拙い点もりもりですがよろしくお願いします←
仮面ライダ◯の俳優になってから大体一週間。私達はほぼ毎日撮影に勤しんでた。実際公開するのは4ヶ月後らしいんだけど...季節感を出したいんだとかなんとかでこの時期に撮ってるんだって。いやまぁそれは構わないんだけどね?台詞自体そこまで難しくないし、寧ろ楽しいレベルなんだけど...うん、疲れる。
さらにね、いつもやってるダンスレッスンやボーカルレッスンに私達だけプラスして、『演技指導』というものが入ってる。これは単純で、今現在そっち方面の活動してるからそれの指導って感じ。まぁそりゃそうだよね。監督さんに選ばれはしたわけだけど、演技に関してはド素人なんだし。当たり前だけど、最初はかなーり怒られたりしたんだ...てか今でも怒られたりするけど...でも、最近は大分マシにはなってきたと思う。
んで、レッスンが重なるものだから寮に帰るのが8時とかその辺り。撮影がある日は9時とかその辺りまでかかる時がある。帰ってからも学校の授業のための予習やら課題やらもあるからほぼ寝れなくて...昼休みとか使ってなんとか睡眠時間稼いでる感じ。
...まぁ、きついだけじゃなくて楽しめてる部分もあるからいいんだけどね!私達以上に頑張ってるアイドル...例えば今度の大きいライブに出る城ヶ崎さんのバックダンサーに選ばれた卯月ちゃん、凛ちゃん、未央ちゃんだね──そんな人たちは沢山いるわけだし、コウも頑張ってるんだし、私も頑張らないといけないよね!
...でも疲れたなぁ...『ふ』が食べたい...
「ストップ...瑠璃、集中切れてるぞ!」
「あ...はい!すみません!」
『おいおい大丈夫か?疲れるんじゃないのか?』
おっといけない...ここは踏ん張りどころ。頑張らないと!
「よし、行けます!」
「...はぁ...瑠璃は今日ここまでだ。明日撮影だろう?しっかり台本を読み込んでおくように...」
「え、でも...」
「次!えぇと...コウ!出てこい!」
『っしゃあ!変わるぞルリ!』
「あ、え、ちょっ!.........うし、やるか!」
...強制的に変わらされた。いや確かにこのままだったらコウが指導してもらえないもんね。しょうがないね...
◯ ◯ ◯
ある日、346プロに所属しているトレーナー──通称メイキングトレーナーは唐突にとある通達を受けた。内容は極単純、これから俳優デビューする新人アイドルの演技指導をしてほしい、というものであった。
彼女の仕事はトレーナーであるが、トレーナーはトレーナーでも俳優部署のトレーナーであり、デビューしたての新人等を指導する役目を担っていた。メイキングトレーナーのメイキングというのはそこから来ている...らしい。
彼女自身、こういった感じで違う部署の人間に指導するというのは初めてではない...が、やりたいとは思っていなかった。深い理由は彼女の経歴にあるのだがここでは省略しよう。要は、演技にやる気がない人を担当することが多くてつまらない、ということが原因である...ということだ。
仕事である以上仕方がないとはいえ、こっちだってやる気もなくなってしまう。
「...またか」
思わずこう呟いてしまったのは仕方がないのだろう。上司に気付かれなかったのが幸いして何も言われなかったが。
見ると、指導は30分後からだという。急に決まったらしいが、もっと早く報告してほしかった...なんて思いながらも彼女は指定された場所へと向かっていった。
「す、凉月瑠璃です!よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく」
...驚いた。今回の自分は良い子を引いたらしい。
今までは最初からやる気の無さが感じられるやつだったからこれはこれで新鮮であった。
ふと、彼女が凉月瑠璃の資料を覗いてみると...
「『二重人格系アイドル』?」
そう記載されていた。あぁそういえば、アイドルというのはキャラが大事だとどこかで聞いた覚えがある。この瑠璃って子もそうなのだろう。しかし二重人格か...と考え込んでしまう。態度がいいだけに少し心配してしまうのだ、この子のこれからの芸能界での人生を。
「あ、はい!そのもう一人がコウっていうんですけど...」
「...へぇ、ならそのコウとやらにも挨拶させてくれないか?」
「分かりました!」
そう言い、瑠璃は目をつぶる。
──すると、雰囲気がガラッと変わった。
髪の一部が黒っぽい赤に変色し、再び開いた目の瞳は瑠璃色から紅色へ。まぁ彼女は『へぇ、最近の子はキャラ作りでこんなになるのか、すごい』程度にしか考えていなかったのだが。
「...ふぅ、さっきルリから紹介を預かった『コウ』だ。よろしく頼む」
「あ、あぁ」
先程の様子とは全然違う。しゃべり方も雰囲気も目付きも...だが、変という訳ではない。少なくとも彼女はそう感じた。
「じゃ、時間も限られてるから早速レッスンをするぞ」
「了解...っとと、忘れてた............よし、よろしくお願いします!」
「戻ったのか。まぁいい、始めるぞ!」
彼女は試しに一回その役に合わせて演技させてみたが...案の定だが、ドが付くレベルの素人であった。それはコウも同様であり、やる気だけは感じられたが...というのが感想であった。
その日はあまり成長することなくレッスンが終わり、解散となってしまった。
──そして、二回目のレッスンのある次の日。
「...なにがあった?」
瑠璃とコウ、二人の演技力が格段に上昇していたのだ。下手な駆け出し俳優よりは上手い...そう感じるレベルにまで。
「昨日ですか?昨日は...台本をかなり読み込んだりしただけですね」
それだけでここまで演技力が格段に上がるなら誰も苦労してないだろう...だが、実際に瑠璃とコウの演技力は上がった。
「(面白くなってきた...)」
彼女は思わずニヤけそうになる...が、なんとか耐えた。
「(鍛えればこいつは凄い役者になれる。アイドルという枠組みに置いておくには惜しい人材だ...)」
少し調子にのり、本来の役とはまた違う趣向の役の演技させて指導したりと着実に瑠璃とコウを鍛え続けていた。
──時は移り撮影本番。本人達には言わずに彼女はこっそり見に来ていた。撮影は1話目なのであまり出番はないわけだが、それでも構わないと思っていた。とにかく、久々に本気で指導したあの瑠璃とコウの晴れ舞台を見たいと感じていたのだ。
そして彼女らの演技するシーンになったとき...圧倒された。役柄は悪役でリーダー的な存在であるため、それに応じたカリスマ性のようなものが必要なのだが...見事にそれを引き出していた。彼女が軽く辺りを見渡すと、他の出演者や監督達が驚いているのが一目で分かった。
「(どうだ、『凉月瑠璃』は。こいつはまだまだ成長するぞ)」
彼女は満足そうにそのままスタジオを去っていった。
「思えば、まだ仕事を止めないでこうして続けてるのもあいつらのお陰なのかもな」
本日のレッスンが終わり、彼女らが去ったレッスン場を見てふと呟く。因みに、まだ瑠璃とコウを俳優の道へ引きこみみたいと考えていた。
「ふふっ、さてどうやってこっちに来させるか...」
そう言いながら彼女は帰路へ着く。その足取りはとても軽そうなものだった...と、見た人々は後に語った。