魔王の娘の異世界召喚記 作:ダルエスサラーム
ちなみに原作が黒の召喚士なのは、読んでた作品の中で、ありふれたと同じレベル帯で同じステータスだったからですね。
聖剣を渡すの忘れてたので訂正〜
目の前を覆う闇が薄っすらと消えてくると、ぼんやりした感覚が一気に覚醒した。そこは見渡す限り何もない、無限に広がる白い空間だった。ここは本当に現実だろうか。夢なのではないだろうか。そんなふうに思えるような空間だった。
周りを見ると、自分たち以外に人の姿は一人しか見えない。いや、果たしてそこにいたのは人ではなかった。蒼白い髪をなびかせ、うっすらと微笑んでいるその背中には、どういうわけか純白の翼が生えていた。明らかにおかしいその翼はしかしながら自然に動いており、彼女にマッチしていた。
その女性はおもむろに口を開いて、
「ようこそ!この剣と魔法が飛び交う世界に!勇者たちよ。魔王を倒し、この世界を救ってください。」
そんな、おおよそ現実とは思えないようなことを告げてきた。あまりに突然なことに、勇者と呼ばれた者たちの誰もが固まる中、一人だけ目を輝かせていた少女の放った言葉は、
「異世界に、来ちゃったの!!!!」
という、ごくごくありふれたものであった。
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エメラルドブロンドの髪をゆるふわに巻いた、澄んだ翡翠の瞳の10歳くらいの美少女――南雲ミュウは、その装いを制服にして、廊下を友人と歩いていた。
友人と言っても、横に並んで談笑している人はどう見てもミュウよりも年上で、高校生くらいのように見える。
彼女の名前は志賀刹那。長い艶のある黒髪を後ろで一つに束ねている彼女は、この学校の生徒会長にして成績は学年トップ。県道の腕もピカイチで全国大会にも出場するほどで、まさに品行方正文武両道を地で行く少女である。
なぜそんな二人が並んで歩いているのかと言えば、この学校は世にも珍しい小中高一貫の私立高校で、現在放課後真っ只中だからである。
ミュウはその類稀なるコミュニケーション能力から、この学校随一の美人である刹那とも親交を深めているのである。
無論、ミュウも学校随一の美人であるのだが。
今は下校する直前で、刹那が教室に忘れ物をしたので取りに行くのを、一緒に帰ろうとしていたミュウもお話がてらついて行っているところだった。
「それでお友達とパーティーを楽しんでたんだけど、料理に睡眠薬でも入ってたのか、急にみんな倒れちゃって、子供だけ誘拐されたの。」
「えっ?誘拐?」
刹那はミュウが先週末に行ったというパーティーの話を聞いていたが、雲行きが怪しくなってきた。
「そうなの。ミュウは睡眠薬を気合で無効化したんだけど、危なそうだから一緒に誘拐されたら知らない港の倉庫にいたの。」
「気合で乗り切ったのかー。すごいね。」
「そこから誘拐した人たちを自力でどうにかしたら、なんと誘拐犯はテロリストだったの!」
「おそろしいね。」
「だから急いでパパに連絡したら、『バパに何をしてほしいんだ?』って言うから、助けてって言ったら、テロリストを壊滅させたの!パパかっこよすぎるの!!!」
興奮して話していたミュウだが、最後の一言を発するときだけ妙に艶っぽい声を出していた。
「ミュウちゃんのバパはすごいんだねぇ…」
刹那は感心したように相槌を打っているが、まさか信じているわけではない。10歳くらいならそういうおままごともするかもしれないと納得しているし、最後の言葉だけ明らかに艷やかな声であったような気もするけど気のせいだと思っている。
いくら先週末に実際に世界規模でテロがあって、それをワルキューレやらGOZIRAやら魔王が解決したとニュースになっていたとしても、いつもミュウが父親の話をするときに女の顔をしている気がしていたとしても、ミュウとその父親の血がつながっていない義理の親子だとしても、信じていないったらないのである。
実際はミュウは事実を言っているだけなのだが。
そんなふうに話していると、目的の教室の前にたどり着いた。中からは聞き慣れた話し声が聞こえてくる。
教室に入ると、そこには刹那の友人三人がいた。
「おっ、刹那か。どうしたんだ?」
「忘れ物でもした?」
声をかけてきたのは順に、神埼刀哉と、水丘奈々だ。
