氷創の英雄 ~転生したけど、特典の組み合わせで不老不死になった!~ 作:星の空
「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」
フェアベルゲンを追い出された俺達が、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、南雲の第一声がこれだった。拠点といっても、南雲がさり気なく盗ん……貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。その中で切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべた。
「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」
困惑する一族を代表してシアが尋ねる。
「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等を一端の戦闘技能者に育て上げようと思ってな」
「な、なぜ、そのようなことを……」
南雲の据わった目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突な南雲の宣言に当然の如く疑問を投げかける。
「なぜ? なぜと聞いたか? 残念ウサギ」
「あぅ、まだ名前で呼んでもらえない……」
落ち込むシアを尻目に南雲が語る。
「いいか、俺がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前等は考えているのか?」
ハウリア族達が互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振る。カムも難しい表情だ。漠然と不安は感じていたが、激動に次ぐ激動で頭の隅に追いやられていたようだ。あるいは、考えないようにしていたのか。
「まぁ、考えていないだろうな。考えたところで答えなどないしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、遂にフェアベルゲンという隠れ家すら失った。つまり、俺の庇護を失った瞬間、再び窮地に陥るというわけだ」
「「「「「「……」」」」」」
全くその通りなので、ハウリア族達は皆一様に暗い表情で俯く。そんな、彼等に南雲の言葉が響く。
「お前等に逃げ場はない。隠れ家も庇護もない。だが、魔物も人も容赦なく弱いお前達を狙ってくる。このままではどちらにしろ全滅は必定だ……それでいいのか? 弱さを理由に淘汰されることを許容するか? 幸運にも拾った命を無駄に散らすか? どうなんだ?」
誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。
「そんなものいいわけがない」
その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。
「そうだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破り、自らの手で生存の権利を獲得すればいい」
「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」
兎人族は弱いという常識が南雲の言葉に否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いても南雲の言う様に強くなど成れるものか、と。
南雲はそんなハウリア族を鼻で笑う。
「俺はかつての仲間から“無能”と呼ばれていたぞ?」
「え?」
「“無能”だ“無能”。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故に、かつての仲間達は俺を“無能”と呼んでいたんだよ。実際、その通りだった」
南雲の告白にハウリア族は例外なく驚愕を表にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、戦闘能力に優れた熊人族の長老も、苦もなく一蹴した南雲が“無能”で“最弱”など誰が信じられるというのか。
「だが、奈落の底に落ちて俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないか何て頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った。……気がつけばこの有様さ」
淡々と語られる内容に、しかし、あまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走る。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったということだ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たというのだ。実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄した。自分達なら絶望に押しつぶされ、諦観と共に死を受け入れるだろう。長老会議の決定を受け入れたように。
「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。その時は今度こそ全滅するだけだ。約束が果たされた後は助けるつもりは毛頭ないからな。残り僅かな生を負け犬同士で傷を舐め合ってすごせばいいさ」
それでどうする? と目で問う南雲。ハウリア族達は直ぐには答えない。いや、答えられなかったというべきか。自分達が強くなる以外に生存の道がないことは分かる。南雲は、正義感からハウリア族を守ってきたわけではない。故に、約束が果たされれば容赦なく見捨てられるだろう。だが、そうは分かっていても、温厚で平和的、心根が優しく争いが何より苦手な兎人族にとって、南雲の提案は、まさに未知の領域に踏み込むに等しい決断だった。南雲の様な特殊な状況にでも陥らない限り、心のあり方を変えるのは至難なのだ。
黙り込み顔を見合わせるハウリア族。しかし、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。
「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」
樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。
不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐ南雲を見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、男だけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。
「ハジメ殿……宜しく頼みます」
言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。
「わかった。覚悟しろよ? あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしないからな。おまけに期間は僅か十日だ……死に物狂いになれ。待っているのは生か死の二択なんだから」
南雲の言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。
✲✲✲
南雲は、ハウリア族を訓練するにあたって、まず、“宝物庫”から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼等に渡した。先に渡していたナイフの他に反りの入った片刃の小剣、日本で言うところの小太刀だ。これらの刃物は、南雲が精密錬成を鍛えるために、その刃を極薄にする練習の過程で作り出されたもので切れ味は抜群だ。タウル鉱石製なので衝撃にも強い。その細身に反してかなりの強度を誇っている。
そして、その武器を持たせた上で基本的な動きを教える。もちろん、南雲に武術の心得などない。あってもそれは漫画やゲームなどのにわか知識に過ぎず他者に教えられるようなものではない。教えられるのは、奈落の底で数多の魔物と戦い磨き上げた“合理的な動き”だけだ。ならば合理的な動き以外は慧郎に頼み、あとは適当に魔物をけしかけて実戦経験を積ませる。ハウリア族の強みは、その索敵能力と隠密能力だ。いずれは、奇襲と連携に特化した集団戦法を身につけばいいと思っていた。
ちなみに、シアに関してはユエが専属で魔術の訓練をしている。亜人でありながら魔力があり、その直接操作も可能なシアは、知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔術が使えるはずだからだ。時折、霧の向こうからシアの悲鳴が聞こえるので特訓は順調のようだ。
香織はウサウサ共の中で怪我をした者を治したりしている。
訓練開始から二日目。南雲は額に青筋を浮かべながらイライラした様にハウリア族の訓練風景を見ていた。確かに、ハウリア族達は、自分達の性質に逆らいながら、言われた通り真面目に訓練に励んでいる。魔物だって、幾つもの傷を負いながらも何とか倒している。
しかし……
グサッ!
魔物の一体に、南雲特製の小太刀が突き刺さり絶命させる。
「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」
それをなしたハウリア族の男が魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようだ。
ブシュ!
また一体魔物が切り裂かれて倒れ伏す。
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!」
首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えるハウリア族の女。まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のようだ。
バキッ!
瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く。
「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」
その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫ぶ。
「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」
「そうです! いつか裁かれるとき来るとしても、それは今じゃない! 立って下さい! 族長!」
「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」
「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼(小さなネズミっぽい魔物)のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」
「「「「「「「「族長!」」」」」」」」
いい雰囲気のカム達。そして我慢できずに突っ込む南雲。
「だぁーーー!やかましいわ、ボケッ!魔物一体殺すたびに、いちいち大げさなんだよ!なんなの?ホント何なんですか?その三文芝居!何でドラマチックな感じになってんの?黙って殺れよ!即殺しろよ!魔物に向かって〝彼〟とか言うな!キモイわ!」
そう、ハウリア族達が頑張っているのは分かるのだが、その性質故か、魔物を殺すたびに訳のわからないドラマが生まれるのだ。この二日、何度も見られた光景であり、南雲もまた何度も指摘しているのだが一向に治らない事から、いい加減、堪忍袋の緒が切れそうなのである。
南雲の怒りを多分に含んだ声にビクッと体を震わせながらも、「そうは言っても……」とか「だっていくら魔物でも可哀想で……」とかブツブツと呟くハウリア族達。
更に南雲の額に青筋が量産される。
見かねたハウリア族の少年が、南雲を宥めようと近づく。この少年、ライセン大峡谷でハイベリアに喰われそうになっていたところを間一髪栄光に助けられた子だ。
しかし、進み出た少年は南雲に何か言おうとして、突如、その場を飛び退いた。
訝しそうな南雲が少年に尋ねる。
「?どうした?」
少年は、そっと足元のそれに手を這わせながら南雲に答えた。
「あ、うん。このお花さんを踏みそうになって……よかった。気がつかなかったら、潰しちゃうところだったよ。こんなに綺麗なのに、踏んじゃったら可愛そうだもんね」
南雲の頬が引き攣る。
「お、お花さん?」
「うん!ハジメ兄ちゃん!僕、お花さんが大好きなんだ!この辺は、綺麗なお花さんが多いから訓練中も潰さないようにするのが大変なんだ~」
ニコニコと微笑むウサミミ少年。周囲のハウリア族達も微笑ましそうに少年を見つめている。
南雲は、ゆっくり顔を俯かせた。白髪が垂れ下がり南雲の表情を隠す。そして、ポツリと囁くような声で質問をする。
「……時々、お前等が妙なタイミングで跳ねたり移動したりするのは……その“お花さん”とやらが原因か?」
南雲の言う通り、訓練中、ハウリア族は妙なタイミングで歩幅を変えたり、移動したりするのだ。気にはなっていたのだが、次の動作に繋がっていたので、それが殺りやすい位置取りなのかと様子を見ていたのだが。
「いえいえ、まさか。そんな事ありませんよ」
「はは、そうだよな?」
苦笑いしながらそう言うカムに少し頬が緩む南雲。しかし……
「ええ、花だけでなく、虫達にも気を遣いますな。突然出てきたときは焦りますよ。何とか踏まないように避けますがね」
カムのその言葉に南雲の表情が抜け落ちる。幽鬼のようにゆら~りゆら~りと揺れ始める南雲に、何か悪いことを言ったかとハウリア族達がオロオロと顔を見合わせた。南雲は、そのままゆっくり少年のもとに歩み寄ると、一転してにっこりと笑顔を見せる。少年もにっこりと微笑む。
そして南雲は……笑顔のまま眼前の花を踏み潰した。ご丁寧に、踏んだ後、グリグリと踏みにじる。
呆然とした表情で手元を見る少年。ようやく南雲の足が退けられた後には、無残にも原型すら留めていない“お花さん”の残骸が横たわっていた。
「お、お花さぁーん!」
少年の悲痛な声が樹海に木霊する。「一体何を!」と驚愕の表情で南雲を見やるハウリア族達に、南雲は額に青筋を浮かべたままにっこりと微笑みを向ける。
「ああ、よくわかった。よ~くわかりましたともさ。俺が甘かった。俺の責任だ。お前等という種族を見誤った俺の落ち度だ。ハハ、まさか生死がかかった瀬戸際で“お花さん”だの“虫達”だのに気を遣うとは……てめぇらは戦闘技術とか実戦経験とかそれ以前の問題だ。もっと早くに気がつくべきだったよ。自分の未熟に腹が立つ……フフフ」
「ハ、ハジメ殿?」
不気味に笑い始めた南雲に、ドン引きしながら恐る恐る話かけるカム。その返答は……
ドパンッ!
