神を運ぶ者   作:コズミック変質者

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注意)主人公はDies iraeのヴァレリア・トリファをモチーフにしていますが、彼みたいに上手く暗躍できません。
口調の変化はデフォルトです。


第1話

学園都市。東京都西部を切り拓いて作られた巨大な都市。人口230万のうち、八割は学生であり、学生達は特別な『カリキュラム』を受けている。

 

記録術や暗記術など、名前は普通そうだが中身は普通の学者では欠片も理解できない『カリキュラム』によって得られるものこそが、学園都市唯一のものであり、誰もが憧れるものなのである。

 

それは超能力。

 

漫画や小説の登場人物のように、火を出したり氷を出したりなど、能力の種類は様々である。それこそ、「手に持った物の温度を一定に保っておける」能力もある。

だが全員が全員、能力者と呼ばれるわけではない。六割。六割もの学生か『無能力者(レベル0)』の烙印を押されている。彼らはどんなに頑張っても、せいぜいがスプーンを曲げる程度でしかない。

 

選ばれなかった者もいるように、四割の中から選ばれた者もいる。それが『超能力者(レベル5)』。たった一人につき数十億の価値があり、軍隊を一人で滅ぼせるほどの力を持った学生達。

その数はたったの8人。

 

この物語は230万の中の8人の中の1人の物語である。

 

 

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学園都市のそびえ立つビル群の中で、一際目立つ巨大なビル。窓も入口もないそのビルは、『窓のないビル』と呼ばれている。

そのビルの中の一室に、どうやって入ったのかは分からないが、二人の人間がいた。

 

1人は赤いメガネをかけ、黒いブレザーを着た学生。身長は高く、180はある。一見は普通。

もう1人は緑色の手術衣を着た、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも悪人にも見える人間。その人間は液体の詰まった巨大なビーカーの中で逆さまになって浮いている。一見は異常。

 

「『幻想殺し』と第3位が接触したようです。プランの続行、並びに軌道修正についての必要は?」

 

『いや、今の段階ではまだ何とも言えない。君というLEVEL5が『幻想殺し』に手を出すのはまだ早い。まずは彼にはあちら側へ接触してもらわなければならない。第3位に関しては・・・』

 

「それは、万事私へお任せください」

 

学生の金色の髪が微かに煌めく。光の当て具合による簡単な現象。それがこの部屋で起こるのは少しだけ珍しいことだった。

 

「私達のやることの過程は変わらない。あなたはあなたの望むままに、『幻想殺し』を操り使命をまっとうすればいい。私は私の望むままに、私の理想へ届き得る『神』を作り上げる」

 

『そのためなら、この街の人間全員を切り捨てるのだろう?』

 

「まぁ、場合によっては、ですがね。それに必要ならば切り捨てる。あなたとて、その行為は否定出来ないはずだ。なにせあなた自身がそうしてきたのだから」

 

学生はそう言うとメガネを指で押し上げ、『人間』に背をそむける。

 

「あなたのプランがどうなろうと、私の知ったところではありません。が、お互いなるべくノータッチでいきましょう」

 

学生は歩き出す。出口のない壁まで。

 

『そうか。なら頑張りたまえ、『神を運ぶ者(クリストフ・ローエングリン)』』

 

『人間』は笑みを浮かべながら、彼の背中を見送った。

 

 

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「チェストォ!」

 

のどかな昼過ぎの公園に少女の大声と、その直後に何かを思いっきり叩く音が響き渡る。声の主の少女、御坂美琴は落ちてきたジュースを、己が蹴った自販機から取り出す。

御坂はたった今、犯罪にも等しいかもしれなくもない行為をしてしまったのだ。だがそれを咎める者はいない。誰も見ていないし、何より御坂はこの自販機に、かつて札を飲まれたのだ。故に、この行為は仕方がない。飲まれた分を取り戻すまで続けているのだ。実際には既に取り返してはいるが。

 

「うーん、外れね」

 

出てきたのはイチゴおでんという、明らかにゲテモノ感満載の缶。自販機に適切な角度で蹴りを叩き入れるという、御坂の通う学校に伝わるやり方では、好きな飲み物は出てこないのだ。

 

「また自販機を蹴ってタダで飲料取ってんのか。とっくの前に飲まれた分は取り戻したんじゃないのか?」

 

「うわ!!ビックリした!!」

 

御坂の後から声をかけてくる男。一瞬不審者かと思い、能力を発動させながら振り向けば、そこには見知った黒い制服と御坂の髪よりも長い金糸の髪。

御坂の幼馴染である男がそこにはいた。

 

「はぁ・・・全くお前という奴は。俺は何度、お前に注意を促せばいいんだ?」

 

「べ、別にアンタには関係ないでしょ!?」

 

男のヤレヤレといった行動に、御坂は顔を赤くしながら怒鳴る。

 

