※この作品にはタグにも表記してある通り、シリアス成分や残酷な描写が含まれております。そのようなものが苦手な方は注意して閲覧してください。
また、ストーリー上どうしてもアンチ・ヘイトを避ける事が出来ないことがあるかもしれません。その時はご了承下さい。
作品を読まれる上でもう一度タグ等をご確認ください。問題がないよ、という方は恐れ入りますが、ご覧下さい。
ーーー誰だ貴様は。
響く少女の声。しかしただの声ではない。重く伸し掛るような声は私の喉を塞ぎ、全身を硬直させた。
ーーー……だんまりか。
何も言えない。動けない。極度の緊張が体を縛る。
ーーーっ?!
しかし少女は私を睨みつけると、小さく声を上げて目を見開いていた。
ーーーなんなんだ…その禍々しいものはっ!!
少女は声を荒らげる。何を問われようが何も出来ない。体が動かせるようになる気配すら感じない。
ーーー動くなよ…そこから。私が葬り去ってやる。
少女は手に紅色に光り輝く棒…槍のような物を作り出し、私へと狙いを定める。
ーーーこんな人間がいるとはな…。貴様がいては今後の計画に支障が出る。
少女は再び私を睨みつける。しかし最初の時ほどの余裕は見えなく、むしろ額から汗を滲ませていた。
ーーーさらばだ。
少女の手から放たれた槍は、視界全てを真っ白にさせた。そして視界は戻らぬまま上か下かも分からなくなり、やがて思考すらもが止まった。
青い空。地を走る風は木々を揺らして音を生む。車の走行音や人々の足音、声が混ざり合い、大きな雑音となって辺りに響かせる。
俺は電車に揺らされながら市内の高校から自宅へと向かっていた。今日は教員の会議やらで午前授業だったのだ。
ある生徒は部活へ。またある生徒は集団でカラオケやゲーセンへ。そして、特に用事のない生徒は自宅へ。
まもなく〇〇駅、〇〇駅です。混雑しておりますのでご降車の際はお気をつけ下さい。
アナウンス後に電車は停車し、ぞろぞろと降りてゆく列の中に紛れて、改札を超えてゆく。
昼時というのもあって混んでいる。通学時ほどではないが少々ぶつかってしまう。
「あの、これ落としましたよ」
後ろからかかったのは女性の声。彼女の手には【黒羽信哉】と表記された生徒手帳の入った財布があった。
「あぁ!すいません、ありがとうございます…!」
女性は「いえ」と言って、そのまま奥へと姿を消した。
財布を落としたことに気づけなかった事への恐怖感をヒシヒシと感じながらも、家へと向かった。
自転車に乗り換えて、街を走る。途中にある商店街で食欲が爆発してしまうような匂いを発しているのが、空腹時の最大の敵だ。
軽食なら大丈夫ではないか、などの葛藤と戦いながら何とか商店街から抜け、住宅地へと到達する。
ここまで来たらすぐそこが家なので、俺は小さく安堵する。
「…コロッケ買っておけば良かったかな…」
小さな誘惑に対しての後悔が生まれつつあるが、自転車を車庫に収納して家へと入る。
ギラギラと差し込む日光から逃れただけでもとても涼しく感じるものだ。
「おぉ帰ったか信哉」
「ただいま、じいちゃん」
「信哉〜!ワシもう腹減って飢えそ!はよはよ!」
「ひいじいちゃん今作るから…」
この家には俺を含め、五人が住んでいる。
一人目は俺を迎えた祖父、
二人目は飯を要求してきた曽祖父、
三人目は仕事で不在の父、
四人目は小学三年生の弟、
最後に俺、高校二年生の
……と、まあ男五人で暮らすむさい家庭だ。曾祖母は寿命で、祖母は病気で、母は事故で亡くしている為、この家族には華がない。
塩分量を控えめにしながら、野菜を炒めていく。気温が高いので熱中症予防のためにも、酢の和え物を作っておく。
数十分の調理を終えて、祖父、曽祖父と俺の三人で食卓に座る。
いただきますと同時にご飯を食べ始める。
「なぁ信哉や。ワシはな昔、こ〜んなに小さな嬢ちゃんから助けてもらった事があるんじゃ」
曽祖父がご飯を食べながらジェスチャーをする。すると祖父が目線をずらさずに、曽祖父を注意する。
「父さんや、今は食事中なんだからじっとしとれって…」
「むっ…それもそうだな…。おっこの料理、この前テレビでやってたアレじゃろ!え〜と…ムンジング!」
「これはただの野菜の炒め物だよ、ひいじいちゃん。……ムンジングなんて料理あるの?」
「あ〜…覚えとらんな!」
こんなやり取りを毎食やりながら、過ごすのが小さい頃からの日常みたいなものなので、自然と笑みが零れでる。
歳をとったとしても落ちない食欲を見る限り、二人の丈夫さを確認出来て嬉しい反面少しだけ心配な感情もあるが、自分の作った料理を美味しそうに食べてくれるのでそんな気などかする程度であった。
「いや〜…あれはホントに仏様か?あ、嬢ちゃんだったな!ぐはは!迷ってるワシをここに送ってくれたもんなぁ!いつか会えたらお礼をしたいのぉ…!」
「はいはい…父さん、食事中だからじっと…」
「おおそうじゃな!んん〜〜、信哉の料理は美味い!」
