神を運ぶ者 作:コズミック変質者
鍍金聖は異常である。知能も、肉体も、魂も。その異常は出生した時から始まっている。産まれる前、未だ母の胎児にいた頃より、彼は神を感じ、神を見た。
この世のものとは思えないほど、美しい悠久の黄昏。その世界にて女神を中心に、力を振るう三柱の神。嗚呼、なんと美しいことか。時は凍てつき、黄金は光を放ち、星は流星群のように降り注ぐ。美しきかなハレルヤ!
もっと間近で
生まれながらにして常人と変わらぬ知恵を持ち、考えられるだけの思考をしていた故の歪み。まだ何も知らぬ、純粋な存在故にその魂は歪み、目指してはいけないものを目指した。
やがて成長し、気付いた。自分の力は彼らと似て異なるもの。力の元は同じだが、性質が違いすぎる。彼らは己の
そうか、私ではダメなのか。私では彼らと同じにはなれない。
絶望などしている時間はない。命は有限。ほんの短い間にあの高みを目指さなければ。だが私では不可能なのは確信した。ならば、相応しい者を見つけよう。彼らと同じ高みに昇れる存在を見出し、試練を与え苦痛と苦悶の果てに辿り着かせよう。そして、私は更にその力を感じ取る。最も身近な位置で、永遠に。
そして見つけた。世界から隔離された都市で。直感した。この少女ならば、彼らと等しき高みへ到れると。理由?根拠?そんなものなんでもいい。私が選んだ。理由などそれだけで十分だ。
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順調に広がっている。学園都市でニュースとなっているグラビトン事件、一時期常盤台で話が広まった常盤台生だけを狙った不意打ち事件。その事件は共に私が彼女に与え、広められたレベルアッパーによる進化の賜物。無能力者を能力者に。弱能力者を今日能力者に。
過剰使用すれば脳は特殊なネットワークに接続され、能力者特有の高い演算能力はコンピュータの一部となり、能力者は演算を行うだけの機能となる。
「ふふ・・・もうすぐだ。もうすぐ学園都市に新たな法則が誕生する」
あと少しで使用者は一万人を超える。一万人の
未だに学園都市には存在しない
理論上は、接続された一万人の能力を中心たる彼女が自由自在に操れる。そのままの能力を、そのままの強度で。
是非ともぶつけてみたいものだ。無論、勝つ方は決まっているが、どれだけ粘り、成長させる材料となるか。優しい彼女は何かしら思うところがあるだろう。故に、ただ倒すだけではない。
能力だけではダメなのだ。心も、魂も強くなくては。
「おや?」
携帯が震える。画面を開けば見慣れた名前からの一件のメール。内容は今暇かどうか。いや、関係なくすぐに来いと書いてある。
「ああ、勿論いいとも」
丁寧な口調をいつも通りの慣れない粗野な口調に戻し家から出る。目指すは第七学区、セブンスミスト。
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御坂美琴はソワソワしていた。何故か。それは目の前に置いてある可愛らしい花柄のパジャマが原因だ。
御坂は中学生だが、その趣味は子供よりも子供らしい。事実、御坂が気に入ったこのパジャマは、一緒に来た友人の佐天涙子と初春飾利からは子供っぽい、流石に中学生になってこれはないと言われてしまった。
だが御坂は一目で気に入ったこのパジャマを逃したくない。故に一つの手を打った。基本、お願いすれば大抵は叶えてくれる幼馴染を呼んだのだ。考え始めると丁度その人物は早足で近づいてきた。
「待たせたな。で、用っていのは」
「遅いわよ!もう10分近くも待ってたんだから!」
この怒りが理不尽なことは分かっている。そもそもここ、セブンスミストから鍍金の寮から徒歩では30分は歩かなければ着かない。
だが鍍金にはバイクという足があった。だからこれだけ早く着くことが出来た。
「仕方ないだろ。俺は
荒ぶる美琴をどーどーと抑えながら受け流す。そもそも街中での能力仕様は禁止である。美琴は毎日の様に使っているせいで忘れているようだが。
