steam and gunpowder smoke chronicles   作:張り子のキメラ

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時系列がはっきりしているので話数が付いていますが、内容は閑話に近いものになります。


67話 エレキギター開発の進捗

 

 セントジョーンズ卿と面会した数日後。

 俺が身支度を整えてロブスター亭を出ると、ちょうどバニラとコニーも外出するところだった。

 バニラの【カモミール・タイプⅡ】には大荷物が積まれており、これから二人がガラガラ砂漠を渡る予定なのはすぐにわかった。

 夫婦水入らずの旅への出発を、俺は笑顔で見送った。

 軽い調子で俺に手を挙げて挨拶するバニラとは対照的に、コニーは何やらバツが悪そうな表情だったな。

 セイボリー曰く、昨日のコニーはウキウキとした様子で砂漠の装束をトランクに詰めていたらしいが、まさかヘタレなバニラに業を煮やしたコニーが逆夜這いを……?

 あり得るな。

 再び砂漠を超えてネフロ方面へ向かうのならば、バニラたちはオアシスを通ることになる。

 灼熱の太陽が沈み、冷え切った砂漠を進んでオアシスに辿り着いた二人は、そのまま情熱的なアラビアンナイトを……。

 まあ、あの二人がくっ付くのなら、俺としては大歓迎だ。

 バニラが歪まなければ、今後のブラッディマンティスとの戦いは大分楽になる。

 戦力的な面でも、楽団メンバーたちのメンタルの面でもな。

 スームスームのときのような修羅場は……無いよな?

 俺は不吉な考えを振り払うようにして、今日の用事を片付けにハッピーガーランド南地区へ向かった。

 

 

「よう、ジョージ。調子はどうだい?」

「お、グレイさんか。ぼちぼちだな」

 ハッピーガーランドのビークル整備場であるシティモーターズの二階。

 階段を上ると気だるげな雰囲気の整備工が寛いでいるのが目に入った。

 原作をプレイした人間なら、この場所で思い至るはずだ。

 このジョージという男こそ、音楽会に革命を起こす人物であり、フェンネルの夢を叶えてくれる発明家だ。

 フェンネルが求めるパワフルな音楽を実現するためのエレキギターは、このジョージが開発してくれるのだ。

「進捗は?」

「ああ、設計は一通り終わったよ。電源と駆動系以外は、もう試作品のパーツ作製を始めている」

 俺はかねてからジョージにエレキギターの製作を依頼している。

 原作では、フェンネルが電車を見て「あんなデカいものを動かせるのなら、どうにかしてギターに使えばスゲぇことに……」くらいの着想で話が始まっていた。

 バニラもその話を真に受けて、電気でギターをパワーアップという発想だけで、楽器店からジョージに行き着いて話を持ち掛けることになる。

 さすがにそんな思いつきでまともなエレキが出来るわけがないと思い、このサブイベントは俺が担当しているのだ。

 やはりというか、一瞬でエレキの設計から製作が終わるわけもなく、かれこれ研究には一年ほどの月日を費やしている。

 そういえば、原作ではエレキの開発を終えるとジョージに作ってもらえるレッグパーツ『人脚ノーマルM強化型』の方が主語だった気もするな。

 このパーツは整備場でいつでも開発できる『鳥脚ノーマルM強化型』の上位互換だ。

 どちらも通常使用のレッグパーツと比べてスラスターダッシュの速度が格段に上がる優れものだが、『人脚ノーマルM強化型』は『鳥脚ノーマルM強化型』と変わらないスピードを持ちながら重量が上だ。

 ボディパーツとレッグパーツの総重量で積載量が変わるゲームのシステム上、『人脚ノーマルM強化型』の方がより重量のある武器やブレストパーツやバックパーツを積めるのだ。

 まあ、今の俺にとっては完全にエレキが主語だけどな。

 そもそも俺の【ジャガーノート】のレッグパーツは既に『人脚ノーマルM強化型』なので、わざわざジョージに作ってもらう必要は無い。

 俺はただフェンネルを驚かせてやろうと、彼に内緒でエレキの開発を進めてきたのだ。

 あわよくば、電子楽器をより一層広く普及させようと思っていたり……。

 まあ、俺は研究費を出すだけで、今のところジョージに任せきりだが。

 因みに、ジョージの給料を含む研究費は、高級リンスの売り上げの一部で難なく賄えるものだった。

 富裕層向けの消耗品は本当にボロい商売だな。

 

 

「それで、だ。グレイさんが言ってた、音を電気信号に変えて半導体スピーカーで出すってのは、理論上では可能だ。そっちも合間にいくらか試作してみた。試したんだが……」

 当然ながら、最初に俺が提案したのは、原作で見たような小型エンジンと小型発電機を一体化させたギターではなく、現代のエレキのシステムだ。

 ギターの弦にピックアップを付け、シールドで繋いだアンプから音を出すあれだ。

 しかし、そちらの進捗は思ったより芳しくない。

「問題点は?」

「全部だな。楽器としての体を成してない。ギターから拾った音を音響機器から出す装置を試作してみたんだが、まるでダメだ。音階すらまともに対応しない。ギターの音をパワーアップさせる以前の問題だ」

