ロクでなし魔術講師と異世界憲兵 作:mocomoco2000
死を目の当たりにしたことはありますが、体験したことはありません。
……………少なくとも彼のような考えには至らないと思います。
世界の動きが止まった。
文字通り雲も空も、空を舞う鳥も、目の前に広がる海の波も、隣にいる"ソ連を愛する女性"も。
〔聞こえるか、青年よ〕
声が聞こえた。威圧感のある重々しい響きの声が聞こえた。止まっている世界で"唯一意識のある青年"はその声を聞いて思考の回転を早める。これは一体どういう状況で、この声は一体何者なのかと。
〔聞こえているようだな。さて、貴様は今混乱していると思うが落ち着いて話を聞け〕
確かに混乱する状況だろう、と青年は思う。時が止まったかのように世界が動かないこの現象にも驚きを感じるが、時が止まる前に起きていた現象も中々に混乱極まる状況である。
青年は少し前に、隣にいる女性に誘われて沖まで出ていた。そこから見える朝日が絶景だからと。断る理由もないので行くことにし、朝日が出るまで雑談をしていた。だが朝日が顔を覗かせたと思った瞬間事故が起きた。
敵の遠距離砲撃が飛んで来たのだ。うちの鎮守府のレーダーはポンコツかと突っ込みたくなるが、残念ながら無いに等しいほどポンコツであると"提督"が嘆いていたのでポンコツなのだろう。
で、先に砲撃を察した青年はとち狂ったのか船から跳んで女性を蹴り飛ばしていた。
そして、砲弾が目の前に来たところで今の現象に陥ったのだった。
〔…………この状況で落ち着いているとは。貴様、今から死ぬのだぞ〕
(ああ、確かに死ぬな)
青年は目だけ動くことに気付き見える範囲で状況を確認する。砲弾は時が動けば胸を貫通するだろう。これはどう足掻いても避けれない。当たれば即死だ。蹴り飛ばした女性は目を見開いてこちらを見ている。あの表情からして察しているのだろう。これから私が死ぬことを。
〔何故死に恐怖しない。怖くないのか?〕
(死に対して恐怖は無い。そもそも、"人を多数殺めた時点で私に死を恐怖する資格はない")
〔なるほど、人として壊れているな。だが、恐怖は無いが"後悔"はあるようだ〕
(当たり前だ。あの時ああすれば良かった、こうすれば良かったと人間は常に考えている。あり得たかもしれない世界に無駄だと分かっていても手を伸ばす)
〔この状況に後悔は?〕
(あるに決まっている。少し考えれば分かる問題だ。これは蹴り飛ばすより「伏せろ」と声を掛けるのが正解だ。それなら誰も死なずに済んだ。咄嗟の判断とはいえ、この手は悪手だ)
青年は淡々とこの状況を眺めながら"声の主"に告げる。それが面白くないのか
〔普通ならこの状況に驚き、私の声にも驚きを浮かべるのだが〕
と、少し低い声で青年に話す。
(だろうな。だが、これでも私は驚いている。よくこんな状況で冷静にいられるなって)
〔……………長い時を過ごしたが、本当に落ち着いて私と話をする者は初めてだ。平静を保っているように見せかける者は多数いたが、それもすぐに皮が剥がれて驚きの表情を浮かべる〕
(止まっているのに驚きの表情が出来るのか)
〔心を見れば分かるであろう?なぜならば私は〕
一度呼吸を整えるかのような間を"声"は取る。告げようとした瞬間に
(神であると言うのだろう?)
〔神で――――分かっていたか〕
青年は"神"の言葉を遮るように答えを述べた。
("提督"がその手の創作物にハマっていてな。暇があれば呼び出されて鑑賞会を設けていた。そうだな………貴殿を"存在x"と呼べば良いのかな?)
〔好きに呼ぶと良い〕
(ではあの作品を参考にして"X"と呼ぼう。無信仰の私が"神"と呼ぶのは不敬だからな)
〔その発言の時点で不敬であるが……………〕
少し呆れが混じった声で"X"は呟く。青年はその声に特に反応することなく話を続ける。
(………あの作品のように貴殿を信仰させるために記憶を残したまま転生させるのか?)
〔いや、私は"システム"のようなものだ。生物が死に、次の転生先へ魂を浄化させて送る装置。"神"と名乗るのは分かりやすくするためだ。本来ならこうして生命と話をすることすらしない〕
そこで、青年に疑問が生まれる。
(では、どうして話をする?)
装置であるならばこうやって話す必要なぞない。青年は死んで次の生物に転生しているはずだ。
〔貴様に分かりやすく言えば私は"システムのバグ"のようなものだ。システムも特に問題視してないから放置されている。問題視されていたらとっくに貴様は別の生命に転生している〕
(なるほどな。それで?"バグX"。これから私をどうするのだ?)
〔私は今貴様に興味を持っている。今まで送り出した生物の中で異質を放っている〕
(バグに興味を持たれても嬉しくないのだがな)
青年は軽いため息をつく。動けないから心の中での行動であるが。
〔貴様には"記憶を残したまま転生してもらう"〕
(…………ほぅ)
〔面白くない、という反応だな。普通なら喜ぶと思うのだが?〕
青年の反応に少し笑みを浮かべたかのような声で"バグX"は喋る。
(あくまで私の考えであるが、"死"というのは"罰"であり、"救済"なんだ)
〔ほぅ?〕
(私のように"多数の人を殺めた者"は死をもって"罰"を受け、魂の浄化…………要するに今までの行いをてリセットすることで"救済"…………いや、"己の罪を逃避"することができる。だって罪を忘れることができるだろう?)
