルの修理は終わっていた。

 煤や土埃は綺麗に取り払われ、一目では先ほどビークルバトルに出場したとは思えない状態だ。

「いやぁ、相変わらずグレイさんの【ジャガーノート】は凄いですねぇ。あんな激闘だったのに、装甲もほとんど傷ついていないし、エンジン系統にも何もトラブルは起こっていない。とりあえず燃料と弾薬の補給、それに駆動部のメンテナンスはやっておきましたよ」

「ありがとう」

 本当にナツメッグ博士さまさまだな。

 Sランクバトラーとド突き合いをして、装甲にもブレードにもほとんど消耗が無い。

 一応、博士のところに戻ったら診てもらおうと思っているが、大したトラブルは無さそうだ。

 それよりも、シュナイダーの【マキシマム】の方が問題だろう。

 事実、整備場の隅にはズタボロになった【マキシマム】が置かれている。

「シュナイダーは?」

「あ、先ほど怪我の治療が終わってお帰りになりました」

 自力で帰ったか。

 怪我が軽いようで何よりだ。

「それにしても……シュナイダーさんの奥さんって美人だったなぁ。でも、どっかで見たことあるような……それにシルヴィアって名前もどこかで……」

「へぇ、奥さんが迎えに来てたのか?」

「そうなんですよ! でも、シュナイダーさんは一人で帰れるだの、余計なお世話だの、そっけない態度で……」

 確か、シュナイダーの彼女のシルヴィアは、『ホテル・ジャコウジカ』地下の『バー・アフロディーテ』のウェイトレスだったな。

 実は彼女はミニゲームのビリヤードで対戦できる相手だったりする。

 しかも腕前は……。

「それじゃ、俺はそろそろ失礼するよ」

「あ、はい。次はいつごろお越しでしょうか?」

「いや、ちょっとわからないな……。もう少ししたらハッピーガーランドの方に行くかもしれないし」

「え? そうなんですか? せっかく、シュナイダーさんに勝ってSランクにもなったのに……。このまま何戦かこなして街の人にさらに顔を覚えてもらえば、間違いなくグレイさんは英雄ですよ」

 それがマズいからしばらく闘技場と距離を置こうかと思っているんだよ。

 まあ、闘技には出たとしてもだ……シュナイダーとの対戦はしばらくの間は絶対にしないからな。

 しかし、思った以上にビークルバトルというのは難しいものだ。

 ハッピーガーランドに行くのはいいが、やはりエルダーと戦うのはもう少し経験と鍛錬を積んでからにしようかな。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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