 どうやら、スピーカー自体かシールドの時点でクオリティが低すぎるらしい。

 まともに音が出るアンプすら無いようでは、現代のエレキギターへの道のりは遠いな。

「そうか……やはり無理か」

「ああ、ナツメッグ博士でもなけりゃ、こいつは手に負えないね」

 結局、ジョージが設計した原作通りのメカニズムのギターの方が早く完成しそうだ。

 何故か、彼はゲームの中と同じく、ギターにエンジンと発電機を搭載して、生音自体を直接的に増幅するエレキを発想したのだ。

 バンピートロットの世界のエレクトリックバンドは、この方向で発展することが確定しているのかもしれないな。

 俺が提案したピックアップ方式のエレキの研究も、今後の電子楽器の発展のことを思えば、無駄にはならないだろう。

「わかった。なら、まずはお前さんの設計したタイプで構わないから、そのまま研究を続けてくれ」

「……ああ! 助かるよ!」

 俺がそう言うと、ジョージは一気に表情を明るくして笑った。

 確かに、この状況ではいつ俺が愛想を尽かして支援を打ち切るかわかったものではないのだから、ジョージとしても気が気でないだろう。

 こちらにはナツメッグ博士が居り、いつジョージをハブにしても困らないのだから猶更だ。

 まあ、今のところはジョージを切るつもりは無いけどな。

 最終的には、俺が思い描いていたエレキも開発してほしいのだ。

 ジョージには長く働いてもらわないと困る。

 

 

 エレキの開発はジョージの設計したパターンで行うこととなったが、そうなるとやはり問題はパーツの件だ。

 音を増幅する装置をギターに直接取り付ける以上、やはりスクラップの再利用やこの国で流通している品だけでは対応できない。

「車やビークル用のエンジンと発電機も試したが……まあ、結果はお察しだ」

 確かに、ギターの弦に直接繋ぐ必要がある機器のエンジンが、車両用ではデカくて重すぎるのは納得だ。

 発電機はビークルや自動車のライト用のものでは、大きすぎるうえに出力が足りない。

 逆にコンパクトにまとめることを諦めて、都市の電気経路から高出力の線を引こうにも、変電系の技術が未発達なのでそれも厳しい。

 路面電車と街灯には対応しているが、100V交流のコンセントなんて気の利いたものは、この世界には無いのだ。

「そんなジョージ君に朗報だ。こいつを見てくれ」

「っ! おい、これは……」

 俺が取り出したのは小型発電機だ。

 実は、スームスームから帰ってきた直後、俺は一度ヒバリ田園地帯に向かい、この小型発電機を調達してきたのだ。

 公演のためスームスームへ行く際、バニラはビークルに乗ってヒバリ田園地帯を通った。

 バニラは農家には寄ったのでメインストーリーで必要なピートの手紙は手に入れていたが、確認したところ小型発電機は持っていなかったのだ。

 小型発電機は田園地帯沿いの川に居る漁師から貰えるアイテムだ。

 元々は小型のボートの動力源として調達した品らしいが、川に投棄されていたスクラップを片付けてやると、その報酬としてプレイヤーにこの小型ジェネレーターをくれる。

 バニラはこのイベントを華麗にスルーしてやがった。

 バニラがウミネコ海岸へ向かう前にこのことを聞き出せたのは不幸中の幸いだが、結局俺は慌ててスームスーム方面へビークルで向かい、この面倒なお使いをこなす羽目になったのだ。

 とんだ二度手間だったな。

 まあ、仕方ないか。

 以前にも、田園地帯の川沿いまでは行ってみたことがあるが、その時は漁師に出会えなかったからな。

 何はともあれ、俺はこうしてエレキの開発に必要なパーツを一つ手に入れたのだ。

 

 

 俺は喜色満面で小型発電機を観察するジョージに声を掛ける。

「こいつも量産できるか?」

「え? この発電機をかい?」

 ジョージはより一層真剣な表情で小型発電機の内部構造を調べ始めた。

「……仕掛け自体はそう複雑な物じゃない。この国で普及している技術じゃないが、何度か試作すれば再現は可能だろう。部品も細かいパーツが多いが、そこの工場に図面を持ち込んで依頼すれば、ほとんど作ってもらえる範囲だな。素材も特に珍しい合金や魔法金属もなし、と。コストも問題ない」

 さすがにジョージは現役の整備工だ。

 俺もナツメッグ博士に色々と教わってはいるが、工場や製造業の事情などは知らない。

 特殊な合金や魔法金属に関しても、ナツメッグ博士の工房では俺がダンジョンから採掘してきたものがあるので確保に困ったことが無く、継続的に仕入れた場合のコストにもそれほど詳しくない。

 その辺りをジョージは正確にわかっているのだ。

 それに……。

「ただ……今のところ参考がこの一点ものだけだからな。量産型を設計するのに、ちょいとばかり時間が必要だ」

 何よりジョージは正直者だ。

 小心者や見栄っ張りなら「すぐに作ります」とでも言ってしまうところだが、ジョージははっきりと時間が掛かると言った。

 発電機の件も、俺がジョージに愛想を尽かしてナツメッグ博士のところに持ち帰ってしまう可能性を孕んでいるにもかかわらずだ。

 やはり人間性は一緒に仕事をするうえで重要なものだな。

 僅かなコストや時間をケチる案件でなければ、仕事は誠実な人間に頼みたいものだ。

「時間が掛かっても構わん。金も出してやる」

「マジかよ!?」

「ああ。その代わり、最高のエレキギターを作ってくれよ。最初の製品が完成しても、お前さんにはエレキの改良と新型の開発を続けてもらうことになるだろう。言っておくが、ミュージシャンの楽器への要求は半端な物じゃないぞ。やれるか?」

「やる! やってみせる! グレイさん、俺にやらせてくれ」

「わかった、よろしく頼むぞ」

 今回は、一年の研究期間と潤沢な資金をジョージに提供している。

 きっと、完成するエレキは素晴らしいものになるはずだ。

 シブレットから小型エンジンを貰ったら、そちらも早めに渡さないとな。

 

第二章『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット2』の二次創作について。

  • 是非、読みたい! 早く晒せ!
  • 要らねぇわ、ボケ。シャシャんな!
  • そんなことよりお腹が減ったよ。
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