ドンナーによる銃撃だった。カムが仰け反るように後ろに吹き飛び、少し宙を舞った後ドサッと地面に落ちる。次いで、カムの額を撃ち抜いた非致死性のゴム弾がポテッと地面に落ちた。
辺りをヒューと風が吹き、静寂が支配する。南雲は、気絶したのか白目を向いて倒れるカムに近寄り、今度はその腹を目掛けてゴム弾を撃ち込んだ。
「はうぅ!」
悲鳴を上げ咳き込みながら目を覚ましたカムは、涙目で南雲を見る。ウサミミ生やしたおっさんが女座りで涙目という何ともシュールな光景をよそに、ハジメは宣言した。
「貴様らは薄汚い“ピッー”共だ。この先、“ピッー”されたくなかったら死に物狂いで魔物を殺せ! 今後、花だの虫だのに僅かでも気を逸らしてみろ! 貴様ら全員“ピッー”してやる! わかったら、さっさと魔物を狩りに行け! この“ピッー”共が!」
南雲のあまりに汚い暴言に硬直するハウリア族。そんな彼等に南雲は容赦なく発砲した。
ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!
わっーと蜘蛛の子を散らすように樹海へと散っていくハウリア族。足元で震える少年がハジメに必死で縋り付く。
「ハジメ兄ちゃん!一体どうしたの!?何でこんなことするの!?」
南雲はギラリッと眼を光らせて少年を睨むと、周囲を見渡し、あちこちに咲いている花を確認する。そして無言で再度発砲した。
次々と散っていく花々。少年が悲鳴を上げる。
「何だよぉ~、何すんだよぉ~、止めろよぉハジメ兄ちゃん!」
「黙れ、クソガキ。いいか?お前が無駄口を叩く度に周囲の花を散らしていく。花に気を遣っても、花を愛でても散らしてく。何もしなくても散らしていく。嫌なら、一体でも多くの魔物を殺してこい!」
そう言いつつ、再び花を撃ち抜いてく南雲。少年はうわ~んと泣きながら樹海へと消えていった。
それ以降、樹海の中に“ピッー”を入れないといけない用語とハウリア達の悲鳴と怒号が飛び交い続けた。
種族の性質的にどうしても戦闘が苦手な兎人族達を変えるために取った訓練方法。戦闘技術よりも、その精神性を変えるために行われたこの方法を、地球ではハー○マン式と言うとか言わないとか……
その頃俺達は”ピー”やウサウサ共の悲鳴をBGMにトランプをしていたりする。
✲✲✲
「えへへ、うへへへ、くふふふ~」
俺はウサウサ共の特訓の進行度を見に来たらシアが奇行をしていた。
どうやら同行を許されて上機嫌のシアは、奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた。これを奇行と言わずとしてなんという?
それは、南雲と問答した時の真剣な表情が嘘のように残念な姿だった。
「……キモイ」
「……少し落ち着いたらどうかな?」
見かねたユエがボソリと呟き、香織は落ち着かせようとする。シアの優秀なウサミミは、その呟きをしっかりと捉えた。
「……ちょっ、キモイって何ですか!キモイって!香織さんも嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ。何せ、ハジメさんの初デレですよ?見ました?最後の表情。私、思わず胸がキュンとなりましたよ~、これは私にメロメロになる日も遠くないですねぇ~」
「………そんな事ないよ?」
シアは調子に乗っている。それはもう乗りに乗っている。そんなシアに向かって香織が否定し、南雲とユエ、俺は声を揃えてうんざりしながら呟いた。
「「「……ウザウサギ」」」
「んなっ!? 何ですかウザウサギって! いい加減名前で呼んでくださいよぉ~、旅の仲間ですよぉ~、まさか、この先もまともに名前を呼ぶつもりがないとかじゃあないですよね? ねっ?」
「「「……」」」( ˙-˙)スッ
「何で黙るんですかっ? ちょっと、目を逸らさないで下さいぃ~。ほらほらっ、シアですよ、シ・ア。りぴーとあふたみー、シ・ア」
必死に名前を呼ばせようと奮闘するシアを尻目に今後の予定について話し合いを始める南雲と香織、ユエ。それに「無視しないでぇ~、仲間はずれは嫌ですぅ~」と涙目で縋り付くシア。旅の仲間となっても扱いの雑さは変わらないようだった。
そんな風に騒いでいると(シアだけ)、霧をかき分けて数人のハウリア族が、南雲に課された課題をクリアしたようで魔物の討伐を証明する部位を片手に戻ってきた。よく見れば、その内の一人はカムだ。
シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。たった十日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。
早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気が何だかおかしいことに気がついたからだ。
歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線を南雲に戻した。そして……
「ボス。お題の魔物、きっちり狩って来やしたぜ?」
「ボ、ボス?と、父様? 何だか口調が……というか雰囲気が……」
父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。
「……俺は一体でいいと言ったと思うんだが……」
南雲の課した訓練卒業の課題は上位の魔物を一チーム一体狩ってくることだ。しかし、眼前の剥ぎ取られた魔物の部位を見る限り、優に十体分はあるそうだ。南雲の疑問に対し、カム達は不敵な笑みを持って答えた。
「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」
「そうなんですよ、ボス。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」
「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」
「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」
「見せしめに晒しとけばよかったか……」
「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」
不穏な発言のオンパレードだった。全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたまま南雲に物騒な戦闘報告をする。
それを呆然と見ていた俺とシアは一言、
「「……誰?」」
✲✲✲
「ど、どういうことですか!? ハジメさん! 父様達に一体何がっ!?」
「お、落ち着け! ど、どういうことも何も……訓練の賜物だ……」
「いやいや、何をどうすればこんな有様になるんですかっ!? 完全に別人じゃないですかっ! ちょっと、目を逸らさないで下さい! こっち見て!」
「……別に、大して変わってないだろ?」
「貴方の目は節穴ですかっ! 見て下さい。彼なんて、さっきからナイフを見つめたままウットリしているじゃないですか! あっ、今、ナイフに“ジュリア”って呼びかけた! ナイフに名前つけて愛でてますよっ! 普通に怖いですぅ~」
樹海にシアの焦燥に満ちた怒声が響く。一体どうしたんだ? と分かってなさそうな表情でシアと南雲のやり取りと見ている俺とカム達。先ほどのやり取りから更に他のハウリア族も戻って来たのだが、その全員が……何というか……ワイルドになっている。男衆だけでなく女子供、果ては老人まで。
シアは、そんな変わり果てた家族を指差しながら南雲に凄まじい勢いで事情説明を迫っていた。南雲はというと、どことなく気まずそうに視線を逸らしながらも、のらりくらりとシアの尋問を交わしている。
埒があかないと判断したのか、シアの矛先がカム達に向かった。
「父様! みんな! 一体何があったのです!? まるで別人ではないですか! さっきから口を開けば恐ろしいことばかり……正気に戻って下さい!」
縋り付かんばかりのシアにカムは、ギラついた表情を緩め前の温厚そうな表情に戻った。それに少し安心するシア。
だが……
「何を言っているんだ、シア? 私達は正気だ。ただ、この世の真理に目覚めただけさ。ボスのおかげでな」
「し、真理? 何ですか、それは?」
嫌な予感に頬を引き攣らせながら尋ねるシアに、カムはにっこりと微笑むと胸を張って自信に満ちた様子で宣言した。
「この世の問題の九割は暴力で解決できる」
「やっぱり別人ですぅ~! 優しかった父様は、もう死んでしまったんですぅ~、うわぁ~ん」
ショックのあまり、泣きべそを掻きながら踵を返し樹海の中に消えていこうとするシア。しかし、霧に紛れる寸前で小さな影とぶつかり「はうぅ」と情けない声を上げながら尻餅地を付いた。
小さな影の方は咄嗟にバランスをとったのか転倒せずに持ちこたえ、倒れたシアに手を差し出した。
「あっ、ありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ、シアの姐御。男として当然のことをしたまでさ」
「あ、姐御?」
霧の奥から現れたのは未だ子供と言っていいハウリア族の少年だった。その肩には大型のクロスボウが担がれており、腰には二本のナイフとスリングショットらしき武器が装着されている。随分ニヒルな笑みを見せる少年だった。シアは、未だかつて“姉御”などという呼ばれ方はしたことがない上、目の前の少年は確か自分のことを“シアお姉ちゃん”と呼んでいたことから戸惑いの表情を浮かべる。
そんなシアを尻目に、少年はスタスタと南雲の前まで歩み寄ると、ビシッと惚れ惚れするような敬礼をしてみせた。
「ボス! 手ぶらで失礼します! 報告と上申したいことがあります! 発言の許可を!」
「お、おう? 何だ?」
少年の歴戦の軍人もかくやという雰囲気に、今更ながら、シアの言う通り少しやり過ぎたかもしれないと若干どもる南雲。少年はお構いなしに報告を続ける。
「はっ! 課題の魔物を追跡中、完全武装した熊人族の集団を発見しました。場所は、大樹へのルート。おそらく我々に対する待ち伏せかと愚考します!」
