今回はエクハザール(コダイ・シンスケ)の一人称視点となっております。
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NETNEWS
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GBNチャンピオンのキョウヤ氏、ついに48時間配信を…
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遺族らが追悼、デパート爆発事故あれから…
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ブラックサイス社暴落、CEOのトーヤー・マツダ氏…
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米ロサンゼルス州、史上最大規模の玉突…
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【PR】あなたのガンプラを強くする!最強の塗…
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埼玉に謎の飛行物体、目撃者多数…
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指定暴力団幹部2名逮捕、海外のギャング組織と…
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横浜市青葉区、高校生刺され重傷。犯人は逃…
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米フロリダ州、80代男性がワニをバックドロ…
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――――…
――…
別に見たい訳でも無かったネットニュースを衝動のまま開き、イラ立つままの勢いで親指を乱雑に動かしスクロールを下へ下へと物凄い勢いで下げていく。
やがてこれ以上下がらなくなると今度は何度も何度も何度も電源ボタンを連打し始める…ついたり消えたりする画面に一切目を向けず、俺の貌はずっと白い…いや、2か所に謎のシミのある天井を眺めていた。もうとっくの昔に動かなくなったシーリングファンの羽を一つ一つ目で追っていた、ただ数える訳でも無く。
「っ…。
クソ…」
独り暮らしを始めてもう数年か十数年、日常生活の中でこれほどまでに心が焦ったのは第二次有志連合の時以来だ…あの時と違うのは状況の組み合わせ、有志連合の時は板挟みからくる焦りで進むに進めなかったが、今は進みたいのに進めず焦っている。
自分は有志連合の時、一度でも命を奪う判断をした自分自身が許せなくって、今こうして一人の命を預かっていて…その命さえも奪わなければならないというから、今度こそはと“そう”なる前に動き出した。
――――いや、違う。“動き出そう”とした、だけ。
あの頃、夢にまでも見たGPD大会の時…何かが繋がった――――何かに繋がったあの瞬間を求めてあらゆる手段を尽くした。当時と似たような機体を作り出しGBNで何度か戦い…そして態々旧友を読んでまでGPDで戦い…。
最後に自分が感じたものは………慢性的な焦り以外に何もなかった。何も掴む事は無かった…怒りさえもが喜びに変わる激しい衝動も、自分の知らない体の一部が目を覚ます感覚も、本能が酔うように魅せられていく様も…。全ては遠い日の幻であったかのように。いや、実際ただの幻だったのかもしれない…幼い自分が、ストレスに耐え切れずとうとう見始めただけの幻に過ぎなかったのか…?
デンの思う“つながり”は、自分の知っている“つながり”とは違うのか…?
そもそも彼女はつながり自体には何も感じていなかったのか…なれば俺は途方もなく無駄なあがきをここ数日間繰り返していただけになる。
―――――――――――結局何も出来ちゃいない。まごついている間に全てが終わるだろう。
何もかもが嫌になってきて、遂にスマホをそこらに投げ捨てた。
…少し冷静さを取り戻し今まで自分が何をやったのか思い返していると、嫌気が更にのしかかる。
「…情けない」
自分の不甲斐ない姿に、思わずつぶやいてしまった。
一度は飲み込んだハズの劇物が、胃の中でぶり返して今や喉元まで迫りつつある…そんな、嗚咽している自分が…――――。
「あ、あの…」
「ッ!?で、デン?
ッ…んっ、どうしたんだ…どこか軋むのか…?」
風当たりの強い口調になりそうなのをグッと堪えて、突然声をかけてきたデンに返事をした。
「いえ、そうじゃなくって…。その、頼んでいいですか?」
「頼ん…?
何をさ」
「あの…明日、良かったら僕も一緒に…ろ、ログインを…」
「ッ…!?
ど、どういう風の…吹き回しやねん」
今のは汚い言葉を抑えた。
思わずWTFを言いそうになった。
「それは…。
――――やっぱり、このままエクハザールさんに…迷惑、掛けたくなくって…」
「迷惑って、んな事ねぇよ。それにGBNってそんな辛い思いして行く場所じゃないから………その……」
「…」
彼女は「どうしても」という目をしていた。
何がデンを駆り立てるのかは分からない…もしかすると心の奥底に眠った勇気とやらが目を覚ましたのだろうか?どっちにしても俺は彼女の意思を止めようとは思えなかった。
「…分かった。もしかすると、声も無くなってるかも…?
