ロクでなし魔術講師と異世界憲兵   作:mocomoco2000

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異常者の周りにいるのは必ず異常者であるというのは間違いである。だが、異常者がいないとは言っていない。


天災は流れに身を任せ新天地へと身を委ねる

スキターリェツ。

意味はロシア語で漂泊者、放浪者。

オーウェルと出会った際に名前を聞かれたので咄嗟に出したのがこれだった。

この呼び名は白コートの愛煙家が付けてくれたものである。それが定着するかと思ったが、他の者は"憲兵さん"や"憲兵"だった。何故かと聞いたら負けた気がするからとのこと。彼女たちの溝は意外と深かったようだ。

 

 

 

オーウェルの護衛となったスキターリェツだったのだが、護衛というより実験の助手のような存在へと変わっていた。

オーウェルは魔導工学というものに精通しているらしく、要するに特殊な道具を作るのが得意であるとスキターリェツは解釈した。所謂ピンクのおさげやポニテみたいなものかと。

で。

ここが重要なのだが、このオーウェルって男、変人である。それもかなりの。スキターリェツが出会った者に該当する奴は……………多分いない。

あの酒飲んだら裸になる奴とも違うし、赤化を推進するコサック組とも違う。赤化運動をしてる時のテンションに近いがやはり何か違う。

ワーワーテンション高く説明をしているのだが、スキターリェツの前世は陸軍所属で魔術なんてもの、独軍がオカルトを取り入れた戦術を繰り広げたという噂でしか聞いたことないし、今世では魔術というものを教わったが回復系統の魔術とショック・ボルト等の初等魔術を軽く教わった程度……聞いていても意味が分からなかった。分かっているのはあの工作好き共の技術を魔術で出来るということくらい。

分からないと言っているのにやたらめったら説明してくるので、変人であるというのは心の底から感じ取った。

 

では、何故魔術を理解してないスキターリェツがオーウェルの助手みたいなことをしているのか。それはオーウェルがシュウザー家の守衛と手合わせしていたのを見たからである。

もうすぐ5歳になるとはいえ、スキターリェツは幼子である。こんな奴に護衛なんて出来るのかと、という疑問がシュウザー家の者たちからたくさん出てきた。当然の疑問である。

というわけで腕試しということで守衛と戦わせることに。

盗賊と戦ったという話は聞いていたが、がむしゃらに突っ込むだけ突っ込んで、結局は一緒にいた御者が倒したのだろうと予想していたのだが、その予想はものの見事に外れるのであった。

 

 

 

守衛との手合わせを終えると次に現れたのは、あの時助けた変人だった。確かオーウェル、オーウェル=シュウザーだったかとスキターリェツは思い出す。

 

「フーーハハハハ!あの守衛を一瞬で倒すとは。私には通り過ぎただけにしか見えなかったが、守衛が敗けを認めたということはそういうことなのだろう。だが!そんな一瞬で終わらせるとは面白くない!」

「………………《用意》」

 

右手に魔力を込めると"赤い短剣が現れ"、軽く構えた。何となく嫌な予感がするから。

 

「今私が着ているのは"スーパーパワードスーツⅢ"!前回の"スーパーパワードスーツⅡ"より薄く、頑丈になったのだ!これの実験に付き合いたまえ!」

 

そうオーウェルが叫んだ後、勢いよく突っ込んできた。

スキターリェツは色々突っ込みたかったが、

 

「…………いや、貴殿は魔術師じゃないのか?…肉弾戦してどうするのだ」

 

と一番の疑問を呟いて横に逸れて簡単に避け、さらに足を引っ掻けてオーウェルを転ばした。顔から突っ込んだオーウェルにノータイムで頭の横に短剣を突き立てた。

 

「……………これも手合わせの内ですか?」

 

と微妙な顔をするスキターリェツに周りの者たちは微妙な顔で返答する。

何とも言えない空気が支配する中、オーウェルの護衛の権利を勝ち取った。

この戦がオーウェルの付けてはいけない火を灯してしまい、事あるごとにスキターリェツを連れ出して実験………というよりパワードスーツの検証に付き合わされた。

スキターリェツも鍛練になるかと楽観的に捉えて根気よく実験に付き合った。それもあってか家の者たちから色々良くしてもらって、厚待遇を受けた。どうやら彼のわんぱくっぷりには辟易してたようだ。

 

それからしばらくしたら、オーウェルは学院に行くぞと言い出した。どうやら彼は学生で、今はこの屋敷に帰省していたらしい。一応私のような者を連れていっても大丈夫なのかと聞いたら大丈夫だと元気よく返したので多分大丈夫。

オーウェルが学院へ旅立つ時、従者とか親族が安堵した顔をしてる辺り、本当に彼と付き合うのに体力を使ってたのだろう。

今年はスキターリェツがいたからかなりましだったようであるが。

 

 

 

アルザーノ帝国のフェジテに到着し、スキターリェツはオーウェルに少し広そうな家に連れられた。

 

「ハハハハハハ!!!戻ったぞ!!」

「おーう、もう一生戻らなくても良かったんだぞー」

 

勢いよく扉を開けて叫ぶオーウェルにドライな対応をしながら奥の部屋から青年が出てきた。

 

「あ?オーウェル、そいつ誰だ?」

「エルドレッド、私は今から取りかからなくてはいけない案件があるんだ。話はその後だ!」

 

と華麗にスルーしてエルドレッドと呼ばれた青年が出てきた部屋へ入っていった。

 

「お、おい!………って」

 

ポツンとエルドレッドとスキターリェツは置いていかれた。初対面同士の者を残すというのはどういうものかと考えるが、オーウェルという男はそういう男だ。今さら言ったところで変わることはないだろう。じゃあ、それならこちらが上手く合わせるしかない。