「あ~、やっぱ来たか。即行で来るかと思ったが……なるほど、どうせなら目的を目の前にして叩き潰そうって腹か。なかなかどうして、いい性格してるじゃねぇの。……で?」
「はっ! 宜しければ、奴らの相手は我らハウリアにお任せ願えませんでしょうか!」
「う~ん。カムはどうだ? こいつはこう言ってるけど?」
話を振られたカムは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると願ってもないと言わんばかりに頷いた。
「お任せ頂けるのなら是非。我らの力、奴らに何処まで通じるか……試してみたく思います。な~に、そうそう無様は見せやしませんよ」
族長の言葉に周囲のハウリア族が、全員同じように好戦的な表情を浮かべる。自分の武器の名前を呼んで愛でる奴が心なし増えたような気もする。シアの表情は絶望に染まっていく。
「……出来るんだな?」
「肯定であります!」
最後の確認をする南雲に元気よく返事をしたのは少年だ。南雲は、一度、瞑目し深呼吸すると、カッと目を見開いた。
「聞け! ハウリア族諸君! 勇猛果敢な戦士諸君! 今日を以て、お前達は糞蛆虫を卒業する! お前達はもう淘汰されるだけの無価値な存在ではない! 力を以て理不尽を粉砕し、知恵を以て敵意を捩じ伏せる! 最高の戦士だ! 私怨に駆られ状況判断も出来ない“ピッー”な熊共にそれを教えてやれ! 奴らはもはや唯の踏み台に過ぎん! 唯の“ピッー”野郎どもだ! 奴らの屍山血河を築き、その上に証を立ててやれ! 生誕の証だ! ハウリア族が生まれ変わった事をこの樹海の全てに証明してやれ!」
「「「「「「「「「「Sir、yes、sir!!」」」」」」」」」」
「答えろ! 諸君! 最強最高の戦士諸君! お前達の望みはなんだ!」
「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」
「お前達の特技は何だ!」
「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」
「敵はどうする!」
「「「「「「「「「「殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!」」」」」」」」」」
「そうだ! 殺せ! お前達にはそれが出来る! 自らの手で生存の権利を獲得しろ!」
「「「「「「「「「「Aye、aye、Sir!!」」」」」」」」」
「いい気迫だ! ハウリア族諸君! 俺からの命令は唯一つ! サーチ&デストロイ! 行け!!」
「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」」」」」」」」」」
「うわぁ~ん、やっぱり私の家族はみんな死んでしまったですぅ~」
南雲の号令に凄まじい気迫を以て返し、霧の中へ消えていくハウリア族達。温厚で平和的、争いが何より苦手……そんな種族いたっけ? と言わんばかりだ。変わり果てた家族を再度目の当たりにし、崩れ落ちるシアの泣き声が虚しく樹海に木霊する。流石に見かねたのか香織がポンポンとシアの頭を慰めるように撫でている。
しくしく、めそめそと泣くシアの隣を少年が駆け抜けようとして、シアは咄嗟に呼び止めた。
「パルくん! 待って下さい! ほ、ほら、ここに綺麗なお花さんがありますよ? 君まで行かなくても……お姉ちゃんとここで待っていませんか? ね? そうしましょ?」
どうやら、まだ幼い少年だけでも元の道に連れ戻そうとしているらしい。傍に咲いている綺麗な花を指差して必死に説得している。何故、花で釣っているのか。それは、この少年が、かつてのお花が大好きな「お花さ~ん!」の少年だからである。
シアの呼び掛けに律儀に立ち止まったお花の少年もといパル少年は、「ふぅ~」と息を吐くとやれやれだぜと言わんばかりに肩を竦めた。まるで、欧米人のようなオーバーリアクションだ。
「姐御、あんまり古傷を抉らねぇでくだせぇ。俺は既に過去を捨てた身。花を愛でるような軟弱な心は、もう持ち合わせちゃいません」
ちなみに、パル少年は今年十一歳だ。
「ふ、古傷? 過去を捨てた? えっと、よくわかりませんが、もうお花は好きじゃなくなったんですか?」
「ええ、過去と一緒に捨てちまいましたよ、そんな気持ちは」
「そんな、あんなに大好きだったのに……」
「ふっ、若さゆえの過ちってやつでさぁ」
繰り返すが、パル君は今年十一歳だ。
「それより姐御」
「な、何ですか?」
“シアお姉ちゃん! シアお姉ちゃん”と慕ってくれて、時々お花を摘んで来たりもしてくれた少年の変わりように、意識が自然と現実逃避を始めそうになるシア。パル少年の呼び掛けに辛うじて返答する。しかし、それは更なる追撃の合図でしかなかった。
「俺は過去と一緒に前の軟弱な名前も捨てました。今はバルトフェルドです。“必滅のバルトフェルド”これからはそう呼んでくだせぇ」
「誰!? バルトフェルドってどっから出てきたのです!? ていうか必滅ってなに!?」
「おっと、すいやせん。仲間が待ってるのでもう行きます。では!」
「あ、こらっ! 何が“ではっ!”ですか! まだ、話は終わって、って早っ! 待って! 待ってくださいぃ~」
恋人に捨てられた女の如く、崩れ落ちたまま霧の向こう側に向かって手を伸ばすシア。答えるものは誰もおらず、彼女の家族は皆、猛々しく戦場に向かってしまった。ガックリと項垂れ、再びシクシクと泣き始めたシア。既に彼女の知る家族はいない。実に哀れを誘う姿だった。
そんなシアの姿を何とも言えない微妙な表情で見ている香織とユエ。南雲は、どことなく気まずそうに視線を彷徨わせている。ユエは、南雲に視線を転じるとボソリと呟いた。
「……流石ハジメ、人には出来ないことを平然とやってのける」
「いや、だから何でそのネタ知ってるんだよ……」
「……闇系魔法も使わず、洗脳……すごい」
「……正直、ちょっとやり過ぎたとは思ってる。反省も後悔もないけど」
「なぁ、あのウサウサ共って殺人衝動を持ったりなんてしてねぇよな?」
「……………あっ」
「……………ハジメ君?」
暫くの間、ハウリア族が去ったその場には、シアのすすり泣く声と、微妙な空気が漂っていた。
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レギン・バントンは熊人族最大の一族であるバントン族の次期族長との噂も高い実力者だ。現長老の一人であるジン・バントンの右腕的な存在でもあり、ジンに心酔にも近い感情を抱いていた。
もっとも、それは、レギンに限ったことではなくバントン族全体に言えることで、特に若者衆の間でジンは絶大な人気を誇っていた。その理由としては、ジンの豪放磊落な性格と深い愛国心、そして亜人族の中でも最高クラスの実力を持っていることが大きいだろう。
だからこそ、その知らせを聞いたとき熊人族はタチの悪い冗談だと思った。自分達の心酔する長老が、一人の人間に為すすべもなく再起不能にされたなど有り得ないと。しかし、現実は容赦なく事実を突きつける。医療施設で力なく横たわるジンの姿が何より雄弁に真実を示していた。
レギンは、変わり果てたジンの姿に呆然とし、次いで煮えたぎるような怒りと憎しみを覚えた。腹の底から湧き上がるそれを堪える事もなく、現場にいた長老達に詰め寄り一切の事情を聞く。そして、全てを知ったレギンは、長老衆の忠告を無視して熊人族の全てに事実を伝え、報復へと乗り出した。
長老衆や他の一族の説得もあり、全ての熊人族を駆り立てることはできなかったが、バントン族の若者を中心にジンを特に慕っていた者達が集まり、憎き人間を討とうと息巻いた。その数は五十人以上。仇の人間の目的が大樹であることを知ったレギン達は、もっとも効果的な報復として大樹へと至る寸前で襲撃する事にした。目的を眼前に果てるがいい! と。
相手は所詮、人間と兎人族のみ。例えジンを倒したのだとしても、どうせ不意を打つなど卑怯な手段を使ったに違いないと勝手に解釈した。樹海の深い霧の中なら感覚の狂う人間や、まして脆弱な兎人族など恐るるに足らずと。レギンは優秀な男だ。普段であるならば、そのようなご都合解釈はしなかっただろう。深い怒りが目を曇らせていたとしか言い様がない。
だが、だとしても、己の目が曇っていたのだとしても……
「これはないだろう!?」
レギンは堪らず絶叫を上げた。なぜなら、彼の目には亜人族の中でも底辺という評価を受けている兎人族が、最強種の一角に数えられる程戦闘に長けた自分達熊人族を蹂躙しているという有り得ない光景が広がっていたからだ。
「ほらほらほら! 気合入れろや! 刻んじまうぞぉ!」
「アハハハハハ、豚のように悲鳴を上げなさい!」
「汚物は消毒だぁ! ヒャハハハハッハ!」
ハウリア族の哄笑が響き渡り、致命の斬撃が無数に振るわれる。そこには温和で平和的、争いが何より苦手な兎人族の面影は皆無だった。必死に応戦する熊人族達は動揺もあらわに叫び返した。
「ちくしょう! 何なんだよ! 誰だよ、お前等!!」
「こんなの兎人族じゃないだろっ!」
「うわぁああ! 来るなっ! 来るなぁあ!」
奇襲しようとしていた相手に逆に奇襲されたこと、亜人族の中でも格下のはずの兎人族の有り得ない強さ、どこからともなく飛来する正確無比な弓や石、認識を狂わせる巧みな気配の断ち方、高度な連携、そして何より嬉々として刃を振るう狂的な表情と哄笑! その全てが激しい動揺を生み、スペックで上回っているはずの熊人族に窮地を与えていた。
実際、単純に一対一で戦ったのなら兎人族が熊人族に敵うことはまずないだろう。だが、この十日間、ハウリア族は、地獄というのも生ぬるい特訓のおかげでその先天的な差を埋めることに成功していた。
元々、兎人族は他の亜人族に比べて低スペックだ。しかし、争いを避けつつ生き残るために磨かれた危機察知能力と隠密能力は群を抜いている。何せ、それだけで生き延びてきたのだから。