いや、ちょっと無責任だな…まあ行くだけ行ってみようか。明日」
「!、ありがとうございます!」
「ヤバかったら言うんだぞ?
直ぐ戻すから」
「はい…!」
「良し。
それじゃ…今日はもう寝なさい。もう11時半じゃん」
デンをベッド(いとこが壊したシル〇ニアのやつを改造したやつ)に寝かしつけて、自分も敷布団に倒れた。隣にあるストラップも邪魔だろうとどけようしたが彼女に止められたのでそのままにしておいた。
…その後しばらく眠る事が出来なかったが、30分経った今現在はかなり瞼が重くなってきている。いずれ俺も眠れるだろう。
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◆ ◆ ◆
◆ ◆ ツナグために…
◆ ◆ ◆
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「…ノヴェン太、フォースネストの様子は?」
『ちゃんと出払う様に言っておいた。
今やもぬけの殻って奴だぜエクハザール』
「ありがとう」
『随分センチだなぁ?今日のあんたは。
…ま、泣き虫男がいきなり叫び出さなきゃいいがな』
「縁起でもねぇ事言うんじゃねえよバカ。
――――行くぞ、デン」
「はい…!」
ダイバーギアを接続した俺達は、極度の緊張感の中で電源スイッチに手を掛けていた。
一応ログインして直ぐにフォースネストには飛ぶようになっているので万が一にも騒ぎになる可能性は無いだろう…が、問題はそこじゃない。果たしてこのログインがデンに悪影響を及ぼすことは無いだろうか?そういった不安でいっぱいだった。
そっと、彼女とアイコンタクトを取った後…俺は電源ボタンを押した。
―――――――――――――しなければ良かった、なんて結果論だろうか…?
よくも…!!!
殺してやる!
ログインが完了した瞬間、デンが急激にしゃがみこんだ。
必死に耳を抑え身を低くする彼女のその様は、まるで圧倒的な恐怖を放つ何かから逃れようとしているようだったのだ。
何故殺した!!!殺す必要は無かっただろ!!
――――いや、“ようだった”ではない。
いるのだ。彼女には分かるのだ…その圧倒的な恐怖の存在が…!
やっぱりお前らを生かすべきじゃなかったんだ…!!
ぶっ殺してやる!
「大丈夫か!?デン!しっかりしろ…!!!」
もうお前らの未来のためとやらもたくさんだ!さんざん俺達の尊厳を奪いやがって何が未来だよ!!あ!?
「声が…叫んで、暴れて…。
…殺して、やるって…!!」
返せよ…!アイツを返せよ…!!!
「ッ…!!」
お前らに…なんの権利があるんだよぉ…オイ!言ってみろよクソ野郎!!
「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」
…まだそんな事言ってんのか…!このクズ野郎ッ!!!
「何を謝ってるんだ!!
とにかく…さっさとログインを…――――ッ!?」
何故か何度もログアウト操作をしようとしてもデン共々拒否されてしまっている。
こんな時にサーバー障害かと思ったが、運営からはそんな情報は一切出てなかった…何かの間違いか、それとも運営の仕事が遅いだけか分からなかったので駆け寄ってきたノヴェン太に助けを仰いだ。
「おいノヴェン太!お前どうなんだ!?ログアウトできるのか!?
俺とデンは何故か弾かれるんだ!!」
「ログアウト…!?
いやできる!弾かれない!」
「ッ!?
まさか…!」
例のエボニーカイザーの影響…確証は全くないがそうとしか考えられなかった。一先ず怯えるデンを宥めながら、何か打てる手はないかインターフェースを彼是操作し始めた。
「クソ…!なんだこりゃ…!
……デン!大丈夫だ、声だけだ…何も襲わないよ…!」
「…ダメ、やめて…!」
ッ!なんで止めるんだよ!アイツらあの子を…ッ!!!
「おい…おい!
デン、デン!?何も無い…何も居ないよ…!」
「分かってる…!
でも…あなたまで…!」
だったらッ……!どけッ!!
「どうしたんだ…!
何が見えているんだ…デン…!!」
後はテメェだけだ…!!地獄に、落ちろクソッタレ!!!
「ッ…!もうやめて!