 

「すまない、とりあえず情報の共有をしたいので話が出来る所はないか?」

「え?あ、ああ。じゃあこっちに」

 

エルドレッドはスキターリェツを入口手前の部屋へ案内した。オーウェルに付き合っていたら急展開なぞ慣れてしまった。彼は思い付きで発明とかするから。それはエルドレッドも同じようで瞬時に対応した。

部屋は片付いているというより使われていないって感じだった。テーブルと椅子、キッチンがあり、最低限の掃除はしているが、使用された痕跡があまり見受けられなかった。

2人は椅子に座ると

 

「まずは自己紹介か……。私はスキターリェツ。好きに呼んでくれ 」

 

スキターリェツは自己紹介をした。それを聞いたエルドレッドは変な奴が来たよというような感想を抱きながら

 

「エルドレッドだ。エルドレッド=ドゥール」

 

と簡素に挨拶した。

 

「それで?あんたは何だ?」

「何だと言われてもな………私は奥の部屋へ行ったオーウェル=シュウザーの付き添いのようなものだ」

「…………ちょっと待ってろ」

 

エルドレッドは話を止めて部屋を出ていった。怪訝に思うが何かあるんだろうとスキターリェツは気にしなかった。

前世でも同じ事があり、ドイツの将校帽を被った金髪碧眼の女性と食堂で会話をしていたら、急に立ち上がって

 

「少し待ってろ」

 

と言われて立ち去っていった。しばらくしたら戻ってきて

 

「悪かったな」

 

と言って席に座った。何かあったのかと聞いたらどうやら芋をふかしているらしく、状態を確認しにいったとのこと。

 

「まあ、彼女がいるから大丈夫だろ」

 

と割烹着を着用した女性を指差して微笑んだ。

ちなみに、その芋は鎮守府を悲劇に陥れるのだが、それは別の話。スキターリェツはその時関わらなかったため事後報告となったが、空色ケープ曰く

 

「あれは悪夢です。もう2度とあんなことになりたくない」

 

とのこと。報告だけ聞いたスキターリェツは意味が分からなかったが、当事者の顔を見ればそれほど酷いことが起きたのだろうと感じた。

 

「悪い、待たせたな」

 

前世の記憶に浸っていたらエルドレッドが戻ってきた。

 

「芋を見てきたのか?」

「は?芋?」

「………いや、何でもない。それで、その箱は?」

 

エルドレッドの手には白い立方体の箱があり、2人を挟むように机に置いた。

 

「まあ、話してたら分かるさ。んじゃ、情報の共有すっか」

 

エルドレッドは座ってスキターリェツを見つめた。

 

「もう一度聞くが、あんたは何者なんだ?」

「事情聴取されてるみたいだな。私はオーウェル=シュウザーの付き添いだ」

「……………」

「……………」

 

エルドレッドは箱をじっと見ているからスキターリェツもつられて箱を見る。白い箱でそれ以外特に特筆すべき点のない箱。これは一体なんなんだ?

 

「反応なしか。じゃあ……」

「貴殿ばかり質問するのは些か気を害する。交互に質問して良いか?」

「え?ああ、良いぜ?」

 

スキターリェツは軽く座り直して質問を始める。

 

「まあ、オーソドックスな質問だが、貴殿はオーウェルの学友か?」

「学友………と言えば学友だが………」

「煮え切らない感じだな」

「学年も違うし、専攻学科も違うからなー」

「…………戦艦と空母みたいなものか」

「は?戦艦?空母?」

「いや、こちらの話だ」

「まあ、居候と考えてくれ………もしくはオーウェルの研究仲間……?」

「それも煮え切らない感じだな」

「だからさっきも言ったが分野がかけ離れているからな。同じ魔法工学でもやってることは全く違う」

「…………貴殿らは"同志"みたいなものと考えれば良いのか?」

「同志…………ちょっと違うがそんなもんかね?」

 

簡単に話してみたがこの男、そんなに悪い奴ではないようだ。そうスキターリェツは考えた。そこそこフレンドリーで明るい男。例えるなら……ネイビーブルーのワンピースを着たあの女性にThe・ヒーローみたいな女成分をちょっと加えた感じか?違うか。

 

「じゃあ、次は俺だな」

 

そう言って質問による情報共有は続くのだった。

これがスキターリェツとエルドレッドの出会い。オーウェルと比べると些か物足りないだろうが、出会いなんて普通こんなものだ。

いきなり瑞雲を渡してきたり、赤化プロパガンダを撒き散らしながら接近されたり、ラムネを渡されたり、パンジャンドラムが飛んできたり、あんなハチャメチャな出会いは出会いと言わない。普通が一番。




ついに毎日更新ならず!
いや、いつか不可能になるだろうなとは感じてましたよ。
私の文才ではこれが限界なのだ!(開き直るなよ)

とにかくさっさとフェジテに行かせたかった。フェジテに行かせりゃ帝都に行かせやすいし、何より"さっさと原作に向かわせたかった"。
そうですよ、これ察していたかもしれませんが、原作開始前です。時間で言うとバーナードが特務分室にいる頃じゃないでしょうか?(いつだよ)

感想ありがとうございます!
お気に入りに引き続き、また声を上げてしまいました。
これからも感想とか戴けたらとっても嬉しいです。ただ、私のメンタルはつつかれたら腐ったり、3日に1度子猫に拐われたりするくらい弱いです。常に退却魂で執筆してます。眉毛をかかれたり、蚊に刺されたら折れるので用法・容量はお守りください(どういう意味だよ)
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