涼風紅葉 作:唯我独尊
本当は先週更新する予定だったんですけど、5日間ぐらい高熱が続いてそれどころじゃ無かったです。
「いやー、ギリギリ間に合ってよかったー」
私の名前は篠田はじめ。
今日発売のされた先着100名の限定フィギュアをゲットするべく、仕事終わりに急いでお店まで行きフィギュアを買って、ただいま帰ってる途中である。
時刻は8時過ぎ。すかっかり日は落ちて、夜空が顔を出す時間帯。
そんなとき道端で座り込んでいる青年を見かけた。
赤髪で首に黒いチョーカーをしているのが特徴的な青年。
本人は立とうと頑張っているのだろうが、中々立つことが出来ずにいる。恐らくそうとう酔っ払っているのだろう。
「お兄さん大丈夫ですか?」
近くまで駆け寄ると青年の身体からお酒の匂いが漂ってくる。案の定酔っ払ってたみたいだ。
「だれ、お姉さん……? 逆ナンならならノーセンキューだゾっ」
「違いますけど……!?」
私がそう否定するとお兄さんは愉快そうに笑いはじめた。
なんて失礼な人なんだろうか。せっかく心配して通ったのに。まあ、酔っ払ってるから仕方ないことかも知れないけど……。
これから酔っ払いには極力関わらないようにしよう。
「ねぇ、お姉さーん。お水を恵んでくれないですか?」
彼は私が持っているペットボトルに指を指しながらそう聞いてくる。
別に何ら構わないため彼に"どうぞ"と言いながら渡す。
「ありがとう! では、ありがたく頂きます」
彼はペットボトルの蓋を開けるとそのまま口をつけて飲み始めた。ごっくんごっくんと喉から体内に入って行くのが分かる。
その光景を見た私は、思わず"あっ……"という声をあげてしまう。間接キス。そう、初対面の人と間接キスだ。
「ぷはー! 生き返ったー! ありがとうお姉さん!」
彼は笑顔で残り半分ぐらいになったペットボトルをこちらに返してくるが、私はそれを受けとるのを全力で拒んだ。
「あ、あの、そのお水全部あげます!」
「……? あ、うん。ありがとう。それよりお姉さん顔真っ赤だけど、どうしたの?」
自覚は無かったがどうやら顔は真っ赤になっているらしい。
「熱かな? ちょっとおでこ貸して」
彼はそう言うと、自分のおでこと私のおでこをくっ付けて来た。
近い近い! 鼻先が今にも触れそうな距離だ。
彼のその行動のせいで自分の体温が更に上昇していくのを感じる。
「熱っ! お姉さんヤバイって! 高熱だよ! 今すぐ病院行った方が良いって!」
彼は慌てたようにそう言うが、誰のせいでこうなったと思っているのやら。
「大丈夫です! 熱じゃないんで。ただ体温が高いだけなんで!」
"それを熱って言うんじゃ……"等と呟いているが、私は無視することにした。
彼のせいでまだ顔が熱い。
私が手でパタパタと顔を冷やしていると、彼はふらふらっとどうにか立ち上がり話しかけてきた。
「まあ良いや。酔いも覚めて来たし。そろそろ私はこの辺で失礼させて貰いますっ!」
彼はビシッと敬礼をするとそのまま危ない足取りで歩き始めた。
何故敬礼? と思い暫くの間彼の後ろ姿を眺めていたら、突然何もないところでつまづいて転んだ。
「ちょっ、大丈夫ですか!?」
私が近くまで行くと彼は"痛い"と呟き涙目になっていた。その表情に不覚にもドキッとしてしまった。
「手のひら擦りむいた……。どうしよう? 血が一杯でて死んじゃう」
「だ、大丈夫ですよ。かすり傷程度で血も出てないし、死にませんよ」
死ぬことはないから、そんな捨て犬みたいな目でこっちを見ないで欲しい。自分の中にある庇護欲が物凄くくすぐられる。
「ほら、まだ酔いも全然覚めて無いじゃないですか。危ないから家まで送ります。肩貸すんで捕まってください」
「お姉さん、ありがとう……」
そう言い私は彼に手を差し伸べた。彼はその手を掴むと多少ふらつくが何とか立ち上がり、私の肩に寄りかかる。
