steam and gunpowder smoke chronicles 作:張り子のキメラ
二〇〇五年にアイレムソフトウェアエンジニアリングから発売されたPS2のゲームソフト『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット』。
知る人ぞ知る名作だ。
産業革命期のパラレルワールドが舞台で、このゲームの世界では汽車や自動車の他にトロットビークルという二足歩行の乗り物が普及しており、戦闘、土木、農業、警察、消防とあらゆる局面で活躍している。
バンピートロットはそうした機械技術の発展に翻弄される人間たちのドラマを描いた作品だ。
主人公は自らのトロットビークルを駆り、仲間たちとの出会いやトラブルを経て激動の時代を駆け抜けることになる。
そんなゲームの中でしか目にしたことの無いロボットが、俺の目の前を闊歩しているのだ。
これは異世界転移の線が濃厚になってきたぞ。
確かに、トロットビークルのような四メートルの搭乗型ロボットを作ることは、現代の地球の技術でも可能だろう。
バランスや立体的な挙動においてある程度のクオリティを確保するためには、機体のあちこちにセンサーやら何やらを搭載してコンピューターで制御することが必要だろうが、それでもあの大きさの重機と考えれば現代の科学で実現不可能な代物ではないはずだ。
しかし、現行の車両と重機の性能を鑑みれば、どう考えてもわざわざロボット型の汎用重機を製作する意味は無い。
二足歩行の乗り物の開発と重機の量産ではノウハウの蓄積量が違う。
コスパが段違いなのだ。
あんなものが二台も目の前に居る以上、これはバンピートロットの世界かそれに似た異世界に飛ばされたと考える方が自然だろう。
つい流れで身を隠してしまったが、このまま隠れていても始まらないな。
ビークルに乗っている彼らに話しかけてみるべきだろうか?
バンピートロットの世界はヨーロッパ風の街並みだったが、英語なら通じるかな。
生憎、日本語と英語が通じなかったらお手上げだ。
いや、待てよ。
バンピートロットの世界はRPGとはいえ魔物は居ない。
フィールドの敵は全て盗賊団のビークルだった。
こんな山奥の集落に住んでいる彼らは、果たして日向を歩いている人間だろうか?
奴らが盗賊だった場合、接触すれば俺は確実に詰む。
何せこっちはスウェットにパーカーの丸腰だからな。
まずはビークル乗りたちの話が聞こえないか試してみよう。
俺は木の陰に隠れながらゆっくりと集落の方に近づいた。
「なぁ、お頭はまた寝てんのか?」
「ああ、相変わらずだ。まぁ、ここ最近はいい獲物が掛かってねぇからな。頭領もやる気も起きねぇんだろうよ」
「そうだなぁ。たまにはガツンと稼いでみてぇ。ネフロに向かう商隊でも通らねぇかな」
「無理だろ。俺たちはそういう競争率の高いところは避けてんだ。一回の襲撃の実入りが少ないのは、今に始まったことじゃねぇだろ」
「だよなぁ。その割に、痕跡を消せだの何だのとお頭はうるせぇし……」
「馬鹿! そりゃお前、生存戦略だ。うちみたいな看板の無い弱小が、襲った奴を生かして帰してみろ。あっという間に警察に潰されるぞ」
何故かはわからないが、この世界の公用語は日本語のようだ。
それにしても……今の会話だけでもわかったな。
こいつらは盗賊だ。
バンピートロットに登場する盗賊団の中には、キラーエレファント団然りデザートホーネット団然り、主人公が友誼を結ぶ連中も居ることには居るが、こいつらに話が通じる可能性はゼロに近い。
何せ、襲った相手を皆殺しにしているような奴らだからな。
そもそも、トロットビークルの存在やゲームに登場した街ネフロの名前は確認できたものの、どこまでが原作と同じか分からない状態だ。
知っている盗賊団でも、問答無用でぶっ殺すことを前提に動かないと、こちらが危機に陥る可能性がある。
さて、どうするか?
丸腰の俺が突っ込んでも返り討ちに遭うのは確実だ。
一旦、森から脱出して警察に応援を頼むか?
