steam and gunpowder smoke chronicles 作:張り子のキメラ
夜のガーランド闘技場。
照明塔とアドバルーンの電飾がバトル会場を照らすなか、俺はフィールドの反対側の
滑らかにペダルを踏み込み、【ジャガーノート】の静音エンジンの回転を上げると、目敏く俺の動きを察知した対戦相手が長距離キャノンをぶっ放した。
「おっと!」
「その戦術はお見通しだ。もう慣れたぜ」
サーマルステルスとビークルの静音性をフルに活用した回り込みにもかかわらず、放たれたミサイル弾は正確なポイントに飛来し、【ジャガーノート】の僅かなエンジン稼働熱をロックオンしてきた。
直撃と爆風を躱すため、緊急スラスターを吹かしビークルを滑らせたことで、こちらは完全に向こうの視界に姿を晒したことになる。
ブースト時の廃棄熱を狙い撃ちにされたら堪らないので、俺はチェーンガンを点射しながら後退し、フィールド障害物の瓦礫の後ろへ機体を寄せた。
「フゥ……危ねぇ」
「ハッ! 仕留め損なったか。だが、それでこそお前だぜ」
俺の弾丸を躱しつつスクラップの影へ機体を滑り込ませた【ブルー・サンダー】のコクピットで、フェンネルが僅かに口角を上げた気がする。
彼とのバトルも久しぶりだが……相変わらず、厄介な相手だ。
向こうは完全な遠距離特化のビークルで、手の内は知り尽くしている。
それにもかかわらず、攻めきれないこの状況……まあ、フェンネルもこの辺りでは名の知れたビークル乗りだ。
一筋縄でいくわけもないか。
夏の夜の蒸し暑さと観客の熱気で半屋外の闘技場は不快指数がやけ高いが、俺は目標を見失い明後日の方向で起爆するミサイル弾に冷たい汗を流した。
数回のすれ違いと砲火の交差の後。
徐々に少なくなる残弾を確認しながら、俺はビークルのコクピットでボヤいた。
「……ったく。しばらくこの街を空けたんで、復帰戦を引き受けたが……安請け合いはするものじゃないな。面倒な相手だ」
「フッ、誉め言葉として受け取っておくぜ」
障害物越しに機嫌よさげな言葉を返してくるフェンネルに、俺はチェーンガンのブラインドファイアを見舞いつつ、カバー体勢から飛び出した。
そのままサイドスラストで回り込もうとすると……こちらが射線を確保して接近しきる前に、フェンネルの迎撃が撃ち込まれる。
爆発したような鋭い発砲音とともに見舞われた面制圧攻撃に、思わず俺は【ジャガーノート】のハンドルを切って回避動作に移る。
俺が盾にした車のスクラップにも数十発のバラ玉が撃ち込まれ、塗装の禿げかけたボディがズタズタに切り裂かれた。
最近、【ブルー・サンダー】の左アームに装備されたソードオフアームの攻撃だ。
猟銃の散弾とはワケが違う、手持ち式ならグレネードランチャー並の口径で放たれるキャニスター弾は、まともにパターンに捉えられればただでは済まない。
射撃装備にも関わらず精度が低く射程が短いというピーキーな性能だが、近距離で猛威を振るう強力な火器だ。
「くそっ、また厄介な武器を使いこなしやがって」
「ああ、思い切って装備を換装してみたが、大正解だったぜ」
元々、フェンネルのビークルは長距離キャノンアームのほかに、バトル時は左に砲弾アームを装備していた。
火力と射程を併せ持つ代わりに速射性と取り回しに難がある長距離キャノンのサイドアーム的な運用だが……そもそも、フェンネルの戦法は完全な遠距離特化で且つ一撃必殺に重きを置いたものである。
立ち回りやフォームが常に長距離キャノンを急所にぶち込むことを意識している以上、毛色の違う武装を扱う際にもその影響は避けられない。
盲目撃ちに近い牽制射撃が関の山だろう。
