steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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16話 開発の進捗

 

 Sランクのバトルライセンスも手に入れ、ビークルの強化も一通り済んだ。

 そろそろハッピーガーランドに行ってみてもいいのだが、まだまだナツメッグ博士のもとでできることは多い。

 博士に未来の知識を伝授して、製作では雑用を手伝い、飯を作って家の掃除と片付けをする。

 そんな日々を過ごしている今日この頃だが、意外なことにそれなりの進展があるのだ。

 博士の脳みそはまさにダヴィンチのノートと同じで、同時並行でビークルのパーツ開発から研究に俺の家の設計や楽器製作をこなし、たまに何に使うのか訳の分からない機械を作りはじめる。

 そんな中で、最近になって試作品が完成したのが洗濯機だ。

 手回し式の洗濯機はこの世界にも存在している。

 しかし、電動の全自動洗濯機はナツメッグ博士に聞いたところ王都にすら無いとのことなので、二十一世紀の洗濯機をレポートに書いて説明した。

 すると博士は次の日には電動の洗濯機の試作品を完成させ、最近では博士レベルの技術屋が居なくても量産できるモデルの設計が終わったのだ。

 これは大勢の労働者を抱えており洗濯物の数も尋常ではない工場や鉄火場、それに大勢の使用人を抱える富裕層の家向けに販売するらしい。

 富裕層や旧貴族を中心に普及率が上がれば、次は庶民の家庭の番だ。

「グレイ、こいつはもしかするとトロットビークル並の発明やもしれぬぞ」

「ええ? まさかぁ……」

「確かに、従来の手回し式の洗濯機ありきのもので、ビークルほど特許料が莫大な額になる代物でもない。しかしの、早いところ生産体制を整えないと注文が殺到して大変なことになるのは確実じゃ」

 結果、ピジョン牧場以外へ販売する電動洗濯機は、ハッピーガーランドの工場へ生産を委託することに決まった。

 今後、ネフロなんかでも電力需要が飛躍的に高まりそうだけど、大丈夫だよな……。

「それよりも、お前さんは身を持ち崩さんようにの」

「え? トロットビークルの特許料などに比べれば、うちの取り分は微々たるものなのでは?」

「それでも相当な需要が見込める品じゃ。お前さんが今まで見たことも無いような額が舞い込むぞ」

「それって……闘技場でビークルバトルに打ち込むよりも、ってことですか?」

「当たり前じゃ。お前さんが言ったように、わしと山分けにしても……恐らく生産ラッシュが落ち着くまでに1億URは超えるの」

 10億円以上か。

 それはヤバいな。

 Sランクの俺は闘技場でファイトマネーを稼ぎまくるだけでも日本円にして数千万単位の年収が稼げる。

 何せ、現代のボクサーなどと違って、怪我などの不慮の事故を除き、ビークルの整備さえしっかりしていれば、年に百試合ほどはこなせるのだ。

 これだけでも高給取りだが、さすがにここまでの額になると喜びより不安の方が大きい。

「どうした? わしと折半するのが惜しくなったか?」

「いえ。しかし、そうなるとうちのセキュリティが心配ですね」

「ふむ、まあ金が入るのはもっと先の話じゃ。くれぐれも浮かれて豪遊などするでないぞ」

「ええ、気を付けます」

 

 

 洗濯機つながりで進展があった開発といえば、異世界ものの定番である石鹸類とリンスだ。

 石鹸自体はこの国でも量産されており、疫病対策に庶民も手洗いや入浴、それに洗濯に利用されている。

 現在、俺は自分用のシャンプーとして、石鹸と薔薇やラベンダーのような花から採った精油、それにジメット湿地奥のミツバチ園の農家から買った蜂蜜を少量混ぜたものを使っている。

 小説で見た製法だが、やはり日本のドラッグストアやド〇キで手に入る一般的なシャンプーとは違う。

 石鹸とは別の界面活性剤を使用した洗剤やシャンプーは、異国にはあるがこの国では手に入れるのが難しいとのこと。

 しかも、そのシャンプーに含まれる界面活性剤というのが、健康に全く悪影響の無い代物ではないらしい。

 それではだめだ。

 どうにか博士を説得して、シャンプーの開発にも着手してもらった。

 博士は何故俺がこうも別種の界面活性剤にこだわるのか理解できない様子だったが、俺が調合したリンスを見て態度を改めた。

 柑橘類の果汁を水で薄めただけの代物――俺の場合はレモンの皮を使う――だが、石鹸や石鹸系の自作シャンプーで髪を洗った後にこれを付けるだけで、髪のつやが段違いなのだ。

 特に喜んだのは、まずはピジョン牧場の奥様方だ。

 ネフロでもコニーとローズマリー親子にフライパンのおばさん、それに何故かディーノが感激していた。

 ……ひょっとすると、俺の知識で一番人に感謝されたのって、このリンスじゃないか?

