氷創の英雄 ~転生したけど、特典の組み合わせで不老不死になった!~   作:星の空

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第8話

ある日のことだ。

いつものメンバーで帰っている所、少し先にあるたこ焼き屋でトラブルが発生した。

ある少年が祖母に買って貰ったたこ焼きを偶然通りかかった不良にぶつかり、服を汚してしまったのだ。

それを謝る2人と、それを見て不良達が増長して恐喝まがいのことをする。

周りは見て見ぬふり。そして、祖母がお金を払おうとした所、別の道から南雲ハジメが現れてそれを辞めさせる。

その直後、ハジメは公衆の面前で土下座を敢行。不良達がさらに増長してジュースを頭に掛けたり、唾を吐きかけられても一切動じず2人に代わって謝り倒す。

そこで、たこ焼き屋の向かいにある焼き鳥屋から何処かのマフィアの連中が現れて不良達にメンチを切って不良達が撤退。

そのあと、ハジメを立たせて汚れをハンカチで拭い、

「あんた根性あるな!人は見かけによらずってのはこういうこったろ?」

そのあと、2、3言言葉を交わしてマフィアの連中は立ち去る。

取り敢えず、皆に声を掛けようとしたら、皆が1人を凝視している。

それは香織である。

なんと、顔が恋する乙女のそれであった。

「へぇ、南雲ハジメに一目惚れしたんだな香織?」

「ふぇっ!?そそそそんなんじゃ無いよ!!」

「でも、南雲の度胸は凄かったな。しかも、マフィアの連中から名刺を貰ってたぞ?」

「それで、香織は何が好き?」

「それは南雲君っ…………!?!?もうっ!からかわないでよ飛斗君!!」

「認めたらどうだ?私は南雲君に一目惚れしましたってな。」

「泉奈さんまで!?」

「おい、さん付けってなんださん付けって。せめて君呼びしろ。」

「え、泉奈さんって女の子でしょ?」

『えぇっ?男なんだが知らなかった?』

「え、知らなかったのって私だけ!?」

『うん』

「そうだったんだ。泊まりがけの時、抱き枕にした事あるけど女の子の様な触り心地だからずっと気にしなかったんだけど………」

『何だって?』

「素材がいいから服もワンピースとか合いそうなんだけど、ずっとパーカーを羽織ってるから素顔をまだ知らないんだよね…」

『ゴクリっ』

「おーい、なぜ皆が凝視しているかは分からないが兎に角帰るぞ。」

 

………………この後、萌愛協力のもと飛斗を含めた女子勢に着せ替え人形にされた。

 

 

それから1ヶ月後

 

檜山大介、近藤礼一、英王儀留雅の3人が登校してきた南雲をいびり始めた。

いびる訳は簡単で、既に学園のマドンナの1人となった香織に声を掛けられているのに言われた事を改善しようとしないからクラス内ではワースト・ワンになっている。

南雲が席に着いた時、香織は直ぐに向かう。

「おはよう南雲君!今日はちょっと遅かったけどどうかしたの?」

「あぁ、おはよう白崎さん。うん、昨日はギリギリまで進めたからね。」

「そうなんだ。でも、しっかり睡眠を取らないといざって時に反応に遅れるよ?あと、寝たらオシオキね。」

「分かった。今日は23時迄には寝るよ。」

この会話からして原作と何か違うのが分かっていただけだだろうか?

そう、香織と南雲は付き合っているのだ。

って、オシオキってなんだ?

いつかと言うと約1ヶ月前から外堀を埋めていったのだ。

彼女の父である智一を降してからことある事に出会う様に仕向けて南雲に香織のことを意識させる。

そして、デート紛いな事をさせて告白をする………のだが何を先走ったのか、香織はラ○ホに特攻して南雲をタベタのだ。

それで南雲も諦めたのかどうか知らないけど、婚約を結んだのだ。

まぁ、南雲は将来が決まっているのでかなりの有望株である。

2人には超リアリティなゲームと称して異世界トータスで経験させたり、南雲はまだしも、そういった事に詳しくない香織に2次元やラノベを教えたりもした。

そして、女子勢や1部の男子以外は既知なのでこれが2人の関係であると遠くから暖かい目で見ている。

が、それを知らない1部の男子のうち1人が、ご都合主義の光輝(ひかってる)である。

「香織、また彼の世話を焼いているのかい?全く、本当に香織は優しいな。」

「……………」

そいつの幼馴染である坂上は香織と南雲が付き合っていることを知っているため、何も言えない。

しかも、南雲が入学前から就職先が決まっているのを俺が口走ったため、それを知った彼は、そしたら高校生活が暇になるな。と脳筋なりに理解しているのだ。

「おはよう、天之河君、坂上君。はは、最近忙しいからそのなりが収まるまではこういう感じになるかな?」

南雲が忙しいのは愁の仕事の1部を肩代わりしてる部分があるからだ。まぁ、跡取りなのでそれに慣れるためってこともあるが……

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

そして何も知らない奴は皆からして目を疑う様なことを発する。

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

天然な香織は光輝が周りのように自分が南雲と付き合っていることを知っている気で話すので全然噛み合わない。

そして、クラス内女子勢は香織の天然さに少し呆れ混じりの嘆息をして、男子は1部の男子以外は大体が南雲に「泣かすんじゃねぇぞ!」とプレッシャーをかける。

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 どうやら光輝の中で香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。完璧超人のせいか自分の正しさを疑わないという重症な欠点がある。

…………………どっかで見聞きしたセリフだと思ったら異世界トータスに飛ばされる日の朝の出来事のセリフじゃね?

〈メーデー、諸君聞こえるかい?〉

『?』

〈なんの因果か予定が早まった。今日異世界トータスに飛ばされるかもしれない。至急準備にかかれ。雷蔵さんには電話しておく。〉

『了解!!!!!』

念話をしていたらチャイムがなる。

教師の衛宮士郎と副担の畑山愛子(以後は愛ちゃん)が入ってくる。教室の空気のおかしさには慣れてしまったのか何事もないように朝の連絡事項を伝える。そして、当然のように授業が開始された。

違うとすれば、南雲がちゃんと授業に取り組んでいることだ。

彼女の面子のためだとは思ってるが。

 

✲✲✲

 

チャイムがなり、昼休憩に入る。

購買に走って行く猛者共や机をくっ付けて弁当を広げる者、中には愛ちゃんと一緒に食べている者達もいる。

俺、飛斗、代赤、雫、白音、イリヤ、満愛、美久、姜弩姉妹、十六夜と金糸雀、十門司、衛宮士郎(以後は士郎)、遠坂、間桐、迦楼那と、かなりの所帯である。

因みに香織は南雲を誘いに行っている。

「んで、異世界転移ってどういうこった?面白そうな話をしてんな?」

「それがラノベである典型的なやつならな。エヒトルジュエっつう神を殺さねぇとその世界は滅ぶがな。」

「…………異世界、か。箱庭が懐かしく感じる。」

「はぁ、これは1種の修正力なのですか?巻き込まれる運命なのでしょうか?」

「それで、いつ異世界に転移すんのよ?」

『…………これから。』

香織が南雲を連れてこっちに向かおうとして光輝の妨害を受けていたところ、床が突如光だしたのだ。

それは、光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学きかがく模様が現れ、その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――-俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

数秒か、数分か、光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして、大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。


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