後退時に最後っ屁のような二連射を放たれたところで、高機動且つ重装甲のビークルに乗る俺レベルのバトラーにとっては、然程の脅威ではないわけだ。
正直なところ、フェンネルは中口径の砲弾アームの特性を活かし切れていなかった。
それがここに来て、この新兵器か……。
小型の射撃装備並の取り回しながら、近距離で絶大な威力を誇るソードオフアームの一撃は、まさしくフェンネルの戦法の弱点を完璧にカバーし得る代物だったわけだ。
しかし……。
「うぉ!」
俺はフェンネルが隠れた遮蔽物の横にあるスクラップ目掛けて、左アームからミサイル弾を撃ち込んだ。
新しい手札が切れるのは、こちらも同じだ。
今の【ジャガーノート】はチェーンガンの下にアンダーバレルの長距離キャノンを装備していており、その分火力も大幅に増している。
一撃必殺の正確さや破壊力では、フルサイズの長距離キャノンアームを主兵装とするフェンネルに敵わないが、こうした炸裂弾による範囲攻撃や火力を底上げする運用に関しては、俺のキャノンも十二分にその役割を果たしてくれる。
飛び散る破片と爆風を避けて思わずビークルを発進させたフェンネルに、俺は追撃でチェーンガンの連射を見舞った。
さすがに遠距離戦を得意とするフェンネルだけあって仕留めきることは叶わなかったが、圧倒的な火力と弾幕の前にフェンネルは一時的に防戦一方となる。
制圧射撃のなか、正確な点射で吐き出された数発の弾丸は的確に【ブルー・サンダー】のボディへ弾痕を穿ち、各部の制御系にいくらかダメージを与えることに成功した。
「チィ! お前ぇこそ、ポン付け装備のくせにとんでもねぇ真似しやがる」
「マルガリータのおかげさ」
体勢を立て直したフェンネルは素早くビークルをターンさせソードオフアームを発砲するが、既にカバー体勢へ移行していた俺は危なげなくキャニスター弾の雨を遮蔽物に隠れてやり過ごす。
その後も、俺は執拗にフェンネルを弾幕で追い詰めた。
フィールドに設置された火薬樽を撃ち抜き、爆炎も駆使して【ブルー・サンダー】を追い詰めると、観客席からも猛烈な歓声が轟く。
もちろん、反撃とばかりに正確な軌道でミサイル弾を放ってくるフェンネルの攻撃で、俺の【ジャガーノート】のボディもミスリル装甲に少なくない傷が付いたが、そこはやはり手数が違う。
機体のダメージと残弾・余力でいえば、状況は圧倒的に俺が優勢だ。
「くっ! 相変わらず、正確な射撃だぜ」
「お前さんもな。こっちはヒートシーカーの誘導を躱すシステムを積んでるんだぞ。偏差撃ちでムリヤリ誘導範囲に絞り込んでくるとか、どんな砲撃スキルだよ」
皮肉交じりに健闘を称えつつも、口調には余裕が無い。
そろそろ終わりが近い。
僅かでもハンドル操作をミスれば、フェンネルのビークルは俺の弾幕に晒され途端にスクラップだ。
俺も一度でもミスを犯せば、途端にフェンネルの必殺の一撃で逆転される。
お互い、気の抜けないラウンドだ。
そして……決着の瞬間は突然訪れた。
サイドスラスターでダッシュブーストを起動した【ブルー・サンダー】の動きが、一瞬だけ硬直するように鈍った。
度重なるダメージと酷使で、駆動系に負荷が蓄積していたのだろう。
「っ! チィ!」
トドメとばかりに俺がアンダーバレルのキャノンを発砲すると、フェンネルも即座に危機を悟り回避行動に移った。
下手な軌道でミサイル弾を撃ち込んでも、小口径の弾丸より弾速が遅いこともあり、ソードオフアームで迎撃されてしまう。
既にフェンネルもそれくらいの芸当を軽くこなす程度には、新兵器のソードオフアームを使いこなしている。
しかし、当然俺も向こうの対処は読んでいた
レーザー誘導も駆使してキャノンミサイルの軌道を修正し……狙うのは【ブルー・サンダー】の右レッグパーツだ。