刀哉はアイドル並の容姿で、刹那ほどとはいかないものの成績優秀でスポーツもできて、更に誰にでも優しいためどこに行っても人気者だ。正義感が強く、今まで挫折を知らないため、人を信じすぎるという危うい一面も持つ。刹那とは幼馴染でもあり、暴走する刀哉を刹那が諌めるということが多くある。
奈々は背が低く幼い顔立ちをしているが、対象的に胸は大きく、一部の男子から異様なほどの人気を誇っている。刹那と刀哉と同じクラスの生徒だ。
「そんな感じよ。」
「ん、志賀さんが忘れ物とは珍しい。」
「そんなこと言って、黒宮さんは転校してきたばっかでしょ。」
「でもなんとなく想像はつく。」
続いて刹那に返答したのは、同じクラスの黒宮雅だ。彼女はなんと前日にこの学校に転校してきたばかりの、日本とロシアのクオーターで、天才的頭脳を持つ綺麗な銀髪の不思議系美少女だ。その容姿から、転校初日にファンクラブができたという偉業を達成した。
どうやらクラスにはこの三人しか残っていないようだ。
刹那は、転校してきたばかりの雅がクラスメイトと話をしていたようでとても安心していた。
「でも、黒宮さんがクラスに馴染めてるようで良かったわ。」
「問題ない。生徒会長様は心配性。」
「でも話してる相手が刀哉だから心配もするわよ。」
「あぁ…女子相手の神崎君は酷いからね…」
「?なんのことを言ってるの?」
女三人集まれば姦しいと言うように、女子が集まると話が弾むようだ。それが出会って間もない友人だとしても。
だがここにはもう一人女子がいる。
「そういえば志賀さん、子連れ?」
刹那はそう言われて、なんのことかしらん?と思ったが、雅は転校してきたばかりだからミュウのことを知らないかもしれないと納得する。
「あぁ、この子はミュウちゃん。私の友達よ。」
「南雲ミュウなの。ミュウって呼んでほしいの。よろしくなの。」
「ん。私は黒宮雅。呼び方は何でもいい。」
「じゃあみっちゃんって呼ぶの!」
やはりミュウのコミュニケーション能力は素晴らしいようだ。不思議系美少女ともすぐに打ち解けられる。
そのまま少し話していると、学校のチャイムがなった。
一般生徒下校の時間だ。刹那は生徒会長だからこの時間では帰らない日もあるが、今日は特にやることもないので帰ることにした。ミュウと帰るとも言っていたし。
「時間も時間だし、私達は帰るわね。」
「もうこんな時間か。俺も帰るかな。」
「私も帰る。」
「じゃあ私も帰りますね。」
「じゃあみんなで帰るの!」
結局全員帰るようだ。
それじゃあ、と、それぞれが帰る準備を始めようとすると、
突然、地面が光を放ち始めた。
「な、なんだこれは!?」
「どうなってるの!?」
あまりに突然のことに動揺する刀哉達だったが、一人だけ状況を把握できている者がいた。
ミュウだ。
(これは…魔法陣?とりあえず悪意は感じないみたいだけど……うーん、パパかティオお姉ちゃんあたりに聞かないと、どんな効果かわからないの)
冷静と言っても、打てる手はないのだが。
「とりあえず皆!部屋から出て!」
そう刹那が促すが、時既に遅し。
五人がこの場を離れる前に魔法陣が一際強く光を放つと、視界が光に包まれて、五人はゆっくりと意識を光の中に手放していった。
そして話は冒頭に戻る。
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異世界に来た。
ミュウがそういったことで、刀哉たちは漸く現在置かれている状況を考え始めた。
とは言うものの、現状何もわかっていない。わかっているのは少なくとも今いる場所は教室ではないということくらいだ。
「いきなりのことで混乱しているかもしれませんが、まずは私の話を聞いてください。」
翼の生えた女性は諭すようにミュウ達に話しかけてきたが、刀哉たち4人は混乱しているため頷くことしか出来ず、ミュウも状況把握のために話を聞くことにし、頷いた。
「ありがとうございます。早速お話をしていきたいと思うのですが、その前に自己紹介をしておきましょうか。
私はメルフィーナ。この世界の転生を司る神をしています。」
そう言って、恭しく一礼をしてきた。
「か、神崎刀哉です。」
「志賀刹那です。」
「水丘奈々です。」
「黒宮雅。」
「南雲ミュウなの。よろしくなの。」
続いてミュウ達も簡単に自己紹介した。
「ありがとうございます。皆さん良いお名前ですね。では、早速現状の説明と、今後についてお話していきたいと思います。
まず、今いる場所はあなた達がいた世界とこちらの世界の狭間です。ここでは時間はほとんど流れませんのでご安心ください。