「ぐっすん。優しいね……。こんな時に優しくされたら、俺惚れちゃいそう」
彼は冗談混じりに言っているつもりなのだろうが、その言葉で元に戻っていた私の体温が再び上昇していくのを感じる。
「な、何言ってるんです!? そうゆう冗談はあらぬ誤解をうみますよ!」
「あははは! お姉さん顔真っ赤! かーわーうぃーうぃー!」
彼は愉快そうに笑い、人差し指で私のポッぺをつんつんとしてくる。
そのバカにした態度に少々カチンと来たものだから、冷えきった声で脅してみた。
「お兄さん一人で帰ります?」
「ご、ごめんなさい。調子に乗りすぎました」
つんつんしていた指を止めしょんぼりした顔で謝ってくる。
別にそこまで怒っていないから、その顔をやめて欲しい。無駄に庇護欲がくすぐられる。
「そ、そう言えばお兄さんの名前は何て言うの?」
「なまえ? 名前は紅葉だよ。"紅葉"って書いてくれはって読むんだ。お洒落でしょ!」
彼はそう言いながら微笑むと、私の名前を聞いてきた。
「私の名前は篠田はじめ。改めてよろしくね」
「ふーん。そう言えばお姉さん何歳なの?」
せっかく名前を教えたのに名前で呼んでこないとは、一体何のために聞いていたのだろうか。
「私は今年で21歳だよ。紅葉くんは?」
「俺も今年で21! 俺達タメじゃん! イエーイ!」
彼は嬉しそうにハイタッチをしてくるが、私の心の中では何が引っ掛かった。
赤髪、21歳、そしてこの笑顔。何処かで見たことがあるような無いような……。
「あっ……!」
思い出した。青葉ちゃんの携帯の待ち受けに映っていた人そっくりだ。
ま、まさかとは思うけど青葉ちゃんのお兄さん?
「く、紅葉くんって美大に通ってたりする?」
「うん! 美大の3年生だよ!」
その返事をきき、ゴクリと息を飲む。
私は紅葉くんの正体を明確にするため更なる質問を投げかける。
「も、もしかして紅葉くんって妹とかいたりする?」
「うん、いるよ! 2つ年下の妹が!」
これは恐らく決まりだろう。
青葉ちゃんは今年で19歳。私や紅葉くんは今年で21歳。2歳差。紅葉くんは青葉ちゃんの兄。
「ねえ、紅葉くんの妹って青葉って名前じゃない?」
「そうだけど……? なんでお姉さんが家の妹の名前知ってるの?」
どこから説明しようか考えていたが、そんな私の顔を見て紅葉くんは察し良く何かに気付いたように"まさか……"と呟き考え込む素振りを見せた後、再び口を開いた。
「お姉さん……ストーカー? 俺が通う学校も知ってたし、妹の名前まで知っている。まさか家族構成どころか家の住所まで――」
「――違うよ! 青葉ちゃんと同じ会社に勤めてる先輩だよ!」
彼の私を見る目が訝しげなものになっていくものだから、話している途中だったけれど全力で否定させてもらった。
「えっ!? そうなの? これはこれは、何時も青葉がお世話に成っています」
「あ、いえいえ。こっちこそ青葉ちゃんには助けて貰ってばかりで」
彼が急に礼儀正しくしてきたものだから、こっちも反射的に礼儀正しく会釈をする。
「でも、紅葉くんが青葉ちゃんの兄か~」
誰に話しかける訳でもなく、お昼の会話を思い出していると、八神さんから言われた言葉が脳裏を過る。
――青葉に紹介してもらいなよ。上手くいけば彼氏が出来るかもよ
"紅葉くんが彼氏? ないない"と思いつつも、ちょっぴり心の何処かで意識しているのか、彼の顔を見てしまう。
うん。たしかに顔は中性的な顔立ちをしていて、女性にモテそうな顔をしている。性格は……酔っ払ってるせいなのか素がこれなのか分からないけど、とりあえず癖がある。
"やっぱり、ないない"と首を降りつつも、やはり心の何処かで気になっているのか、ちらりと横目で彼のことを見てしまう。
「ねぇ 紅葉くんはさ。どんな人と付き合いたいとかある?」
「付き合いたい人……? 俺の彼女のこと? 何で俺に彼女がいるって知ってるのお姉さん?」
彼女? ……あっ!