「ありがと」
こんな日常が続けばいいなと、私だけではなく家族全員が思っている筈だ。
夕方になり、弟の明寛も帰ってくる。そして本来ならば夜遅くまで仕事で帰って来れない筈の父も帰ってくる。
「父さん、帰ってくるの早いね」
「ああ、今日は残業分も全て終わらせられる程調子良かったからな」
「ねぇ信兄、今日は遊べる…?」
「ああ、遊べるぞ。ゲームか?」
「うんっ。えへへ…」
明寛は口が張り裂けんとばかりに大きな笑みを作って自分の部屋へ、とてとてと戻っていった。
ホントに明寛は優しい子だ。癒してくれるし、和ましてくれるし、可愛いし。あんな弟を持てて幸せものだなぁ。
「信哉ぁ!ワシは腹が減って…」
「今から作るから、ひいじいちゃん」
明寛に和まされた分、力も湧いたので料理に取り掛かろうとした時だった。
「あれ…醤油が切れてる?」
醤油が切れている事に気づく。困った。
すると父がその事に気づいて、車の鍵を持ち出した。
「信哉、少し買い物に行かないか?」
「買い物…?じゃあ醤油買いたいんだけどいい?」
「ああ。明寛、お前も来るか?」
丁度部屋から出てきた明寛にも聞くと、明寛は嬉しそうに行くっと答えた。
おじいちゃん達は留守番という形で家に残るので、買い出し要員としての三人が車に乗るこんだ。
「いつものスーパーでいいか?」
「うん、お願い」
「ねぇ信兄!新発売のバーボンボンうまぞこ買ってもいい?!」
「バーボン…??安かったら買うよ」
「ほんとっ?!」
「シートベルトしておけよ。最近交通量多くなってて急に止まることあるから」
父は俺達がシートベルトを付けたことを確認すると、発進させる。
家を曲がってすぐの商店街を超えて、四車線区画の道路へと出る。
「ホントに…車が多いな」
「そうなんだよ。運転する時が怖くなったな…」
ここ周辺では人口の過密化が懸念されるほど移住者が最近増えてきたのだ。原因としては付近に建てられた王手メーカーの工場。その従業員が引っ越して来た為である。他にも観光資源なども充実している為、テレビでも取り上げられる程の充実した街との事だ。
ブウウウンッ!!
突然後方から機械の唸る音が聞こえた。目線だけ後ろへ流すと五、六台のバイクがいた。
バイクは車と車の細い間を通って、俺たちを追い越して行った。
「危ない運転をするなぁ…」
「中々なダイナミックだな。その分事故の起こる確率が高いんだろうけどな」
三十メートル先に見えてきた建物がお求めのスーパーである。入口にはタイムセールと掲げられており、運がいいように感じた。
「タイムセールか。他のものも買っておこうかな」
「なかなか買い物にも付き合ってやれないし、今の内に買っておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだな…。ん、そうする」
父がハンドルを切り、スーパーの入口へ入ろうとした時だった。
ギャギャギャギャッ
聞いたことのない大きな摩擦音が辺りに響き渡ると同時に、俺達の周りは暗くなった。
「なっーーー」
一瞬ではあったが俺は窓の外が見えてしまった。
大型トレーラーが斜めになってこちらへ滑り込むように、倒れてくるのを。
咄嗟に出た声は次の瞬間に訪れる轟音によっていとも容易く掻き消されたのだった。
ーーー赤い。赤と黒が入り交じる世界が広がっている。そして激流に流されているような、上も下もわからない状態が続く。
目の前に手が見える。その手は俺の何かを掴んだ。いや、それ以前に体という形の感覚がない。だから掴まれたとしてもわからない。しかし、掴まれた感覚はあった。抵抗も何もできない。
その手によって激流の中を引っ張られる。何処に自分がいるのかもわからない。
どのくらい経ったのだろうか。ドロドロとした赤と黒の空間が徐々に薄れて、白くなっていっている。その変化に比例して掴まれる感覚や激流は消えてゆく。
そしていつの間にか真っ白の空間に漂っており、今度はゆっくりと黒く染まってゆく。深く、黒く、侵すように。
皆様初めまして、銀の鰹節と申す者です。前作をご覧になったことのある方はお久しぶりですね。
幻想恩義という名で投稿させていただきましたこの物語。実はまだしっかりとストーリーが定まっている訳ではないのです。書きたいという衝動に駆られた勢いで書いてしまったような物語で、とても不定期更新である事が予想されるものです。ですので、何かとおかしな部分が出てきてしまうと思いますが、どうかお許しください。
そしてこの物語を書こうと思った理由は、書きたいからというものだけではなく、自身の国語力や文法を鍛えるという目的もあるからです。ですので、是非感想や評価(出来れば一言付けて欲しい…!!)をお願いします。
…長々と失礼しました。今回はここで終わりにさせていただきます。
次回もゆっくりしていってね!
(もし登場人物等の情報をより知りたい方がいらしたら、次回の前書きに提示しようと思います)