古より、闇に紛れ闇を斬る義勇の者が居た。
それは現代(いま)も変わらない…人の世が続く限り人の闇は尽きぬ。
彼らが自身に課す使命は認知の闇の中にあり、内なる光と共にある。
◆ZERO◆
「よう!兄ちゃん!
イカした格好してるねえ!バイクもクールだ!」
「おっ、もしかしてRIの人?」
「もちのロンよぉ!
ここいらは俺たちのフォースネストから近いしよぉ!ヒャッハー!」
「へぇ…。
もうそんな場所なんだぁ」
巡回と言う名の散歩中であったロッテンアイアンの構成員は、不思議なダイバーに出会った。銀の装飾が施された黒いロングコートと、エキセントリックな雰囲気を身にまとう青年だ。
彼の名はキタザキ、ある理由で決まったフォースに属さず各地を渡り歩く男。
目的は、彼の存在と共に誰にも知られていない。
「あんた、フォースは?」
「俺?どこにも入ってないよ?」
「あー、傭兵ってやつかぁ。
しびれるぜぇ…でもよ、イベントとか参加できねぇんじゃねえのか?」
「そうだね。でも、俺そういうのは興味ないね。
俺はやりたい…というか、やらなきゃいけない事があるから」
キタザキのする謎めいた言い回しに、RIの構成員たちは首を傾げた。
何を言っているのだ?と。
「やらなきゃ…?なんだそれ」
「さあね…。
所で、“地獄のへそ”って呼ばれている場所があるって聞いたけど」
「地獄の」「へそぉ!?」
2人は彼の口にした名前に絶叫し、慄いた。
知っているからだ…その“地獄のへそ”と呼ばれる所がどのような場所であるか。
「お前、お前お前!
やめとけって!あそこはヤバい!エクハザールさんも手を焼いてるんだ!」
「そうだぜ!?そ、それによ、行くならよ、チャンプとかロンメルの大佐とかが奴らの本拠地を叩きに行くからその後で「バカ!それ部外秘だったろ!」あ”、しまった!」
この二人組は相当おつむが足りていないらしい。
「ふーん。なんだか面白そうなことするんだ。
それはいいとして…へその場所は?」
「ど、どうしても…知りたいか?」
「うん、知りたい」
「―――――――――――――――――このまま、向こうに真っすぐ行けば簡単にたどり着く。
行くのは簡単だ。だが…」
「ありがと。
それじゃ」
「お、おい!最後まで!
…行っちまった」
「…まあ、あのあんちゃん強そうだし…?」
「だな!
……………帰るか」
「ああ。
戻るかな、アイツ…」
道案内をしてくれた2人に軽く感謝して、大型バイクに跨ったキタザキは聞いた方角へと走り去っていった。
◆オーストラリアサーバー内陸クレーター(通称・地獄のへそ)◆
そこは、地獄と呼ばれるに等しい場所であった。
恐らく“奴ら”にやられたのであろうガンプラたちの残骸で死屍累々としており、まだ息が残っている機体が蠢く様は地獄の責め苦すら思い浮かばせる。
しかし…彼らに罪などなかった。ただ、GBNを楽しんでいただけだと言うのに…!
「ッ…!」
キタザキは溢れんばかりの怒りを奥歯で噛み締めた。
分かっている、この光景が分かっているから来たのだから。
―――――――――――――――――――突然!瀕死のガンプラにビームサーベルが突き立てられる!
彼はいち早くビームサーベルを投擲したものの姿を見た!