「なるほどの。髪は女の命とも言う。それで洗髪のための専用石鹸にあれほどこだわっていたんじゃな。やはり、お前さんはまだまだ儲け足りんのか?」

「いやいや。リンスは特許でもないですし、ピジョン牧場の面々からお裾分けが増えたこと以外は、俺に得なんて無いですよ。無料奉仕じゃないですか」

「しかし、これを布石に洗髪石鹸を売りさばくんじゃろ?」

「……まあ、いずれは」

「ほれ見たことか!」

 別にいいじゃないですか。

 金はあればあるほどいいんだし。

 洗濯機の件で色々と吹っ切れたよ。

「まあ、わしがお前さんの知識をもとに界面活性剤の質を向上させるのはまだ先じゃ。量産できるようにするなぞ、もっと先の話じゃ。くれぐれも、まだ見ぬ金の夢に踊らされて、散財などするでないぞ」

 本当にナツメッグ博士は俺を何だと思っているのでしょう?

「ってか、利益は折半なんですから、俺が案を出せば出すほど博士も儲かるでしょう? そんなこと言って、本当は博士こそ小遣いが増えて小躍りしそうになっているんじゃないですか?」

「わしはお前さんのように、銀貨や金貨を机に積み上げて気色悪い笑みを浮かべたりはせんわい」

「なっ!? 見てたんですか……」

 軽い嫌味のつもりが、見事に反撃を食らってしまった。

 だって、仕方ないじゃないの。

 日本ではこんな額の金なんて縁が無かったんだから。

 ビークルバトルのファイトマネーと盗賊討伐の戦利品だけで、日本での俺の貯金なんて目じゃない額が貯まったのだ。

 少しくらい、ニヤけても罰は当たらないと思うのですよ。

 

 

「ところで、博士。前から気になっていたんですが、このピジョン牧場の電力供給ってどうなっているんです? 上下水道くらいなら博士が片手間に整備してしまいそうですけど、さすがに田舎の農村にしては電気系統の便が良すぎるような……」

「何じゃ、知らんかったのか? 裏の山の川から水路を引くついでに、水力発電機を設置しておる。それに風通しのいいところには風車をいくつも設置してあるからの」

 驚いたな。

 電気は自然のエネルギーで賄っているのか。

「いや、全てではないぞ。各家庭の灯りとビークルの整備くらいなら問題ないが、わしの研究のためには、たまに心許ないときもあるからの。ジェネレーターは用意しておる」

 まあ、それは当然だろう。

 一度に高出力が必要な研究や作業で同じラインからの供給に頼っていては、下手をすれば博士の研究のせいで牧場全体の電気がダウンすることもあり得る。

「いずれは、もっと環境や自然への影響が少ないエネルギーに変えていきたいものじゃな」

「……博士、一つ俺の世界にあった発電方法でここには無いものを知っているのですが……」

「何じゃと!?」

 博士が凄い勢いで食いついてきた。

 いや、核は教えないよ。

 ナツメッグ博士ならいずれ自力でアインシュタインのところまで到達するかもしれないが、俺は核兵器の開発を早めるつもりは無い。

 今回教えるのは太陽光発電だ。

 ただ、一つ問題がある。

「博士、この発電方法は俺の居た世界でも一番クリーンなエネルギーの一つとして重要視されていたものですが……ここでやるには問題があります」

「何じゃ?」

「俺の居たところで思ったほど普及しなかった理由は……まあ、俺の知るかぎりでは最新技術であるが故のコストです。もし、博士が実用化にこぎつけたとしても、生産に高い技術力を必要とする以上、真っ先に量産体制を確立するのは豊富な資金力を持つ巨悪です」

「…………」

 実際のところ、原作ではブラッディマンティスという最終局面で対立することになる強大な敵が、ナツメッグ博士の想像すら超える飛行船グランドフィナーレを開発した。

 ソーラーパネルは汎用的なエネルギーである電力を生み出す。

 敵からしても、非常に有用な技術だろう。

 この技術が敵に渡ったりしたら、それこそグランドフィナーレや強力な兵器の強化に使われてしまうかもしれない。

 事実、ブラッディマンティスはナツメッグ博士の工房から最新内燃機関の設計図を盗むという、罰当たりな行為を犯す。

 これは主人公が悪人ルートに進んだときに見られる話だ。

 この世界では俺が居るので、博士の工房に滅多なことをさせるつもりは無いが、それでもここのセキュリティは十分とは言えない。

「ソーラーパネルは洗濯機やリンスとは次元が違います。博士に知らせないのは世界の損失ですからお話ししますが、研究するにしても極秘でお願いします。量産はもう少し待っていただきたい」

「あい分かった。工房で試作品を作るにとどめておこう」

 ブラッディマンティスのことが全て片付いたら、ソーラーパネルはガラガラ砂漠にでも敷き詰めて運用したいものだ。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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