「くそっ、避けられねぇ!」
さすがに不安定な体勢から、ソードオフアームの死角側には対処できなかったようだ。
辛うじて防御態勢を取った【ブルー・サンダー】は、着弾の衝撃と爆風でたたらを踏むように吹き飛び、そのまま闘技場の壁にぶち当たった。
「っぐぉ! …………くっ」
コクピットのフェンネルは呻き声を漏らしつつもビークルを復帰させようとハンドルを操作するが、既に脚部が完全に大破している以上、彼に成す術はない。
壮絶な砲火の応酬の結果、軍配は俺に上がった。
この射撃戦、俺の勝ちだ。
やがてビークルの損傷度合いからフェンネルの試合続行が不可能と判断され、俺の勝利が宣告されると、フェンネルはやや肩を落としてハンドルを手放した。
「……やるじゃねぇか」
試合後、俺とフェンネルの姿は闘技場近くの酒場にあった。
ガーランド闘技場のバトラーがよく出入りしている、比較的リーズナブルな酒場だ。
俺もフェンネルも試合を終えてしばらくは愛機の修理待ちなので、その間の暇をつぶしにやって来たのだ。
お互い、今日の健闘を称え合い、乾杯して最初のグラスを飲み干したあたりで、話は近況の報告へと移る。
「それで? あっさり帰ってきたが、王都はどうだったよ?」
「まあまあだな。俺の仕事は上手いこと行ったし、マルガリータもそれなりに勉強になることがあったようだ。だが……」
「ん?」
「それ以外は、取り立てて話のネタになることも無かったな。普通に向こうの技術街を視察して、マルガリータと観光に出かけて……博士も形式的な謁見を済ませてきただけだ。何か特別なイベントがあったわけじゃない。それに結局、研究機関の方からもお呼びは掛からなかったよ」
特に、博士が懸念していたのは、飛行船や飛行ビークルの軍事転用計画に参加を強要されることだったが、その心配も杞憂だった。
まあ、今思えば、王都にも科学者やそれを支援する有力者や政治家はごまんといるわけで、彼らからすればナツメッグ博士の介入は愉快なものではないだろう。
少なくとも、自分たちの派閥で功績や利権を独占したいなら、わざわざ博士に一枚噛ませるメリットは無い。
ある意味、いい具合に爪弾きにしてくれたわけだ。
おかげで然程の面倒事には巻き込まれずに済んだ。
「そうか。お前のことだから、てっきり向こうでもビークルバトルに出て、チャンピオンをぶっ倒してきたのかと思ったぜ」
「ははっ、さすがにそこまでの時間は無かったな」
王都までは、船旅を経ての遠出であったが、その滞在期間はかなり短いものだった。
ナツメッグ博士たっての希望により、謁見の翌々日には俺たちは王都を後にしたのだ。
この地域とは違う文化に、技術文明に……色々と新鮮ではあったものの、一通り見る物を見てしまえば、あとはもう用は無い。
あれ以上無駄に長居して、どこぞの馬鹿にダンディリオンの件を蒸し返されてもつまらないからな。
それに……マルガリータもどこか貴族街の雰囲気に息苦しさを感じていたようだった。
家名や爵位でマウントを取り合う慣習はともかく、すれ違う人間全てを見下していくスタンスの住民たちは、見慣れても好きにはなれない。
短期間の滞在ならともかく、長く住むにはちょいとストレスの多すぎる環境だ。
あの煌びやかな閉塞社会は、それこそたまの観光で行くくらいがちょうどいい街だろう。
そんな他愛の無いことを話している内に、土産話のネタも尽きてきたので、俺はフェンネルの近況に水を向けた。
「ところで、フェンネルこそ、俺が戻る頃にはもうランクを上げているものと思ったが……」
「おう。俺もちょいと前までそのつもりだったんだけどな……ここから昇格するには試合の数が少ないみたいでよ」