そして、敵の存在をいち早く察知し、気づかれないよう奇襲できるという点で、彼等は実に暗殺者向きの能力をもった種族であると言えるのだ。ただ、生来の性分が、これらの利点を全て潰していた。
南雲が施した訓練は彼等の闘争本能を呼び起こすものと言っていい。ひたすら罵り追い詰めて、武器を振るうことや相手を傷つけることに忌避感を感じる暇も与えない。ハート○ン先任軍曹様のセリフを思い出しながら、十日間ぶっ通しで過酷な訓練を施した結果、彼等の心は完全に戦闘者のそれになった。若干、やりすぎた感は否めないが……
躊躇いのない攻撃性を身に付けた彼等は、中々の戦闘力を発揮した。一族全体を家族と称する絆の強い一族というだけあって連携は最初からかなり高いレベルだった。また、気配の強弱の調整が上手く、連携と合わせることで絶大な効果を発揮した。
さらに、非力な彼らの攻撃力を引き上げる南雲製の武器の数々もハウリア族の戦闘力が飛躍的に向上した理由の一つだ。
全員が常備している小太刀二刀は、精密錬成の練習過程から生まれたもので、極薄の刃は軽く触れるだけで皮膚を裂く。タウル鉱石を使っているので衝撃にも強い。同様の投擲用ナイフも配備されている。
他にも、奈落の底の蜘蛛型の魔物から採取した伸縮性・強度共に抜群の糸を利用したスリングショットやクロスボウも非常に強力だ。特に、ハウリア族の中でも未だ小さい子達に近接戦は厳しい。子供でも先天的に備わっている索敵能力を使った霧の向こう側からの狙撃は、思わず南雲でさえも瞠目したほどだ。
パル……必滅のバルトフェルド君など、すっかりクロスボウによる狙撃に惚れ込み、一端のスナイパー気取りである。
「一撃必倒! ド頭吹き飛ばしてやりまさぁ。“必滅”の名にかけて」
パル……必滅のバルトフェルド君の最近の口癖である。ちなみに、“必滅”は彼の自称だ。あと、最初は「狙い撃つぜ!」が口癖だったが南雲が止めさせた。すごく不満そうだった。
そんなわけで、パニック状態に陥っている熊人族では今のハウリア族に抗することなど出来る訳もなく、瞬く間にその数を減らし、既に当初の半分近くまで討ち取られていた。
「レギン殿! このままではっ!」
「一度撤退を!」
「殿しんがりは私が勤めっクペッ!?」
「トントォ!?」
一時撤退を進言してくる部下に、ジンを再起不能にされたばかりか部下まで殺られて腸が煮えくり返っていることから逡巡するレギン。その判断の遅さをハウリアのスナイパーは逃さない。殿を申し出て再度撤退を進言しようとしたトントと呼ばれた部下のこめかみを正確無比の矢が貫いた。
それに動揺して陣形が乱れるレギン達。それを好機と見てカム達が一斉に襲いかかった。
霧の中から矢が飛来し、足首という実にいやらしい場所を驚くほど正確に狙い撃ってくる。それに気を取られると、首を刈り取る鋭い斬撃が振るわれ、その斬撃を放った者の後ろから絶妙なタイミングで刺突が走る。
だが、それも本命ではなかったのか、突然、背後から気配が現れ致命の一撃を放たれる。ハウリア達は、そのように連携と気配の強弱を利用してレギン達を翻弄した。レギン達は戦慄する。これが本当に、あのヘタレで惰弱な兎人族なのか!?と。
暫く抗戦は続けたものの、混乱から立ち直る前にレギン達は満身創痍となり武器を支えに何とか立っている状態だ。連携と絶妙な援護射撃を利用した波状攻撃に休む間もなく、全員が肩で息をしている。一箇所に固まり大木を背後にして追い込まれたレギン達をカム達が取り囲む。
「どうした“ピッー”野郎共!この程度か!この根性なしが!」
「最強種が聞いて呆れるぞ!この“ピッー”共が!それでも“ピッー”付いてるのか!」
「さっさと武器を構えろ!貴様ら足腰の弱った“ピッー”か!」
兎人族と思えない、というか他の種族でも言わないような罵声が浴びせられる。ホントにこいつらに何があったんだ!?と戦慄の表情を浮かべる熊人族達。中には既に心が折られたのか頭を抱えてプルプルと震えている者もいる。大柄で毛むくじゃらの男が「もうイジメないで?」と涙目で訴える姿は……物凄くシュールだ。
「クックックッ、何か言い残すことはあるかね?最強種殿?」
カムが実にあくどい表情で皮肉げな言葉を投げかける。闘争本能に目覚めた今、見下されがちな境遇に思うところが出てきたらしい。前のカムからは考えられないセリフだ。
「ぬぐぅ……」
レギンは、カムの物言いに悔しげに表情を歪める。何とか混乱から立ち直ったようでその瞳には本来の理性が戻ってきていた。ハウリア族の強襲に冷や水を浴びせかけられたとういのもあるだろうが、ジンを再起不能にされた怒りの炎は未だ燃え盛らせつつも、今は少しでも生き残った部下を存命させる事に集中しなければならないという責任感から正気に戻ったようだ。同族達を駆り立て、この窮地に陥らせたのは自分であるという自覚があるのだろう。
「……俺はどうなってもいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、部下は俺が無理やり連れてきたのだ。見逃して欲しい」
「なっ、レギン殿!?」
「レギン殿! それはっ……」
レギンの言葉に部下達が途端にざわつき始めた。レギンは自分の命と引き換えに部下達の存命を図ろうというのだろう。動揺する部下達にレギンが一喝した。
「だまれっ!……頭に血が登り目を曇らせた私の責任だ。兎人……いや、ハウリア族の長殿。勝手は重々承知。だが、どうか、この者達の命だけは助けて欲しい!この通りだ」
武器を手放し跪いて頭を下げるレギン。部下達は、レギンの武に対する誇り高さを知っているため敵に頭を下げることがどれだけ覚悟のいることか嫌でもわかってしまう。だからこそ言葉を詰まらせ立ち尽くすことしかできなかった。
頭を下げ続けるレギンに対するカム達ハウリア族の返答は……
「だが断る」
という言葉と投擲されたナイフだった。
「うぉ!?」
咄嗟に身をひねり躱すレギン。しかし、カムの投擲を皮切りに、レギン達の間合いの外から一斉に矢やら石などが高速で撃ち放たれた。大斧を盾にして必死に耐え凌ぐレギン達に、ハウリア達は哄笑を上げながら心底楽しそうに攻撃を加える。
「なぜだ!?」
呻くように声を搾り出し、問答無用の攻撃の理由を問うレギン。
「なぜ?貴様らは敵であろう?殺すことにそれ以上の理由が必要か?」
カムの答えは実にシンプルだった。
「ぐっ、だが!」
「それに何より……貴様らの傲慢を打ち砕き、嬲るのは楽しいのでなぁ! ハッハッハッ!」
「んなっ!?おのれぇ!こんな奴等に!」
カムの言葉通り、ハウリア達は実に楽しそうだった。スリングショットやクロスボウ、弓を安全圏から嬲るように放っている。その姿は、力に溺れた者典型の狂気じみた高揚に包まれたものだった。どうやら、初めての人族、それも同胞たる亜人族を殺したことに心のタガが外れてしまったようである。要は、完全に暴走状態だ。
攻撃は苛烈さを増し、レギン達は身を寄せ合い陣を組んで必死に耐えるが……既に限界。致命傷こそ避けているものの、みな満身創痍。次の掃射には耐えられないだろう。
カムが口元を歪めながらスっと腕を掲げる。ハウリア達も狂的な眼で矢を、石をつがえた。レギンは、ここが死に場所かと無念を感じながら体の力を抜く。そして、心の中で、扇動してしまった部下達に謝罪をする。
カムの腕が、レギン達の命を狩り取る死神の鎌の如く振り下ろされた。一斉に放たれる矢と石。スローモーションで迫ってくるそれらを、レギンは、せめて目を逸らしてなるものかと見つめ続け、そして……
「いい加減にしなさぁ~い!!!」
ズドォオオン!!
白き鉄槌が全てを吹き飛ばす光景を目の当たりにした。
「は?」
思わず間抜けな声を出してしまうレギン。だが、無理もないだろう。何せ、死を覚悟した直後、青白い髪を靡かせたウサミミ少女が、巨大な鉄槌と共に天より降ってきた挙句、地面に槌を叩きつけ、その際に発生した衝撃波で飛んでくる矢や石をまとめて吹き飛ばしたのだから。目が点になるとはこのことだ。周りの熊人族もポカンとしている。
怒り心頭!といった感じで登場したのは、もちろんシアである。圧縮錬成の練習過程で作成された大槌は、途轍もない重量を持っているのだが、まるで重さなど感じさせずブオンッと突風を発生させながら振り回し、ビシッとカムに向かって突きつけた。
「もうっ!ホントにもうっですよ!父様も皆も、いい加減正気に戻って下さい!」
そんなシアに、最初は驚愕で硬直していたカム達だが、ハッと我を取り戻すと責めるような眼差しを向けた。
「シア、何のつもりか知らんが、そこを退きなさい。後ろの奴等を殺せないだろう?」
「いいえ、退きません。これ以上はダメです!」
シアの言葉に、カム達の目が細められる。
「ダメ?まさかシア、我らの敵に組みするつもりか?返答によっては……」
「いえ、この人達は別に死んでも構わないです」
「「「「いいのかよっ!?」」」」
てっきり同族の虐殺を止めに来てくれたのかと考えていた熊人族達は、シアの言葉に思わずツッコミを入れる。
「当たり前です。殺意を向けて来る相手に手心を加えるなんて心構えでは、ユエさんの特訓には耐えられません。私だって、もう甘い考えは持っていませんよ」
「ふむ、では何故止めたのだ?」
カムが尋ねる。ハウリア族達も怪訝な表情だ。
「そんなの決まってます!父様達が、壊れてしまうからです!堕ちてしまうからです!」
「壊れる?堕ちる?」
訳がわからないという表情のカムにシアは言葉を重ねる。
「そうです!思い出して下さい。ハジメさんは敵に容赦しませんし、問答無用だし、無慈悲ではありますが、魔物でも人でも
「い、いや、我らは楽しんでなど……」
「今、父様達がどんな顔しているかわかりますか?」
「顔?いや、どんなと言われても……」
シアの言葉に、周囲の仲間と顔を見合わせるハウリア族。シアは、ひと呼吸置くと静かな、しかし、よく通る声ではっきりと告げた。
「……まるで、私達を襲ってきた帝国兵みたいです」
「ッ!?」
衝撃だった。宿った狂気が吹き飛ぶほど。冷水を浴びせられた気分だ。自分達家族の大半を嘲笑と愉悦交じりに奪った輩と同じ表情……実際に目の当たりにして来たからこそその醜さが分かる。家族を奪った彼等と同じ……耐え難い事実だ。