「ッ…。
へえ、よろしくやってたのか」
中央には、やたらとけばけばしい色をしたヴァイエイトが立っており、その周りを取り囲むように取り巻きのサーペントが7、8機ほど現れた。
「クックク…バカなヤツだ、一人でノコノコとやってくるたぁ。
―――――――――――――――――――おい!」
「!」
不意に気配を感じたキタザキは直ぐに後方を向く。
…そこには同じくサーペントが4体…彼は既に包囲されていた。
「恨むんじゃねえよ?お前が一人で来るからこうなるんだからよぉ…。
逃げようなんざ考えたら―――――――――――――――――――」
「別に、逃げる気なんてないけど?」
酷く歪んだ、醜い声と顔で警告する男に対して彼は持ち前の輝かしい笑顔のままでバッサリと答える。
それに対して男が更に顔を歪めながら舌打ちをする間にキタザキは自分のガンプラへと乗り込んでいた。
それは黒く塗られて、背中にほのかに青みを宿した銀色の大型ユニットを付けた…それだけのリーオーだった。
武装も双剣のみ、余程の自信家でなければこんな酔狂な装備は使わないだろう。
名を【魔戒リーオー】と言うソレは、双剣を逆手に持ってゆっくりと構えた。
「クッ…くカカ、本物のバカか?アイツ。
剣2本でどうしろってんのよ…アヒャ!」
男の笑いに釣られ、取り巻きもまた笑い出した。
しかしキタザキは一切気にしない、“奴ら”の言葉など、ただの戯言でしかないと知っているからだ。
「それはどうかな…?
ハァアッ!!」
笑うのに夢中な連中を、準備が整うのを待つこともなくいきなり斬りかかった!
ヴァイエイトのすぐ隣にいたサーペントが、瞬く間に切り裂かれ爆散する!
あの重装甲のサーペントが、だ。
「あ、アイツいきなり斬りかかったぞ!」
「撃て!早く!」
慌てて他のサーペント達もガトリング砲で狙い撃ちにしようとするも、高い推力と運動性能で射線を振り切るリーオーには追い付かない!
「クッソが!リーオーのくせに…うわッ!?」
サーペントの1機がまた、ガトリングを持つ腕を切り裂かれた後にコックピットを一刀両断されて撃墜され、そのコンマ1秒後には他の2体が3枚おろしになっていた。
「死ね!」
サーペントの肩部よりミサイルが発射された!
だがキタザキは双剣の柄を連結し、両刃剣としてその手でプロペラのように回し、ミサイルをすべて叩き落した!
再び双剣に戻し、遠く離れたサーペントへと高速移動で距離をあっという間に詰める!
ミサイルを放ったサーペントは頭からつま先までバッサリと切り裂かれ、左右に割れて爆発四散する。
…その時、リーオーの目の前を何かが横切った!
残ったサーペント数体が先ほど倒したダイバーたちの武装をはぎ取り使っていたのだ!
ビームを、実弾を、飛びいるすべてを双剣で落とした後にキタザキは更に怒りを加速させる…!
「ホンット!お前たちマスダイバーには本気で虫唾が走るよなぁ…!!」
…そう!ここにいるヴァイエイトとサーペント達はマスダイバー…つまり、非公式のチートツール【ブレイクデカール】を使って迷惑行為を働く者たちだ!
それを何処で知ったのか…キタザキは奴らを斬る為に今オーストラリアサーバーへと赴いたのである。
「クソ…!知ってて来やがったのか…!
クソ、クソクソクソクソクソ!お前ら―――――――――――――――――――ッ!?」
男がイラつきを抑えられずに癇癪を起している間、既にリーオーは取り巻きのサーペントを全て斬り倒し、全滅させていた。
「案外脆かったな…マスダイバーが、聞いて呆れるぜ。
こんな奴らに倒された、クレーターの皆や…その前の奴も可哀そうだ」
「この…!
貴様ぁ…!!!」
予想外の事態に頭が茹で上がった男は、何の躊躇もなくブレイクデカールを発動する!
…その体は大きく膨れ上がり、腕は更に大きくそして鋭い爪を生やして、足も獣の後ろ脚のように変貌する!
操縦者の怒りをくみ取ってか、ヴァイエイト(だった何か)は甲高く吠えた!
「死ね、死ねよやぁあああああああッ!」
ヴァイエイトは腕を鞭のように振るった!
だが、リーオーはバク転をしながらクレーターの上へと高く跳んで回避し、その崖っぷちに着地する。
――――瞬間、背中の銀色のユニットが光となって消滅する。
オーストラリアサーバーの乾いた風に吹かれながら、キタザキは頭上で双剣をクロスさせた!
グルリッ!
その剣の切っ先で頭上に二つの円を描き、その円へと跳び込む!