「ああ、なるほど。そりゃ、運が無かった」
最近のフェンネルは、自身がリーダーを務めるロックバンド『フェンネル&ブルーサンダース』の活動が軌道に乗り、ミュージシャンとしてますます忙しい日々を送っている。
音楽活動を優先すればその分ビークルバトルに割ける時間が少なくなり、当然ながら一定の期間に出場できるバトルの数も減る。
そういった事情もあり、フェンネルは今もAランクのままだ。
バトラーランクの昇格には、やはりどうしても所属選手としての評価、即ち闘技場への貢献度なんかも加味されるからな。
「本業が順調なのは、喜ばしいことなんだろうが……」
「ああ。それに関しちゃ文句なんざ無ぇ。お前とジョージに作ってもらった電気ギターや音響機器のおかげで、俺たちもここまで来れたんだ。ミュージシャンとして、音楽を何より優先するのは当然の話だ。……仕方ねぇさ」
とはいえ、フェンネルの実力やビークルバトルへの取り組みがSランクに相応しくないかといえば、そんなことはない。
俺と出会う前から、フェンネルは既に腕利きのビークル乗りとして名が通っており、3年前のトーナメントではバニラと激戦を繰り広げた。
フェンネル自身、ビークルバトルには相当熱心な部類に入るので、研鑽は全く怠っておらず、一足先にSランクへ昇格したサフランと比べても実力にそれほど差異は無いだろう。
キャリアも十分、知名度なんかも加味して、フェンネルの試合で動く賭け金などを鑑みれば……それこそ、彼の出る試合はガーランド闘技場の目玉と言っても過言ではない。
そういう意味では、運営がフェンネルのランクアップを渋るというのはおかしな話だ。
「それに……」
「ん?」
「いや、何でもねぇ。……とにかく、ランクの件はいいんだ。気にしねぇでくれ」
まあ、フェンネル自身が割り切っている以上、俺がこしつこく言い募る話でもないか。
ちょっと釈然としない話だが……。
微妙な空気になってしまったが、俺が追加の酒と料理を注文すると、フェンネルも切り替えるように口を開いた。
「ところで、今年のトーナメントの件は聞いたか?」
「ああ。確か……冬に延期になったらしいな」
この地域では、毎年夏頃に開催されているビークルバトルトーナメントだが、今年の開催は年末ごろになるらしい。
俺も最近になって聞かされた話だ。
「何でも、コミッショナー側の事情とか聞いたが?」
「ああ、どうやらそうらしい。王都方面から派遣される委員会メンバーの到着が遅れているんだと」
「遅れ? 何故に?」
「噂によると、船がトラブってるらしいぜ。海賊の増加やら突発的な航路の変更やらでよ」
「なるほど、な」
トラブルの原因には俺も心当たりがあるが……とはいえ、選手側にとってはありがたくない状況だ。
トーナメント常連の面子も、今年こそは出場メンバーに選ばれることを夢見ているビークル乗りも……そのほとんどが、例年通りのタイミングで開催される前提で予定を立てている。
機体の整備期間や季節に合わせた調整はもちろん、選手によっては他の仕事――場合によっては本業――の都合もある。
それが直前になっての開催延期……選手からすれば、いきなりそんな事を言われても困るだろう。
俺も今抱えている事業の状況次第では、今年は休場という判断に至る可能性もあった。
「ったく、これだからデケェ組織ってのはよ……。こっちには関係ねぇ都合で、いつも人を振り回しやがる。別にどこのお偉いさんが来ようが、俺ら選手にとっちゃどうでもいい話だぜ」
フェンネルにしてみても、この規模のスケジュールの狂いは容認できないものだろう。
遠方の公演と予定が被れば、それこそ彼は今年のトーナメント出場を見送るしかない。
