steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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3話 盗賊のアジトに潜入2

 俺の心配は杞憂だったようだ。

 頭領の家には見張りも居らず、簡単に侵入できた。

 先ほど話を盗み聞きした盗賊も言っていたように、ここら辺は競争率が低く無法者とはいえ腑抜けが多いのだろうか?

 襲った連中から奪ったと思わしき貴金属や貨幣が、家の一階にちょいちょい放置されている。

 盗賊のアジトにしてはシケてるな。

 足音を立てないように家の奥へ進み、デカい鼾が聞こえる部屋に慎重に近づく。

 包丁を構えてドアをゆっくりと開けると、ベッドの上で闖入者に気付く素振りも見せず呑気に大鼾をかいて眠る男を発見した。

 この男が盗賊のボスだろう。

 足音と気配を殺して頭領の部屋に侵入した俺は、迷うことなく頭領の心臓に包丁を突き立てた。

「っ! ぶぐぅ!」

 ベッドの近くにあったクッションを顔に押し付け、俺自身も馬乗りになって頭領の動きを封じる。

「ぶぇぼぉ……」

 しばらくは弱々しくもがいていた頭領だが、包丁をさらに捻じると全身の力が抜けた。

 念のため傷を広げながら包丁を引き抜き、男をひっくり返して延髄を抉っておく。

「さて、地図は……」

 二回目ともなると、俺の復帰も早かった。

 

 

 睨んだ通り、頭領の家からは周辺地図が見つかった。

 ビークルに乗った盗賊の話にもあった通り、ここはネフロネフロの街の近くの森林地帯らしい。

 厳密に言うと、ネフロの東にあるワグテール渓谷、その東のピジョン牧場のさらに東の森だ。

 ゲームではピジョン牧場より東のエリアへは行けなかった。

 ここは原作の舞台から僅かに外れた位置にある森ということだな。

 バンピートロットのゲームは主人公がネフロ西のウミネコ海岸に漂着したところから物語が始まる。

 ネフロはRPGで言うところの『さいしょのまち』だ。

 大都会には程遠いが、ここら辺一帯では一番大きな設備の揃っている歴史のある街である。

 まずは森から脱出してネフロを目指すか?

 いや、普通の人間ならそのルートを取るだろうが、俺にはバンピートロットをやり込んだ経験がある。

 目的地はピジョン牧場だ。

 ただ近いからというわけではない。

 あそこには、トロットビークルを発明した世紀の天才、ナツメッグ博士が居る。

 彼なら俺の状況について何かわかるかもしれない。

 原作でそれほど叡智チートや世界の理から外れた知識の描写があったわけではないが、少なくともこの世界で一番頭がいい人物なのは確かだ。

 何せ、紙飛行機からプロペラ機ビークルを発明してしまう人だからな。

 よし、アジトを漁ったら西へ向かうとしよう。

 

 

「おっ、これは……」

 頭領の部屋では思いもよらぬ収穫があった。

 机を漁っていたら、引き出しから重量感のある金属の塊が出てきた。

 黒光りする筒に回転弾倉、クルミ材のような硬質の木製グリップはよく手に馴染む。

 リボルバー拳銃だった。

 バレルの長さは約四インチ。

 シリンダーをスイングアウトさせるサムピースが前に押し出す形状だったことからS&W社製のリボルバーと同じ機構の銃だと思われる。

「全体的な形状で、一番近いのはS&W M10かな」

 S&W M10はミリタリー&ポリスなどとも称され、ダブルアクションの現代リボルバーの原点となった拳銃だ。

 原作では、ビークルの武装に関してはミサイルからガトリングまであったが、人間が携行する銃器はデリンジャーくらいしか登場しなかった。

 このリボルバーが小型の銃器として最新のものかどうかは分からないが、少なくとも今の俺にとっては懐にあってこれほど心強いものは無い。

「いただきだ」

 引き出しの中にあった弾丸をシリンダーに込めなおした。

「さて……」

「ボス! 大変です、エミリオの奴が食堂で……」

「っ!」

 突如、家に踏み込んできた盗賊と俺はしばし見つめ合う形で固まった。

 家の入り口からは頭領の死体が横たわるベッドは見えないだろうが、この状況を口八丁で乗り切るのは無理か。

「おい! 誰だ、てめ……」

 俺は覚悟を決めて、男に向かってリボルバーを発砲した。

 両手でグリップをがっちりと握り締めて、相手の胴体に向かって二発。

 人間を確実に無力化する基本的な射撃動作だ。

「……ごふっ」

 血を吐きながら倒れた男に近づき、頭にもう一発撃ち込んでとどめを刺した。

 