黒いリーオーの体が白く光り、先の大型ユニットと同じ、ほのかに青みを帯びた銀色の鎧がリーオーを包む!
…彼の名は、キタザキ。
だが、またの名を―――――――――――――――――――
[99.9]
「お前…!
なめんじゃねええええええええああああああああ!」
飛び掛かってきたヴァイエイトを急降下で勢いをつけたキックで打ち落し、絶狼自らはその足で見事な着地を決める…!
その後に絶狼はゆっくりと、そして力強く剣を構えた!
「貴様の陰我…俺が断ち切るッ…!!!」
「てめえ…てっめええええええええええええ!!!」
ヴァイエイトは再び右手を振り回した…!
しかし絶狼はブレイクデカールで強化されているであろうヴァイエイトの爪をいとも容易く蹴り返して弾き、懐へと跳び込んで腹を切り裂いた!
間髪入れずに顔面の高さまで跳んだ絶狼は頭部を3連続で蹴り、最後の1発で大きく飛び退いて距離をとった。
残り72.4秒
ヴァイエイトは全身からトゲを生やしてそれをミサイルのように射出した。それを絶狼は何でもないかのように切り払って対処し、余裕の素振りを見せつけ挑発した。
流石のヴァイエイトも、ここまで圧倒的だと戦意を喪失したようで踵を返してクレーターの崖を上った。だが「逃がすか」と言わんばかりに絶狼は胸部アンカーショットを射出してヴァイエイトの背中に突き刺し、ワイヤーを巻き取って急接近する!
「ハァアッ!!」
バッサリと切り裂かれた背中の傷は、本来再生するはずなのだが何故か機能しない。
絶狼を叩き落すためにヴァイエイトは三度腕を振るものの、今度は腕そのものを斬り落とされてしまい反撃の手段も逃げる手段も失って再びクレーターへと落ちていった。
絶狼は落下しながらライターのような武器を取り出し、そこから青く白い炎を噴き出した!それをクレーターの底で仰向けになるヴァイエイトへと投げつけて炎上させる。
炎の苦しみの悶えたヴァイエイトは暴れまわり、必死に炎を消そうとするが消えない。
絶狼は双剣を構え、一気に畳みかけるつもりのようだ!
「ハァアアアアアッ!!」
ヴァイエイトの首元へと跳び込み、そして着地と同時に双剣を振るう!
バッサリと切断された首は宙を舞い、体はその動きを止めてやがて青白い炎に包まれてゆく!
しかし首はまだ生きている!ヴァイエイトは最後の力で口を生成し、絶狼をかみ砕こうとするがその前に絶狼の両刃剣が額に突き刺さる!
ヴァイエイトは爆裂四散し、絶狼はその風圧でクレーターの上まで飛んで、綺麗に着地した直後に絶狼をリーオーごと解除した。
…キタザキは今回のマスダイバーを倒したのを確認すると、その場を立ち去ってまた何処かのマスダイバーを狩りにむかった。
―――――――――――――――――――彼の名はキタザキ、またの名を銀牙騎士・絶狼
―――――――――――――――――――本来の名は…誰も知らない。
◆GBN内の酒場◆
一人酒の席に座っていたチャンピオン、クジョウ・キョウヤの目の前にグラスに入った酒が置かれた。
オリーブ抜きのマティーニだ。
「これは…」
「俺の奢りだよ、チャンピオン」
彼の隣には、いつの間にかキタザキが座っていた。
「君は―――――――――――――――――――」
「チャンピオン、近いうちにマスダイバーの温床を叩きに行くんだって?」
「!?、なぜそれを…」
「俺、耳がいいから」
そう言って、キタザキは生クリーム入りのホワイトルシアンをあおった。
…生クリームの比率がえらいことになっているが。
「――――そうか、君がブレイクデカール狩りの男か」
「あ、知ってたんだ。
俺のこと」
「ああ…エクハザールから聞いてね」
「そっか…(あの時の2人か)。
じゃあ、俺がどうして来たのか…わかるよね?」
「いいだろう、君も有志連合に招待しよう」
「…そう来なくっちゃ」
【終】
皆も牙狼見ようね!金曜日の0時半からBSの何チャンでMAKAISENKI再放送やってるよ!