まあ、海賊の件に関しては、俺も実害を受けた以上、同情の余地が無いわけでもないが……それでも元はと言えば、どこぞのお偉いさんを呼ぶだの何だの、余計なことをするからこういうザマになるのだ。
フェンネルの言う通り、今回のトラブルは運営側の都合に起因している。
委員会の幹部からは、バトラーの選抜基準をより公平にするためだの、判定に公正を期すためだの、色々と釈明があったらしいが……だからといって全ての失態が正当化されるわけではない。
安全且つ円滑にイベントを執り行うのが彼らの仕事である以上、開催が遅れという不手際については全く弁護できないな。
「観客だっていい迷惑だぜ。毎年、トーナメントの時期に合わせてハッピーガーランド行きを予定していた奴らも居るだろうによ……」
「まあ……今はどこの闘技場もグダグダだからな。ライセンス規制緩和の影響もあるんだろう」
「違ぇねぇ。近頃のバトルがマンネリ気味だからって、まったく妙なことばかりしやがって……」
何だか、終業後に居酒屋で愚痴るおっさんサラリーマンじみてきたが、フェンネルがこれだけネガティブな恨み言を並べるのも珍しい。
こりゃ、相当頭にきてるな。
……まあ、どうせ俺も今日はハッピーガーランドに泊まりだ。
時間ならたっぷりある。
たまにはヤケ酒に付き合ってやるのも悪くないだろう。
そんなことを考えながら、俺が追加の酒を注文しようとしたところで、バーの入口が開き艶のある女性の声が聞こえた。
「お待たせ~……あっ! ちょっと、二人とも。もう随分飲んでるじゃない」
現れたのは、ガーランド闘技場に所属するSランクバトラー、サフランだった。
彼女は外出用のスプリングコートを羽織っているので、バトル時のエロ衣装より露出度は下がっているが、顔はいつものマスクで隠している。
まあ、ここは闘技場の関係者やファンが多く来店するからな。
下手に素顔を晒すわけにはいかないか。
「あ~、悪いなサフラン。先に始めてるよ」
「何だ、来たのか……別にお前なんぞ待ってねぇがな」
「ご挨拶ね、フェンネル。まったく、相変わらずなんだから」
不愛想なフェンネルにサフランは呆れたようにため息をついたが、特に気にした様子もなく軽く肩を竦める。
「ほら、私たちも混ぜなさい」
「どーぞどーぞ」
「……勝手にしろ」
愛想よく席を勧める俺とは対照的にフェンネルは相変わらずの仏頂面だが、色っぽく口角を上げたサフランはボックス席へ移動し俺たちを手招きした。
よく見ると、彼女は後ろに数人の男女を連れている。
なるほど、この人数はカウンターには収まらないな。
俺たちもボックス席に移動するとしよう。
「さて、それじゃあ二人にも紹介するわね。今度、うちに新しく所属することになったバトラーたちよ。ジーニアスは本業が忙しくなってなかなかバトルに出場できないし、スドウは流れ者でどこか行っちゃったからね。それに、エルダーも……」
思わず、彼の名前を口走りかけ、サフランは慌てて口を噤んだ。
俺たちはエルダーことダンディリオンの事情も、サフランが彼に師事していたことも知っているが、こんな場所で敢えて話題にするような内容でもないからな。
「とにかく、皆それぞれ期待の選手たちよ。仲良くしてあげて」
そんなサフランの言葉を皮切りに、まずは金髪の褐色ギャルが口を開いた。
「やっほー、グレイっち! あーしはラベンダー。前は別の街の闘技場に居たけど、こっちの支配人にスカウトされて所属を移したの。サフランと同じセクシー路線でもっと若手のバトラーが欲しいんだって。ウケるよね~。キャハハ! あっ、そういえば……グレイっちの奥さんは整備士なんだって? じゃあ、サフランは二号さん? アハッ! マジウケるんだけど!」
ウケねぇよ!