「まぁいいわ。あんたに用っていのは———」
「これを代わりに買ってくれと。・・・確かお前中学生だったよな?」
「別にいいでしょ!」
御坂が何かを言い切る前に、鍍金は横を通って御坂の後ろにあったパジャマを手に取る。やはり鍍金も柄を見て本当に中学生の趣味として正しいのか不安になってしまう。
男である鍍金にも言われて本当に自分の趣味は可笑しいのでは、と御坂が思い始めるのも時間の問題だろう。変わるかは別として。
「じゃあ送り先は御坂の寮の部屋でいいな?」
「まっ、まぁ別にいいけど・・・。ほら、直接渡しに来た方が良くない?それに部屋には黒子もいるし、届いた時にみ、見られるのも嫌だし・・・」
「いや、常盤台の寮は花園の園にあるんだぞ?女生徒ならばともかく、俺みたいな男子生徒がそう易々と入れるわけないだろう」
常盤台のある地区は花園の園と呼ばれる、男子ご禁制のお嬢様学校が密集している地区にある。いかに高位な能力者だろうと、許された時以外に必要以上に敷地内に踏み込むことは不可能だ。入れば即刻警備員が来て拘束されるだろう。
「それに、部屋着だから別に見られるのは構わないのだろ?彼女だってお前の趣味を分かって、お前を好んでいるんだから。そう必要以上に恥ずかしがる必要はない。ほら、友人が待ってるんだろ?」
「ちょっと待ちなさ———」
レジへ歩いていく鍍金を引き止めようと同じく歩き出す御坂だが、その直後、視界に映った人物が彼女の行動を無理矢理に引き止めた。
「おっ、ビリビリじゃねぇか」
トゲトゲ頭の少年は、頭から電気をパチパチと漏らす御坂に向けて、気軽にそう言った。
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「危なかった」
鍍金は先程いた階より一つ下の階にいた。手には丁寧に包装され、紙袋に入れられた先程の部屋着。御坂から離れたあと、すぐにレジを目指して足早に去った聖は、先程一瞬だけ見えた少年を思い浮かべる。
「アレが上条当麻か。生で見たのは初めだが、いやはやなんとも
一瞬だけ視界に映っただけとはいえ、彼の異常性は己の目を疑いたくなるほどだった。一般人から見れば普通の少年にしか見えないだろう。能力者から見てもどこにでもいる
その中にいる悍ましい何かに、鍍金は気分を悪くした。故に足早に去ったのだ。
「あながち、アレイスターの忠告は無視してはいけなかったな」
かつて『人間』に言われたことを思い出す。時が来るまで、上条当麻を直に見てはいけないと言われたことがあった。その言葉にあまり何も感じなかったが、実際に見れば彼の言葉が正しかったことが理解できた。
「世界をありのままの姿に戻す右手。触れれば如何な能力であろうと、それが異能ならば善も悪も問わずに無に帰す。全く、
空虚に瞳を空に向けながら、鍍金はエスカレーターを使って更に下に降りていく。頭にあった少年については既に振り払った。今はまだそこまで考える必要はない。
それにこのあとは手に持つ部屋着を常盤台の学生寮にある御坂の部屋に送る準備をしに行かなければならない。
面倒だとは思わない。鍍金は御坂美琴という少女をよく理解しているからこそ、こうなる結果は目に見えていた。
「そういった所がまた可愛らしいんですけどね」
もし本人が聞いていたならば、電撃を漏らしながら全力で否定していただろう。幼馴染のそんな姿にほほ笑みを浮かべる。
「ああ、すいません」
考え事をしていたせいで、歩いてきた学生とぶつかりそうになってしまう。咄嗟に鍍金が避けて謝罪するが、学生はヘッドホンをしており、更に小声でブツブツと何かを呟いているため、聞こえなかったようだ。
その背中を見えなくなるまで見送ると、鍍金は心の中でせせら笑う。
「分不相応の力に取り憑かれた者の末路は、いつだって同じですよ」
その十数分後、セブンスミストで最近学園都市を騒がせていた重力波を操る能力者による、
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