「シ、シア……私は……」
「ふぅ~、少しは落ち着いたみたいですね。よかったです。最悪、全員ぶっ飛ばさなきゃいけないかもと思っていたので」
シアが大槌をフリフリと動かす。シアの指摘と、ついでに大槌の威容に動揺しているハウリア達に、シアが少し頬を緩める。
「まぁ、初めての対人戦ですし、今、気がつけたのなら、もう大丈夫ですよ!大体、ハジメさんも悪いんです!戦える精神にするというのはわかりますが、あんなのやり過ぎですよ!戦士どころかバーサーカーの育成じゃないですかっ!」
今度は、南雲に対してぷりぷりと怒り出すシア。小声で「何であんな人好きになっちゃったんだろ?」とかブツブツと呟いている。
と、その時、突如として銃声が響いた。
シアの背後で「ぐわっ!?」という呻き越えと崩れ落ちる音がする。そう言えば、すっかり存在を忘れていたとシアとカム達が慌てて背後を確認すると、額を抑えてのたうつレギンの姿があった。
「なにドサクサに紛れて逃げ出そうとしてんだ?話が終わるまで正座でもしとけ」
霧の奥から南雲が香織を伴って現れる。どうやら、シア達が話し合っているうちに、こっそり逃げ出そうとしたレギン達に銃撃したようである。但し、何故か非致死性のゴム弾だったが。
因みに俺は気化して霧に紛れていたり。
南雲の言葉を受けても尚、逃げ出そうと油断なく周囲の様子を確認している熊人族に、南雲は“威圧”を仕掛けて黙らせた。ガクブルしている彼等を尻目に、シア達の方へ歩み寄る南雲と香織。
南雲はカム達を見ると、若干、気まずそうに視線を彷徨わせ、しかし直ぐに観念したようにカム達に向き合うと謝罪の言葉を口にした。
「あ~、まぁ、何だ、悪かったな。自分が平気だったもんで、すっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。俺のミスだ。うん、ホントすまん」
ポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは予想外にも程があった。
「ボ、ボス!? 正気ですか!? 頭打ったんじゃ!?」
「メディーック! メディーーク! 重傷者一名!」
「ボス! しっかりして下さい!」
故にこういう反応になる。青筋を浮かべ、口元をヒクヒクさせる南雲。
今回のことは、南雲自身、本心から自分のミスだと思っていた。自分が殺人に特になんの感慨も抱かなかったことから、その精神的衝撃というものに意識が及ばなかったのだ。いくら南雲が強くなったとはいえ、教導の経験などあるはずもなく、その結果、危うくハウリア族達の精神を壊してしまうところだった。流石に、まずかったと思い、だからこそ謝罪の言葉を口にしたというのに……帰ってきた反応は正気を疑われるとうものだった。南雲としては、キレるべきか、日頃の態度を振り返るべきか若干迷うところである。
南雲は、取り敢えずこの件は脇に置いておいて、レギンのもとへ歩み寄ると、その額にドンナーの銃口をゴリッと押し当てた。
「さて、潔く死ぬのと、生き恥晒しても生き残るのとどっちがいい?」
南雲の言葉に、熊人族よりもむしろハウリア族が驚きの目を向ける。今のセリフでは、場合によっては熊人族を見逃してもいいと聞こえるからだ。敵対者に遠慮も容赦もしない南雲にあるまじき提案だ。カム達は「やはり頭を……」と悲痛そうな目で南雲を見ている。南雲の額に青筋が増えるが、話が進まないので取り敢えずスルーする。
レギンも意外そうな表情で南雲を見返した。ハウリア族をここまで豹変させたのは間違いなく眼前の男だと確信していたので、その男が情けをかけるとは思えなかったのだ。
「……どういう意味だ。我らを生かして帰すというのか?」
「ああ、望むなら帰っていいぞ? 但し、条件があるがな」
「条件?」
あっさり帰っていいと言われ、レギンのみならず周囲の者達が一斉にざわめく。後ろで「頭を殴れば未だ間に合うのでは……」とシアが割かしマジな表情で自分の大槌と南雲の頭部を交互に見やり、カム達が賛同している声が聞こえる。
そろそろ、マジでキツイ仕置が必要かもしれないと更に青筋を増やす南雲。しかし、頑張ってスルーする。
「ああ、条件だ。フェアベルゲンに帰ったら長老衆にこう言え」
「……伝言か?」
条件と言われて何を言われるのかと戦々恐々としていたのに、ただのメッセンジャーだったことに拍子抜けするレギン。しかし、言伝の内容に凍りついた。
「“貸一つ”」
「……ッ!?それはっ!」
「で?どうする?引き受けるか?」
言伝の意味を察して、思わず怒鳴りそうになるレギン。南雲はどこ吹く風でレギンの選択を待っている。“貸一つ”それは、襲撃者達の命を救うことの見返りに何時か借りを返せということだ。
長老会議が長老の一人を失い、会議の決定を実質的に覆すという苦渋の選択をしてまで不干渉を結んだというのに、伝言すれば長老衆は無条件で南雲の要請に応えなければならなくなる。
客観的に見れば、ジンの場合も、レギンの場合も一方的に仕掛けておいて返り討ちにあっただけであり、その上、命は見逃してもらったということになるので、長老会議の威信にかけて無下にはできないだろう。無視してしまえば唯の無法者だ。それに、今度こそ南雲が牙を向くかもしれない。
つまり、レギン達が生き残るということは、自国に不利な要素を持ち帰るということでもあるのだ。長老会議の決定を無視した挙句、負債を背負わせる、しかも最強種と豪語しておきながら半数以上を討ち取られての帰還……南雲の言う通りまさに生き恥だ。
表情を歪めるレギンに南雲が追い討ちをかける。
「それと、あんたの部下の死の責任はあんた自身にあることもしっかり周知しておけ。ハウリアに惨敗した事実と一緒にな」
「ぐっう」
南雲が、このような条件を出して敵を見逃すのには理由がある。もちろん、慈悲などではない。フェアベルゲンとは絶縁したわけだが、七大迷宮の詳細が未だわからない以上、もしかしたら彼の国に用事ができるかもしれない。何せ、口伝で創設者の言葉が残っているぐらいなのだから。成り行きで出てきてしまったので、ちょっと失敗したかなぁと思っていたハジメ。渡りに船であるし、万一に備えて保険を掛けておこうと思ったのだ。
悩むレギンに、南雲が更にゴリッと銃口を押し付ける。
「五秒で決めろ。オーバーする毎に一人ずつ殺していく。“判断は迅速に”。基本だぞ?」
そう言ってイーチ、ニーと数え始める南雲にレギンは慌てて、しかし意を決して返答する。
「わ、わかった。我らは帰還を望む!」
「そうかい。じゃあ、さっさと帰れ。伝言はしっかりな。もし、取立てに行ったとき惚けでもしたら……」
南雲の全身から、強烈な殺意が溢れ出す。もはや物理的な圧力すら伴っていそうだ。ゴクッと生唾を飲む音がやけに鮮明に響く。
「その日がフェアベルゲンの最後だと思え」
どこからどう見ても、タチの悪い借金取り、いやテロリストの類にしか見えなかった。後ろから、「あぁ~よかった。何時ものハジメさんですぅ」とか「ボスが正気に戻られたぞ!」とか妙に安堵の混じった声が聞こえるが、取り敢えずスルーだ。せっかく作った雰囲気がぶち壊しになってしまう。もっとも、キツイお仕置きは確定だが。
ハウリア族により心を折られ、レギンの決死の命乞いも聞いていた部下の熊人族も反抗する気力もないようで悄然と項垂れて帰路についた。若者が中心だったことも素直に敗北を受け入れた原因だろう。レギンも、もうフェアベルゲンで幅を利かせることはできないだろう。一生日陰者扱いの可能性が高い。だが、理不尽に命を狙ったのだから、むしろ軽い罰である。
霧の向こうへ熊人族達が消えていった。それを見届け、南雲はくるりとシアやカム達の方を向く。もっとも、俯いていて表情は見えない。なんだか異様な雰囲気だ。カム達は、狂気に堕ちてしまった未熟を恥じて南雲に色々話しかけるのに夢中で、その雰囲気に気がついていない。シアだけが、「あれ? ヤバクないですか?」と冷や汗を流している。
南雲がユラリと揺れながら顔を上げた。その表情は満面の笑みだ。だが、細められた眼の奥は全く笑っていなかった。漸く、何だか南雲の様子がおかしいと感じたカムが恐る恐る声をかける
「ボ、ボス?」
「うん、ホントにな? 今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった」
「い、いえ、そのような……我々が未熟で……」
「いやいや、いいんだよ?俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに……随分な反応だな?いや、わかってる。日頃の態度がそうさせたのだと……しかし、しかしだ……このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ……わかるだろ?」
「い、いえ。我らにはちょっと……」
カムも「あっ、これヤバイ。キレていらっしゃる」と冷や汗を滝のように流しながら、ジリジリと後退る。ハウリアの何人かが訓練を思い出したのか、既にガクブルしながら泣きべそを掻いていた。
とその時、「今ですぅ!」と、シアが一瞬の隙をついて踵を返し逃亡を図った。傍にいた男のハウリアを盾にすることも忘れない。
しかし……
ドパンッ!!
一発の銃弾が男の股下を通り、地面にせり出していた樹の根に跳弾してシアのお尻に突き刺さった。
「はきゅん!」
南雲の銃技の一つ“多角撃ち”である。それで、シアのケツを狙い撃ったのだ。無駄に洗練された無駄のない無駄な銃技だった。銃撃の衝撃に悲鳴を上げながらピョンと跳ねて地面に倒れるシア。お尻を突き出した格好だ。シュウーとお尻から煙が上がっている。シアは痛みにビクンビクンしている。
痙攣するシアの様子と南雲の銃技に戦慄の表情を浮かべるカム達。股通しをされた男が股間を両手で抑えて涙目になっている。銃弾の発する衝撃波が、股間をこう、ふわっと撫でたのだ
何事もなかったとようにドンナーをホルスターにしまった南雲は、笑顔を般若に変えた。そして、怒声と共に飛び出した。
「取り敢えず、全員一発殴らせろ!」
わぁああああーー!!
ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出す。一人も逃がさんと後を追う南雲。暫く間、樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡った。
後に残ったのは、ケツから煙を出しているシアと、
「……何時になったら大樹に行くの?」
「さぁな?だが、これはこれで面白い」
すっかり蚊帳の外だった後から来たユエと気化を解除した俺の呟きだけだった。
✲✲✲
深い霧の中、俺達一行は大樹に向かって歩みを進めていた。先頭をカムに任せ、これも訓練とハウリア達は周囲に散らばって索敵をしている。油断大敵を骨身に刻まれているので、全員、その表情は真剣そのものである。もっとも、全員がコブか青あざを作っているので何とも締りがないが……
「うぅ~、まだヒリヒリしますぅ~」
泣き言を言いながらお尻をスリスリとさすっているのはシアだ。先程から恨みがましい視線を南雲に向けている。
「そんな目で見るなよ、鬱陶しい」
「鬱陶しって、あんまりですよぉ。女の子お尻を銃撃するなんて非常識にも程がありますよ。しかも、あんな無駄に高い技術まで使って」
「そういう、お前こそ、割かし本気で俺の頭ぶっ叩く気だったろうが。しかも、逃げるとき隣にいたヤツを盾にするとか……人のこと言えないだろう」
少し離れたところにいる男のハウリアが、うんうんと頷いている。
「うっ、ユエさんの教育の賜物です……」
「……シアはワシが育てた」
「……つっこまないからな」
自慢げに、褒めて?とでも言うように南雲を見るユエ。南雲は、鍛えられたスルースキルを駆使して視線を逸らす。
和気あいあいと?雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。
大樹を見た一行の第一声は、
『……なんだこりゃ』
という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。ユエも、予想が外れたのか微妙な表情だ。二人は、大樹についてフェアベルゲンで見た木々のスケールが大きいバージョンを想像していたのである。
しかし、実際の大樹は……見事に枯れていたのだ。
大きさに関しては想像通り途轍もない。直径は目算では測りづらいほど大きいが直径五十メートルはあるのではないだろうか。明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木となっているのである。
「大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」
俺達の疑問顔にカムが解説を入れる。それを聞きながら南雲は大樹の根元まで歩み寄った。そこには、アルフレリックが言っていた通り石版が建てられていた。
「これは……オルクスの扉の……」
「……ん、同じ文様」
「…………だね」
石版には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。南雲は確認のため、オルクスの指輪を取り出す。指輪の文様と石版に刻まれた文様の一つはやはり同じものだった。
「やっぱり、ここが大迷宮の入口みたいだな……だが……こっからどうすりゃいいんだ?」
南雲が大樹に近寄ってその幹をペシペシと叩いてみたりするが、当然変化などあるはずもなく、カム達に何か知らないか聞くが返答はNOだ。アルフレリックにも口伝は聞いているが、入口に関する口伝はなかった。隠していた可能性もないわけではないから、これは早速貸しを取り立てるべきか?と悩み始める南雲。
その時、石版を観察していたユエが声を上げる。
「ハジメ君……これ見て」
「ん? 何かあったか?」
香織が注目していたのは石版の裏側だった。そこには、表の七つの文様に対応する様に小さな窪みが空いていた。
「これは……」
南雲が、手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。
すると……石版が淡く輝きだした。
何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。暫く、輝く石版を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。
“四つの証”
“再生の力”
“紡がれた絆の道標”
“全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう”
「……どういう意味だ?」
「……四つの証は……たぶん、他の迷宮の証?」
「……再生の力と紡がれた絆の道標は?」
頭を捻る南雲にシアが答える。
「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか? 亜人の案内人を得られるかどうか。亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」
「……なるほど。それっぽいな」
「……あとは再生……私?」
ユエが自分の固有魔法“自動再生”を連想し自分を指差す。試しにと、薄く指を切って“自動再生”を発動しながら石版や大樹に触ってみるが……特に変化はない。
「むぅ……違うみたい」
「あれじゃね?枯れ木を再生の力で戻して最低四つの証……つまり七大迷宮の半分を攻略した上で、再生に関する神代の魔術を手に入れて来いってことじゃね?」
目の前の枯れている樹を再生する必要があるのでは?と俺は推測したことを言う。一行も、そうかもと納得顔をする。
「はぁ~、ちくしょう。今すぐ攻略は無理ってことか……面倒くさいが他の迷宮から当たるしかないな……」
「ん……」
ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みする南雲。ユエも残念そうだ。しかし、大迷宮への入り方が見当もつかない以上、ぐだぐだと悩んでいても仕方ない。気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れることにする。
南雲はハウリア族に集合をかけた。
「いま聞いた通り、俺達は、先に他の大迷宮の攻略を目指すことする。大樹の下へ案内するまで守るという約束もこれで完了した。お前達なら、もうフェアベルゲンの庇護がなくても、この樹海で十分に生きていけるだろう。そういうわけで、ここでお別れだ」
そして、チラリとシアを見る。その瞳には、別れの言葉を残すなら、今しておけという意図が含まれているのをシアは正確に読み取った。いずれ戻ってくるとしても、三つもの大迷宮の攻略となれば、それなりに時間がかかるだろう。当分は家族とも会えなくなる。
シアは頷き、カム達に話しかけようと一歩前に出た。
「とうさ「ボス! お話があります!」……あれぇ、父様? 今は私のターンでは…」
シアの呼びかけをさらりと無視してカムが一歩前に出た。ビシッと直立不動の姿勢だ。横で「父様? ちょっと、父様?」とシアが声をかけるが、まるでイギリス近衛兵のように真っ直ぐ前を向いたまま見向きもしない。
「あ~、何だ?」
取り敢えず父様? 父様? と呼びかけているシアは無視する方向で、南雲はカムに聞き返した。カムは、シアの姿など見えていないと言う様に無視しながら、意を決してハウリア族の総意を伝える。
「ボス、我々もボスのお供に付いていかせて下さい!」
「えっ! 父様達もハジメさんに付いて行くんですか!?」
カムの言葉に驚愕を表にするシア。十日前の話し合いでは、自分を送り出す雰囲気だったのにどうしたのです!? と声を上げる。
「我々はもはやハウリアであってハウリアでなし! ボスの部下であります! 是非、お供に! これは一族の総意であります!」
「ちょっと、父様! 私、そんなの聞いてませんよ! ていうか、これで許可されちゃったら私の苦労は何だったのかと……」
「ぶっちゃけ、シアが羨ましいであります!」
「ぶっちゃけちゃった! ぶっちゃけちゃいましたよ! ホント、この十日間の間に何があったんですかっ!」
カムが一族の総意を声高に叫び、シアがツッコミつつ話しかけるが無視される。何だ、この状況? と思いつつ、南雲はきっちり返答した。
「却下」
「なぜです!?」
南雲の実にあっさりした返答に身を乗り出して理由を問い詰めるカム。他のハウリア族もジリジリと南雲に迫る。
「足でまといだからに決まってんだろ、バカヤロー」
「しかしっ!」
「調子に乗るな。俺の旅についてこようなんて百八十日くらい早いわ!」
「具体的!?」
なお、食い下がろうとするカム達。しまいには、許可を得られなくても勝手に付いて行きます! とまで言い始めた。どうやら、ハートマン軍曹モドキ・・・の訓練のせいで妙な信頼とか畏敬とかそんな感じのものが寄せられているようである。このまま、本当に町とかにまで付いてこられたら、それだけで騒動になりそうなので仕方なく条件を出す南雲。
「じゃあ、あれだ。お前等はここで鍛錬してろ。次に樹海に来た時に、使えるようだったら部下として考えなくもない」
「……そのお言葉に偽りはありませんか?」
「ないない」
「嘘だったら、人間族の町の中心でボスの名前を連呼しつつ、新興宗教の教祖のごとく祭り上げますからな?」
「お、お前等、タチ悪いな……」
「そりゃ、ボスの部下を自負してますから」
とても逞しくなった部下達?に頬を引きつらせる南雲。ユエがぽんぽんと慰めるように南雲の腕を叩く。南雲は溜息を吐きながら、次に樹海に戻った時が面倒そうだと天を仰ぐのだった。
「ぐすっ、誰も見向きもしてくれない……旅立ちの日なのに……」
傍でシアが地面にのの字を書いていじけているが、やはり誰も気にしなかった。
因みに、香織が慰めようとするも意外にどんよりオーラが大きく、中々近づけないでいた。
✲✲✲
樹海の境界でカム達の見送りを受けた俺達は再び魔力駆動四輪2台と二輪に乗り込んで平原を疾走していた。位置取りは、南雲側に飛斗、ユエ、香織、シア、イリヤが俺の俺側にケイローン、雫、鈴、美久、セタンタが乗り二輪に代赤が乗る。残りは霊体化している。
「原作だと次はライセン大峡谷を通って次の街に行くんだったか。そこで南雲達と1度別れてハイドリヒ王国の騒動までなりを潜ませるか。」
「その間、冒険者としてランクを上げるのですね?」
「あぁ、だがエヒトルジュエに悟られねぇように、な。」
俺と慧郎は周りに聞こえない程小さな声で会話をする。
✲✲✲
数時間ほど走り、そろそろ日が暮れるという頃、前方に町が見えてきた。
周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。
そろそろ、町の方からも俺達を視認できそうなので、魔力駆動車を“宝物庫”にしまい、徒歩に切り替える俺達。流石に、漆黒の四駆で乗り付けては大騒ぎになるだろう。
道中、シアがブチブチと文句を垂れていたが、やはりスルーして遂に町の門までたどり着いた。案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男が俺達を呼び止めた。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」
規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。南雲は、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。
「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」
ふ~んと気のない声で相槌を打ちながら門番の男が南雲のステータスプレートをチェックする。そして、目を瞬かせた。ちょっと遠くにかざしてみたり、自分の目を揉みほぐしたりしている。その門番の様子をみて、南雲が内心「あっ、ヤベ、隠蔽すんの忘れてた」と冷や汗を流しているのが分かった。
ステータスプレートには、ステータスの数値と技能欄を隠蔽する機能があるのだ。冒険者や傭兵においては、戦闘能力の情報漏洩は致命傷になりかねないからである。
俺達は南雲に習ってステータスプレートを偽造しておく。
そして南雲は、咄嗟に誤魔化すため、嘘八百を並べ立てた。
「ちょっと前に、魔物に襲われてな、その時に壊れたみたいなんだよ」
「こ、壊れた?いや、しかし……」
困惑する門番。無理もないだろう。何せ、南雲のステータスプレートにはレベル表示がなく、ステータスの数値も技能欄の表示もめちゃくちゃだからだ。ステータスプレートの紛失は時々聞くが、壊れた(表示がバグるという意味で)という話は聞いたことがない。なので普通なら一笑に付すところだが、現実的にありえない表示がされているのだから、どう判断すべきかわからないのだ。