「まぁ、何を言ってももう手遅れだからな?面倒なのが来る前に早く移動するぞ。常盤台のエースがそんなことをしていたのがバレてしまえば、色々と厄介なことになるだろう?」

 

男はそう言うと御坂の手を取ってこの場を離れようとしたが、

 

「お姉様ぁ~!」

 

空中から突如現れた少女が御坂に抱きつき、そのせいで御坂を中心に男の体は弧を描いていき、自販機へ正面から激突した。

 

「お姉様ったら、またこんなスカートの下に短パンなんてお履きになられて」

 

「何見てんのよアンタは!!」

 

御坂の身体が放電を起こし、現れた少女のいる場所へ電撃が放たれるが、いつの間にか少女は御坂の右側に立っていた。

 

「あら?誰かと思えば鍍金(とがね)さんではありませんの。ご機嫌麗しゅう」

 

「白井も相変わらず元気そうだな」

 

ぶつかった場所を手で擦りながら違杯はようやく立ち上がる。服が土埃で汚れていたのでポンポンとすぐに払う。

白井と呼ばれた少女はコホン、と咳払いをする。また御坂への小言が始まるのかと思う。

 

「さて、お姉様。スカートと下の短パンのことや、黒子に内緒で殿方と逢瀬をしていたこと。じっくりお話しいたしましょう」

 

そう言って白井は御坂の手を掴み、共に消える。これが彼女の能力。学園都市でも有数の大能力者(レベル4)にして、さらに数少ない空間移動の能力。また精度が上がっているのを見て、鍍金は喜ばしい気分になる。白井は御坂にとって大切な存在なのだ。これから起こることを考えれば、彼女にはもっと成長してもらわなければならない。

 

「全く、ひどい人間ですね、私は」

 

とりあえずこの場から立ち去ろうとして足を動かそうとすると、

 

「あ・・・出遅れた・・・」

 

辺りは学園都市特有のドラム缶型の警備ロボ数台に逃げ道を塞がれていた。

 

 

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警備員(アンチスキル)の尋問からようやく解放された鍍金は肩を少しだけ落としながら、ようやく自分の学生寮に戻った。学生寮と言っても、学園都市でも有名校の中のさらに有数な数人にしか与えられない、VIPのための寮。

防音は当たり前のこと、共用ながら寮には図書館にプールや能力使用のためのトレーニングルーム、簡易的なコンビニもある優れもの。

 

その寮の中で鍍金の部屋は一番上。VIPの中のVIPということで与えられる部屋である。

 

部屋に入り、着ていた学生服の上をハンガーにかけ、ゆったりとパソコンの前の椅子に座る。パソコンを開き、一つのファイルを開き見る。そこには今日一日の何らかのグラフができており、下は0、上限は10億となっている。

 

「最近、また能力の使用率が上がってきている。それに電圧も。いい傾向だ・・・だが、やはり数だけでは質には影響は少ないようだ」

 

このグラフが意味するのは能力をどれだけの時間、どれだけの強度でどれだけの相手に使用したか。それを能力開発を受けた者が無意識に放つ微弱な電波を感じ取りらオートで24時間グラフとして刻み続けている。

 

「やはり一度、大きいことに関わらせるべき・・・か。暗部、はやり過ぎとすると。・・・ああ、そう言えば丁度いい相手がいたな。俺が手招きすれば、思うように動いてくれるでしょう」

 

思い浮かべるのは報告にあった一人の女研究者。何やら最近、何度も何度もツリーダイアグラムへのアクセス許可を貰おうとしている人間。二十数回、演算を申請しても却下されていたのは哀れだった。

 

「まぁ、仕方ない・・・か」

 

そう、仕方がない。なにせ申請した内容は学園都市でも秘匿されるべき研究であり、その事に対するさらなる追求を、たかが学園都市に腐るほどいる研究者の一人でしかない人間に、させるわけがない。

それに、

 

「貴方には、出来るだけ役に立って貰いたいですからね」

 

凍えるような冷淡な声が漏れる。

パソコンで新たなファイルを開く。そこに封入されているのは一人の人間の脳波を元にした音の波形。そして今現在、学園都市特有のネットに拡散され、今この時もどこかの無能力者や低能力者達が中毒のように聞いている。

その光景を思い浮かべると、自然に笑が浮かんでしまう。それは愚か者達を嘲笑う笑。

 

「もっと多く、沢山の能力者を集めなければ。そしてもっと成長しなさい。貴方が己が悲願を成就させたいなら。最も、それが幸せな結末になるかは、分かりませんがね」

 

全ては、神を生み出すために。かつて見た至高を、再びこの目に焼き付けるために。

 

例え血肉を抉られようと、無限の苦痛を味わおうと、虚無の彼方へ追放されようと、願いのためならば鍍金 聖(とがね ひじり)は止まらない。

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