〔面白い考えをしているな。それで本が書けるのではないか?〕
(残念ながら私には文才はない。それで?記憶を保持したまま転生させて何をする?いや、何をさせるつもりだ?)
違うと言いながらこのバグXに信仰せねばならないのか?それは困る。このバグに信仰する理由なぞない。理由があれば信仰するだろうが。と言っても、バグを信仰するとかあまり面白くないのだが。
では、何をさせる?記憶を保持したまま転生というのは嬉しくはないがかなりの特典を所持した状態でニューゲームをするようなものだ。例えば、RPGゲームを一通りクリアした。そして、リセットしてもう一度ゲームをする。まあ、色々知らない新たなイベントが生まれるだろうが、ゲームの進行方法はある程度分かっている。だから始めにやったときよりも速く、スムーズにボスを倒すことができる。少し違う?じゃあ、RPGゲームを一通りやった。そして、新たなRPGゲームをやることになった。システムや仕様は全然違うとしても、進め方といった経験則でスムーズに進めることができる。例に出すなら某黄色いネズミの出るゲームをした後、某悪魔を仲魔にするゲームをする。全く違うゲームではあるが、このままいけば敵と遭遇するとか、ここら辺にアイテムとか落ちてそうといった"予測が出来る"ようになる。これが転生先の住民より一足先を行ける………住民からしたら"天才"のように見える存在になれるだろう。
ちなみに、チート武器や、装備といった"2周目特典"というのは甘えだと私は思う。あくまで私の考えであるが。
確かに楽するのは良いことだ。だが、それに頼るというのは己の成長を阻害する事と同じ。
チート武器で倒すのはさぞ爽快であろう。だが、達成感はコツコツ経験値を積み上げて倒すより無いだろう。道のりを想う度合いが圧倒的に少ないからだ。
もう一度言うがこれはあくまで私の考えである。他の人にこの意見を押し付ける気も全くない。まあ、少し羨ましいと感じることも無いこともないが…………あれだ、隣にいる"ソ連少女"がプロレタリアートな生活をしているが、たまにブルジョアな生活をしてみたいみたいなもんだろう。違う?そうか…………。
〔………………摩訶不思議な思考は終了か?〕
どうやら私の思考を延々と見ていたらしいバグX。面倒な男を目を付けてしまったな、御愁傷様。
〔思っていないだろ〕
バグXにとって思考を読むのは当たり前のようだ。プライバシーの侵害であると起訴すると"提督"なら言うだろうが、私はこの摩訶不思議現象のせいかそんな事でキレたりしない。
(で?もう一度聞くが私に何をさせるつもりだ?)
〔貴様にはある世界に行ってもらう。その世界は魔術が発展した世界だ〕
ますます某悪魔幼女の話になってきている。
〔安心しろ、貴様の想像するほど過酷な世界ではない。そこで貴様の壊れた心がどうなるか見てみたいのだ〕
(バグに心が壊れてると言われても説得力がないな。まあいい。その世界で生き延びれば良いのだな?)
〔ああ、では………これから転生させる。ああ、そうだ。私の満足いく結果になればこの世界に戻してやろう〕
(……………は?)
それは一体どういう意味だ?
〔言葉通りだ。貴様が手を伸ばしたかったという結果にしてやると言っている。確か"蹴り飛ばす"のではなく"伏せろ"と言うのだったか?その結果にしてやると〕
(……………なるほどな)
〔貴様は死が確定したのを覆されることに特に忌避と感じないのだろう?それに目標がある方がゲームは面白いのだろ?〕
(………………分かった。そのゲームに乗ってやる)
この世界に確かに未練はあるが、この世界に戻らないといけないほど固執してるわけではない。だが、目標はないよりある方が良い結果が生まれる。バグのくせにその辺は分かってるようだ………いや、バグだからこそ分かってるのか。
〔ああそうだ。特典がてら1つ言っておこう。貴様の生まれる村はどう足掻いても4年後に滅ぶ〕
は?
その瞬間、青年の胸に風穴が開いた。
こうして私は不吉な言葉を託されたまま、新たな世界へと旅だったのだった。
どうも、初めましての方は初めまして
初めまして、モコモコです
某野球バラエティゲームをやっていた時にふと思い付きました。
思い付いて速攻で全巻読み直し、さらにこの前出た日誌も買いました。この作品のあとがき面白いですね(白目)
友人にドルフロの二次書くん?と言われたのですがどう足掻いても"不定期更新"をやってしまう私にあの抽象的な世界感の作品を具体的な設定を設けて書ける自信がありません。(といっても禁忌教典も抽象的なとこ多いけど)
というわけで"不定期更新"で"見切り発車"な私ですが幼少期までの流れは考えてますので頑張って書きたいと思います。
だが、この言い方だと幼少期までの流れまでしか考えれていないということになる。
はい、そうです。そこまでしか考えれていません。
アルザーノの学生にするか、はたまた講師にするか敵にするかとかアンケート取るか感想とか読んで考えていこうかなと思います。
いや、本当に見切り発車だな………