南雲が、いかにも困った困ったという風に肩を竦めて追い討ちをかける。
「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ?まるで俺が化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?」
両手を広げておどける様な仕草をする南雲に、門番は苦笑いをする。ステータスプレートの表示が正しければ、文字通り魔王や勇者すら軽く凌駕する化物ということになるのだ。例え聞いたことがなくてもプレートが壊れたと考える方がまともである。
実は本当に化物だと知ったら、きっと、この門番は卒倒するに違いない。いけしゃあしゃあと嘘をつく南雲に、一行は呆れた表情を向けている。
「はは、いや、見えないよ。表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな……そっちの方達は……」
門番が南雲の隣にいた香織とユエ、シアにもステータスプレートの提出を求めようとして、二人に視線を向ける。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目で香織ユエ、シアを交互に見ている。香織は言わずもがな、黒髪清楚でお淑やかな美少女、ユエは精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だ。そして、シアも喋らなければ神秘性溢れる美少女である。つまり、門番の男は二人に見惚れて正気を失っているのだ。
南雲がわざとらしく咳払いをする。それにハッとなって慌てて視線を南雲に戻す門番。
「さっき言った魔物の襲撃のせいでな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は……わかるだろ?」
その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートを南雲に返す。
「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? あんたって意外に金持ち?」
未だチラチラと二人を見ながら、羨望と嫉妬の入り交じった表情で門番が南雲に尋ねる。南雲は肩をすくめるだけで何も答えなかった。
次に俺達だ。
「ほれ、残りの全員分だ。先に集めといた。」
門番は一人一人確認して、
「まぁいい。通っていいぞ」
「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」
「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」
「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」
門番から情報を得て、俺達は門をくぐり町へと入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。町中は、それなりに活気があった。かつて見たオルクス近郊の町ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。
こういう騒がしさは訳もなく気分を高揚させるものだ。俺達だけでなく、久々?に見るであろうユエも楽しげに目元を和らげている。しかし、シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目で南雲を睨んでいた。
怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石に気になって溜息を吐く南雲。楽しい気分に水を差しやがって、と内心文句を言いながらシアに視線を合わせる。
「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」
「誰がゴリラですかっ!ていうかどんな倒し方しているんですか!ハジメさんなら一撃でしょうに!何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」
「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」
「まさかの追い討ち!?酷すぎる!ってそうじゃないですぅ!」
怒って、ツッコミを入れてと大忙しのシア。手をばたつかせて体全体で「私、不満ですぅ!」と訴えている。ちなみに、ゴリラ型の魔物のエピソードは圧縮錬成の実験台にした時の話だ。決して、虐めて楽しんでいたわけではない。ユエはやたらとツンツンしていたが。ちなみに、この魔物は“豪腕”の固有魔術持ちである。
「これです!この首輪!これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか!ハジメさん、わかっていて付けたんですね!うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」
シアが怒っているのは、そういうことらしい。旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが相当ショックだったようだ。もちろん、南雲が付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束するような力はない。それは、シアもわかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックなのだ。
そんなシアの様子に南雲はカリカリと頭を掻きながら目を合わせる。
そこは慧郎が答える。
「少しは頭を使ったらどうですか。奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないでしょう?まして、貴方は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言しますが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるのは目に見えてわかるはずです。後は、絶え間無い人攫いの嵐、と言ったところでしょう。我々にまで面倒を持ってこないでください。」
言い訳あるなら言ってみろやゴラァ! という感じで南雲を睨んでいたシアだが、話を理解したのか青ざめる。ユエが冷めた表情でシアを見ている。
「……調子に乗っちゃだめ」
「……すいません、ユエさん」
冷めたユエの声が追い討ちをかけ、ぶるりと体を震わせるシア。そんな様子に呆れた視線を向けながら、南雲は話を続ける。
「あ~、つまりだ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前を守っているんだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからな、お前は」
「それは……わかりますけど……」
理屈も有用性もわかる。だがやはり、納得し難いようで不満そうな表情のシア。仲間というものに強い憧れを持っていただけに、そう簡単に割り切れないのだろう。そんなシアに、今度はユエが声をかけた。
「……有象無象の評価なんてどうでもいい」
「ユエさん?」
「……大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。……違う?」
「………………そう、そうですね。そうですよね」
「……ん、不本意だけど……シアは私が認めた相手……小さい事気にしちゃダメ」
「……ユエさん……えへへ。ありがとうございますぅ」
かつて大衆の声を聞き、大衆のために力を振るった吸血姫。裏切りの果に至った新たな答えは、例え言葉少なでも確かな重みがあった。だからこそ、その言葉はシアの心にストンと落ちる。自分が南雲や香織達の大切な仲間であるということは、ハウリア族のみなも、俺達も分かっている。いらぬトラブルを招き寄せてまで万人に理解してもらう必要はない。もちろん、それが出来るならそれに越したことはないが……
シアは、ユエの言葉に照れたように微笑みながらチラッチラッと南雲を見る。何かの言葉を期待するように。
南雲は仕方ないという様に肩を竦めて言葉を紡ぐ。
「まぁ、奴隷じゃないとばれて襲われても見捨てたりはしないさ」
「街中の人が敵になってもですか?」
「あのなぁ、既に帝国兵とだって殺りあっただろう?」
「じゃあ、国が相手でもですね!ふふ」
「何言ってんだ。世界だろうと神だろうと変わらねぇよ。敵対するなら何とだって戦うさ」
「くふふ、聞きました?香織さんユエさん。ハジメさんったらこんなこと言ってますよ?よっぽど私達が大事なんですねぇ~」
「……ハジメ君が大事なのは私だけ………だよ?」
「ちょっ、空気読んで下さいよ!そこは、何時も通り«うん!!»て素直に返事するところですよ!」
文句を言いながらも嬉しげで楽しげな表情をするシア。いざとなれば、自分のために世界とだって戦ってくれるという言葉は、やはり一人の女として嬉しいものだ。まして、それが惚れた相手なら尚更。
南雲は、じゃれあっている(ように見える)3人を尻目に、シアの首輪について話し始める。
「あとな、その首輪だが、念話石と特定石が組み込んであるから、必要なら使え。直接魔力を注いでやれば使えるから」
「念話石と特定石ですか?」
念話石とは、文字通り念話ができる鉱物のことだ。生成魔法により“念話”を鉱石に付与しており、込めた魔力量に比例して遠方と念話が可能になる。もっとも、現段階では特定の念話石のみと通話ということはできないので、範囲内にいる所持者全員が受信してしまい内緒話には向かない。
特定石は、生成魔法により“気配感知[+特定感知]”を付与したものだ。特定感知を使うと、多くの気配の中から特定の気配だけ色濃く捉えて他の気配と識別しやすくなる。それを利用して、魔力を流し込むことでビーコンのような役割を果たすことが出来るようにしたのだ。ビーコンの強さは注ぎ込まれた魔力量に比例する。
南雲の説明に、感心の声を上げる一行。
「ちなみに、その首輪、きっちり特定量の魔力を流すことで、ちゃんと外せるからな?」
「なるほどぉ~、つまりこれは……いつでも私の声が聞きたい、居場所が知りたいというハジメさんの気持ちというわけですね?もうっ、そんなに私の事が好きなんですかぁ?流石にぃ、ちょっと気持ちが重いっていうかぁ、あっ、でも別に嫌ってわけじゃなくッバベルンッ!?」
「こら、調子にのらない!」
「ぐすっ、ずみまぜん」
初めて見た香織の回転踵蹴りが後頭部に決まり、奇怪な悲鳴を上げながら倒れるシア。香織から、少しプンスカした声がかけられる。近接戦苦手だったんじゃ……と言いたくなるくらい見事なハイキックを披露する香織に、シアは涙目で謝る。旅の同行は許しても、南雲へのアプローチはそうそう許してもらえないらしい。もっとも、シアの言動がアプローチになっているかは甚だ疑問ではあるが。
そんな風に仲良く?メインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。
俺達は看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。
ギルドは荒くれ者達の場所というイメージから、俺達(セタンタ、ケイローン、迦楼那を除く)は、勝手に薄汚れた場所と考えていのだが、意外に清潔さが保たれた場所だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。
俺達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくる。最初こそ、見慣れない団体ということでささやかな注意を引いたに過ぎなかったが、彼等の視線が女子勢に向くと、途端に瞳の奥の好奇心が増した。中には「ほぅ」と感心の声を上げる者や、門番同様、ボーと見惚れている者、恋人なのか女冒険者に殴られている者もいる。平手打ちでないところが冒険者らしい。
テンプレ宜しく、ちょっかいを掛けてくる者がいるかとも思ったが、意外に理性的で観察するに留めているようだ。足止めされなくて幸いと俺達はカウンターへ向かう。
カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。恰幅がいい。横幅がユエ二人分はある。どうやら美人の受付というのは幻想のようだ。地球の本職のメイドがオバチャンばかりという現実と同じだ。
オバチャンはニコニコと人好きのする笑みで俺達を迎えてくれた。
「受付が美人じゃなくて残念だったね、それとも何だい、白髪の子は両手に花状態なのに物足りないって?」(*´-ω・)?