あなた方をこちらに呼び寄せた理由は最初に申し上げた通り、私達の世界を救ってほしいからです。具体的には、魔王と呼ばれる存在を倒して欲しいのです。魔王を放っておくとあらゆる悪辣で非道な行いを繰り返し、世界が滅びてしまうのです。どうか、あなた方のお力をお貸ししていただけませんか?」
メルフィーナが話した内容は、所謂神様転生、いや転移と呼ばれるもののようであった。また、話す様子から、心底この世界のことを思っており、言っていることが真実であることは刀哉達にしっかりと伝わってきた。
「ええ!俺の力で世界を救えるのなら、ぜひお受けします!」
「ちょっと待て!」
すぐさま引き受けようとした刀哉を、刹那が諌める。実はこれは日常でよくあることで、刀哉は人を信じすぎるきらいがあり、刹那がストッパーとして働いているのである。
「せめてもう少し話を聞いてからにして!女神様、いくつか質問をしてもよろしいですか?」
刹那がそう尋ねる。
「ええ。構いません。」
「ではまず、なぜ私達が呼び出されたのですか?そもそも魔王とやらもそちらの世界で対応できるのではないのですか?」
刹那の疑問は最もなものだ。なぜ自分たちが、という疑問はどんな時にでも起こるし、特に今回のような場合ならばそう聞かずにはいられない。また、呼び出される必要があるのかというのも、必然疑問として浮かび上がってくる。
「まず前提として、魔王は異世界人にしか倒せません。そういった能力を持っているからです。そしてあなた方を呼び寄せた理由は、あなた方が勇者としてふさわしいと我々が判断したからです。」
メルフィーナの返答も尤もらしいものだ。魔王が異世界人にしか倒せないなら召喚も納得するしかない。
「じゃあ私からも。そっちの世界から帰ることはできるの?」
雅も疑問に思ったことをメルフィーナに問う。これも聞いておかなくてはならないものだ。
「魔王を倒していただければ、帰ることができます。」
この返答は予想されていたものであろう。魔王を倒すために呼び出したのにその前に帰られては、メルフィーナも、この世界も困ることこの上ない。
「あ、私からも。そもそも私達に魔王を倒すことなんてできるんですか?」
奈々も続けて聞く。
「倒せます。いえ、倒してもらわなくてはいけません。あなた方には魔王と戦えるための力を授けますが、それだけでは足りません。モンスターなどと戦って経験を得て、強くなっていただきます。そして最終的に魔王を倒していただきます。」
メルフィーナが答えたのは、異世界モノでよくあるようなものであった。
これは暗に危険があると言っているようなものではあるが、倒さなくてはならないという強い意志を感じさせるものであった。
「質問はもういいですか?皆様のお答えをお聞きしたいのですが。」
「待つの。大事なことを聞いていないの。」
ミュウの静止に刹那はなにかしらん?と思う。と言うのも、刀哉は元から世界を救おうとするだろうし、自身も刀哉についていこうと思っているし、もう聞くべきことは無いのでは?と思っていたからだ。
「一体何でしょうか?」
「期間。一体世界を救うのに何年かかるの?それと、そっちの世界とミュウたちの世界での時間の進みの速さの違いも聞きたいの。」
確かに大事なことだった。刀哉たちは高校生で、ミュウなんてまだ10歳の子どもだ。これでとても長い期間、例えば何十年とかかると言われては、世界を救うなんてすぐに結論を出すことなどできない。
「………1年以上はかかると思います。尤も、前後は大きくあると思いますが。それとあなた方の世界とこちらの世界の時間の流れは一致しています。ですので、こちらで1年間過ごせばもとの世界でも1年間が経過しています。ですが、あなた方が居なくなっていた期間は留学などに行っていたというふうに記録と記憶が書き換えられますので、問題ありません。」
魔王を倒すのだ。やはりそれなりに長い期間かかるのは仕方がないことと言えよう。それに、時間軸の一致は仕方がないものであるので、どうしようもなかろう。だが、いなくなっている間の記憶の辻褄合わせが行われるのは安心とミュウ以外の四人には思われた。
「では…皆様の結論をお聞かせ願います。」
そう言われるが、刹那達の顔は重い物となっていた。それはそうだろう。1年以上もかかり、更に危険があることだ。迷うのも無理はない。