――そもそも兄には彼女さんがいますし! 何時も彼女さんの話ばかりしてるんで――
そういえば紅葉くんには彼女がいるんだった。
完全にそのことを忘れていた。
はぁ……、何だろうこの気持ち。言葉では上手く表せないけど、なんかムカムカする。
「いや、青葉ちゃんが言ってたんだよ。兄と彼女さんはラブラブだって」
私がそう言うと彼は照れたような顔でこっちに話しかけてくる。
「えへへへ。まあ、たしかに、俺と彼女はめっちゃラブラブで、お互いのことを愛し合ってるけどね!」
余りにも彼が幸せそうな顔でそう言ってくるものだから、ちょっと彼の彼女のことが気になって聞いてることにした。
「へ、へー。……紅葉くんの彼女さんってどんな人なの?」
「う~ん? 可愛くて、可愛くて、とにかく可愛い! 結構嫉妬深いんだけど、そこがまた良くて、可愛いんだよね!この間なんかさ――」
彼は熱が入ったようで、暫くの間満面の笑みで彼女の話をするのだか、私は終始ムカムカした気持ちで愛想笑いをしその場を凌いでいた。
自分から質問しといて何なのだが、聞かなければよかったとちょっぴり後悔した。
暫くすると彼が足を止め、直ぐ側にあるアパートに指差した。
「あれが、俺の第二のマイホーム!」
「ん……? 一人暮らしってこと?」
でも青葉ちゃんは一緒に暮らしてる風なこと言ってたけど……?
私がそう疑問に思っていると、彼はチッチッチッと指を左右に降り始めた。
「違うんだな~。あすこは彼女の家です! 明日仕事が休みなんで今日はお泊まり会です!」
「へ、へぇー。そうなんだ~」
「お姉さんも泊まってく?」
「いや、いいよ。修羅場になりそうだし……」
彼の彼女さんはそうとう嫉妬深いらしいし、急に知らない女の人と一緒に帰ってきたら一悶着どころか二悶着ぐらいありそう……。
「ふ~ん、そう。じゃあ! これにて私は帰らせて頂きますので! ……お姉さん送って行かなくて大丈夫? 女一人で夜道は危険だよ」
彼はアパートに向かって一歩踏み出そうかした時に、そのような質問をしてきた。私の身の安全を心配してくれることは嬉しいことだが、一体何のためには此処まで送ってきたと思っているのだろうか?
「何のために此処まで送ってきたと思ってるの……!?」
「あっれ~? 何でだっけ?」
これは本気で忘れている様子っぽい。
「酔っ払ってる君が危なかったからだよ……!」
「ハァー、もう。私はいいから早く彼女の元まで行ってあげなよ」
「うん! ありがとうはじめ!」
彼は最後に満面の笑みでそう言い残すと、ふらふらとした足取りでアパートの一室に向かって行く。
「……ばーか」
今までちゃんと呼んでくれなかった名前を最後の最後で呼ばれ、多少の嬉しさと少々の照れくささを感じながら誰もいなくなった場所で一人そう呟いた。
自分の考えをそのまま文字にするのって中々難しいですよね。作者にもうちょっと小説を書く技量があればいいんですけどね。
中々自分の思った通りに書けないです。
小説って難しいですね。