……オバチャンは読心術の固有魔法が使えるのかもしれない。
南雲が頬を引き攣らせながらそう呟いたのが聞こえた。
何とか俺が返答する。が、
「いや、そんなこと考えてないだろうよ。」
「あはははは、女の勘を舐めちゃいけないよ? 男の単純な中身なんて簡単にわかっちまうんだからね。あんまり余所見ばっかして愛想尽かされないようにね?」
「……肝に銘じておこう」
オバチャンから言われた事を胸に刻む南雲の返答に「あらやだ、年取るとつい説教臭くなっちゃってねぇ、初対面なのにゴメンね?」と、申し訳なさそうに謝るオバチャン。何とも憎めない人だ。チラリと食事処を見ると、冒険者達が「あ~あいつもオバチャンに説教されたか~」みたいな表情で南雲を見ている。どうやら、冒険者達が大人しいのはオバチャンが原因のようだ。
「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」
「ああ、素材の買取をお願いしたい」
「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」
「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」
南雲の疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。
「あんた達冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」
「そうだったのか」
「うんや、俺とこいつらは一応冒険者だぜ?まぁ、教えてねぇのはすっかり忘れてたんでな。」
セタンタが迦楼那と慧郎を指さしながら言う。
因みに迦楼那と慧郎は全く違う方向であるため、指した方向には誰もいない。何気に幸運E-が発揮している。
そしてオバチャンの言う通り、冒険者になれば様々な特典も付いてくる。生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどだ。町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。危険に見合った特典がついてくるのは当然だった。
その事をすっかりと忘れているセタンタ。それをジト目で見るギルド内の皆。あ、拗ねて隅っこで体育座りしてのの字書きを始めた。
「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」
ルタとは、この世界トータスの北大陸共通の通貨だ。ザガルタ鉱石という特殊な鉱石に他の鉱物を混ぜることで異なった色の鉱石ができ、それに特殊な方法で刻印したものが使われている。青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金の種類があり、左から一、五、十、五十、百、五百、千、五千、一万ルタとなっている。驚いたことに貨幣価値は日本と同じだ。
「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。悪いんだが、持ち合わせが全くないんだ。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」
「可愛い子3人もいるのに文無しなんて何やってんだい。ちゃんと上乗せしといてあげるから、不自由させんじゃないよ?」
オバチャンがかっこいい。俺達は、有り難く厚意を受け取っておくことにした。ステータスプレートをユエとシア以外は差し出す。
今度はきちんと隠蔽したので、名前と年齢、性別、天職欄しか開示されていないはずだ。オバチャンは、ユエとシアの分も登録するかと聞いたが、それは断った。二人は、そもそもプレートを持っていないので発行からしてもらう必要がある。しかし、そうなるとステータスの数値も技能欄も隠蔽されていない状態でオバチャンの目に付くことになる。
ハジメとしては、二人のステータスを見てみたい気もしたが、おそらく技能欄にはばっちりと固有魔法なども記載されているだろうし、それを見られてしまうこと考えると、まだ自分達の存在が公になっていない段階では知られない方が面倒が少なくて済むと今は諦めることにした。
戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに“冒険者”と表記され、更にその横に青色の点が付いている。
青色の点は、冒険者ランクだ。上昇するにつれ赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と変化する。……お気づきだろうか。そう、冒険者ランクは通貨の価値を示す色と同じなのである。つまり、青色の冒険者とは「お前は一ルタ程度の価値しかねぇんだよ、ぺっ」と言われているのと一緒ということだ。切ない。きっと、この制度を作った初代ギルドマスターの性格は捻じ曲がっているに違いない。
因みに、戦闘系天職を持たない者で上がれる限界は黒だ。辛うじてではあるが四桁に入れるので、天職なしで黒に上がった者は拍手喝采を受けるらしい。天職ありで金に上がった者より称賛を受けるというのであるから、いかに冒険者達が色を気にしているかがわかるだろう。
「男なら頑張って黒を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪ところ見せないようにね」
「ああ、そうするよ。それで、買取はここでいいのか?」
「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」
オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。優秀なオバチャンだ。南雲は、あらかじめ“宝物庫”から出してバックに入れ替えておいた素材を取り出す。品目は、魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石だ。カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、再びオバチャンが驚愕の表情をする。
「こ、これは!」
恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、漸く顔を上げたオバチャンは、溜息を吐き南雲に視線を転じた。
「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」
「ああ、そうだ」
ここでもテンプレを外す南雲。奈落の魔物の素材など、こんな場所で出すわけがないのである。そんな未知の素材を出されたら一発で大騒ぎだ。樹海の魔物の素材でも十分に珍しいだろうことは予想していたので少し迷ったが、他に適当な素材もなかったので、買取に出した。オバチャンの反応を見る限り、やはり珍しいようだ。
「……あんたも懲りないねぇ」
オバチャンが呆れた視線を南雲に向ける。また何か考えてた様だ
「何のことかわからない」
例え変心してもオタク魂までは消せないのか……何とも業の深いことだ。とぼけながら南雲は現実から目を逸らす。
「樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」
オバチャンが何事もなかったように話しを続けた。オバチャンは空気も読めるらしい。良いオバチャンだ。そしてこの上なく優秀なオバチャンだ。
「やっぱり珍しいか?」
「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」
オバチャンはチラリとシアを見る。おそらく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測したのだろう。樹海の素材を出しても、シアのおかげで不審にまでは思われなかったようだ。
それからオバチャンは、全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は四十六万二千ルタ。結構な額だ。
「これでいいかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね。」
「いや、この額で構わない」
南雲は四十七枚のルタ通貨を受け取る。この貨幣、鉱石の特性なのか異様に軽い上、薄いので五十枚を超えていても然程苦にならなかった。もっとも、例え邪魔でも、ハジメには“宝物庫”があるので問題はない。
「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」
「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」
人数分手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。
「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」
「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」
オバチャンの優秀さがやばかった。この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの? とツッコミを入れたくなるレベルである。きっと壮絶なドラマがあるに違いない。
「そうか。まぁ、助かるよ」
「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その嬢ちゃん達ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」
オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。南雲が苦笑いしながら「そうするよ」と返事をし、入口に向かって踵を返した。ユエと俺達も頭を下げて追従する。食事処の冒険者の何人かがコソコソと話し合いながら、最後まで女子勢を目で追っていた。
「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」
後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きと未だにのの字書きをしているセタンタが残された。
✲✲✲
南雲、香織、ユエ、シアの4名はマサカの宿という所に宿泊するそうだ。
俺、代赤、慧郎、迦楼那、飛斗、雫、今まで猫化していた白音、美久、織咫、鎖化していた天鎖、イリヤ、栄光、十六夜、金糸雀、鈴、はある豪邸前にいた。
俺は門前に着いたら門に魔力を流す事で解錠して皆中に入る。
「しばらくはブルックを拠点になりを潜ませるか。あ、もう自由だぜ?」
「そうか!なら早速依頼受けに行ってくるぜ!」
「ちょっ、待て、置いてくな十六夜!!」
十六夜と金糸雀は早速冒険者として活動するっぽい。女子勢は中に入って風呂に入るそうだ。
「あ、地下の鍵も解いてあるから大型銭湯に行ってもいいぜ?」
それを聞いた白音とイリヤが目をキラキラと光らせながら此方を凝視する。鈴はどういうことか分からないのか頭に?を浮かばせている。これで女子勢は
残りの男子勢は各々で身体を動かしたり組手を始めた。
その日はそれで終えた。
✲✲✲
次の日
「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」
という誰かの怒号が聞こえてきて目が覚めた。なので、身体を起こそうとしたが動かなかった。
首だけを動かして自分の身体を見回すとパンツ一丁でユエ程ではないが俺の華奢な身体が晒されており、その身体を舐め回し俺のナニをパンツ内で握り締める
「…………………色々と言いたいことがあるがまずはそんなことしてんじゃねぇっ!」
力づくで両腕だけを出して変態の脇を抱えて投げ飛ばす。部屋の壁にぶつかるかと思ったら結界を上手く使ってそれを阻止して着地する。
「後ちょっとで手に入ったのに邪魔しな……………いで……………よ…………………あり?………………起きちゃった?」
「あぁ。誰かの怒号でな。取り敢えず雫に言っておくから制裁受けてこい。」
「ッ!!?それだけは辞めて!?シズシズの般若だけは見たくない!!!」
雫の説教は恐怖が出る。それは、女子がしてはならない顔でガン見、最終的背後のに般若が竹割でハリセンを振り下ろすという何処かのス○ンドが現れるのだ。
そして、その事を雫に伝えたら俺事説教した。解せぬ。
そこから1日過ごした。
説教中
―――― アッーーー!!
―――― もうやめてぇー
―――― おかぁちゃーん!
という叫び声が響いてきたが俺はそれどころではなかったと言っておこう。
✲✲✲
「───────っつう訳で俺らはしばらくブルックに滞在することにしたんだ。」
俺は今、1人でブルックの門前で待っていた南雲たちにここで別れることを告げる。
「……………成すべきこと…………か。分かった。敵対しないよう注意してくれよ?これでも仲間って認識してんだ。殺すなんてことはしたくねぇ。」
「何言ってんだか。神性か
「無論だ。」
南雲達がブルックから出て旅を再開する中、俺はこう呟いて豪邸に戻って行った。
「…………………愛ちゃん先生に会ったら時が動くからな。」
「────………そんな…………叔父………上は………私を……」
「────ここは小説の中なんだ!」
「────へぇ、洒落たことしてくれるじゃない。」
「────ユエェェェェェェェェッ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?」
「────死霊使いって言えば分かるかしら?」
「────へへっあんたは俺のもんだ白崎ィ!!」
「────ラン、ラン、ルー!」
「────貴様を討つのにこのままでは不足らしい」
「────貴方は何故に彼等の力を持つのですか?」
「────アァァァァァァァァァァサァァァアァァァ!!!」
「────はっ、しゃらくせェ!!!」
「────
「────その心臓貰い受けるっ!」
「────▪▪も▪▪もみんなハジメに▪▪されてるんだ──」
「────Unlimited・Braid・Works!!!」
「────はぁ、親友の見た目と力を持つだけで粋がるなんてふざけないでよ茶坊主」
「────やっちゃえっ!!バーサーカー!!!」
「────無、それ即ち静寂と同義。なれば世を無へと帰さん──」
「────リベンジカウンターっ!!」
「────ヒャッハー!!!」
「────
「────俺は………ここに立っているッ!!!!!!」
「────極光は反転する───」
「────我が名は魔▪王ゲ▪▪ィア。───」
「────なんで…………君がここにいるんだい…………
次回、クラスメイト救出戦
«申し訳ございません。この駄作者めが戦闘シーンを書きたいだけでかなりとばします»