いや、原作では警察にも色々と腐ったところがあった記憶が……。
そもそも、盗賊団はビークルでアジトの周辺を巡回している。
果たして見つからずに離脱できるかどうか……。
発見されて追われたら確実に捕まる。
何せこっちは徒歩だ。
しばらく思案に耽った俺は、とりあえず盗賊のアジトに潜入してみることに決めた。
何も盗賊全員を暗殺する必要は無い。
周辺の地図と食料物資でも調達できれば幸いだ。
あとできれば武器の一つでも欲しいところだ
可能ならばビークルを一台、無理ならナイフの一本でも分捕ればそれでいい。
まず手始めに手前の木造の小屋に侵入しよう。
窓から覗いた木造家屋の中は、どうやら食堂かラウンジのようだ。
大きめのテーブルが二脚に椅子が十数脚、薄汚れたキッチンが奥に見える。
椅子の数から察するに、盗賊の規模は十数人か。
多いのか少ないのかわからんな。
ダイニングに居るのは一名。
髭面のいかにも盗賊といった風貌の男だが、どうやら休憩中のようだ。
椅子に座って居眠りをしている。
俺は先ほど拾ったこぶし大の石を握り締め、慎重に家屋に忍び込んだ。
建てつけが悪いのか、扉はドアノブを捻る必要も無く簡単に開いた。
そのまま足音を立てないように身を滑り込ませるが……。
……キィ。
「んぁ?」
「っ!」
ドアが閉まる拍子に軋んだことで、眠っていた盗賊が目を覚ましかけた。
まずい。
俺は覚悟を決め、身を起こして盗賊に襲い掛かった。
「なっ! てめっ……」
そのまま椅子ごとひっくり返す勢いでタックルをぶちかまし、喉を掴んで後頭部を床に叩きつける。
幸い、体格は俺の方が上だ。
マウントポジションを取れば、そう簡単に状況は覆されない。
「ヴぇ……」
そのまま首を絞めながら、既に後頭部から大量の血を流している盗賊に追い打ちを掛ける。
俺は石を握った右手を盗賊の頭に向かって何度も振り下ろした。
「うぎっ! かっ、やめっ……」
殺さなければ自分が殺される。
そう自分に言い聞かせて恐怖を原動力に殴り続けたものの、さすがに現代の日本で生きてきた人間だけに、すぐに適応することはできない。
無我夢中で殴り続け、盗賊の頭が原型を留めない状態になっても、さらに石を振り下ろし続けた。
「くっ……はぁ……はぁ……」
ようやく、盗賊の全身から力が抜けたことに気が付いた。
完全に死んでいるはずだが、警戒を解くのは怖い。
俺は右手で石を握りしめたまま、どうにか左手を盗賊の喉から外す。
首を絞めて押さえつけることに集中し過ぎたせいで、引き千切ってしまった喉の肉塊が手に付いてきた。
「…………うぇ」
派手に吐くのは堪えたが、俺はしばらく血の匂いに酔ったように茫然とした。
気を取り直して家探しを始めた俺は、まずはキッチンを探った。
食料は意外と充実している。
商人から奪ったのか、森の恵みなのか……。
とりあえずは日持ちのする干し肉と固く焼しめたパンを中心に貰っていこう。
果物ばかり詰めて、森を出る前に腐ったら元も子もない。
同じ家屋内で拾った鞄にいっぱいになるまで詰める。
マッチと金属製の水筒と錆びた包丁を失敬して、最低限の物資は手に入れた。
「さて、これでおさらばしてもいいんだが……」
あとは清流を見つけることができれば、野垂れ死には避けられるはずだ。
しかし、肝心の地図が無い。
確かに、これ以上アジトに居続けるのは危険だろう。
侵入がバレる前に離れた方がいいのはわかっている。
しかし、人里の方角すら分からずに森へ戻るのは不安すぎるのだ。
窓の外に見える一番立派な家屋が頭領の居る建物だろう。
地図やこれ以上に有用な物資があるとすればあそこだ。
しかし、潜入には大きなリスクが伴う。
「……いや、やるしかない」
俺は既に盗賊の仲間を殺している。
報復の危機を避けるためにも、可能ならば頭を始末しておいた方がいいだろう。
他に見張りが居たら諦めればいい。
とりあえずは偵察だ。
第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。
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是非、読みたい! 早く晒せ!
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要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
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そんなことよりお腹が減ったよ。