もう殺さないで……………“――――”ッ!」
…ッ!!
そ、そんな…どうして…!
「…デン?
今お前、何て…――――ッ!!」
――――デンが一瞬、謎の音を発したその時だった。
突如として何か強大な引力に引き込まれるような感覚を覚えた後、視界が真っ暗になった。
ただ視界が真っ暗になっただけではない…聴覚や嗅覚、そして平衡感覚すら失い、全身に蓋をされたまま宇宙に投げ出されたような状態になっていた。何が起きたのか理解しないまま…ただ時間だけが過ぎる。どこか懐かしさを感じたままに、その懐かしさの理由すらわからず。
…やがて、自分の正面に小さな光が生まれた。
この時になって懐かしさの正体が分かってきた……………そうだ、俺は、俺は一度…ここに来た事がある。
「…!(まさか…これって…)」
懐かしさに身を任せ、躊躇いなくその小さな光に手を触れた――――――――――――――――瞬間、まばゆい光に包まれ、思わず目を瞑ってしまった。
「…ッ!?嘘、だろ…」
恐る恐る目を開くと、辺りは暗闇ではない…深い森の中に立っていた。
更に恐ろしい事に辺り一面には…真っ赤に染まった、死体の数々が転がっているのだ。
よく見てみると死体は損傷が余りにも激しい(上半身・下半身がない、顎から上が潰れている等)ものが多く、お世辞にも直視できるようなものでは無かった。
凄惨な現場を目にして思わず吐き出しそうになるのを堪え、不意に動く気配がした方向を顔を向ける。
……俺の直ぐ目の前に、膝をついて垂れ込む男の背中があった。
男は腰を曲げ、何かぶつぶつと…念仏でも唱えているように呟いている。無論、本当に念仏な訳が無かった…例え、目の前に比較的状態の良い死体があったとしても。
聞き取れた単語は「どうして」「何の冗談だ」「もう嫌だ」の3つぐらいだった…状況と、念仏擬き以外のすすり泣くような声からして目の前の死体は(男にとって)親しい誰かだったのだろう。
「気の毒に…」
「ッ…!」「しまッ…!」
迂闊に口を開いてしまい、男に存在を知られてしまった。
白髪の男は俺を視認するや否や尋常でない殺意をむけて立ち上がり、その血にベッタリと染まった指をかぎ爪のように曲げて迫ってきた。
…やはり間違いない、この男だ。目の前の青い髪を殺したのも…周囲のバラバラ死体も…。
男が一歩一歩迫って来るのに合わせて俺も後ずさるが、途中何かに足を引っかけてしまい尻餅をついてしまった。
「ッ…!」
依然、男は殺気を放ちながら迫っている。
殺されるという恐怖に襲われ、尻餅をついたまま下がる事も出来ず金縛りにあってしまった。
…いつの間にか、男の手にはナイフが握られていた。人を一刺しで殺すのには十分な刃渡りだ。
最早これが幻だとかどうとかという問題ではない、本気で大変な事になってるのだ…なのに身体が動かない。怖すぎて動けない、殺す気の攻撃なんて道場で親父をガチギレさせたときに何度も受けてきた…が、男の殺意はあんなものではない。というかそもそも親父が本気の殺意を込めてたわけが無かったのだ…。
「あ、あ…」
情けない声しか出なかった。叫ぶことも…泣きじゃくる事も出来なかった…。
俺の目の前まで迫った男がナイフを振り上げる…。
「ッ!!!
ダメッ…!!」
間一髪、デンが男の腕にしがみ付いた。
――――それがきっかけで俺は我に返り、状況を飲み込んだ。
そして今自分がアバターのままである事に気付く。
ならば…と、素早く前掛けの裏に仕込んだホルスターからリボルバーマグナムを2丁引っ張り出し、男の両膝を狙い撃った!
命中した瞬間、金属が破裂する音がしたかと思えば男が膝から崩れ落ち、その勢いでデンが腕を抱えたまま男の背中にのしかかる。
…そして再び、俺達は光に包まれる。
「ここ、は…」
目を開き、映った景色は…広大な砂――――いや、この触感は砂じゃない。灰だ。
そよ風で下流のようになだらかに流れゆく、灰の大地にて俺は座り込んでいた。
…あれ?これ世紀末ダイバーズだよね?