何て不吉な事を言う女だ。
まあ、確かに……彼女のビジュアルならガーランド闘技場でもすぐに人気が出るだろう。
長身でスタイル抜群の金髪美人ときて、健康的な褐色肌を晒したハイレグの衣装も彼女の若々しい肉体の魅力を最大限に引き立てている。
とはいえ、サフランを露骨にオバサン扱いした件に関しては、仮面の奥から放たれる冷たい殺気が、この後の展開を物語っている。
ラベンダーの奴、次のバトルが終わっても無事でいられるといいな。
んで、二人目は……。
「拙者、コリウスと申す。グレイ殿のお噂はかねがね。この国最強の呼び声も高い方とお会いでき、光栄の極み! それと……貴殿は拳銃の名手であるとも聞いている。得物は違えど、武の高みを目指す志は同じ! どうであろう? 是非、拙者と生身での“死合”も……」
どうであろう……じゃねぇよ!
見た目は騎士然とした穏やかそうな好青年だが、メンタルは完全に血に飢えた戦闘狂ときた。
こいつは下手に関わっちゃいけない類の生物だ。
そして、最後は……何故かこのスチームパンク世界において、現代風のセーラ服タイプの制服を着た少女だ。
「アヤミです。素敵なお姉さまを探してビークルで旅をしております。この闘技場には成り行きでしばらく所属することになりました。……ところで、グレイサン。アナタハ、サフランお姉さまのナンナノカシラ?」
……またキャラの濃い連中が集まったな。
まあ、何はともあれ、ガーランド闘技場に新しい風が入るのはいいことだ。。
俺はネフロ闘技場出身の選手だが、ハッピーガーランドのトーナメント統一チャンピオンでもある。
何より、回りまわってこの国のビークルバトル業界が盛り上がるなら、俺としても悪い気はしないからな。
そんな具合に、サフランの音頭で俺たちは日付が変わるまで飲み明かした。
因みに、会計はサフランの巧みな誘導により、またしても俺持ちだったが……ラベンダーのザル具合はさすがに誤算だったな。
一晩の飲み代とは思えない額のユーロッチが飛んでしまった。
ガーランド闘技場 新バトラー
ラベンダー(A)
長身でダイナマイトボディの金髪褐色ギャル。抜群のスタイルに際どいハイレグ衣装と、サフランの路線を受け継ぐセクシー系のバトラー。見た目と言動の軽さとは裏腹に、ランクは高くビークルバトルの腕は確か。因みに酒豪。
【ボンバイエ】
パワーと出力に全振りの格闘戦仕様ビークル。的がデカく機動力に乏しいが、強力な近接武器を搭載し、対戦相手を豪快に叩き潰す戦法を得意とする。カラーリングもオレンジを基調としたド派手なデザイン。
装備:ウォーハンマーアーム 投擲強化アーム
コリウス(B)
見た目は騎士然としたイケメン、しかし生粋の戦闘狂。武者修行のため各地の闘技場を渡り歩いており、グレイやサフランを始めとする強者と手合わせするため、一時ガーランド闘技場に所属する。
【ファランクス】
バトルジャンキーな操縦者の気質とは裏腹に、メインの戦法は多弾頭ミサイルの弾幕で動きを封じ、スピアの刺突で仕留める堅実なもの。ボディの色はホワイトグレー。
装備:スピアアーム ミサイルアーム
アヤミ(D)
何故か現代の制服を着た謎の少女。実はサフランのことが……。
【ナイトレイス】
黒のカラーリングに大鎌を装備した、死神を彷彿とさせる出で立ちのビークル。操縦者が低ランクで戦歴が短いこともあり、その正体は謎に包まれている。
装備 サイズアーム ノーマルアーム