 

 閉鎖空間で銃を発砲したためちょっと耳が痛いが、俺は堪えて拳銃をリロードする。

 サムピースを押してシリンダーをスイングアウトし、エジェクターロッドを押して机の上に弾丸をばら撒いた。

 震える手でどうにか空薬莢を除けて、弾頭の付いている弾丸を拾い、再度シリンダーに弾を込めなおしてゆく。

「ああ、くそっ!」

 手が滑って弾丸を床に落としてしまうが、どうにか引き出しの弾丸をさらにつかみ出してリロードを終えた。

「逃げなきゃ……」

 そのまま走って飛び出そうとするが、先ほど銃声で盗賊の仲間が集まってきている可能性を思い出し、どうにか思い留まった。

 俺の武装は拳銃一丁に先ほど頭領の部屋から持ち出したちょっと品質の良さそうなナイフが数本。

 どう考えてもビークル相手に正面から戦えるものではない。

 その時、俺は頭領の机の隅に一つの鍵を見つけた。

「車のキー、いやトロットビークルのキーか」

 俺は何を考えているんだ?

 確かに、こちらにもビークルがあれば装備の上では互角だ。

 しかし、俺がビークルを操縦したのはゲームの中での話だ。

 いきなりの戦闘、それも荒事に慣れている盗賊団相手にどうにかなるものなのか?

 逃げるにしたって、まともにビークルを操縦できなかったらお終いだ。

「おい、今のは……」

「何が起こっている!?」

「っ! 死んでる! 撃たれてるぞ」

「誰がやった!?」

 いや、やるしかない。

 ここに居たら、どちらにせよ捕まって殺される。

 ビークルの場所は確認してある。

 この家に入る前に、裏に停めてあるのを確認した。

 きっと、あれが親分のビークルだろう。

 俺はせめてもの時間稼ぎに部屋のドアに鍵を掛けると、ビークルのキーを引っ掴んで窓を開けて家の外に飛び出した。

 

 

 頭領のトロットビークルはゲームでも慣れ親しんだ汎用型のものだった。

 四足や車輪を装備したものや超大型や船型のマシーンもビークル扱いされることがあるのだが、一番普及しているのはラズベリーリーフ社製『カモミールⅡ』の二足歩行タイプだ。

 この『カモミールⅡ』は代表的な汎用ビークルで、ボディパーツとレッグパーツを基礎に、左右のアーム、ブレスト、バック、風防の七種類のパーツの結合規格が統一されており、それぞれのパーツを組み合わせることでカスタマイズできる。

 ゲームでは主人公はもちろん、主要な登場人物のほとんどがこの『カモミールⅡ』をベースにしたビークルに搭乗している。

 しかし、フィールドの盗賊団の敵ビークルは、ほとんどが独自に改造した規格で生産しているのだ。

 例えば、ネフロ周辺のキラーエレファント団のビークル『ルースター』は、砲台と簡易シールドのみを装備した低コストでの大量生産を優先した規格で配備されている。

 実際に『カモミールⅡ』ベースのビークルに搭乗しているのは、ゲーム内の決闘システムのようなものであるビークルバトルで戦える親分のみである。

 この世界がどこまで原作に沿っているかはわからないが、少なくともこの盗賊団は汎用型ビークルを使用しているようだ。

 トタンの建物から出撃してきたビークルも全て汎用タイプだ。

 こいつらは他の仕事に従事していたビークル乗りの寄せ集めの盗賊団ということかな。

「どこだ!?」

「侵入者を探せ!」

 俺はブレストパーツに足を掛けてよじ登りコクピットに潜り込むと、先ほどかっぱらったキーを捻った。

 重厚なエンジン音が鳴り響き、ついにトロットビークルが稼働した。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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