そんな中、刀哉は決意を固めた目をしていた。
「やります。誰かがやらなきゃいけないことなんだ。だから、他でもない俺がやりたいと思う。」
刀哉の答えは『Yes』だった。正義感溢れる彼はこんな依頼は願ってもいないものだったのであろう。
そしてそれを見た刹那も覚悟を決めた。
「私もやります。確かに大変なことなんでしょうけど、こいつを放っておくことなんてできないですし。」
刹那は世話焼き気質なのであろう。刀哉を放っておけないようだ。
次に意見を固めたのは奈々だ。
「私は…いえ、私もやります。神崎君じゃないけど、誰かがやらなきゃいけないことなのは事実ですし、それなら他の人じゃなくて自分でやった方が誇れるかなって。」
奈々も世界を救う決意をしたようだ。
そして、
「……私も。面白そうだしやる。」
雅は少し軽いが、考えてから決めたようだ。こう見えてよく考えているいい子です。
そして残るはミュウだけだが、未だ考えるようにしている。
他の四人と違ってまだ10歳の子どもだ。普通なら保護者が守ってあげないといけないぐらいの子どもであるのだ。迷うのも必然である。
しかしミュウが迷っているのは世界を救うか救わないかではなかった。
「ミュウが世界を救うのに参加するのに、条件が2つあるの。」
「ほう。それは何でしょうか?」
「1つ目、魔法を使えるようにすること。2つ目、パパにこれからミュウが書く手紙を渡すこと。この2つができるならミュウもやるの。」
ミュウが提示した条件は、メルフィーナにとってさして難しいことでは無かったが、どうしてミュウがあんなに悩んでいたかは察することができないようなものであった。
「その程度のことでしたら出来ます。ですが、前者はともかく後者は、先程も言いましたが魔王討伐を達成して頂ければ、あなた方がこちらの世界にいた期間の記憶の補填は行われますので、あまり意味はないかと思われますよ?」
「問題ないの。1つ目は個人的なお願いだし、2つ目の方はそれだけやればパパも表立って迎えに来ないと思うからって理由だから。ミュウたちがいない間もあっちの世界では時間が止まってるわけじゃないでしょ?」
ミュウ以外はは迎えに来るという言葉に首を傾げたが、ミュウにとっては愛しのパパたちが迎えに来ないかということが問題だった。
ミュウの父、南雲ハジメは所謂バグキャラだ。世界最強で家族のこととなると容赦をしない。特にミュウの事となれば、電話一本で世界最大のテロリストの組織を壊滅させるほどである。
そんなハジメに、ミュウがどこか違う世界に行ったことがバレれば、少なくともミュウを連れ出した者は消されること間違いなしだ。
そう。ミュウが悩んでいたのは、『世界を救う旅に参加するかどうか』ではなく、『どうやったらその旅に参加できるか』だったのだ。
「わかりました…再三問いますが、本当に魔王を倒す協力をしてくださるのですね?」
「やるの。世界を救うくらいやらないと、パパのお嫁さんなんて役者不足も甚だしいから。」
そう。ミュウが世界を救うことを決めた理由がこれだ。
ミュウの父は神殺しの魔王である。そんな父と結婚するに能う存在になるには世界を救うくらいやらないといけないと考えたのだ。
実際はそんなことをしなくとも、ハジメにとってミュウは強い存在なのだが。
他の4人もそれぞれ何かを決意したような顔で頷いた。
「皆様のお答えはわかりました。では最後にこれをお渡ししておきます。」
そう言いながらメルフィーナが刀哉の方に差し出してきたのは一振りの直剣だ。
純白の鞘に収められたその剣は、抜かれてもいないのに強い聖なるオーラを放っているように感じられた。
「これは……?」
「これは聖剣ウィル。歴代の勇者様方にお貸ししている剣です。この剣は勇者の証でもあり、あなた方の助けとなるでしょう。」
「聖剣………ありがとうございます。必ず魔王を倒します。」
聖剣を受け取った刀哉はさらにやる気をたぎらせているようだ。
「それでは、皆様を転送させていただきます。どうか、私達の世界を救ってください。それと――――――良い旅を。ぜひこの世界を楽しんでください。」
そう言ってメルフィーナが微笑むと、ミュウ達の視界は徐々にこの空間に飛ばされたときと同じく、眩い光に包まれてゆき、その心地よい光の中に意識を手放していった。
次回があるとすればそれはまた次回。
よしんば次回がなかったとしても、時間を飛ばして次回があります。
じゃあ、『また今度とか!』